映画『まっぱだか』「自分自身を見つめ直すきっかけになるような映画」主演のお二人、津田さん、柳谷さんにロングインタビュー

映画『まっぱだか』「自分自身を見つめ直すきっかけになるような映画」主演のお二人、津田さん、柳谷さんにロングインタビュー

2021年8月21日

映画『まっぱだか』津田さん、柳谷さん、インタビュー

(c)Tiroir du Kinema

インタビュー・撮影・文・構成 スズキ トモヤ

本日から 元町映画館で公開される映画『まっぱだか』の主演の二人、津田さん、柳谷さんにインタビューさせて頂きました。


思ったことがなかなか発言できない世の中。

本作は、そんな「今」を代弁してくれる作品だ。

—–お二人にとって、元町映画館は、どのような場所でしょうか?

(c) 元町映画館

津田さん:私は、家みたいに感じます。スタッフの皆さんが、すごく温かいんですよね。お客さんとして、映画を観に行っても、「おかえり」って言われているような感覚なんですよね。

映画を観終わった後でも、「作品どうだった?」と聞いてくださる時があるんです。

—–スタッフさんが、感想を聞いてくださるんですね!

津田さん:そうなんです!どうしても、大きい映画館に行ったら、チケット買って、映画観て帰るみたいな流れですが、映画館全体が、「温かいな」って感じますし、とても好きな劇場です。

スタッフの方は、他のお客さんともお話されているところをよく、お見受けしますね。

—–柳谷さんは、どうでしょうか?

柳谷さん:劇場のスタッフの皆さん、とてもフレンドリーなんですね。

元町映画館の10周年記念で、津田さんの主演はわかるんですが、なぜ僕も主演なのかと思ってしまいます。

違う都市で産まれた人間を主役にして、「神戸の顔だからね」って冗談交じりに行ってくださる優しさは、なかなかないと思うんです。

—–なかなかないですね。

柳谷さん:ないんです。初めて来た時からもすごくフレンドリーに話してくれますし、先程津田さんが話されていた「おかえり」ていう感覚もすごくわかるんです。

はじめは「お邪魔します」だったのが、途中から「ただいま」っていう感覚に心の中で変化が起きましたね。

—–実家に近い感覚ですね。アットホームな場所ですね。

柳谷さん:そうですね。映画館だけでなく、元町という街全体に対して、そんな想いが溢れてきます。

—–今回、ナツコという人物を演じてみて、何か思い出に残っている場面は、ございますでしょうか?

(c) 元町映画館

津田さん:一番覚えているのは、中盤の怒った場面ですね。バーのシーンで、俊とボールを転がす場面で、横山に見つかって、責められているシーンが、映画の中で最もキツかったところですね。

あの場面から、私自身リミッターが外れたと言いますか。あの場面の前と後では、ナツコの態度が違うんです。

その前だと、言いたいことを我慢することがあるんですね。何度かテストを重ねるうちに、もう少し言ってみてもいいんじゃないかと、監督から指導して頂き、頑張ろうと前向きにならましたね。

その場面の撮影から、気持ちが開放されて、怒ったシーンもオープンにすることができました。自分の中で切り替えができた大切な場面です。

—–本作での役柄は、感情のオン・オフが分かりやすい人物を演じられてましたね。

津田さん:ナツコの役柄は、私の当て書きです。

脚本を書く段階から、私を想像して書いていただいたんです。

今までの私がどんな性格だったのか、聞いてくださったのです。

普段から人に意見を言えるタイプではなかったのです。

つい笑ってごまかしていました。

劇中でも、そのような雰囲気は出ていたと思います。

それまでは他人の顔色を伺っていましたね。

—–柳谷さんは、俊という役柄を関西弁で演じられる上で、何か気をつけていたことはありますか?

(c) 元町映画館

柳谷さん:関西弁と言いますか、神戸弁は関西弁と少しニュアンスが違うじゃないですか?

事前に頂いた脚本で練習していたんですが、その場で出てくるセリフもあったりして、大変な一面もありました。

—–その都度、現場で話し方のアドバイスなども行われていたんですね。

柳谷さん:そうですね。

—–違和感なく、耳にすっと入ってきましたね。

津田さん:柳谷さんが、一番お上手でしたね。

—–関西出身の方だったかなって、思わせてくれるほどでした。

柳谷さん:撮影前から、片山監督には神戸弁で喋っとけばいいからと言っていただき、色々神戸弁で話してはいたんですが、それがすべてエセっぽくて(笑)

—–逆に不自然だったんですね。

柳谷さん:少し焦りを感じまして、ちゃんと練習しておく必要があると思ったんです。自分は長崎出身だから、神戸弁がなかなか出なかったんですよね。

—–ナツコは、他人から求められる自分という役柄だと思いますが、津田さん自身、そんな風に感じたことはありますか?

(c) 元町映画館

津田さん:ありますね。自分が作り上げてしまうんですよね。

人と接する上で、少しバカっぽくて、お調子乗りで、何も考えてなさそうという性格を作っていると、あまり角が立たないと言いますか、処世術だと思うんです。

—–映画『みぽりん』の役柄にも似ておりますね。

津田さん:そうなんですよ。まさに、その役柄なんです。

—–あの時は、天真爛漫で、少し抜けていて、底抜けに明るい役柄でしたね。

津田さん:どうしても、無意識で繕ってしまうんですよね。

自分が作り上げてしまった性格なので、しょうがないと思ってしまうんです。

でも反面、苦部分もありますねしい。

—–柳谷さんは、先程関西出身ではないと仰ってましたが、関西でご出演される上で役柄は、どのようにアプローチされましたか?

(c) 元町映画館

柳谷さん:まずは、神戸弁の練習からですね。

初めて神戸に来た時に思ったんですが、港があって、商店街があって、中華街があって、長崎も似たような街なんです。

まったく知らない土地に来た感覚は、感じなかったですね。

ここは佐世保に似ているなとか、こっちは長崎市内に似ているなとか、すごく感じるんです。

特に、俊がそこに住んでいたという設定には、抵抗なく入り込めましたね。

—–馴染みのある神戸でご出演される中で、何か演技面などで感じたことはございますか?

(c) 元町映画館

津田さん:逆に私は東京で撮影することがまったくなく、前回の作品も神戸が中心でしたね。

今回も神戸元町で撮ってくださって、すごく不思議な感じだなと思います。

自分が普通に住んでる街で、違う自分がいるんです。

試写で観せて頂いた時、自分の目で見るよりも、もっと違って見えて、特に今回の『まっぱだか』は、そのまま映っているんですが、こんな場所があったんだと、新しい発見もあります。

音もすごく良くて、花隈公園の場面もすごく素敵なんですよね。

撮影した時の「元町」が切り取られている感じがとても良くて、住んでる人からすると、とても嬉しい限りです。

そんな場所でお芝居できたのは、嬉しいです。

—–撮影現場で撮った場面を改めて観ると、魔法のように感じますよね。

津田さん:特別な雰囲気に感じますね。

—–どのような流れで出演が決まりましたか?

柳谷さん:最初はオムニバスにしようとするところ、片山さん、安楽さんが脚本を書いていたら、短編作品の製作を考えてなかったようですね。

津田さん:長編として作品を作る時点で、二人を主役に作ろうと考えてくれていたようです。

初めから決まっていたようです。

—–とてもありがたいお話ですね。

津田さん:柳谷さんは、安楽さん達の作品によくご出演されてましたね。

—–そのご縁でご出演が決まったのですね。

津田さん:私は映画『一人のダンス』を観に行った時に、安楽さんの前で号泣しながら、想いの丈をぶつけた事が、覚えてくれていたようで、今回のオファーに繋がったんだと思います。

神戸で撮るという話が進む中、私を思い出してくれたらしいんです。

—–観賞させて頂いて感じたのが、長回しの多用です。演じられる上で大変ではなかったですか?

(c) 元町映画館

津田さん:私は、一気に撮ってもらった方が、気持ちとしては楽ですね。間違っても続けられるからですね。

長回しは精神的体力的に、少し大変なんですけど、気持ちとしては続けれるかなと思います。

柳谷さん:そういう意味では、とてもやりやすかったですね。

カットを割ったら、同じ芝居を繰り返すじゃないですか。

それがなかったので、プレッシャーにならなかったですね。

津田さん:私たち監督に言われたのが、どっちも本能的にお芝居をするようでして、続けるとか一切関係なく、自然に演じてましたね。

本当に、監督には大変な思いをさせたんじゃないかと思いますね。

柳谷さん:だから、ある場面で三人の人物が登場するところがあるんです。

カメラが一台しかなく、それぞれの表情を順番に撮影していた時、安楽さんがずっとカメラを回してました。

毎回演技が違うので繋がるかどうか、心配しておりましたね。

津田さん:あのシーンは、本当に忘れられないんです。

多分、今回の二人は、嘘ついたらバレる監督なので、演技って思ってお芝居したらダメだから、思ったことをそのまま表現させて頂きました。

そういう意味では、演じてる感覚はありませんでした。

—–お話をお聞きして、いい環境でお芝居できたのかなと感じました。

柳谷さん:多分、津田さんもそうなんですけど、演じてる感覚がなくて、まずは頭の片隅に置いておいて、お芝居させて頂きました。

津田さん:脚本は書いてあっても、その通りに話さなくても、動かなくてもいいと、仰ってくれましたね。

そこから生まれてくるものを表現しました。

—–最後に、映画を観賞されるお客さんには、何を感じてもらえたら、嬉しいですか?

(c) 元町映画館

津田さん:私は本当に、私にとって本当にすごい出逢いで、私の気持ちを変えてくれたとても大切な映画です。

今まで自分のことも好きじゃなかったので、この作品のおかげで、そうではないなって心から気づかせてもらって、自分自身に対して前向きに生きていきたいなと思いますね。

そんな気持ちを見つけてくれた作品です。

生きてて、自分と向き合う場面ってあるようで、ないと思うんです。

自分のことを見つめ直す、考えるきっかけになるような作品になってくれればと思います。

柳谷さん:僕はそうですね。津田さんとお芝居したりとか、監督から演技指導を仰ぐ中で、この映画の現場で得た想いは、日常生活では味わえないものですよね。

だから、すごく撮影時のことが記憶に残っておりますし、そんな想い出も宝物にしたいなと思います。

この作品には、たくさんの見どころがたくさんありまして、映画を観終わった後に、何か感じ取ってくれればと思いますね。

(c) 元町映画館

映画『まっぱだか』は、 8月21日(土) から兵庫県の元町映画館にて上映開始。9月10日(金)より京都府の京都みなみ会館、9月11日より大阪府のシネ・ヌーヴォにて上映が開始されます。