「<strong>皆さんには気づけるチャンスがたくさんある</strong>」1月21日(土)、第七藝術劇場で行われた映画『世界は僕らに気づかない』の舞台挨拶レポート

皆さんには気づけるチャンスがたくさんある」1月21日(土)、第七藝術劇場で行われた映画『世界は僕らに気づかない』の舞台挨拶レポート

2023年1月24日

©Tiroir du Kinéma

©「世界は僕らに気づかない」製作委員会

1月21日(土)、大阪府にある第七藝術劇場にて、映画『世界は僕らに気づかない』の舞台挨拶が、行われた。

この日は、監督の飯塚花笑さん、主演の堀家一希さん、母親役で共演者のガウさんが、ご登壇された。

映画『世界は僕らに気づかない』のあらすじ

群馬県の太田市でフィリピン人の母親と生活を共にする高校生の純悟。

父親にことは何一つ、聞かされていない。

毎月、送金される養育費だけが、唯一の父との繋がりを示すものだった。

純悟は同性の彼氏と交際をしているが、彼から同性婚を望まれているが、自身の育ちが劣勢感となり返事に困る日々を送っていた。

©Tiroir du Kinéma

この日、ご登壇された監督の飯塚花笑さんは、関西上映が始まった今の心境について聞かれ

飯塚監督:「関西では、公開が1週間経ってますが、実は私自身が、学生時代に関西に住んでいた経験があります。学生の頃に、こちらの劇場にもよく、足を運んでいました。。学生時代は、映画監督になりたくて、悶々となりながら、映画館に通っていました。自身でも、縁のある劇場に自分の作品が上映して頂ける事は、非常に感動的で嬉しい限りです。併せて、上映開始1週間が経ちますが、続々と作品の感想を頂く機会も増えてきており、作り手として、この作品が世に出た時に、どう受け取られるのか、この物語がちゃんと一人立ちできるのか、といつもドキドキしながら、見守っています。少しずつ、日本国内でも浸透しているのは、ホッとした瞬間でもありますし、そんな心境を持っています。」と、話された。

また主演の堀家一希さんは、純悟という複雑な役柄を演じるにあたり、どのような感情を抱いたのか、と聞かれ

堀家さん:「撮影に入る1年前の役作りの段階で、監督とは何度も話し合いを繰り返しました。僕自身が、過去に感じていた事、思っていた事を脚本に反映して下さった背景もあります。撮影中は、自分が若い頃に親に対して思っていた気持ちを消化して行くような感覚が、ありました。」と、話された。

今回、本格的に役者に挑戦した共演者のガウさんは、母親のレイナを演じて、どう感じたのかと聞かれ

ガウさん:「改めて、母親という存在の偉大さを感じました。皆さん、お母さんは大変ですね。レイナは、ただでさえ、異国から日本にやって来て、一人で頑張っているシングルマザーですが、近くに家族もいないにも関わらず、母国の家族には頼られている。息子には、煙たがられている。きっと皆さん、自分の子どもが反抗期だった事を振り返ってもらえると思います。今回のレイナを演じてみて、家族という愛の表現の仕方は、人それぞれ違うんだと、実感しました。異文化であればあるほど、愛する人への愛の伝え方は様々だと思います。外国では、愛する想いをストレートに伝える一方、日本ではどうしても、言葉にするのが恥ずかしいと感じる文化ですよね。そういう環境の中でも、日本に住む多くの外国人の方は、日本人の方に支えられて生きている方が大勢います。今回、映画『世界は僕らに気づかない』は、外国人の問題だけではなく、(※1)LGBTQQIAAPPO2Sの問題を抱えている方たちの作品となっていますので、そこにも目を向けて頂けるきっかけになって頂けたらと、願っています。」と、話された。

©Tiroir du Kinéma

最後に、関係者の方々から貴重なコメントを頂いた。

飯塚監督:「この作品は、僕自身の後悔から始まっています。映画のロケ地である群馬県太田市出身ですが、そこには自動車工場があり、外国からの出稼ぎ労働者がたくさん住んでいます。労働者が住んでいる地域は、近くに風俗街が存在しています。そこには、多くのフィリピンパブが所狭しと店を構えています。僕が小学生の頃、学校には多くのフィリピン人のお子さんや、ハーフの子が通っていました。彼らは親の転勤の都合で、学力が追いついてない子どもが多くいましたが、僕は彼らに救いの手を差し伸べず、どちらかと言えば、冷ややかな目で見てしまっていた過去がありました。その時の経験が、今も地続きにずっと、後悔として残っているんです。ある意味、その子たちに対する懺悔の気持ちではないですが、より多様性が叫ばれている時代の中、本当の「多様性」に対して見つめ直して行かないと、日本の社会は進歩しないのではないかと、この映画を通じて、真の意味の多様性を感じ取って頂けたらと思って、本作を製作しました。タイトルやあらすじに触れて、自分には遠い話と感じるかもしれませんが、実際は自身にも重なる部分は必ずあると、思っています。」

堀家さん:「映画を観て頂いてから、コメント頂く事が増えましたが、「昔、この作品に出会いたかった」「あの頃、この映画に出会えてたら、もっと勇気づけられただろうな」と感想をたくさん頂きますが、当事者の方も、そうでない方も皆さん、今気づいて欲しいです。昔気づけなかった事を、今気づいて欲しいです。この作品を通して、皆さんには気づけるチャンスがたくさんあると、僕は思っています。」

ガウさん:「今回、作品のタイトルが『世界は僕らに気づかない』となっていますが、気づいて頂きたい想いと共に、今SNSでは自身を気付いてもらうために、自分を偽ってしまったり、自身を大きく見せたり、自分ではない表現の仕方をしたりする時代ですが、一番は「自分らしく」居ることを意識しながら、あなた自身を大切にして頂けたらと、祈っています。今まで陽の当たらない方々の事を、少しでも肌で感じ取り、当事者の方の言葉に耳を傾ける勇気を持って頂けたらと。それぞれが幸せで、平和な世の中であって欲しいと思います。ただ、何か少しでも知って頂く、何かを感じて頂けたらと、願っています。」

映画『世界は僕らに気づかない』は現在、関西では1月14日(土)より大阪府の第七藝術劇場、京都府の京都シネマにて公開中。また、全国の劇場にて上映中。

(※1)LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。https://jibun-rashiku.jp/column/column-1875(2023年1月24日)