「色んな人がいる事を、作品の中で描きたい」10月15日(土)、シネ・リーブル梅田で行われた映画『ミューズは溺れない』の舞台挨拶レポート

「色んな人がいる事を、作品の中で描きたい」10月15日(土)、シネ・リーブル梅田で行われた映画『ミューズは溺れない』の舞台挨拶レポート

2022年10月18日
©Tiroir du Kinéma

10月15日(土)、大阪府にあるシネ・リーブル梅田にて、田辺・弁慶映画祭セレクション2022の一作として上映された映画『ミューズは溺れない』の舞台挨拶が、ゲストの映画評論家ミルクマン斎藤さんを迎えて行われた。

この日は、監督の淺雄望さんと主演の上原実矩さん、ゲストの映画評論家ミルクマン斎藤さんがご登壇された。

映画『ミューズは溺れない』のあらすじ

高校の美術部に所属している朔子は、船のスケッチを描いている最中、誤って海中に落ちてしまう。

転落した朔子を目撃していた美術部の西原が、「溺れる朔子」を題材にした絵を描く。

その絵画が、コンクールで受賞した上、学校にまで飾られてしまう。

更に、記者から受けた取材を通して西原は、彼女をモデルにして、次の作品を描くと一方的に公表してしまう。

その屈辱から画家の夢を断念してしまった朔子は絵の代わりに、新たらしい作品作りに挑もうとするが、彼女の思惑にはなかなか至らない。

ある時、美術室で西原と向き合った朔子は、なぜ溺れた自分をモデルにしたのか、今まで抱いてきた疑問を西原に投げかけるが……。

©Tiroir du Kinéma

この日、登壇された映画評論家のミルクマン斎藤さんは、本作『ミューズは溺れない』を

ミルクマン斎藤さん「色んな観方ができ、まずは全世界を席巻しているシスターフッド映画の一本として認識されると思います。大阪アジアン映画祭をはじめとして、5、6年はずっと、シスターフッド映画の嵐です。ひとつの視点として、捉えることができます。ただ、別に違う観方もできます。本作には、アート映画の側面もあります。」

と、作品に対する解説をされた。また、淺雄監督は、出演者についての話を聞かれて

淺雄監督「本来、映画を撮る時のキャスティングは、だいたいオーディションで決めています。ただ今回は、オーディションは行わず、PC画面を通して、役者さんのプロフィールや写真を確認しながら、奇跡的に主演の上原さんのプロフィールと出会いました。元々、朔子は目力の強い子で、しかめっ面が似合う女の子のイメージでした。その時の上原さんのプロフィールのお写真が、まさに目力が強くて、カメラマンを睨み付けているような非常に力強い写真でした。ぜひ会ってみたいと思い会ってみたら、朔子だったので、即決でした。」

と、出演オファー時の話をされた。併せて、作品の製作過程を聞かれて、主演の上原実矩さんは、

上原さん「船の製作過程を見ながら、撮影を進めていました。改めて、現場で船を見て、現場で朔子が考えている事を感じ取る事ができました。また、家の撮影の裏では、着実に日々、製作されている船を見ながら、演技に挑みました。あの不思議な音は、初号で観た時に初めて知りました。朔子が想っていた事を映像で表現し、伝える事ができるんだと、非常に感動しました。」

淺雄監督は、LGBTQ+に関する話題にも話が及んだ。

淺雄監督「3人のキャラクターに対して、ひとつのテーマとして、セクシャリティについて、私なりに掘り下げて描きたいと思っていました。私の持論ですが、LGBTQ+というセクシャリティに対する様々な言葉が浸透していますが、決してセクシャリティは線引きできるものではなく、一人一人グラデーションに満ちているものではないかと、捉えています。LGBTQ+という名前がある方々だけの問題だと思われガチですが、同性愛者もいれば、異性愛者もいて、ノンバイナリーの方もいて、色んな人がいる事を、作品の中で描きたいと思いました。朔子のような人が登場したり、と様々なキャラクターを登場させました。まったく違う人物が登場し、雨の中、美術室でお互い話し合う場面がありますが、私の中ではとても大切なシーンです。」

映画『ミューズは溺れない』は、全国順次公開予定。