映画『七人樂隊』明日への希望にかかる七色の虹

映画『七人樂隊』明日への希望にかかる七色の虹

2022年10月18日

“香港七重奏”が奏でる珠玉のアンサンブル映画『七人樂隊』

©2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved

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今、香港は国際的政治的に鑑みても、過渡期に突入している。

2014年から起きた民主化運動の波は、まだ終わりの底を知らない。

このデモ活動の発端は、様々な要因が関係している。

中国側が「一国二制度」と呼ばれる香港特有の政治形態を反故する姿勢を見せた事が、最も影響与えている。

1999年、英国が香港を中国側に返還した時に採決した「一国二制度」は、およそ50年は約束を守ると決議した制度だったが、突如として中国側が近年、それを破って来た。

その結果、約束を破られ怒った香港市民が、デモを起こして反対運動を行った。

当初は、学生中心のデモだったが、時が経る毎に、その規模は肥大化し、香港全土に広がった。

最終的に、200万人の香港人が集まり、中国への抗議運動が展開された。

まさに今、香港は混沌とした時代の真っ只中にある。

そんな中、本作『七人樂隊』が産まれた。

監督は、香港映画界を代表する七人。

サモ・ハン、アン・ホイ、パトリック・タム、ユエン・ウーピン、ジョニー・トー、リンゴ・ラム、ツイ・ハークという豪華メンバーが、集結した。

70年代後期から90年代にかけて隆盛を誇った香港ニューウェーブを支えた重鎮たちが描き出したのは、香港が持つ「過去・現在・未来」の姿。

香港のある映画レビューサイトでは、本作『七人樂隊』をこう評している。

(※1)“The anthology provides an authentic, sometimes emotional, look back at a Hong Kong that will never be the same again. This is essential viewing for anyone who has a special affinity for Hong Kong and its once glorious cinematic tradition.”

「本作は、二度​​と統一することのない本物の(時には感情的な)香港を振り返ります。これは、香港映画の輝かしい歴史に対し、特別な感情を持つ人にとって不可欠な作品。」と。

また、別のレビューサイトでは、プロデューサーのジョニー・トーの言葉を取り上げている。

(※2)“Filmmakers in Hong Kong are united. Though every director has their own way of expressing ideas, they all share the same feelings for Hong Kong movies,”

「香港の映画製作者は皆、団結しています。どの監督も、独自のアイデアを表現する方法を持っています。その上、香港映画に対する感情は皆、同じです。」と、香港人監督らの連隊意識や香港人としてのアイデンティティを暗喩に示している。

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最後に、香港は今、複雑に混乱した歴史の渦の中にいる。

香港民主化運動の波は、今もまだ、続いている。

実質的には、中国が政治の実権を握りつつある中、国民たちは自身の人生をどう生きるのか、迫られている。

裕福な者は国外へと退去し、貧者は仕方なく香港に留まっている。

また、その中には自国を守ろうと、自らの意思で香港に留まる者もいる。

この香港民主化運動に関する映画は近年、上映本数を伸ばしつつある。

本媒体でも、過去にドキュメンタリー映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』Blue Island 憂鬱之島』『時代革命』でも、同じ題材で作品が生まれている。

『時代革命』のキウィ・チョウ監督は、自身の過去作『十年 ten years』と掛けて、 今年2022年を節目とした香港の「10年後」を、どのようにイメージしているのかと問われた監督は、(※3)「これからの10年間の香港を想像したいなら、美しい香港を想像してください。香港は、自分に希望を与えます。未来にはまだ、起こっていない多くの可能性があり、多くの良いことが待っていると、心から信じ、期待しています。」と、香港の明るい未来について、話す。

ただ、香港の現状を考えると、そのような事も安易に口にできる状況ではないが、当事者らの前向きな言葉を耳にすると、「香港には未来が、ない。香港は、中国に負けた。」と、私は半ば高を括っていただけに、多少なりとも一縷の希望を感じて止まない。

激動の時代の最中にいる香港で、本作のオムニバス映画に参加した7人の監督にエールを送りたい。

「よくぞ、生きていてくれた。よくぞ、本作を製作してくれた。」と、感謝しても感謝しきれない。

混迷を極めた香港の民主化運動の渦中に産まれた本作は、香港だけでなく、アジア全体の希望にもなりうる。

なぜなら、本作『七人樂隊』は、香港の「過去・現在・未来」やアジア全域に希望をかける「虹」そのものだ。

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映画『七人樂隊』は現在、京阪神では大阪府のシネマート心斎橋、京都府の京都シネマ、兵庫県の塚口サンサン劇場にて、10月14日(金)より絶賛公開中。また、全国の劇場にて順次公開予定。

(※1)Septet: The Story of Hong Kong movie review – Johnnie To-produced feature sees seven directors put their feelings for the city on filmhttps://www.scmp.com/lifestyle/entertainment/article/3186495/septet-story-hong-kong-movie-review-johnnie-produced(2022年10月17日)

(※2)’Septet: The Story of Hong Kong’: salute to city’s golden age of filmhttps://www.globaltimes.cn/page/202207/1271074.shtml(2022年10月17日)

(※3)ドキュメンタリー映画『時代革命』この闘いは、まだまだこれからhttps://moviearttiroir.com/https-hongkong-democracy-continue-com-p4001/(2022年10月17日)