映画『ホテルアイリス』「 「存在していること」が、普遍性」奥原浩志監督インタビュー

映画『ホテルアイリス』「 「存在していること」が、普遍性」奥原浩志監督インタビュー

2022年3月5日

映画『ホテルアイリス』奥原浩志監督インタビュー

©Tiroir du Kinéma

©長谷工作室

——今回は、作家の小川洋子さんの原作『ホテルアイリス』を映画化されておりますが、原作のどこに興味を惹かれましたか?

奥原監督:自分自身の中で、小川洋子さんによる作品のパターンがあります。

『ホテルアイリス』の系統は、割と小規模な話だと思います。抽象的な世界観と言えば、抽象的な世界観かと言えますが、書いてある文章はとても簡単な言葉で書かれていて難しくないんですが、全体として寓話的な物語が多いので、小川洋子さんが書く小説の世界観と自分が作りたいと思う世界観が、相性がいいのかなと思っております。

——日本と台湾の合作にされた経緯は、ございますか?

奥原監督:撮影したい場所が偶然、台湾で見つかったと言うのが、まずひとつです。

金門島という場所です。舞台となった「ホテルアイリス」の建物は、ホテルとして使われており、その場所ありきで始まりました。

——今回、原作をシナリオに書き換える時、どこか気を付けたことは、ございますか?

奥原監督:とにかく、原作に忠実に作ろうとしました。

——小川さん自身も、あるインタビューでシナリオに対して絶賛されておられますね。

奥原監督:多分、シナリオを読んでも、現場の雰囲気は掴めないと思います。

だけど、小川さんは自分のことは知らなかったと思いますので、作品に対して不安はあったと思います。

ただ、自分としては小川さんの小説の世界観を映画に変えたくて、原作として使わせてもらったわけなので、小川さんが読まれて、びっくりされるようなシナリオにはなってないと思います。

——別のインタビューを読ませて頂きまして、小川さんが「色々手を加えた上で、ひとつの完成された世界」と、シナリオを読んだ時に感じたとお話されております。

奥原監督:そうなんですね。一度、大きく書き直しましたんです。改めて、それが良かったのかなと思っています。

©長谷工作室

——台湾の新人女優のルシアさんのどこに惹かれて、採用されましたか?

奥原監督:オーディションで選んだ女優さんです。なんか、すごく女優っぽい方だったので、「いいな」と思って、起用することに決めました。

映画女優っぽい雰囲気を感じました。

——ご本人は新人の方でしょうか?それとも、舞台か何かにご出演されている方でしょうか?

奥原監督:彼女はモデルの方です。現地に行った時に、バスの横にデカデカと彼女の写真が貼られておりました。

台湾のモデルとしては、キャリアのある方だと思います。

本人によりますと、割と若い世代の方から認知されているほどの知名度はあるようです。

——彼女の魅力は、何でしょうか?

奥原監督:とても芯が強い子ですね。心が強くて、根性があると思います。

——作中のあのままのイメージですね。

奥原監督:そうですね。自分をちゃんと持っている人だと思いますね。

——撮影中に気を付けていたとはございますか?

奥原監督:なるべく、時間通りに終わらせるとかですね。

皆さん、ちゃんと契約書を交わしているんです。

だから、一日の労働時間も決まっています。

その時間に近づいて来ると、横からライン・プロデューサーの方が「あと10分で超過料金が発生しますよ。」と言ってくるんですよね。

©長谷工作室

——今回の売店役のリー・カーションさんは、どのような経緯で作品の出演に決まりましたか?

奥原監督:台湾のプロデューサーにお願いして、彼に手紙を書いたんですよ。

だいたい、普通の役者さんなら、事務所に聞いたりして、交渉するのが普通なんです。

でも、彼は特別な存在なので、プロデューサーが「手紙を書いたら?」と言ってきたんです。

何の変哲もない、ありきたりな普通の手紙ですよ。

「昔からファンでした…」なんて書いて「あなたしかできないので、ぜひこの役をして欲しい」と書いて、送らせて頂きました。

——彼が出演している映画『Come & Go』も、昨年取材させて頂きましたが、あの作品にも、この作品にも出演されていることに縁があると感じました。

奥原監督:『Come & Go』に出演ているリー・カーションに挨拶も兼ねて、この作品の撮影現場に足を運びました。

『ホテルアイリス』の撮影が2018年の12月で、リムの映画の撮影が2019年の春先のことだったと思います。

そしたらゴウジー(中国人旅行の者役)も、おられました。

ちなみに、『Come & Go』に出演している彼は、実は前作『黒四角』でも出演してもらった方です。

でも元々、あの人はリム・カーワイの最初の長編でも、主役をされていた方でもあります。

とても腐れ縁を感じます。

©長谷工作室

——プレスを読ませて頂いた時に、「私たちの日常の中にありながら異次元のもの、異質のものの中に見え隠れする普遍性。」という言葉がありますが、その普遍性とは一体、何でしょうか?

奥原監督:うーん。何でしょうね。それ、全然知らないです。本当に知らないです(笑)そんなこと、書いてましたか?

——書いていました(笑)

奥原監督:もう1回、言ってもらっていい?

——「私たちの日常の中にありながら異次元のもの、異質のものの中に見え隠れする普遍性が、最も極限的に描かれている。」と、書かれております。

奥原監督:いいこと言うね。

——その「普遍性」とは、なんでしょう?

奥原監督:普遍性ですね。難しかしい質問ですね。その普遍性とは、なんでしょう。

それは、すごい抽象的な質問なので、抽象的な答えになってしまいますが、自分でも、他者でもいいです。

「存在していること」だと思います。それが、普遍性ではないのでしょうか。

それだけは、否定しようがないことだと思います。それが、ものすごく大きなテーマだと思います。

個人では、その「答え」を見つけたと言う人はいると思います。

例えば、キリストやブッタが、そうだと思います。そういう方以外の普通の人は皆さん、誰にも分からない、到達できていない境地では、と思います。

謎な部分ではあると思いますが、そこが究極な「普遍性」ではないかと思います。

——最後に、本作『ホテルアイリス』の魅力を教えて頂けますか?

奥原監督:全体的に魅力的かな、と思います。

役者さんも作品の魅力の部分でもありますし、ロケーションの美しさも合わせて、観て欲しいと思います。

だから、作品のすべてを観て欲しいんですが、色んな視点の見方ができる作品かと思います。

できれば、お友達や恋人同士、親子など、組み合わせは何でもいいですので、観終わった後に、この映画について語り合ってもらえたら、一番嬉しいですね。

©長谷工作室

映画『ホテルアイリス』は、3月4日(金)よりシネ・リーブル梅田シアタス心斎橋京都シネマにて上映中。また、3月18日(金)よりシネ・リーブル神戸にて上映開始。