11月13日(日)、大阪府にある第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』の舞台挨拶が、行われた。
この日は、監督の山田礼於さん、プロデューサーの平塚千穂子さん、出演者の近藤尚子さんと難波創太さん、そして盲導犬のピース君が、ご登壇された。
映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』のあらすじ
東京都北区にある日本で唯一のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」。
全上映作品に音声ガイドと字幕をつける同館では、デフ(Deaf)の方にも、演劇を楽しんで欲しいと取り組む舞台手話通訳者を被写体にしたドキュメンタリーを上映することに。
作品を全盲の方にも伝えるため、個性豊かなメンバーたちによって、「音声ガイド」作りが始まる。
舞台手話通訳者たちの熱い想いは、いつしか音声ガイド作りの仲間たちの想いと重なり、言語や障がいの有無を度外視して、「心のバトン」を繋いでいこうとする。
この日、ご登壇された映画監督の山田礼於さんは、本作『こころの通訳者たち』の製作経緯を聞かれ
山田監督:「この作品のきっかけは、ある舞台で手話通訳者の方々が、一生懸命手話を通して、作品を伝えている姿勢に心を打たれ、感銘を受けました。「素晴らしいな!」と思い、この方々がしている事をもっと広めたいと思いました。業界には多くの手話通訳士の方がおられますが、舞台の上に上がって、演じながら、感情表現をしている姿にもまた、大きな感動がありました。このような気持ちが沸き起こった事がきっかけとして、本作の製作が始まりました。ただし、その時の舞台が一度限りの公演だったため、二度目のチャンスはありませんでした。悩んだ末、平塚さん率いる「シネマ・チュプキ・タバタ」という20人程が入れる小さな映画館がありますが、耳の聞こえない方、目の見えない方、様々な障がいを持った方々がゆっくり作品を観れる空間があるんです。過去の作品を通して、お世話になりました。平塚さんはじめとする関係者の方々が、音声ガイドや字幕を付ける温かい彼らの姿に関心させられました。平塚さん達にお願いしようと、話を持ち寄りました。」
と、作品の製作経緯を話された。山田監督の話を受け、平塚さんは
平塚さん:「最初に、監督からお話をお聞きした時は、通常の音声ガイドでは太刀打ちできない、また目の見えない方に届けるには、実際始めてから何もかもが、ノープランの手探り状態でした。とにかく、手探りでした。普段、音声ガイド作りに携わって頂き、通常版に慣れている方よりも、少し型破りな方々を呼んで、取り組んだ方がいいと思いました。まず、思い付いたのが、本日ご登壇して頂きました難波創太さんでした。」
平塚さんから話を振られた出演者の難波創太さんは、音声ガイド作りに参加した感想をお話された。
難波さん:「当時、平塚さんから「音声ガイド作りを手伝わないか?」と、お話を頂きました。そしたら、山田監督がいきなりカメラを回して、「これからドキュメンタリー映画を作ります。」と。あるドキュメンタリー映画を音声ガイドなしで、観るところから始まりました。作品全体の趣旨は伝わってくるんですが、どうしても一番大事な手話の部分が見えてこなかったんです。最後に、三人の手話通訳士の方が泣いている理由が、分からなかったんです。なぜ、舞台に手話通訳が必要なのか、最初に感じました。字幕でいいと思ったのが、最初の印象でした。でも、映画製作を関わっていく中、手話もまた必要だと、理解できました。文字だけでは伝わらない情報は、手話や音声ガイドが必要です。人間から発する情報が、非常に豊かだと、本作を通して、とても理解できました。」
と、手話や音声ガイドがいかに必要かとお話された上、最初の印象でもあると言う。また、もう一人の出演者である近藤尚子さんにも、話が振られた。
近藤さん:「最初に、チュプキではガイドとして同行致しました。実際、そのプロジェクト参加している自覚がなくて、着いて行ったら、参加する流れとなりました。4回目の集まりの時、平塚さんが「では、この4人で音声ガイドを作りましょうか?」と仰りましたが、このメンバーに自分が入っている事がまったく自覚がありませんでした。その後、難波さんから電話いただき、その時初めて、参加することへの自覚が生まれました。」
と、本作製作へ参加した経緯を、丁寧に話されました。
ドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』は現在、大阪府の第七藝術劇場にて絶賛公開中。また、全国順次公開予定。