「「人形」という存在を通して」4月15日(土)、大阪府のシアターセブンで行われたオムニバス映画『人形たち Dear Dolls』の舞台挨拶レポート

「「人形」という存在を通して」4月15日(土)、大阪府のシアターセブンで行われたオムニバス映画『人形たち Dear Dolls』の舞台挨拶レポート

2023年4月17日

©Tiroir du Kinéma

4月15日(土)、大阪府のシアターセブンにて、オムニバス映画『人形たち Dear Dolls』の舞台挨拶が、行われた。

この日は、監督兼プロデューサーの大原とき緒さん、監督の海上ミサコさん、監督の西川文恵さんが、登壇された。

映画『人形たち Dear Dolls』のあらすじ

映画『怒れる人形』は、上司から受けているハラスメントに苦しむ姉を見て、姉に代わり復讐しようとする妹の姿を描いた物語。

映画『Doll Woman』は、人形と暮らす女が人形と暮らす男と出会うボーイミーツガールの物語。

映画『JOMON わたしのヴィーナス』は、将来に悩む11歳の女の子が、田んぼで拾った手のひらサイズの女性像をきっかけに生きる道しるべを見出す姿を描く物語。

映画『オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景』は、女らしさとは何か、女性であることとはどういうことか、現実と虚構の間を行き来しながら女性の表象について考察する作品。

©Tiroir du Kinéma

この日、登壇された『Doll Woman』を監督された大原監督は、人形をテーマに据えた経緯を聞かれ

大原監督:「何か一つテーマがあった方がいいと4人で話し合う中、「人形」を作品のテーマに据え置くと決めました。人形とは、愛でたり、友達になったり、私たちにとって、非常に短い存在だと感じます。それでも、飽きられてしまうと、捨てられる運命を持っています。その上、自分自身を映す鏡のような存在でもあります。この「人形」という存在に対し、私たち自身の姿を重ねて、作品を作ろうという話になりました。」と話された。

また、映画『JOMON わたしのヴィーナス』を監督した西川監督は、なぜ人形が土器だった点、重低音が奏でられた劇伴について聞かれ

西川監督:「私は、大原監督から人形をテーマにして、製作する事をお聞きした上で、私自身は現代的な人形よりも古代からある土偶のような形状や深い歴史のあるものが好きでした。あの女性の型に型どった土器を自身の作品に取り入れようと思いました。その土偶から着想を得て考えたのが、音楽やダンス、配色を考えて、作品に落とし込みました。音楽に関してのご質問は、すごく嬉しく思います。あの曲は、私の作品で何度かご一緒している一ノ瀬響さんという音楽家の方に作って頂きました。コントラバスという楽器一本を用いて、多重録音を行い、コントラバス奏者の方に演奏して頂きました。土の中から古代が呼びかけてくるようなコントラバスの重低音とは、一ノ瀬さんが言うには、一昔前の男性優位社会であったり、現代の女性たちにおけるステレオタイプな考え方に対して、もっと時間を広げて、過去から現在までを考えれば、女性も男性も一つの生き物として、時間を共にしていた時代もあります。ここ数百年、数十年の価値観だけで、女性たちが今に沸き起こる感情を持っている事を音楽として表現しています。彼自身、もっと女性は怒っていいんじゃないかと考えて、作曲されました。最初はもっとキラキラしたようなメロディでしたが、重低音で怒りを表すような音色として、最終的に落ち着いたと、お聞きしました。」と話された。

最後に、映画『怒れる人形』を監督し海上監督は、作中における「色」への配慮やこだわりについて聞かれ

海上監督:「20分という短い時間の中、ビジュアル的に感情やストーリーを表現するのが大事でした。今回、モデルにした人形がハッキリした色でしたので、それをベースに衣装を探していくうちに、今回のような強い色であったり、登場人物のキャラクターが生まれました。また、大原監督からお題を生きづらさや人形にする事をお聞きしました。最初に、ネットで人形を探していると、カウボーイのレトロなブリキのおもちゃを見つけました。その玩具をベースにして、物語を考えました。」と話された。

©Tiroir du Kinéma

最後に、3監督から特別に「関西上映を迎えての今のご心境」について、お聞きした。

大原監督:「シアターセブンさんでは、2016年の1月に前作の長編映画『ナゴシノハラエ』という作品を上映して頂きました。私たちが作った作品を上映して頂けるのは、非常に嬉しいことではあります。また、作品自体や関係者を大事に思って、上映して頂ける場所で上映活動を続けたいという気持ちもあります。ずっと、シアターセブンさんで上映して欲しいと思っていた事もあり、今回は映画『人形たち Dear Dolls』と短編『Bird Woman』を上映して頂けて、非常に嬉しく思っています。シアターセブンの関係者の方々、この度はありがとうございます。」

海上監督:「一昨年の2021年、映画『夢幻紳士 人形地獄』を上映時に、大変お世話になりました。私にとって、こんな短いスパンで、再度上映して頂けると思っていませんでした。だから、夢中になりながら、宣伝・上映活動をしていましたが、今回は冷静に、上映が成功することを祈っています。また、今回のような機会を頂けたのは、感謝感激です。」

西川監督:「ちょうど、12年前に前作『あぜみちジャンピンッ!』を上映させて頂きました。その作品が、私の初長編作品。その時はちょうど、東日本大震災が起きた年でしたが、今年はコロナ禍も乗り越えて、ポジティブに宣伝活動ができる今の環境が、非常に嬉しく思っています。好きなように作った自身の作品を、胸を張って公開できる今、とても感謝です。生きづらさを抱える女性について考えるこの作品が、ムーブメントのように東京から始まり、ここ大阪でも上映され、ここから先、もっともっと日本全国に広がって頂ければと、強く願っています。」

オムニバス映画『人形たち Dear Dolls』(映画『Bird woman』併映)は、4月15日(土)より大阪府のシアターセブンにて、1週間限定上映。