ドキュメンタリー映画『華のスミカ』初日舞台挨拶 監督とプロデューサーがご登壇

ドキュメンタリー映画『華のスミカ』初日舞台挨拶 監督とプロデューサーがご登壇

2021年11月14日
左から林隆太監督、直井佑樹プロデューサー                         (c)Tiroir du Kinéma2021.11.13

文・撮影 スズキ トモヤ

11月13日(土)、大阪府の劇場シネ・ヌーヴォにて、ドキュメンタリー映画『華のスミカ』の初日舞台挨拶が行われた。

今回、ご登壇されたのは、林隆太監督と直井佑樹プロデューサー。

映画『華のスミカ』は、林監督自身の家系の出自を辿るアイデンティティを表現した作品。

華僑や中国の歴史を辿るうちに、過去に日本で起きた知られざる事件「学校事件」に直面する。

大陸系と台湾系のふたつに分断された中華学校は、山手と下手に分かれ、教育を受けることに。

長きにわたり、彼らの対立は続いたという。

その背景には、中国の政治家、毛沢東の影響が大きく関係している。

父親のある写真に出会い、自身の産まれたルーツを取材することを決意した監督自身の人生と歴史の闇に葬られた真実の物語だ。

舞台挨拶は、林隆太監督と直井佑樹プロデューサーの一問一答形式で行われ、大盛況のうちに幕が下りた。

監督は、映画『華のスミカ』を製作する経緯を聞かれると

「映画の中でも少し触れてはいますが、僕自身が15歳の時まで自分の父親が華僑3世(中国人)だったということをまったく知らずに生きておりました。

その時まで、日中関係の問題や当時のニュースを見ていると、あまりいい印象を与えてこなかったのです。

自身の出自を知った時、正直あまり受け入れたいことでは、ありませんでした。

ずっと家族の中でも父親が、どういう生活をしていたのか、中華学校に通っていたのか、中国人なんだよと話しても来なかったのです。

家族の中でその話をするのは、タブーなんじゃないかと、感じていたこともありました。

家族の歴史をより明確にしていかなければいけないという確信を持ってっておりました」とコメントを残した。

また、舞台挨拶の最後には、監督自ら映画のタイトル『華のスミカ』について語っておりました。

「『華のスミカ』というタイトルですが、この『華』は中華の華、華僑の華と読みますよね。

中国語の読みをして『華(ファ)』と読んでもいいですし、『華(カ)』と読んでもいいと思います。

なぜ、『スミカ』がカタカナなのかと申しますと、自分の中ではとても大事にしている部分でもあります。

僕がお世話になった華僑の方々からお話をお伺いする中で、二世の方から聞いたことが、とても印象に残っている言葉があります。

「自分にとって、中国に帰る場所はない。」というお話をお聞きした時に、日本で暮らしていると中国人として職業制限などを経験するのですが、中国に帰っても自身の身寄りがいるわけでもないということが、たくさんおられます。

映画に出演していた方も、兄弟が中国に帰った時、スパイ容疑を掛けられたという話を話されておりましたが、中国に戻った遠い親戚も、同じように文化大革命の時に、資本主義の国から来た人だという風に見られ投獄されたこともありました。

やっぱり華僑の存在そのものが、曖昧になっていると感じました。

どこに行っても、安心して暮らせる場所がないのじゃないかと感じ、常に摸索して生きているのではないかと思っております。

漢字で表現するよりもカタカナでその「曖昧さ」を表現できればと思い、この名前にしました。」と話されました。

ドキュメンタリー映画『華のスミカ』 は現在、大阪府のシネ・ヌーヴォ、兵庫県の元町映画館にて絶賛公開中。また、11月19日(金)より、京都府の京都みなみ会館にて上映予定。また、11月23日(火) 林隆太監督、洪相鉉さん(全州国際映画祭・富川国際ファンタスティック映画祭アドバイザー)によるトークイベントの予定。