行き場のない二人が進む道はどこにつながる? トラック&ラブ ロードムービー誕生!映画『道で拾った女』いまおかしんじ監督インタビュー
—–まず、本作『道で拾った女』の制作経緯を教えて頂きますか?
いまおか監督:最初、何か作品を作りましょうから始まりました。ロード・ムービーがいいんじゃないかと話が、出てきたんです。今までも、ロード・ムービーは何本か制作していますが、いつも制作の都合上、遠くには行けないという話にもなります。昔はよく、映画『トラック野郎』シリーズみたいな映画が多く制作されていましたが、今ではすっかりトラックを主題にした作品はあんまり見られなくなりましたよね。そんな話の中、最近はトラック映画が減った今だからこそ、トラックドライバーのロード・ムービーを企画して、予算的に考えて、東京から静岡の浜松ぐらいで話が纏まりました。ただ、ある一般男性のブログで、可愛いと思ったホームレスの女性を拾って、家に連れ込もうとした体験談があるんですが、プロデューサーからその話を物語に盛り込みたいと、初期段階の企画から急に変わったんです。私は、トラック運転手の話、プロデューサーは拾ったホームレスの女性の話がしたいと意見が別れたので、2人のやりたい事を混ぜることにしたんです。これはもう私の意地ですね。プロデューサーがしたい事を全て作中に入れて、プロットを作って、シナリオを書いたんです。キャスティングを進めて行く中、浜田学さんや佐々木心音が出演してくれると言ってくれたので、企画が大きくと動いたんです。
—–ロード・ムービーは旅を通して描かれる人物たちの人生観が主な魅力だと思いますが、本作は制作段階から人物たちの行く末や終着点を構想の中から既に持っていましたか?それとも、監督の中で彼らの後の人生について、今現在、何か考えていますか?
いまおか監督:今までのロード・ムービーには、色々なスタイルがあると思いますが、家出して出ていたら、だいたいの作品では家には戻らない物語が多いですよね。どこか新しい場所に行く登場人物が、描かれていますよね。前回撮った映画『遠くへ、もっと遠くへ』は、遠い国に行こうと話し合う2人の姿で終わっています。今回は、前回の『遠くへ、もっと遠くへ』とは少し違った男女の姿を描いているんです。だから、ロード・ムービーと言うより、共に数日間を過ごす事によって、今まで灰色だった人生や生活に少しだけ色が加わる姿を感じて頂ければと思います。
—–人との出会いによって、人生の見え方が変わるのであると、私は受け取りした。
いまおか監督:人生も映画も、で会いと別れしかないですよね。現実生活でも、まったく同じですよ。誰と出会って、誰と別れるのか。そんな普遍的側面を、描こうと考えていたと思います。
—–一瞬の出会いこそが、一人の人の人生を輝かせるんですね。
いまおか監督:時々振り返った時に、ふっとそのことを思い出すのがまた、いいと思いますね。
—–でも出会いがあるからこそ、後の人生がもっと輝き、違う方向に行くと思うんです。
いまおか監督:そんな事もあると思いますし、あったら嬉しいじゃないですか。現実の世界ではなかなか、そんな経験もできないですよね。その点はフィクションとして作っていけばいいと思います。
—–ダメな人生を生きるダメな人物たちの代表格は、この映画の主人公の2人だと思います。ダメな人生を打破しようとする彼らの姿こそが、愛くるしい一面もあるのかと。 2人の姿を通して、監督は彼らをどう見ておられますか?
いまおか監督:どう見ているのか?彼らは、生きるのが下手くそな人達なんです。人生が上手く行かず、悪気がないのに人を巻き込んでしまう一面は、大なり小なり、皆さん、あると思うんです。自身の人生においても、下手くそな部分がたくさんあると思うんですよね。だから、そんな事が毎日続くと、本当に嫌になっちゃうじゃないですか。嫌な思いをして、長く生きて行くのも嫌ですよね。それでも、年に一度くらい良い事があれば、何とか生きていけると思うんです。彼らは、ごく普通の人と思って描いています。彼らは、色々と間違った事をしてしまうんですが、ヒーローでもヒロインでもないんだけど、その辺にいるごく普通の人ですが、愛せる人物と思っています。
—–自身の人生を変えようとする姿自体が愛くるしいと言いますか、正直、ダメな人を見ているとイライラする人もいるかもしれません。ただ逆に励まされ、共感を持つ事もできるのではと私は思います。映画を観ていると、彼らが私自身と共通する部分もあると感じるんです。 上手く行かない人生含め。
いまおか監督:人生は普通、そう簡単に上手く行かないよ。 行かないからこそ、どうしようかと考えるものなんです。
—–旅、恋愛、セックスライフはいまおか監督作品における重要な要素であると私自身は認識していますが、これらの要素を組み合わせて作られた本作は、この要素たちが作中で登場人物達にどう影響を与えていると思いますか?
いまおか監督:結局、みんなそんな人ばかりではないかもしれないんだけど、個人的にはいつも人は、セックスしたいと思っています(※1)。それは、男も女も同じです。だけど、色々な事情があって、できないんです。いい女だなと思っても、いきなり抱き付く事はできないですよね。多分、両方に愛情がないとセックスはできないと思います。もちろん、風俗に行く選択肢もありますけど、こっちが好きになって、向こうも好きになって、セックスしたいと思っても、実際には簡単に交われないですよね。よく考えたら、奇跡的なことだと思うんです。本作のような作品は、エロスシーンありきの企画ですが、いつも思うのはセクシーな場面はありますが、なかなか、それを芸術的に描くのは難しいと、常に思っていたいんです。あとは、旅ですよね。旅は非日常だと自分は思うんです。旅は、常日頃の日常から離れる事だから、非日常の出来事は映画と相性が良いんですよ。日常を描く映画もありますが、旅に出たり、何かを探して遠出したり、非日常の出来事はフィクション性が高いと思っています。映画は、フィクションそのものですから。いつも、ロード・ムービーみたいな事がしたいと思っているんです。
—–映画『道で拾った女』の登場人物は、人生において何かしらの理由で躓いた人物を描いていると思いますが、私自身も現在進行形で躓きを感じている部分も確かにあります。作品は、そんな失敗事も全て容認してくれるような存在かなと私は感じましたが、監督はこの作品をどう捉えていますか?
いまおか監督:多くの方が、楽しいことばかりじゃないと思っているんですが、登場人物たちは何かしらを抱えている事が、普通の人だと思うんです。その人たちのどこの時間を描くのか、ある種の特別な時間や状況に追い込むと、登場人物たちが何を考えているのか、一番分かると思うんです。家を飛び出している状況の中の話なので、お互い相手に対して色々思う所もあると思います。今、ホームレスになっている2人の状況が、「何でもいいよ」とか、少し荒れた気持ちの2人が出会っているんです。だから、彼らが置かれている環境は特殊な状況なんです。でも映画を撮る時は、ある種、その特別な時間や状況を描く事を心掛けています。
—–最後に、本作『道で拾った女』の今後の展望など、何かございますか?
いまおか監督:もちろん、作ったからには、多くの方に観てもらいたい気持ちが一番ありますけどね。自分の作品を全然知らない方が観て、何かしら受け取って頂ければと思っています。面白い面白くない関係なく、作品を作った以上は、何か感じて欲しいと考えています。世の中に対する社会的なテーマや何か訴えたい事を理由に、作品を作っている訳ではありませが、それでも日々何か感じている事が作品に出ちゃっていると思います。自分を知らない人が観る事が、自分自身の社会参加であり、世の中との唯一の接点だと思います。できれば、少しでも多くの僕も全然知らない方々に届いてくれたら嬉しいです。
—–貴重なお話、ありがとうございました。
映画『道で拾った女』は現在、関西では11月11日(土)より大阪府のシアターセブンにて公開中。兵庫県の元町映画館は、近日公開予定。
(※1)日本人カップルのセックスの平均的な回数や頻度は?男女740名調査https://www.value-press.com/pressrelease/320128(2023年11月9日)