映画『遠くへ,もっと遠くへ』映画『あいたくて あいたくて あいたくて』「ダメなやつも生きていて良いんじゃない」いまおかしんじ監督インタビュー

映画『遠くへ,もっと遠くへ』映画『あいたくて あいたくて あいたくて』「ダメなやつも生きていて良いんじゃない」いまおかしんじ監督インタビュー

2022年9月5日

失くした愛を探し求めて、北海道へ。映画『遠くへ,もっと遠くへ』映画『あいたくて あいたくて あいたくて』いまおかしんじ監督インタビュー

©️2022 レジェンド・ピクチャーズ
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—–二作『遠くへ,もっと遠くへ』と『あいたくて あいたくて あいたくて』の企画の立ち上がりや制作経緯を教えて頂きますか?

いまおか監督:映画『あいたくて あいたくて あいたくて』は、エロス映画です。

どのような題材にするかと話している時に、今のSNS、LINEやTwitterがありますが、実際に会って話したり、電話で話す機会が減っている話をしておりました。

LINEのやり取りで失敗した話も、あるんです。

知り合いのプロデューサーの方が、「LINEの文章が失礼だ。」という失敗談から話が始まり、SNSを題材にした恋愛ドラマを製作してみようという流れになりました。

主演の丸純子さんを主演にすることは、最初から決まっておりました。40代の方のSNSから始まる恋愛話を考えました。

その時に参考にしたのが、少し前の映画ですが、森田芳光監督の作品『ハル』から着想を得ました。

その時はまだ、パソコン通信という描き方でしたが、文字で映画を進行させているような佇まいもありました。

あとは、恋愛をする本人同士がなかなか出会えない設定にしてみました。

結果、今回のような物語に仕上がりました。

この作品のシナリオは、自分で書きました。

ある40代のSNS事情を書いてみました。あと、映画『遠くへ,もっと遠くへ』は、5年ぐらい前にはシナリオは存在しておりました。

その時は、ロードムービーを作りたいと、プロデューサーと話をしており、ヴィム・ヴェンダースの映画『パリ、テキサス』のような話にしようと意見を出し合いました。

脚本の最初の段階では、上野からススキノに向かうストーリーでした。

ススキノで失踪した奥さんを探し回るというお話でした。

その話の筋立ては、ほとんど変わっておりませんが、5年の間に、企画が立ち上がっては消えて、立ち上がっては消えてという事が何度も起きる中、今回助成金が許可されれば、企画も動き出すかと思い、(※1)AFF2という文化庁が事業展開する「コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業」にシナリオを提出しました。

文化庁から助成金を許され、急に企画が動き始めました。

その時に、主演の小夜子役の新藤まなみさんと洋平役の吉村界人さんが、作品に出演して頂けることになりました。

脚本を井土紀州さんに、一から脚本を書き直してもらい、今回の作品が作られました。

—–それぞれ、撮影期間はバラバラでしたか?

いまおか監督:映画『遠くへ,もっと遠くへ』は、その年の10月頃に撮影をしました。

都内ロケが4日、北海道ロケが4日、トータルで8日間ほど撮影期間がありました。

映画『あいたくて あいたくて あいたくて』は、12月のクリスマスシーズンに4日ほど要して、撮影を行いました。

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—–監督する上で、どこかに、何かに気を付けて演出されたことは、ございますか?

いまおか監督:映画『あいたくて あいたくて あいたくて』では、最初から丸純子さんという女優の方の主演が決まっておりましたので、丸さんとは2、3本一緒に仕事もしておりました。

主演を演じて頂けるのは初めてのことでした。

とにかく、主演の丸さんを可愛く見えるような事をしたいと、撮影期間中ずっと思っておりました。

「丸さんの代表作を作ってやるんだ。」という想いを込めて、製作に挑みました。

その点は、気を付けていた事と言えます。

映画『遠くへ,もっと遠くへ』では、まず北海道ロケを敢行しましたので、北海道らしい風景をカメラに収めようとしました。

北海道に行かなきゃ取れないモノをちゃんと、撮ろうとしました。

観光名所的な場所も含めて、なるべく風景は選んで撮るように気を付けておりました。

あとは、新藤さんも吉村さんも、初めて一緒に仕事をしましたので、二人が自由に、のびのびと芝居をできるようにと考えて、現場を作って行きました。

その二点は、撮影期間中には、心に留めて、撮影していました。

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—–この二作は、どちらも、性生活含め、男女の関係性を赤裸々に描写してりますが、この演出を通して何を表現されようとしましたか?

いまおか監督:映画『遠くへ,もっと遠くへ』では、どちらの人物も、パートナーを失っているか、失いつつある人を描いております。

映画『あいたくて あいたくて あいたくて』でも、普通に生きようと思っても、なかなか「普通」が上手くできない人々を描いており、小さい話ではありますが、この作品に登場する人物たちの悩みや喜びを、上手いこと捉えられたらいいな、と思っていました。

また、男女のセックスですね。

実は皆、あんまり言いませんが常日頃セックスの事を考えているんじゃないかなと、思っております。

そこに、やるやらないという事が、実生活と密着しているのに、切り離して考えるのも、変な話だと思いました。

ストーリーには、セックスが絡んでいるのが、自然な気がするんです。

そこで、嫉妬してみたり、寂しさを感じてみたり、そういう感情は必ず沸き起こると思います。

どの作品もそうだと思いますが、裸になってセックスしているのが単純に、エロティックだと言えば、そうでは無いと思います。

そういう中に、生活の色々が入っていると思います。

日常の生活を描くのと同じように、性生活の描写も入ってくれたらいいと、考えております。

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—–映画『遠くへ,もっと遠くへ』では、「ロードムービー」が物語の根幹を占めておられますが、「旅をする」という行為には、男女の関係性に何を生じさせようとしましたか?

いまおか監督:生きているから日常ですが、「旅に出る事」とは、ある種、日常から切り離される事で、いつもと違うモノと出会い、いつもと違う会話になるんです。

旅は、人の心を踊らせるんです。

住んでいる所から少しでも離れる事で、自由になっていく感じが、僕もそうですが、旅行をする事で得られる感情だと思います。

その時のフィーリングとドラマが、リンクして行けば、ロードムービーは面白いと思うんです。

個人的にも、好きなジャンルです。

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—–映画『あいたくて あいたくて あいたくて』では、男女の出会いや心の機微を、メールのやり取りで表現しておりますが、この作品におけるメールの役割、重要性はなんでしょうか?

いまおか監督:画面でメールの文字だけを映すのは、森田監督の映画『ハル』では普通にしていた事ですが、ちょっと退屈ではないかと思っていました。

最初メールの文字に対して当人の声をモノローグにして、ナレーションのように読んでいたんです。

実際録音して、映像の編集時に入れてみると、違和感を感じたんです。

メールは文字だけなので、人と人との距離を感じるんです。話せば喧嘩にならないのに、メールだとちょっとした喧嘩になってしまう時もあります。

メールでは、お互いの距離感があるので、そのことがドラマを生むっていうところが良い所かなと思います。

実際は、すぐ近くに住んでおり、すれ違ってたりするんですが。

そういう小さな奇跡が、メールのやり取りの中で見えてくればいいなと、思っていました。

あと、相手がどんな人なのか分からないので、逆に言いたいことや思っていることをちゃんと言えてしまう環境もあるのかなと思います。

実際、映画を作ってみて、分かることもたくさんあります。

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—–この2つの作品の類似点、もしくは相違点はございますか?

いまおか監督:似通っている点は、どちらも「毎日楽しくて、しょうがない」という人たちでは無いことです。

何かしら抱えていて、上手く行かないと、ずっと思い悩んでいる人たちです。

たぶん、観る人=普通に生きている人は皆、そういう感情を抱えているんじゃないかと思います。

作品自体は、派手ではない点が類似していると思います。ただ、何が違うかなと考えますと、映画『あいたくて あいたくて あいたくて』は40代ぐらいの落ち着いた男女の話ですが、映画『遠くへ,もっと遠くへ』はまだ30代ぐらいの物語なんです。

もう少し、エネルギッシュと言いますか、もうちょっと奔放な部分は、映画『あいたくて あいたくて あいたくて』とは色合いが違うと思います。

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—–映画『あいたくて あいたくて あいたくて』のインタビューにおいて、監督作品の魅力をいまおか監督自身が聞かれておられました。監督は「皆良い所もあれば、悪い所もある。両面を描かないと、生きている人の感じがしない。」と話されておられましたが、その両面を描くことで、登場人物や物語に対して厚みを持たせることはできますか?

いまおか監督:それが本当にリアルと言いますか、悪い人は悪い部分だけではない。

悪い人だけど、家族は大切にしているとか、凄い良い人だけど、どこか悪い部分も持っていたり。

人には、必ず両面あると思っております。

だけど、映画で描こうとすると、単純に描きがちなんですよね。

悪者は、凄い悪い。良い人は良い。そうすると、ストーリーは進むんだけど、どこか作られた話に思えてしまうんです。

そこはいつも、気に掛けており、良い人だけど悪い一面もありますよ。

悪い人には、良い一面もありますよ。

と、キャラクターを作る時に、考えているんです。

皆、役割だけでなく、血の通った人間として、物語の中にちゃんと、登場してもらいたい、といつも思っています。

—–人間を描いていらっしゃるんですね。

いまおか監督:そういう人の方が、愛おしいんですよね。

どこか好きになりたいじゃないですか。折角、映画を観たり、作っているのに、愛せないと寂しいじゃないですか。

意地悪だったりしても、そんな人もどこか憎めない性格があったり、そういう風にしたいと思っております。

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—–映画『遠くへ,もっと遠くへ』のプレスにおいて、監督は「何かと出遅れてしまったヤツらの情けなくて、切なく、愛しい恋愛をやりたかった」とお話されておられますが、大人の男女の出遅れた恋愛を通して、監督自身は何を伝えようとしましたか?

いまおか監督:僕自身が、何かと出遅れてしまうんです。

そういう人に気持ちが、加担してしまうんですよね。

それでも、何とか生きていかないといけないので、その辺をどうしたらいいのかと、映画の中で予行演習しているんです。

それによって、何か訴えたい事があるのか、ないのかと問われれば、別に訴えたいことはありませんが、人生に出遅れてしまった人って、いるんじゃないの、いていいんじゃないのと。

この世の中に、いてもいいと思っているんです。

だから、ダメなやつはダメ!と言うのではなく、ダメなやつも生きていて良いんじゃないのと、映画では言いたいなと思っております。

僕自身も、何かと出遅れしまう事が、昔からありました。

ブラックなバイトを辞められなくて、他の人は次々辞めていっているのに、自分だけ取り残されるとか、ずっと悔しい思いをしてきました。

—–監督自身の心情が、物語に反映されておられるんですね。最後に、映画『遠くへ,もっと遠くへ』と映画『あいたくて あいたくて あいたくて』のそれぞれの作品の魅力を教えて頂きますか?

いまおか監督:映画『遠くへ,もっと遠くへ』は、主演の新藤さんと吉村さんのお二方が、どんどん北海道へ行けば行くほど、遠くに行けば行くほど、彼らのお芝居が自由になっているのが、いいですね。

二人が、そのまま役と同じで、芝居がどんどん自由になってくるんです。

映画を作っていても、面白いところでした。

そういう良い部分も映っておりますので、二人の伸び伸びとした芝居を観てもらえたらと、思います。

映画『あいたくて あいたくて あいたくて』は、コミュニケーションが本当に下手な人ばかり出てくるんですけど、丸純子さんを本当に可愛く撮ろうと務めました。

また、それぞれの登場人物も不器用だけど、可愛く見えるように、色々工夫もしました。

その辺を観て頂けたらと、思います。

—–貴重なお話を、ありがとうございました。

©️2022 レジェンド・ピクチャーズ

映画『遠くへ,もっと遠くへ』は、9月2日(金)より京都みなみ会館にて、1週間限定上映中。9月3日(土)よりシアターセブンにて、1週間限定上映中。順次、元町映画館にて公開予定。映画『あいたくて あいたくて あいたくて』は、9月9日(金)より京都みなみ会館にて、1週間限定上映。9月10日(土)よりシアターセブンにて、1週間限定上映。順次、元町映画館にて公開予定。9月10日(土)シアターセブン、9月11日(日)京都みなみ会館にて監督舞台挨拶予定しております。

(※1)AFF2
ARTS for the future! 2
https://aff2.bunka.go.jp/(2022年9月3日)