映画『劇場版 永遠ノ矢トワノアイ』「人間とは…」宇梶剛士さんインタビュー

映画『劇場版 永遠ノ矢トワノアイ』「人間とは…」宇梶剛士さんインタビュー

2023年3月1日

映画『劇場版 永遠ノ矢トワノアイ』宇梶剛士さんインタビュー

©Tiroir du Kinéma

©オフィス33

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—–本作『劇場版 永遠ノ矢トワノアイ』が生まれた経緯を教えていただきますか?

宇梶さん:まず初めに、2019年に東京の高円寺で初演を迎えました。北海道からも観に来て下さり、多くの方に足を運んで頂きました。

「ぜひ、北海道でも上演して欲しい。」とお話をいただきまして、「北海道で上演してこそ、この作品に魂が入る」と思ったんです。

そのため2年後の2021年の上演を目指して計画していましたが、折しもコロナが蔓延してしまい、予定していた北海道の7箇所の公演の中止が、次々に決定、結果3箇所の公演になってしまいました。

中止を発表すると、北海道の皆様、アイヌの皆様から「舞台を観たかった」という残念がる声が多く届きまして、出演者や舞台関係皆さんへ北海道に作品を届けたい気持ちを話しました。

また一人でも多くの方に観てほしいと思いましたので、上演が叶った釧路の舞台公演を収録し、映画という形で再出発を図ってみました。

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—–タイトル『永遠ノ矢トワノアイ』には、どんな意味があり、宇梶さんのどんな想いが込められておられますか?

宇梶さん:今まさに、ロシアがウクライナを侵略していますが、武力によって人を制圧しても、何も生まれないどころか、命だけでなく、生きている人含め、多くの心の温かいもの、柔らかいものが奪われていく現実がありますよね。

アイヌは言葉を使いませんので、口から吐いた物に魂が宿ると言われるように、彼らの言葉が持つ空虚に対して、対話を大切にするんです。

会話をする時は、常に向き合い、目と目を交わして対話する事で、世界は構築されていくべきだという思いもあります。

空に向かって射った矢は、希望の矢なんです。

—–物理的な会話だけでなく、精神的な心と心の対話も意味しますか?

宇梶さん:もちろん、口から出た事にカムイは宿っているからこそ、すべての会話が心の対話と受け取ってもらえたらと。

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—–アイヌをモチーフにした作品なので、劇中では衣装や言語、舞踊と言ったアイヌ文化を用いて、表現していますが、特にアイヌの民族音楽が非常に耳に残りました。この使用楽曲には、作品とはどういう関係性や意味合いがございますか?

宇梶さん:まず、アイヌの作品には、アイヌ音楽を使用することは前提として、最後のエンドロールに流れる(※1)安藤ウメ子さんかが歌う「イフンケ」とは、アイヌでは子守唄となっています。

子守唄とは、優しく人の赤子を抱き包む歌ですよね。

そういう楽曲を積極的に使用しています。

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—–あるインタビューで、この作品において、宇梶さんは題名にもなっている「トワ」をテーマにメッセージを伝えたいと仰っておられますが、アイヌの歴史を踏まえて、宇梶さんが感じ、考える「トワ」とは、何でしょうか?

宇梶さん:もちろん、「トワ」とはアイヌだけを指している訳ではありません。

ただ、アイヌという言葉そのものが、アイヌ語で「人間」という意味がありますので、人間同士の向き合いが「永遠」に続いて行かなければ、武力が世界を征服した時、この地球(ほし)に生きる人類は皆、消滅してしまいます。

戦争などにおける攻撃力は、人間がしている事ではありますが、人間の可能性を否定している事になりますから、武力には頼らず、人と人とが永遠に向き合って行かなければならないと、思っています。

というメッセージが、あります。

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—–宇梶さんにとって、アイヌとはどういう存在でしょうか?

宇梶さん:僕は色々な言葉に「…とは」を付けて、考えたり、思ったりして、見つめて来ました。

だから、アイヌという言葉が、「人間」という意味がある以上、人間「とは」と、思い抱き、その考えを巡らせる事そのものが、僕にとってのアイヌです。

僕にはアイヌに対する愛おしさやリスペクトもありますが、もっと大きく広い視点を持って、見つめて行かなければと、思っています。

—–最後に、本作の魅力を教えていただきますか?

宇梶さん:やはり、物語の中で主人公たちが、様々な向き合いや反目を通して、登場人物たちが人として、生きる理由を模索しながら、成長していく姿が、本作の魅力です。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

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映画『劇場版 永遠ノ矢トワノアイ』は現在、2月25日(土)より関西のシアターセブンにて、絶賛公開中。

(※1)安東ウメ子 (Umeko Ando) – イフンケ (Ihunke)https://youtu.be/tDwvp66ChaM(23年2月28日)