闇を切り裂く、閃光のギターヒーローの生前の生き姿に迫った音楽ドキュメンタリー映画『ランディ・ローズ』
ロックはまだ、躍動しながら生きている。映画『ランディ・ローズ』は、1982年3月19日に不慮の飛行機事故により、25歳という若さでこの世を去った若き伝説のハード・ロッカー、ランディ・ローズの人生やロックな生き様に焦点を当てた音楽ドキュメンタリーだ。
彼が突如として急逝してから、今年2022年でちょうど40年が経ち、節目の年でもある。
本作は、そんな年に日本公開が決まった記念すべき作品だ。
この映画を何よりも、あの日この世を突如として去ったランディ・ローズ本人に捧げたい。
彼が、生きた証や足跡は確かに、この作品の中にある。
知られざる伝説のロッカーの生き姿に焦点を当てた本作は、まさに「ロック」していると言わざるを得ないほど、全編ロック愛が迸る。
作品の始まりは、圧巻のライブシーンから始まる。
唸るギターサウンド、ステージを縦横無尽に走り回るランディ本人、その姿を捉えたカメラの視点は今を持ってしてもまったく色褪せない。
彼のロッカーとしての熱は、現在の若きロック・ファンやプレーヤーにも伝わるはずだ。
彼の命、実に勿体なくも感じる。
もし生きていたら、御歳65歳となるランディ・ローズ。
もしギタリストとして現在も活動していたら、何枚のスタジオ・アルバムを世に放っていただろうか?
彼がギタリストとして所属していたバンド、クワイエット・ライオットの他にも、新しいバンドやグループを輩出していたに違いない。
でも、これは夢の話、理想論でしかない。
現実の世界では、残念ながらランディはもういない。
本作を通して、その事実だけが嫌という程、痛感させられる。
ランディ・ローズよ、永遠に。
お前が奏でた数々の音色は、今もこうして、引き継がれている。
ランディの肉体が亡くなった今、ロックの音そのものが、ランディの意志そのものであることを、胸に留めておきたい。
ただ、ロッカーとしてのランディ・ローズは、大きな活動ができぬまま、不慮の事故に巻き込まれている。
本当に、これからギタリストとして大きく羽ばたく時であったに違いない。
彼が、クワイエット・ライオットとして日本デビューを飾り、オジー・オズボーンのバックバンドのギター奏者として活動し始めた矢先の出来事。
ランディ・ローズは、音楽家として一体、どのような楽曲を残しているのだろうか?
デビューから二曲目のシングル曲『It’s Not So Funny(反逆のロックン・ロール)』(1977年)をここでは、紹介しておく。
『It’s Not So Funny』は、爽やかで疾走感があり、80年代らしいロック・ナンバーだ。
残念ながら、生前のランディ・ローズが在籍していたクワイエット・ライオットは、日本でのみのデビュー、全米デビューは果たしていなかった。
奇しくも、彼が急逝した翌年のアルバム『Metal Health(メタル・ヘルス〜ランディ・ローズに捧ぐ)』(1983年)で全米デビューを果たし、当時のハード・ロックバンドである『ドッケン』『AC/DC』『ガンズ・アンド・ローゼズ』『ジューダス・プリースト』等と並ぶほど、名実ともに急成長を遂げた80年代のハード・ロックを代表するビッグ・バンドだ。
クワイエット・ライオット自体は、ランディ・ローズの死後も解散することなく、幾度のメンバーチェンジを繰り返しながら、現在もバンドとして活躍している。
直近のスタジオ・アルバムは2019年にリリースされた『One Night in Milan(ワン・ナイト・イン・ミラン)』 がある。
亡きランディ・ローズの意志を継ぐかのように、彼らバンド仲間は今もこうして、ステージ上でプレイし続ける。
ランディと共に。
さて、少し話が反れるかもしれないが、ランディ・ローズのように若くして急逝したアーティストは、どれくらい居るのだろか?
とても気になる事柄ではないだろうか?
今回は、アメリカ人の話なので、出来るだけアメリカのアーティストに絞って調べてみた。
ここに(※1)参考となる興味深い記事を発見した。この記事内では、The Beatlesのジョンレノン、The Rolling Stonesのブライアン・ジョンソン、Queenのフレディマーキュリー、ジミ・ヘンドリックス、エルヴィス・プレスリー、ジャニス・ジョップリン他、15組のアーティストが紹介されており、この中にはランディ・ローズもしっかり含まれている。
映像化作品も、劇映画、ドキュメンタリー問わず、何組かされているので、是非鑑賞して欲しい。
また、映画化されていないアーティストの生涯を、今後映像化される事を強く望む。
知られざるミュージシャン達の苦悩や葛藤、成功をこの目で見ることは、非常に貴重な経験だ。
ここに紹介されていないアーティストとしては、オールディーズ世代のシンガー、リッチー・ヴァレンス、バディ・ホリー、ビッグ・ボッパーが、飛行機事故に巻き込まれて、17歳という若さで早世しており、一度に三人のアーティストが死んだ事故として、音楽ファンに衝撃を与えたと言われている。
彼らが急逝した日を人々は、「音楽が死んだ日」として、今も尚、尊敬の念を込めて、追悼している。
他にも、スリップノットのメンバーとして活躍したジョーイと呼ばれるドラマーも、クスリでトリップして亡くなっているはずだ。
ただ、暗いニュースばかりではない。
音楽界には、明るい話も存在しており、オーストラリアの女性シンガーソングライターのデルタ・グッドレムをご存知だろうか?
彼女は、若くして悪性リンパ腫のホジキンリンパ腫を患ったにも関わらず、闘病生活を克服し、歌手として再デビューを飾っている。
再デビューの際に、日本でのデビューも果たしている。
30代の彼女は今でも、現役としてステージに立ち、スタジオ・アルバムもリリースしている。
ほとんど日本での知名度は低いが、個人的に好きなデルタ・グッドレムの楽曲は、悪性リンパ腫克服後、日本でデビューを飾った一曲『Flawed』
人間同士や人の心の埋まらない溝について、力強く歌った名曲だ。
病気を患ったからこそ、力強く前を向いて生きようとする彼女の気概を感じる作品だ。
ピアノの旋律がとても印象的で、自分自身、この曲で幾度となく励まされた。
それは今でも、続いている。
こちらも、ここで紹介しておく。
また、ランディ・ローズとエディ・ヴァン・ヘイレンとのライバル関係は、非常に有名な話だが、ランディは彼について友好的に語ってもいる。
「ギターには個性がありますが、今のところ自分のスタイルはないと思います。私は、コンサートでソロギターを弾きます。エディ・ヴァン・ヘイレンと同じような曲をたくさん弾きます。エディは素晴らしいプレーヤーですが、私は彼と同じような事はできないと思っています。」と、ライバル関係でありながら、競争相手への尊敬の念を忘れずにいたランディ・ローズは、真のロッカーだ。彼らはライバルでありながら、共に80年代のロック・シーンに生きた戦友同士だったのだろう。
最後に、ランディ・ローズは今も、ロックと共に生きている。
彼の肉体は、不運にも1982年のあの日、滅んでしまったが、彼の奏でる音楽も、記憶も、思い出も、すべて人々の心の中に刻まれており、それが今、こうして映画へと昇華されている。
25年という短い生涯を過ごしたランディは、あの時代の一秒一秒を力強く生き抜いたに違いない。
彼が掻き鳴らすギターの音色は、私達に「生きろ!生きろ!」と伝え、鼓舞しているようだ。
そんな私達も、ランディ・ローズのように、今という時代を力強く生きて欲しい。
いつか、私達の肉体が滅んだとしても、今を一生懸命生きた分だけ、私達は必ず人々の心の中で生き続ける。
ランディが遺した楽曲達のように。
私達も、ランディ・ローズも、ロックもすべて、今を、今という時代を勇猛果敢に命脈を繋ぐ。
ロックは、永遠に霊魂不滅だ。
音楽ドキュメンタリー映画『ランディ・ローズ』は現在、関西では大阪府のシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋。京都府のアップリンク京都。兵庫県のシネ・リーブル神戸にて、絶賛公開中。また、全国の劇場にて順次公開予定。
(※1)早世してしまった天才ロックスター・ミュージシャン15人を厳選してみたhttps://liamrecord.blog/premature-death-musician-rockstar/(2022年11月12日)
(※2)Randy Rhoads Liked Eddie Van Halen Afterall: “I do a lot of the same licks as Eddie Van Halen. Eddie is a great player.” –https://fullinbloom.com/randy-rhoads-i-do-a-lot-of-the-same-licks-as-eddie-van-halen-eddie-is-a-great-player-old-school-interview/(2022年11月12日)