「題名ひとつで、各国の扉の開け方が違う」シネリーブル梅田にて映画『彼女のいない部屋』の舞台挨拶レポート

「題名ひとつで、各国の扉の開け方が違う」シネリーブル梅田にて映画『彼女のいない部屋』の舞台挨拶レポート

2022年9月23日
©Tiroir du Kinéma

9月20日(火)、大阪府にあるシネリーブル梅田にて、映画『彼女のいない部屋』のティーチ・インが、行われた。

この日は、監督のマチュー・アマルリックが、ご登壇された。

映画『彼女のいない部屋』のあらすじ

この作品の物語のほぼ全てが、明言されていない。

ただ一言「家出した女の物語、のようである」のみだ。

登壇されたマチュー・アマルリック監督に、数々の質問が投げかけられた(その中で一部、抜粋)。

—–独特なオシャレなセンスのインスピレーション。そして、作品すべてに芸術性を感じますが、日常生活において何にアンテナを張っていますか?

アマルリック監督:ある意味、映画を撮ることはミュージシャンにもなれなく、素晴らしい恋人にも、絵描きになれない。凄腕のお医者さんにもなれません。それでも、セカンド・チャンスとして映画を撮ることが、可能になるような所があります。色んなモノをスポンジのように吸収し、反響を受け止め、信じる気持ちを持って、映画を作って行く事だと思います。様々な情報を知識として吸収することは、映画を作る上でとても重要なことです。

—–作品を鑑賞し、人間の様々な感情を感じることができました。人間同士の感情が、作品の魅力と感じましたが、監督は原作のどこに惹かれて、製作に踏み切りましたか?

アマルリック監督:原作には、身振りについての記述があります。一度も上演されたことの無い戯曲を読んで、生者と死者のパラレルワールドを描いている作品だと気づきました。近い家族の存在が、戯曲から伝わってきました。日本では、死者でさえ大事にする文化があると思いますが、反面、フランスでは、死者を脇に追いやる価値観や習慣が、あります。戯曲では、死者は日本のように描いており、驚かされました。ぜひ、映画化したいと。映画にすれば、二つのジャンルを同時に試せると思いました。ひとつはメロドラマ。もうひとつは、亡霊についての映画。この二ジャンルを作品で表現できると信じました

—–日本語のタイトル『彼女のいない部屋』は、原題と大きく違いがありますが、それはどう感じていらっしゃいますか?

アマルリック監督:戯曲の題名は、『Je Reviens De Loin(遠くから私は戻って来る)』というタイトルでした。映画のタイトルは、『Serre Moi Fort(私を強く抱いて)』。これは、フランスの有名歌手(※1)エティエンヌ・ダホの楽曲から取った題名です。日本語の題名は、まったく違いますが、それぞれの国の文化が違うパーステクティブを持って、この作品にアプローチして、本作の異なる扉を開けてくれるのは、それはそれで、とても素晴らしい事だと思います。僕は、この日本語のタイトルが好きです。言葉の響きも好きです。配給会社が付けて頂いた題名に今、とても感謝しています。題名ひとつで、各国の扉の開け方が違うのは、それはそれで、いいと思っています。

最後まで真摯にひとつひとつの質問に答えてくれたマチュー・アマルリック監督を、終わり時間が近づくと、もう少し話しがしたい、と名残惜しそうに過ぎ行く時間にちいけつに。それでも、映画愛溢れる紳士な対応ぶりに、日本人の映画ファンは有意義な時間を過ごせた事だろう。

映画『彼女のいない部屋』は現在、関西では9月2日より大阪府のシネ・リーブル梅田、京都府の京都シネマ、兵庫県のシネ・リーブル神戸ほか、全国の劇場にて公開中。

(※1)DAHOFFICIALhttps://dahofficial.com/(2022年9月22日)