特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』「エネルギッシュな若さが光る、究極の学生映画の祭典」学生監督らにインタビュー

特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』「エネルギッシュな若さが光る、究極の学生映画の祭典」学生監督らにインタビュー

2021年12月16日

特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』 学生監督 インタビュー

左から 筒井さん 寺岡さん 三河内さん 上尾さん 三善さん (c)Tiroir du Kinéma2021.12.16

インタビュー・文・構成 スズキ トモヤ

12月18(土)より大阪・十三にある劇場シアター・セブンにて、開催される特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』の映画を製作した学生監督5人にインタビューを行った。

次世代の映像業界を担う若者たちのエネルギー溢れる作品群。

「自分をさらけ出す」というテーマに、それぞれ趣の異なる5作品が出揃った。

今回は、監督一人一人に製作について、自身について、テーマについて、お話をお伺いしました。

—–初めて作品を作ってみて、現在どんな気持ちや感情を抱いておりますか?

©VANTAN DESIGN    映画『妻のワクチン』より

三河内さん:今回、監督するのが、初めてでした。

同じ映画や映像を作りたいという人と力を合わせて一つの形にするのが、簡単なことではなかったのですが、すごく楽しかったです。

まだ公開されていませんが、人に見てもらえることが楽しみです。

編集は途中ですが、みんなが力を合わせてくれたので後悔させないような作品にできたらと意気込みがあります。

上尾さん:僕はもうすぐ学校を卒業して社会人になります。

学生のうちにできることは「何か」を考えながら制作をしていました。

今までいろんなアニメや映像を見て制作してきましたが、このような映画を作るのは初めてでした。

短い作品ではありますが、見た人に何かを感じてもらえたり、何か得るものを作品の中に込められたらなという思いで制作しました。

寺岡さん:僕は今までいろんなことを考えて来ました。

それを初めて監督という立場を通し、自分の気持ちを目に見える映像で表現する嬉しさが、一番大きかったです。

制作している中で、いろんな人に力を貸していただいて、出来上がりました。

嬉しいと同時に楽しいという二つの気持ちで制作しました。

筒井さん:僕はまだ、映像製作の経験も浅いです。

自分の行き着くところがミュージックビデオを作ることですが、ストーリーテラーがあるものを作りたいということで制作させてもらいました。

基本的に、撮影は全部一人でやって、正直楽しかったです。

一方で大変やったなというのも、正直大きかったです。

ただ、出演者の方を含め、関わってくれた人に「関われて良かったな」と思ってもらえらと思います。

お客さんも非現実的な出来事に共感してもらい、少しでもいい映画やったなと思ってもらえたらと思います。

三善さん:今回初めての作品で、機材も初めて触ったくらいでした。

でも、いろんなスタッフの方々に助けてもらいながら、制作していく中で、やっぱり私は監督になりたいと実感し、すごい楽しんで作ることができました。

—–作品の着想は、どこから生まれましたか?

 ©VANTAN DESIGN 映画『水の中のエトセトラ』より

三河内さん:テーマは人間を愛することです。

恋人だけでなく、家族や友達と接していく中、本当に人を大事にすることや愛することはなんなんだろうということを形にしたくて、この話ができました。

上尾さん:僕は制作に入る前にずっと就職活動をしていて内定もいただいておりました。

次のステップや次の世界が目に見えてさしかかってきた自分の状況を俯瞰で見た時に、この経験を題材にできないかと思い作品に落とし込みました。

寺岡さん:僕は一度、大学を卒業し就職していましたが、専門学校に入学し直しました。大学や職場での人間関係は、絶対に切り離せないものだと思うんですね。

でもその中で、ネットなどを見ていたら、性格がいい人だけが、人権があるような書かれ方をしている場面をよく見かけました。

それを思ったきっかけが、自分の好きなYoutuberが今まで賞賛されていたのに、ひとつ失敗を犯しただけで、こいつは前から性格悪そうやったみたいな、手のひら返すようなコメントが増えました。

性格が良い悪いの基準は、どこで決まるんやろうと感じました。

大学でも、性格の良い子はいましたが、結局みんな裏で何か思っていても表は良いように見せているんです。

性格は悪いのに世間から求められてるのは、性格が良い人というギャップに違和感を覚え始めました。

実際、大学の友達も僕に悪口を言ってくるのに、上手いことやって、性格が良いように見せていました。

でも実際、その演じていることが周りを見ている自分たちにも被害が起きるという、そういう人の性格で起きる理不尽さに違和感を感じました。

世の中の人々が測る指針がはっきりしているのに、そういう曖昧な世界で自分たちが生きているというところに着想を得て、作品に落とし込みました。

筒井さん:複数あって、主人公に関しては自分自身をモチーフにしています。

分身を使おうと思ったのは、永井聡監督の世界観に傾倒していて、オマージュではないですが、そこから着想を得ました。

欲深いというところは、ミュージックビデオからです。

歌詞を読むのが好きなので、そういったところから自分のインスピレーションを膨らませて作っていったという感じです。

三善さん:私はニュースで、親の遺体と一年間暮らしているというのを見た時に、じゃあそれが彼氏とか彼女とか恋愛対象だったらどうなんだろうと、そういうので着想を得ました。

—–大変だったとこや困ったこと、逆に良かったこととか何かあったらお聞かせ頂けますか?

©VANTAN DESIGN 映画『ユミは性格がわるい』より

三河内さん:学生が作る映画ということで予算が限られていました。

派手なこともできない、でも見ている人を飽きさせたくない。

限られた予算で脚本を作ることが、大変だと痛感しました。

喧嘩のシーンもすごく広いところで、武器を振り回してみたいという構想がありました。

お金があったらできるんでしょうけど、限られた場所で迫力もあって面白く感じられる脚本を書く大変さを感じました。

上尾さん:撮影はほぼワンマンで撮影したのが多く、録音なども機材の関係でうまくいきませんでしたので、モノローグにする工夫もありました。

制約はありましたが、制限があるからこそ、短い時間の中に僕の思いが、より色濃く作品に反映されて良い面もあるのかなと感じます。

寺岡さん:大変だったことは、予算という縛りがある中で、最大限の表現をするにはどうしたら良いのかということでした。

あとは、カメラも担当していましたが、カメラで人の気持ちを言葉に出さずに、見ている人に伝えるにはどうしたら良いのだろうというのが自分の中にありましま。

自分が考えている意味づけと見ている人が受けとる意味が、現実は自分が二人いるわけではないですが、客観的な「目」を持つというのが一番大変でした。

筒井さん:まずはカメラですが、基本的には三脚を使って撮影するのが大変でした。

虫が出てくるシーンも、位置撮りを考えないといけませんでした。

編集入れて撮り直しを繰り返した点もまた、大変でした。

また場所もコロコロ変わっているので、ブッキングも大変でした。

三善さん:私は機材を触ることがほとんどなかったので、その点では指示されたことがなかったのですごい苦労しました。

あと、トラブルとか時間内に終わらせたりと、時間配分がすごく難しかったです。

—–作品を制作する前と後で心の変化は、何かございましたか?

©VANTAN DESIGN         映画『欲亡』より

三河内さん:人を愛することは、どういうことなのかなと考えてほしいと思います。

私自身も作りながら、人を大事にすることとは「何か」と考えながら、脚本を書いて編集することができました。

答えは出なかったとしても、向き合えたこと自体が価値があったのではないかなと思います。

上尾さん:やりきったという満足感がありました。

いざ、編集したりして、ここが「惜しかったな」とか「悔しかったな」という部分もたくさん見受けられましま。

そういった部分がまた、「次のステップに行きたいな」という気持ちをより強くしました。

クリエイターとしてまだまだ作品を作りたいという気持ちを確認できたことが、良かったと思います。

寺岡さん:僕は作る前は、自分の経験したことを形にしたいというのがあって、そこで見る側のことも考えていました。

ただ、自分だけが理解できれば良いという気持ちで作っていたんですが、それを作り上げていく中、いろんな方に見ていただいた時に、共感できる部分があると言ってもらえました。

もしかしたら、こう考えているのは自分以外にもいるんだなと、ちょっとした「繋がり」も感じることができました。

逆に、その自分の作品をまだ見てない人に届いて、自分と同じように抱え込んでいるという「気持ち」を持っている人に届いたらと願っています。

それを見た人にちょっとでも気持ちが楽になって欲しいというか、自分だけではないと思うようになってもらえればいいなと思うようにもなりました。

筒井さん:テーマが「自分」なので、作品を製作する中、起こって行く出来事や最終的な結末が、改めて自分を見つめ直す「きっかけ」になりました。

場所もお借りしましたので、オールアップした後にお借りした方に連絡をした時に、「出来上がったら是非見たい」とお声をかけていただきました。

すごく大変だったんですが、人脈も含め、コミュニケーションが広がったという意味でも、取り組んでよかったなと思います。

大変だったことよりも取り組んでよかったと思えることが、大きいです。

三善さん:初めての作品だったので、反省する点が多くて、次に活かしたいなというのはすごくあります。

—–最後に、今回のテーマ「ヌーディストーション」とは、裸と歪みという造語じゃないですか?意味も「内面をさらけ出す」や「歪んだ姿をさらけ出す」という、みなさんが考えられたテーマだと思います。「ヌーディストーション」について、ご自身で感じることとか思うことは「何か」ございますか?

©VANTAN DESIGN    映画『死体と生きる』より

三河内さん:「歪んだ姿をそのままさらけ出す」というプロジェクトに携わって、今までは恋愛描写を避けてきたのですが、自分の思っている偏見をぶち込んでさらけ出せたかなと思います。

上尾さん:映像作品が映画になると特に、さらけ出すとか歪んだ部分というのを表現することが、より求められるのかなと思います。

映画づくりの根本というのを意識しながら、制作できたかなと感じております。

自分の想いを伝えるだけではなくて、お客さんに見てもらって始めて成立すると。

そういう部分を意識して制作しました。

寺岡さん:テーマと一緒で、今回僕は一番人に言えなかった気持ちをを映像を作る機会と一緒に得ることができました。

自分の奥底にある本当の気持ちを映像にして表現することができました。

「ありのまま」が今、世の中にも求められていると思います。

コロナで人と人とが対面する機会が減ったという事実が、すごく今の状況で求められているテーマなのかなと思います。

筒井さん:テーマが「自分」なので、自身の実体験を通して、プラスアルファをシーンに組み込んでおります。

人間というのは、欲深い部分があったり、歪んだ部分があると思っております。

自分からさらけ出して、見ている人にも、そういう部分があるなと思ってもらえたらと思います。

三善さん:私は、今回の作品で恋愛においての執着や依存を「歪んだ部分をさらけ出す」というテーマから、映像にして表現したいと思い今回の作品を作りました。

©VANTAN DESIGN

特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』 は、12月18日(土)より十三のシアター・セブンにて、1週間限定公開。