映画『Love Life』「誰もが本質的に持っている「孤独」こそが普遍的な事」深田晃司監督インタビュー

映画『Love Life』「誰もが本質的に持っている「孤独」こそが普遍的な事」深田晃司監督インタビュー

2022年9月13日

「愛」と「人生」を真正面からとらえ本質を鋭く抉る映画『Love Life』深田晃司監督インタビュー

©2022映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS

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COMME DES CINEMAS

—–本作『Love Life』の制作経緯を教えて頂きますか?

深田監督:きっかけは、20歳の頃に矢野顕子さんの楽曲「LOVE LIFE」を初めて聴いて、好きになったからです。

好きになって、繰り返して聞いているうちに、最初は男女の離別の話であったり、男女の恋愛の距離感の話だと思って聴いていましたが、もっと色んな解釈ができる深い楽曲だと気が付きました。

その考えに至ってから、様々な妄想が広がって行きました。

正確ではありませんが、22、3歳の頃に最初のシナプスを書いて、人に見てもらっていました。

ただ、その時には、今のお話の半分しか出来上がっておらず、とにかく夫婦に悲しい出来事が起きて、三角関係が生まれるという流れを設定しました。

その物語を温めて、2015年頃に亀田プロデューサーから「一緒に作品を作りませんか?」と、声をかけて頂き、「実は、こういう作品があります。」と、企画を渡した経緯があります。

亀田プロデューサーも矢野顕子さんが好きであったため、そこから本作の脚本開発が始まりました。

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—–映画には「愛」と「人生」を単体で描いている作品が、数多く存在していると仰っておられますね。この二つの要素を同時に描いている作品がないとも仰っられておられますが、この二つの要素に着眼点が至ったのでしょうか?また、ストレートなタイトルに込めた想いは、お持ちでしょうか?

深田監督:多分、「愛」と「人生」の二つの要素、というのは宣伝部の方の解釈でして、その考え自体は否定はしませんが、私は特別に意識していません。

ただ、なぜタイトルに「LOVE LIFE」と付けたのか、よく聞かれますが、私にとって「LOVE LIFE」とは、すなわち矢野顕子さんの楽曲『LOVE LIFE』とイコールで。

一言で言えば、この歌が大好きなんです。

自分の中で「Love」と「Life」を分けている訳ではなく、『LOVE LIFE』という歌として、また固有名詞として認識しております。

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—–本作の脚本を書くにあたり、どこを重点的に大事にした、または気を付けていた事はございますか?

深田監督:まず、この作品を作る上でのモチベーションについて、脚本がどんなに変わって行っても、一番変わらなかったのが、この映画を作る目的が矢野顕子さんの「LOVE LIFE」という楽曲を最高の形で、最高のタイミングで映画館に響かせる事にあったということです。

そのシーンにおいて、どれだけ豊かに、「LOVE LIFE」の歌を響かせるかが、この点において、脚本でも演出でも、最も大事に、気を付けていたところです。

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—–本作において、監督として演出面で気をつけていたことは、ございますか?

深田監督:もちろん、俳優さんの演技や演出は、いつも気をつけている事でもあります。

今回だから特別ということありませんが、ただ一点考えるならば、距離をどう描くのか、気を付けてました。

この2時間という上映時間の世界の中で、距離の変化を描くのは容易ではありませんでした。

本作の場合は、「離れていても、愛することができる」という歌詞にもある通り、この人間たちの距離をどう描くのかが、とても重要な事でもありました。

カメラを通したとき、距離感はなかなか伝わりません。

なので、例えば、舞台設定を集合住宅にし、団地のA棟とB棟、その向かいにある広場、この3箇所で物語が進んで行く。

また、登場人物のパクさんも、段々と遠くから近付いて来る事を、具体的な場所を設定しながらどう描いて行くのかが、すごく意識した事でもあります。

演出についても、とても注意した点です。

なるべく、A棟やB棟などの移動は長回しを行い、ある種ワンカットで見せていく手法を選んだのも、空間を見せていくために大事だと思っておりました。

—–歌手、矢野顕子さんの楽曲「LOVE LIFE」が、この作品のモチーフとなっておりますが、この曲のどこに惹かれて、本作の製作が始まりましたか?

深田監督:最初、この楽曲を聴いた時は、男女の恋愛の距離感だと思っていました。

いわゆる、ラブ・ソングだと思ってましたが、段々と男女の恋愛だけに収まる歌ではないと、気が付き始めました。

様々な解釈ができますし、その中で、例えば大切な人を亡くしてしまい、遺された人が歌っているかも知れない可能性もあります。

そう言った事を考えて行くうちに、物語が生まれて行きました。

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—–本作では、手話もまた作品全体における持ち味だと思いますが、物語に手話を取り入れようとしたきっかけは、なんでしょうか?また、取り入れて良かった点や大変だった事はございますか?

深田監督:20歳の頃に短いシノプスを書いた時は、「ろう者」の設定では、ありませんでした。

変わったのは、2018年に東京都内で開催された(※1)東京国際ろう映画祭がきっかけです。

牧原依里さんというディレクターの方が運営する映画祭で、ろうに関する映画やマイノリティについての映画を中心にセレクトしている映画界です。

その映画祭から映像のワークショップの依頼を受けまして、当日会場に行ってみたら、参加者の方のほとんどがろう者の方でした。

恥ずかしながら、そこで自分も初めてろう者の方と面と向かって接する機会を頂きまして、且つ手話について知ったんです。

つまり、手話が例えば足を骨折した時の補助器具のようなものではなく、日本語や英語、フランス語と同じようなひとつの独立した豊かな言語であるということです。

しかも、空間を使った非常に映像的な言語であると、知ることができました。

ちょうど、映画『LOVE LIFE』のメインの三角関係に緊張感を持たせられないかと考え、登場人物の二人に共通の言語を持たせるようと考えていたときでした。

その時に、手話を取り入れてみるのはどうだろうと、考えました。

もうひとつ、ワークショップでろう者の方と知り合う中、自分自身が今までずっとろう者の方たちと同じ世界に住んでいながら、これまで作ってきた複数の長編映画に、一人としてろう者の方が出てこない事の方が、不自然なのではないか、と思うようにもなりました。

それで自然と、映画『LOVE LIFE』にはろう者に出演してもらおう、ろう者の役を作ろうという考えに至りました。

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—–あるインタビューで、監督は「ろう者の方は話をする時、相手の目を見て話をするが、その反面、聴者の方は相手に慣れてしまえば、相手の顔を見ずに話をする事に気が付いた。本作では相手の目を見て話すことが、ひとつの要素になっている。」と、お話されておられますが、この要素を取り入れることで、作品における変化は、ございましたか?

深田監督:それは、非常にありました。

元々、ろう者という設定にした時は、そこまで考えが至っていせんでした。

二つの言語を映画の中に入れることを目的に、ろう者の方の役を作りましたが、段々とろう者が目を見て話すこと、聴者のコミュニケーションとは違いがあることを知ったことで、一つ一つの場面で変化が生まれましたし、演出面での変化もありました。

後半のある重要な場面で、「こっちを見て」というセリフがありますが、撮影に入る直前の、最後の最後に増やした言葉でした。

そういった面で、一つ一つ変わって行きました。

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—–プレスでは、「優先順位は「個」であり、「個」を描く事を意識しています。」と仰っておられますが、この言葉の真意はございますか?また、「個」を描く事で何を表現できますでしょうか?

深田監督:お答えするのは難しいですが、「個」を描く事そのものが、表現なんです。

それを通して何を感じるのかは、無責任な言い方に聞こえるかも知れませんが、人それぞれだと思っています。

ただ、結局、自分にとって、揺るぎない物を、信じられる物を描こうとする時、それは家族ではないんです。

やはり、自分にとっては、人間は一人であることの方が重要で深刻です。

つまり孤独の問題です。監督によって世界観が違うので、何が正解かは分かりませんが、ただフィクションで家族が描かれた時に、家族の絆や家族が良きものという前提の作品を観ていると、世界観が違うなと、感じる時があります。

自分は、皆それぞれ孤独である反面、孤独であると思いながら生き続けるのは皆辛いことなので、家族や仕事、趣味、信仰などを持つことで孤独であることを忘れながら生きていると思っています。

一人だな、孤独だなという思いを忘れて、生き抜き、死ぬことができれば、それに越したことはありません。

それでも、ふとしたタイミングで、「ああ自分は一人なんだな」と思い出してしまうこともありますよね。

それは失恋した時かもしれないし、会社を解雇された瞬間かもしれません。

あるいは、何もなくても、家族と一緒にいて、夫婦と一緒にいて、自分は一人だと感じる時もあるのかもしれないです。

どちらかと言えば、そういった孤独について、とても関心があります。

結局、どんなに物や人に囲まれていたとしても、誰もが本質的に持っている「孤独」こそが普遍的な事だと思います。

だからこそそれをメインモチーフに据えたいと、自然とそこに辿り着いて行きます。

—–最後に、本作『LOVE LIFE』の魅力を教えて頂きますか?

深田監督:まず、ひとつは俳優さんだと思います。

本当に木村文乃さん、永山絢斗さん、砂田アトムさん、神野三鈴さんや田口トモロヲさん、山崎紘菜さん含め、皆さん素晴らしい役者さんでした。

この作品は、隅から隅まで、ほとんどのキャストさんを木村さんと永山さん以外、オーディションで選んでおります。

ここまで大々的にオーディションで選ぶことは、自分自身も、キャスティング担当者も、ほぼ経験がないことでした。

だからこそ、出演者さんたちのアンサンブルの完成度の高さが得られたと思います。

俳優さんたちの演技を楽しんで頂きたいのと、如何に自分が矢野顕子さんの楽曲「LOVE LIFE」が好きなのかを、感じ取って頂ければ幸いです。

—–貴重なお話を、ありがとうございました。

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映画『Love Life』は現在、関西では2022年9月9日より大阪府の大阪ステーションシティシネマTOHOシネマズ なんば、京都府の京都シネマ、兵庫県のTOHOシネマズ 西宮シネ・リーブル神戸、和歌山県のジストシネマ和歌山、奈良県のTOHOシネマズ 橿原にて絶賛公開中。また、全国の劇場にて上映中。

(※1)東京国際ろう映画祭https://tidff.tokyo/(2022年9月7日)