ドキュメンタリー映画『カンフースタントマン 龍虎武師』生きる勇気を与えられて

ドキュメンタリー映画『カンフースタントマン 龍虎武師』生きる勇気を与えられて

力に力を重ね、勇気に勇気を重ねるドキュメンタリー映画『カンフースタントマン 龍虎武師』

©ACME Image (Beijing) Film Cultural Co., Ltd

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香港は今、苦境に立たされている。中国政府との摩擦の中、自国を守ろうと、奮闘する香港人の若者たちがいる。

近い将来、香港という国が地図上から消滅する可能性もある。

それが原因で、香港映画というひとつの確立されたジャンルが今後、人為的に淘汰される時代が訪れるかもしれない。

また、ベテランが本土に移住し、次世代の香港映画を担う若手を育てる人が手薄となる中、香港映画の今後のなり手不足が問題視されている。

それでも、香港の映画関係者たちは、映像製作への信念や情熱を捨てようとはしない。

何作品にも亘り、香港の「今」を追ってきたが、今回は香港映画の歴史を辿りながら、業界に携わる関係者達が今後、どう香港の映画産業と向き合っていくのかが、注視したい。

©ACME Image (Beijing) Film Cultural Co., Ltd

本作『カンフースタントマン 龍虎武師』が取り上げているエピソードは、香港映画の歴史の中では、全体の極々一部に過ぎない。

香港の映画産業における「カンフー」は、ブルース・リーが台頭してきた1970年代以降のクンフーブームからだ。

元々、香港映画は、剣劇映画を主体に映像作品を製作していた。

カンフー映画の起源は、この映画ジャンルにあると言われており、剣劇を主体とした香港映画史における作品は、1928年製作の映画『紅蓮寺炎上』と言われている。

1930年代以降は、「剣劇映画の黄金期」と呼ばれ、サイレントからトーキーに移り変わる業界内でも、数多くの剣劇映画が製作されている。

カンフー映画の第1弾は、1949年製作のクワン・タッヒン主演の映画『黄飛鴻傳』からだ。

この作品はシリーズ化され、クワン主演の作品は、2007年までに計48作品作られたと言われている。

時の流れと共に、剣劇映画から素手で敵を倒すスタイルのカンフー映画へと変遷して行ったのは、第二次世界大戦終戦以降からだ。

剣劇映画の人気が低迷しつつある中、1959年に香港のメディア王と呼ばれたランラン・ショウが立上げた会社『ショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟香港有限公司)』は、「ショウ・ブラザーズ黄金時代」と呼ばれ、現在でも続く香港映画の礎を築き、今なお親しまれている。

この会社と二分化する存在となったのが、1970年以降にブルース・リーやジャッキー・チェンらと共に頭角を現してくるようになる制作社会『ゴールデンハーベスト』の存在だ。

本作は、この映画会社の黄金期の裏話をドキュメンタリーとして製作したと言っても過言ではない。

ゴールデン・ハーベストが残した功績は、知る人ぞ知る香港映画における最重要エピソードだ。

70年代から90年代の香港映画の基礎を作り上げたのは、ゴールデン・ハーベスト社のアクション映画だろう。

また、この時代に活躍した関係者に取材を行った本作『カンフースタントマン 龍虎武師』のウェイ・ジュンツー監督は、香港映画の未来について聞かれ、こう答えている。

(※1)Wei Junzi: “In the mainland” has become a reality. Because Hong Kong’s action directors have already gone north to the mainland, and at their age, most of them are now doing action directions, and the team they carry is composed of mainlanders.You have already seen the hong Kong film piece, the older generation of “dragon and tiger martial artists” are so old, there is no way to do stunts, Hong Kong’s film talent has been broken. Like Zhang Yimou’s “Shadow” and Chen Kaige’s “Taoist Descending the Mountain”, the action director Gu Xuanzhao said very clearly, he said, “If I start work, as soon as I see that these martial arts are all in their 40s, I will have to learn from my master Eight Masters hitting the wall, and I will definitely look for young people.”

魏君子:「本土」が現実となった今、香港のアクションディレクターはすでに中国に行っており、その年齢でほとんどがアクション監督を行っています。彼らが結成しているチームは、中国の関係者で構成されています。「龍と虎の武道家」の世代はとても古く、スタントをする方法がなく、香港の映画の才能は壊れています。 チャン・イーモウの「Shadow」やチェン・カイコーの「Taoist Descending the Mountain」のアクション・ディレクターの顧玄昭は「次の若い世代を必ず探す必要がある。」と、はっきりと言っています。」と、若手の人材育成するプロジェクトが如何に急務であるのかが、理解できるだろう。

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最後に、香港は映画業界だけでなく、国自体もまた、国際的側面から極めて厳しい状況にある。

今最も、香港映画並びに香港アクションの行く末が、危ぶまれている。

ベテランの減少、後継者不足含め、香港の映画業界は、若手たちのなり手不足に悩まされている。

それは、どこの国でも、どこの業界でも、同じことだろう。

日本の映画業界もまた、若手の人材育成に対して、もう少し前屈みになってもいいだろう。

業界内を見回しても、ベテランと若手の分母の比率が常に、逆さまな点は今後、改善する余地がある。

ただ、日本のアクション業界の未来は非常に明るい。

先日、近年アクション監督として名を馳せている園村健二さんにインタビューを行ったが、彼はアクションについて、「ただ、組手や技を組み合わして、アクションシーンを構築するのではなく、戦う人物の背景、その人の人生や感情を、アクション場面に盛り込んでいる。」と話す。

ただ戦うだけの時代は、終わりを告げたのだ。

日本も、香港も、今後のアクション映画の未来が、少しばかりでも楽しみだ。

ちょうど今、香港は若手の人材育成のために、重い腰を上げたところ。

香港アクションの存続を賭けた戦いが今、始まったタイミングだ。

この国の映画業界が抱える問題や国際的問題含め、これから先、香港映画の関係者には苦難の時代が続くかもしれない。

それでも、彼らが持つアクション・パワーで未来の「香港映画」を守り抜いて欲しいと願う。

CGもワイヤアクションも使わず、生身の体で勝負する力強い姿を、これからも私たち日本人に見せて欲しい。

今でも、アクション・スターの姿を通して、生きる勇気を与えられる多くの映画ファンがいることを、忘れないでいて欲しいと願わずに居られない。

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ドキュメンタリー映画『カンフースタントマン 龍虎武師』は現在、関西では1月6日より大阪府のシネ・リーブル梅田イオンシネマ シアタス心斎橋イオンシネマ茨木。京都府のアップリンク京都。兵庫県のシネ・リーブル神戸。奈良県のユナイテッド・シネマ橿原。和歌山県のイオンシネマ和歌山にて、絶賛上映中。また、全国の劇場にて、順次公開予定。

(※1)”Dragon and Tiger Martial Artist” director Wei Junzi: The future of Hong Kong action movies lies in the mainlandhttps://www.laitimes.com/en/article/7yf1_7zje.html(2023年1月14日)