映画『赤い糸 輪廻のひみつ』輪廻転生という概念があるなら

映画『赤い糸 輪廻のひみつ』輪廻転生という概念があるなら

1万年経っても、変わらないものがある映画『赤い糸 輪廻のひみつ』

©2023 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

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皆さんは、輪廻転生を信じますか?信じませんか?もし生まれ変われるなら、何に生まれ変わりたいですか?もし邂逅が許されるのであれば、あなたは誰に会いたいですか?人は、一生に一度しか人生を生きられない。人は、人生で大切な人に出会えるのは一度きり。一期一会、輪廻転生、千載一遇、一蓮托生という言葉が、めぐり逢いや生まれ変わりを意味するものであるなら、現実世界にも必ず同じ事は起きているはずだ。そんな夢見がちでファンタジーな世界がある訳ないと一部の人は否定するかもしれないが、信じる心は捨ててはいけない。巡り巡って、いつか、どこかの人生で愛する者と再会できる世界線があるかもしれない。そんな出会いを信じて、私達は今を大切に生きてもいいのではないか。次に生まれ変わったら人生で再会するために、今という人生を懸命に生きている。命運的相遇、美妙的邂逅という考えが、この世にあるとすれば、私達はきっとどこかで巡り会える運命だ。なぜ、生まれ変わりを信じる概念があるのか?それを実践した人物が、この世に存在する。今世を精一杯生きた人物に秋田の二宮尊徳と呼ばれた石川理紀之助がいる。老年にもかかわらず午前2時に起床し、勉学を1日も怠らず、世のために力を尽くす勤勉さは、来世に善人として生まれたいという希望が原動力になっている。また、京セラ・第二電電の創業者で経営破綻した日本航空を奇跡の再生に導いた稲盛和夫氏は、心・魂をより美しくする作業が現世を生きる目的だと思っている、と述べているが、それは、来世に持っていけるのが心・魂だけだから、という人間観に基づく。(※1)来世の存在を強く信じる事は、今を生きる思想へと繋がる。次の世代へちゃんと転生したいのであれば、今を生きる私達は今を大切に生きなければならない。善徳を積む事。良い行いをする事。そして、自他共に人を大事にする心を養う事。これこそが、次の未来を生きるコツなのかもしれない。生きる事、死ぬ事の死生観は、生まれ変わりがあると信じれば、きっと今を輝かせるきっかけにもなる。輪廻転生と邂逅の先にあるのは、生きる事への審美的感覚だ。この美的感性を磨く事こそが、強く生きる意識へと繋がって行く。巡り逢わせが、運命の糸を手繰り寄せる男女の大事なツールであるとしたら、人と人との出逢いは奇跡そのものだ。私達の人生での出逢いが、偶然であろうと、必然であろうと、生きているこの世で出逢える事は尊い事であると心に留めたい。

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映画『赤い糸 輪廻のひみつ』は、台湾の伝承でもある縁結びの神様「月老(ユエラオ)」をモチーフにした青春ファンタジー・ラブロマンスだ。縁結びの神様「月老(ユエラオ)」とは、台湾人にとって、一体どんな対象として言い伝えられているのか?正式名は、「月下老人」と呼ばれ、中国や台湾では「結婚する運命にある男と女を結ぶ、赤い糸を持つ」と言われるアジア最強の縁結びの神様として有名。霞海城隍廟(シャーハイチェンホァンミャオ)は、漢方薬や乾物、花茶やハーブなどの問屋が集まる台北市内迪化街の中心部にある道教の廟。ここに、祀られているのが「月下老人」。 一年間、200組ものカップルを誕生させ、縁起のいい神様と言われている。良縁を求めて、台湾の若者達や日本人の観光客が参拝に訪れる。「運命の赤い糸」とは、いつか結ばれる男女の足首に見えない赤い糸(赤い縄)が、結ばれている。この赤い糸を司るのが月下老人(「月老(ユエラオ)」と言われる老人。この神様が、結婚や縁結びに強い神と言われ、アジア最強と紹介されている。北宋時代に成立した類書の一つである『太平広記』に記載された月下老人に関係した奇談『定婚店』(※2)の物語の中で、仲人や結婚の仲立ちをする人物を指す言葉を「月下老人」と言い出したと言われる。日本では、「足首の赤い縄」から、「手の小指の赤い糸」へと変化した。まず日本が言う「運命の赤い糸」の起源は、日本の古事記の中で赤い糸は赤土がついた糸だったと言われている。 赤土には、「邪を防ぎ相手を特定する力」があると言われ、それが「運命の赤い糸」の由来だと言い伝えられている。また中国では、先にも挙げた北宋時代に作られた前漢以来の奇談集『太平広記』に記載された逸話『定婚店』にも「赤い糸」が登場する。更に、唐の時代の韋固(いこ)という人物が道中、宋城の南宿場町で不思議な老人と出会う。老人は月明かりの真下、寺の門前で大きな袋を置いき、冥界の書物である「鴛鴦譜」(※3)を読んでいた。老人は、現世の人々の婚姻を司り、冥界で婚姻が決まると赤い縄の入った袋を持って現世に舞い戻り、男女の足首に決して切れない縄を結んであげると言う。この縄が結ばれると、距離や境遇に関わらず必ず二人は結ばれる強い運命を共有する。この伝承から月老(ユエラオ)という月下老人が、誕生したと後世に伝わっている。この「赤い糸」は、アジア地域だけでなく、ヨーロッパやアメリカでも古くから伝えられている。本当に最も古い言い伝えられではあるが、今でも有効に「運命の赤い糸」があると、人々に信じさせるロマンを感じる伝承話だ。

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また、本作『赤い糸 輪廻のひみつ』のもう一つの主題は、輪廻転生だ。生まれ変わりの概念や価値観は、国や地域、時代によって、様々な価値観や考え方を齎している。嬰児供養に関する限った話題となるが、「台湾における嬰霊供養」という論説の中で、「龍湖宮で嬰霊供養を受ける場合、費用がかかる。最初は1,200台湾ドル(2003年3月で、約4,000円)である。その後、少なくとも3年間は同額の供養費が義務づけられている。また、年に2回の特別法要への参詣を義務としている。その時にもやはり献金をするのが普通のようだ。この3年間の供養について、亡くなった人が転生するのに4ヶ月から3年はかかります。もし、供養を続けなければ、両親や家族の者に恨みをもたらします。また、嬰霊が輪廻転生によって畜生(動物)になるかもしれません。それゆえ、嬰霊が成仏するため3年間は必要なのです」と説明してくれた。」(※4)とあるが、その中でも「しっかり供養しないと、嬰児は成仏できず、家族に対して恨み辛みを持ったまま、畜生(動物)へと転生する」と言われている。これが、ある側面から見た台湾における輪廻転生と死者への供養や弔いに対する価値観だ。では、台湾以外ではどう捉えているのか?アメリカに住むネイティブ・アメリカンの方々の死生観や死者の弔い方について、現地の日本人はこう話している。「ネイティブの人たちは、元々自然崇拝だから、生命のリズムと自然の循環の中で、冬至に向かっていくこの時期が、陰のエネルギーが最も強くなる時だと考えるわけです。それはケルトでもメキシコでも共通する感覚だと思います。以前の日本でもそうだったでしょう。そして冬至を迎えて、春に向けての新しい年が始まる。ホピでは、冬至で新年を迎えるそうです。どちらにしても、光と闇、生と死という、一種の輪廻転生的な死生観が感じられますよね。それに、ネイティブ・アメリカンの考え方では、死んだ人の魂(スピリット)は大地に返って、しばらくしたら大地の水分が蒸発するように、スピリットは空に昇って雲になる。その雲はカチーナ(精霊)なのだそうです。そして空の上から私たち、人間を見守り、恵みの雨をもたらしてくれる存在となる。」(※5)と、人の生まれ変わりに対する考え方は、少し日本と似てい部分もある。また、少し変わった視点で見た時、ブラジルでは国の人口の50%が輪廻転生を信じていると言われている。ブラジルでは、過去経験療法(DVT)と呼ばれる患者の過去を探る治療法も行われており、過去にこの治療を受けたある患者が、前世で火事で亡くなった事が判明した時、「火災は深い感情的な痕跡を残し、魂が生まれ変わった時、過去の記憶は無意識の中に記憶として残る。」(※6)という治療結果を生み出している。恐らく、国や文化、風土によって、輪廻転生への価値観には大きな違いがあると言ってもおかしくない。そこには、宗教的側面、歴史的側面なども考慮され、国や人によるより複雑な関係性が、生まれ変わりへの考え方に相違が生じていると考えられる。本作『赤い糸 輪廻のひみつ』を制作したギデンズ・コー監督は、あるインタビューにて本作の映画化について聞かれ、こう答えている。

Ko Director:“It started with Korean movie Along With The Gods, which was such a huge success. I was so overwhelmed when I watched it. To make a movie about life and death, about karma, made me so envious. So I thought of making a movie based on the novel I wrote nearly 20 years ago, also about life and death.”(※7)

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コー監督:「興行的に、成功を収めた韓国映画『神々とともに』から始まりました。その作品を観た時、私はとても圧倒されたんです。韓国の映画界が、生と死、カルマについての映画を作っていることに対して、非常に羨ましかったんです。そして私は、20年近く前に生と死をテーマにして私が書いた小説を基に映画を作ろうと考えました。」とコー監督は話す。人の生と死、輪廻転生、赤い糸と言った本作が持つ要素に関すて話すインタビュー記事は見つからなかったが、恐らく、コー監督自身は20年も前から自身の死生観について、何か考える事があったのだろうと伺える。

最後に、映画『赤い糸 輪廻のひみつ』は、台湾の伝承である縁結びの神様「月老(ユエラオ)」をモチーフに、男女の恋を結ぶ赤い糸や輪廻転生と言った要素をファンタジックに描いた青春ラブロマンスだ。まるで、監督の過去作『あの頃、君を追いかけた』『怪怪怪怪物!』を彷彿とさせる青春要素は健在のまま、よりファンタジーにも、恋愛要素にも特化している点は、本作の魅力だ。そして何より、人の生まれ変わりと途切れない人との深い縁は、来世へ跨る未来永劫の秀美さを持つ。本当に、この世界に輪廻転生という概念があるとしたら、あなたは誰に会いたいですか?

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映画『赤い糸 輪廻のひみつ』は現在、2月23日(祝・金)より京都府のアップリンク京都。宮城県のフォーラム仙台にて上映開始。また、2月24日(土)より愛知県のシネマスコーレ。3月22日(金)より長野県の長野相生座・ロキシー。4月より東京都の下北沢トリウッドにて上映予定。

(※1)「生まれ変わり」を共有知にhttps://ippjapan.org/archives/6577(2024年2月22日)

(※2)唐代伝奇5定婚店https://www.sun-inet.or.jp/~satoshin/koten/toudai/toudai5.htm(2024年2月22日)

(※3)鴛鴦譜小説 – 金萱https://bailushuyuan.org/novel/traditional/books/23658(2024年2月22日)

(※4)台湾における嬰霊供養https://drive.google.com/file/d/1DMHn-apPcSFUhLNbcaTDFEeMmnPFS9TT/view?usp=drivesdk(2024年2月22日)

(※5)日本人と似て非なるネイティブ・アメリカンの死生観https://www.bepal.net/archives/125287(2024年2月22日)

(※6)Pesquisa mostra que 50% acreditam em reencarnaçãohttps://www.folhadelondrina.com.br/cidades/pesquisa-mostra-que-50-acreditam-em-reencarnacao-37062.html(2024年2月23日)

(※7)Director Giddens Ko talks Bifan opening film ‘Till We Meet Again’https://www.screendaily.com/features/director-giddens-ko-talks-bifan-opening-film-till-we-meet-again/5161136.article(2024年2月23日)