「物語が、二重構造になっています」7月23日(日)、大阪府のシネ・リーブル梅田にて行われた映画『PLASTIC』の舞台挨拶レポート

「物語が、二重構造になっています」7月23日(日)、大阪府のシネ・リーブル梅田にて行われた映画『PLASTIC』の舞台挨拶レポート

2023年7月27日

©Tiroir du Kinéma

映画『PLASTIC』は、『VIDEOPHOBIA』や『大和(カリフォルニア)』を制作した宮崎大祐監督の最新作。2018年、名古屋。1970年代に人気を博して、この時代を席巻するも一瞬にして解散した伝説のミュージシャン「エクスネ・ケディ」の音楽を愛する少女イブキは、同バンドのファンでバンドマンとして東京進出を夢見るジュンと出会って、恋愛へと発展する。2人の出会いから、4年後に東京で開催されるエクスネ・ケディが再結成ライブを開催するまでの日々を描いた映画『PLASTIC』が7月21日(金)より公開中。7月23日(日)に大阪府のシネ・リーブル梅田にて舞台挨拶が行われた。

上映後に、宮崎大祐監督が登壇された。本作の制作に携わった名古屋学芸大学の話を聞かれ宮崎監督は「この大学は、美大です。今、この大学の中の映像学科で講師をさせて頂いておりまして、その学部の20周年記念というお話があり、それと絡めて企画を立ち上げ、映画を撮ろうという話になりました。」と、話された

また、どの作品も地方で撮影されている事を聞かれて「これまで撮って来た映画は、規模的に小さかったりしますが、作品として何が面白いものにするのか考えたら、街の表情や俳優のお芝居だと思っており、そういう意味でその時のその街をじっくり見せる事をやりたいと思っていました。東京を撮影するのは、他の街と比べると、さほど興味がありませんでした。東京を舞台にした作品は、作ったことがありません。スクランブル交差点は、絶対撮らないと思って制作をして来ましたが、ただここ数年、東京の雰囲気が変わったと印象を受けました。今回だけは、映像に残しておこうと勇気を出して、スクランブル交差点の真ん中で撮影を敢行しました。」と本作の撮影秘話から地方での制作の意義について、お話された。

さらに、監督の過去作と比べての本作の立ち位置について話が及ぶと、「僕は、青春映画に良くある壁ドンや胸きゅんに挑戦したかったんですが、企画の段階からかわいい映画を作って欲しいという話はなく、宮崎監督と言えば、ホラーやスリラーなど、映画『VIDEOPHOBIA』のイメージから怖い映画の印象と言われていました。ただ、自分的には映画『TOURISM』や本作のような、緩く楽しく、だけど緊張感があるのが、自分の生き方でもあります。そんな作品の方が、撮りやすいと思っています。前回『VIDEOPHOBIA』では、少し暗めな話でした。本作に関しては、自分的には鬱映画と認識していますが、宣伝としてはポジティブな打ち出しでした。」と、自身の撮影スタイルについて、話されました。

そして、本作の題材となっているロック・バンド「エクスネ・ケディ」について話が言及されると「このバンドは、存在しないんです。だから、非常に複雑ですが、フィクションの映画の中にフィクションのバンドが登場する設定です。普通は、実在するバンドに憧れる若者を姿を描く映画を作るのが常ですが、実在しないバンドに憧れるフィクションの世界の若者たちを描いています。物語自体が、二重構造にもなっているんです。誰もが、「エクスネ・ケディ」を実在するバンドと思ってくださり、皆さんよく困惑されます。このバンドについては、調べてくれる方が、特に中高年層に多く、問い合わせを頂く事もあります。」と、バンド「エクスネ・ケディ」の存在について話された。

最後に、宮崎監督は「映画『#ミトヤマネ』という題名の作品を制作しました。映画『VIDEOPHOBIA』の2作目(続編ではない)を彷彿とさせるサスペンス・スリラーです。次回作は、怖くて、不安になるような作品です。最初から最後まで、平静さを失う作風になっています。映画『VIDEOPHOBIA』を気に入って下さった方は、ぜひ最新作『#ミトヤマネ』もご覧ください。」と、8月の公開が予定されている最新作について話された。

映画『PLASTIC』は現在、関西では7月21日(金)より大阪府のシネ・リーブル梅田。京都府のアップリンク京都。兵庫県のシネ・リーブル神戸にて公開中。また、順次、全国の劇場にて公開予定。