第19回大阪アジアン映画祭 映画『烈火青春』 映画『葬儀屋』 映画『うぉっしゅ』 映画『リキシャ・ガール』 レビュー

第19回大阪アジアン映画祭 映画『烈火青春』 映画『葬儀屋』 映画『うぉっしゅ』 映画『リキシャ・ガール』 レビュー

2024年3月4日

今年もまた、第19回大阪アジアン映画祭が、大阪府で開催中。テーマは「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」。上映作品本数は63作品、上映作品の製作国 ・地域は24の国と地域が集結したアジア映画に特化した映画の祭典。3月1日(金)から3月10日(日)までの10日間、開催されている。本映画祭に出品された作品レビューと当日レポートを交えて、少しづつ紹介したい。

映画『烈火青春』今をどう思って生きて

©Mei Ah Entertainment Group Co., Ltd

一言レビュー:本作『烈火青春』は、80年代当時、日本にも別名『レスリー・チャン 嵐の青春』として、1989年に日本で開催された“香港電影祭”で過去に1度だけ上映されている。レスリー・チャンのファンだけでなく一般の映画ファンからも公開が熱望されていた幻の映画。80年代の香港に暮らす無起動な少年少女の姿を瑞々しく描いた青春ラブロマンス。あの時代を知っている年代であれば、誰もが懐かしい時代だろう。80年代香港の無謀で、破天荒で、向う見ずな若者達の姿を見ていると、日本の令和の時代に未来を馳せる事なく、今を生きるトー横キッズやグリ下キッズ(※1)の当てどもない生き方を思い起こさせる。彼らは一体、今をどう思って生きているのだろうか?

©Mei Ah Entertainment Group Co., Ltd

映画『葬儀屋』死生観に対する価値観

一言レビュー:本作『葬儀屋』は、タイ発ヒューマン・コメディ・ホラーだ。最愛の元カノを自殺で失った主人公の男が、親友の葬儀屋の力を借りて、立ち直ろうとする物語だが、人の生死に関するタイ人の価値観について、少しでも考えさせられる作品となっている。タイ人による死生観は、如何ばかりだろうか?タイ人の死生観は、日本人の感覚よりもより近くに生と死が存在すると言われている。だから、本作の主人公もまた、元カノの死に対して強い後悔と悲しみを持っていたと解釈すれば、私達はタイ人達の死生観に対する価値観に少しでも近付く事ができるのであろう。

映画『全世界どこでも電話』25年という人生の背景

©2023 DOT 2 DOT CREATION LIMITED

一言レビュー:25年前の約束を胸に、中年世代に差し掛かった当時の香港人男女3人の親友達が再会するまでのその1日を描いたヒューマン・コメディ。自宅に携帯電話を忘れてしまった一人の中年男性の行動を軸に、それぞれ3人の25年後の今を映し出す。携帯電話がないと生活できない今の時代を色鮮やかに映し出す一方で、学生時代に使用していた非常に古いレトロ携帯が時を超えて、再度輝き出す。携帯という物理的な物をツールとして描写されるのは、もう取り戻せない過去の思い出を友人同士の再会を通して、再度色付け初めて行く中盤の表現は、懐古主義と言われればそれまでだが、観る側の視点にも懐古的行動として、どこか懐かしく感じるだろう。作中では、一切描かれていないが、彼らの3人の人生には香港返還や香港民主化運動(※3)、またコロナ禍によりパンデミックの影響が、25年という時の速さや彼らの人生の背景に重くのしかかっているが、それを微塵も感じさせない大人のための青春映画として仕上がっている。

©2023 DOT 2 DOT CREATION LIMITED

映画『うぉっしゅ』人と人との関係性や触れ合い

一言レビュー:ソープ嬢が、認知症を患う祖母の介護をする事になってしまう映画『ウォッシュ』は、近年量産されている単なる介護映画ではなく、私達が日頃、何気なく捉えている「記憶」と「記録」を作品の重点に置きつつ、ポップな演出でコメディ色を全面に押し出した観易い作品となっている。ただ、私達が日常、対面しながらも何気なく過ぎる日々で忘れがちな「記憶」という存在について、再度考えるいいきっかけになるであろう。認知症を患うと記憶障害を併発してしまい、昔の思い出が消えてしまったり、整理できなくなってしまう。その過去の記憶を回想する方法(※4)が、この作品の中にヒントとして散りばめられている。人と人との関係性や触れ合いを通して、私達は何かを得るのだろう。

映画『リキシャ・ガール』児童労働の境遇について

本作『リキシャ・ガール』は、なかなか一般層に届かない珍しいバングラデシュ映画。日本の文化のひとつ、人力車をルーツに持つバングラデシュの都市部では庶民の足として親しまれている「リキシャ」を物語の主軸に置きつつ、絵描きで生計を立てようと生きるも、父親の病気でリキシャの仕事で家庭を支えなければならなくなった少女の数奇な運命をドラマ仕立てに描く。この作品は、全面的に「リキシャ・ペイティング」を描いている訳では無いが、リキシャを引く画家志望の少女が人生の苦境に立たされながらも、逞しくも力強く前に歩もうとする姿から彼女の将来が、プロの「リキシャ・ペイント」(※5)の画家になる筋書きが見えて来そうな波乱万丈な人生を描いた作品となっている。子ども達の労働は、日本では法律上禁止されているが、世界では2016年のデータで考えると、5から17歳による児童労働者数(※6)は1億5,200万人いると言われ、そのうち7,300万人は危険有害労働を行っているという報告がなされている。児童労働の背景を考えながら、本作の主人公の少女の境遇についてもまた、考えたいところだ。

第19回大阪アジアン映画祭は現在、3月1日(金)から3月10日(日)までの10日間、シネ・リーブル梅田T・ジョイ梅田ABCホール大阪中之島美術館の4か所にて開催中。

(※1)トー横キッズが歌舞伎町に居場所求める本当の訳少年少女たちのリアルに開沼博が迫る【前編】https://toyokeizai.net/articles/-/473614(2024年3月2日)

(※2)タイの人々がお墓をつくらない理由 遺骨を「解き放つ」とは? 高僧に聞いたhttps://globe.asahi.com/article/14846913(2024年3月2日)

(※3)香港返還25年 消えゆく自由 挫折した民主化https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckworld/20220728-OYT8T50082/#google_vignette(2024年3月2日)

(※4)認知症と昔の記憶の関係とは?記憶障害の進行や回想法を解説!https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/dementia/2464(2024年3月2日)

(※5)リキシャ・ペインティングhttps://asianart-gateway.jp/knowing/term/1814/(2024年3月2日)

(※6)児童労働の世界と日本の現状は?事例とともに紹介https://gooddo.jp/magazine/poverty/child_labor/16632/(2024年3月2日)