映画『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』愛と平和を願い続けて…

映画『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』愛と平和を願い続けて…

2024年2月27日

REBAL《反逆》のカリスマ。映画『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』

©2022 Stefan Paul All Rights Reserved

レゲエ界のレジェンドことボブ・マーリーのラストライブの姿を追った音楽ドキュメンタリー映画。レゲエという音楽ジャンルを産み出したのは、ボブ・マーリーをはじめ、ピーター・トッシュ、ジミー・クリフが最も知名度があり、彼らが世界中にレゲエという新しい音楽ジャンルを普及させた。私自身、音楽そのものや洋楽は非常に好意的に捉えているので、アメリカ、イギリスをはじめとして、世界各国の洋楽を聞いている。たとえば、西ヨーロッパ全域で歌い継がれているシュラーガーやフランスのフレンチポップ、シャンソン、ジャズ、クラシック、映画音楽。また、南米のポップス、東南アジアのポップス、南アジア、少し飛んで、アフリカンポップス。中国、台湾、韓国。フィンランド、スウェーデン、デンマークの北欧三国。他に、民族音楽もよく耳にする。もちろん、日本のJ-pop、演歌、民謡、アイドルと多岐にわたるが、ただ唯一、レゲエだけは、なぜか通って来なかった。2000年初期にダディ・ヤンキーが流行らせたレゲトンはよく耳にしていたが、その元祖となるレゲエだけは、聞いていなかったのは不思議でもある。レゲエの歴史(※1)は、1960年代にまで遡ることができる。62年、イギリスから独立を果たしたジャマイカであるが、この頃に音楽活動をしていたボブ・マーリー達が、アメリカのジャズやR&Bやカリブ音楽カリプソやメントに影響を受けて誕生させたのが、スカと呼ばれる音楽ジャンル。そして、ジャンルとして進化した結果、現在の原型となるレゲエミュージックが産まれている。また、ボブ・マーリー自身は、1910年にある活動家が行っていたラスタファリ運動に感銘を受け、彼自身がこの運動に賛同する。ボブ・マーリーが、このラスタファリ運動に傾倒した結果、彼のお陰で世界中でこのラスタファリ運動が注目を浴びている。1981年のボブ・マーリーの死後、ラスタファリ運動は下火となっていたが、彼を慕う有志が集まり1999年、ラスタファリ運動が再熱した。黒人と白人の間に産まれた彼は、幼少期の頃から差別に苦しめられていたボブ・マーリーは、強く世界平和を願っていた。1976年、ジャマイカの二大政党が衝突し、また自身も凶弾に倒れた後、彼は「ワン・ラヴ・ピース・コンサート」(※2)を開催し、音楽を通して世界の平和を訴えた。その彼の強い願いが、今の世の中にも受け継がれ、実践されている事を願うばかりでもある。

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さて、私達日本人はボブ・マーリーが出生した彼の故郷ジャマイカをどのくらい知っているだろうか?ジャマイカ(※3)は、中南米に位置するカリブ海に浮かぶ10,910 km²の面積(※4)を有するキューバ以南にある島国だ。日本に例えるなら、中部地方に位置する岐阜県(もしくは、東北地方に位置する秋田県とも)と同じ面積となると言われているから、案外小さな島であると言える。車と数日あれば、主要観光名所はグルっと回れるだろう。大海原のカリブ海に浮かぶ小さな小さな離島ジャマイカは、昔はイギリスの植民地であった。ジャマイカの公用語は、そのほとんどが英語だが、現地語のパトワ語も現在でも日常的に使用されている。パトワ語(※5)とは、いわゆるジャマイカ・クレオール言語と呼ばれ、英語とアフリカの言語をベースにしたものである。パトワ語が生まれた経緯は、アフリカの奴隷が話すアフリカの言語と植民地で権力を握り、長年ジャマイカを支配をして来たイギリス人が話す英語が混ぜ合わさり生まれたという一説があると言われている。ただ現状の学校教育の現場では、現地語のパトワ語の授業はなく、英語に力が注がれていると言われる。英語を話し、しっかり発音ができないと、就職時に厳しい現実が待っていると言う。英語が話せないジャマイカ人は、就職では不利だそうだ。だから、教育現場では英語を基本とした授業が中心となる。一方で、パトワ語こそがジャマイカのルーツを形成する大切な文化だと声を上げる者も少なくない。その為、文化保存に力を入れるべく、学校機関でもジャマイカ語(パトワ語)を教える必要があると主張するジャマイカ人もいる事を知っておこう。近年におけるジャマイカの歴史を辿ると、先にも述べたように、大英帝国(イギリス)の植民地であったとされる時代が、確かに存在した。ジャマイカが植民地にされたのは、1655年、イギリスに征服されて以降、1958年まで植民地化され続けた。ボブ・マーリーは、1945年2月6日に産まれているが、アーティストとしてデビューしたのは1965年にファーストアルバムを発表しており、彼はイギリスからジャマイカが返還された時代を生で見、体験している。このような時代背景があるからこそ、ボブ・マーリーは生涯、世界の、人々の平和を歌に乗せて、訴えて来たのではないだろうか?彼の平和への精神が、今の世の中にも届いている事を願うばかりだ。

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レゲエ音楽は、冒頭にも書いたが、ボブ・マーリーやピーター・トッシュ、ジミー・クリフらが、様々な音楽ジャンルを参考にし、作り上げた彼らだけの特別な音楽となった。そのレゲエが今では、全世界に伝わり、多くのレゲエミュージシャンが生まれている。日本では、ジャパニーズレゲエ(ジャパレゲ)(※7)と呼ばれ、ボブ・マーリーのジャマイカンレゲエを発祥に、70年代にも国内に届いたが、その隆盛は2000年代初期にブームが始まったと推測できる。三木道三、ケツメイシ、MINMIなどが、その代表格だろう。その後、EXPRESS、CHEHON、APOLLO、RYO the SKYWALKER、lecca、RAYら、多くのジャパニーズ・レゲエアーティストが誕生している。ボブ・マーリーがレゲエを誕生させて以降、世界中のあちらこちらで独自のレゲエミュージックが産まれている。本作『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』を鑑賞しながら、彼らが遺した偉大な音楽を聴いていると、どこか耳に残るリズムに聞き覚えを感じる。どこの何の楽曲に似ているのか自身の記憶を頼りに探ってみたら、イギリスで80年代に誕生した当時は10代前半の黒人の子どもら5人で編成されたレゲエ・グループ「Musical Youth」を思い出す。彼らの代表曲「Pass the Dutchie」(以下、YouTube動画を参考)に非常に似ている。彼らは、ボブ・マーリーから完全に影響を受けている事が伺える。

Musical Youthの「Pass the Dutchie」

他にも、海外のレゲエミュージシャン(※8)はたくさんいる。たとえば、デリク・モーガン、カンカラー、マーシャ・グリフィス、エターナ、アレイン、ダイアナ・キング、Toots & the Maytals、Elephant Man、マキシー・プリースト、シズラ、ダミアン“ジュニア・ゴング”マーリー、UB40、インナー・サークル、ショーン・ポールら、長きに渡り多くの海外レゲエアーティストを輩出している。この中でもUB40というブラス・レゲエバンドは、90年代にエルヴィス・プレスリーの代表曲を大胆にアレンジした名曲「(Can’t Help) Falling In Love」が、今でも語り継がれている(以下、YouTube動画を参考)。

UB40 の「(Can’t Help) Falling In Love」

長きに渡り、死して尚、ボブ・マーリーが作り上げたレゲエの世界は、今の時代に歌い継がれている素晴らしい音楽ジャンルだ。ボブ・マーリーが、自身の楽曲に乗せて歌った歌詞の一説をここに紹介しておく。彼は、音楽の中にも平和や愛、反戦への強い想いを表現している。

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アルバム曲「War」より(以下、YouTube動画を参考)

「ある人種が優れていて ほかが劣っているとかいう考え方そのものがついにそして永遠に間違えていると示され捨て去られるまでどこでも戦争が起きる戦争になる」(※9)と歌詞の中で訴えている。また、この曲の最後には「善が悪を駆逐する(good over evil )」と歌い上げ、世界中の悪へ猛抗議しているようだ。正義は勝つ。悪は滅びる。悪に強きは善にも強し。という言葉があるように、この世にあるすべての善に勝るものはない。

Bob Marleyの「War」

最後に、音楽ドキュメンタリー映画『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』は、ボブ・マーリーが生前、本人が亡くなる数ヶ月前にジャマイカで公演を行ったラストのライブ映像だ。今この瞬間に、偉大なレゲエの神様、ボブ・マーリーが生きていた証拠が残された。その点で言えば、本作が制作された意義は深いと言えるだろう。ただ、2024年の現在、世界では戦争が起きている。ロシア・ウクライナ戦争、パレスチナのガザ地区の問題。日本では、巨大地震が発生し、コロナ禍が数年続いた。今、世界は混乱期にある中、ボブ・マーリーの楽曲は私達の疲れた心にどう作用スるのだろう?そして、もし今のこの時代に、彼が生きていたら、今のこの世界をどう見るのであろうか?愛と平和を願い続けて…。

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映画『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』は現在、全国の劇場にて上映中。

(※1)レゲエの歴史・ルーツって知ってる?無形文化遺産に登録って凄くね?!https://3peaceinfo.jp/reggae-rekishi/#i-2(2024年2月25日)

(※2)https://mysound.jp/sp/8478/劇的な和解でジャマイカに平和の可能性を見せたボブ・マーリィ(2024年2月26日)

(※3)「ジャマイカってどんな国?」2分で学ぶ国際社会https://diamond.jp/articles/-/314905#:~:text=%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%81%AF%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%96%E6%B5%B7%E3%81%AB,%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B8%80%E3%81%A4%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2024年2月26日)

(※4)ジャマイカの面積と大きさ【日本の何倍? 岐阜県と同じ?】https://world-note.com/jamaica-size/(2024年2月26日)

(※5)ジャマイカのローカル言語、パトワ語の魅力https://linkup-jaja.org/patois/(2024年2月27日)

(※6)ジャマイカは英王室から離れ共和政への道を歩むのか?https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63128890(2024年2月27日)

(※7)【人気投票 1~57位】ジャパレゲ名曲ランキング!ジャパニーズレゲエのおすすめ楽曲は?https://ranking.net/rankings/best-j-reggae-songs#google_vignette(2024年2月27日)

(※8)【人気投票 1~16位】海外レゲエアーティストランキング!おすすめのレゲエ歌手は?https://ranking.net/rankings/best-overseas-reggae-artists(2024年2月27日)

(※9)ボブ・マーリー(Bob Marley)歌詞にこめられた普遍的な名言9選https://www.udiscovermusic.jp/columns/bob-marley-quotes-from-his-songs?amp=1(2024年2月27日)