「すべては実体験から始まった」9月23日(土)、大阪府のシアターセブンにて行われた映画『カタオモイ』『海辺の恋人』の舞台挨拶レポート

「すべては実体験から始まった」9月23日(土)、大阪府のシアターセブンにて行われた映画『カタオモイ』『海辺の恋人』の舞台挨拶レポート

2023年9月26日

©Tiroir du Kinéma

映画『カタオモイ』『海辺の恋人』が関西で同時上映が始まった。映画『カタオモイ』は、43歳の杉下可南子は、結婚して20年以上になる夫の浮気を知って家を飛び出し、東京下町の大衆食堂で働きはじめる。ある日彼女は、路上で酔い潰れていた若い男・謙一を介抱する。謙一は同棲していた恋人に捨てられ、傷心のあまり酒と睡眠薬を一気に飲んだという。泥酔している謙一を部屋まで運ぶ可南子だったが、謙一は彼女を恋人と間違えたのか突然抱き寄せてキスをする。それをきっかけに謙一に恋をした可南子は、偶然手に入れた合鍵を使って彼の部屋に忍び込むようになり……。映画『海辺の恋人』は、カメラアシスタントの百合子と売れない大道芸人シンジは海辺の町で出会って恋に落ち、シンジが百合子の部屋に転がり込む形で一緒に暮らすように。互いの夢を応援しながら寄り添って生きる2人だったが、百合子は師事していたカメラマンにパワハラを受けたり、シンジは先輩芸人に泣きつかれて金を貸してしまったりと上手くいかず、2人の関係は次第にぎくしゃくしていく。そんな中、シンジは百合子がようやく開催に漕ぎつけた写真展で、2人が出会ったばかりの頃の懐かしい写真を目にする。30代の世代の男女と40代の世代の男女の恋愛を、それぞれの視点で描いた映画『カタオモイ』『海辺の恋人』は現在、9月23日(土)より大阪府にあるシアターセブンにて現在、公開中。公開初日となった9月23日(土)は、上映中のシアターセブンにて、いまおかしんじ監督による舞台挨拶が行われた。

映画『海辺の恋人』上映前、本作の監督を務めたいまおかしんじさんが登壇され、舞台挨拶を行なった。いまおかしんじ監督は、映画『海辺の恋人』が自身の実体験である事について質問をされ「どんな話を作ろうかとプロデューサーと話し合った結果、映画『ラ・ラ・ランド』をオマージュして欲しいと言われたんです。だから、よく見ると、この物語は夢を持つ若者2人が出会って、恋に落ちる話なんです。僕が20代の頃、監督なる前の助監督時代、大失恋を経験しました。彼女とは長い間、同棲をし、将来結婚も視野にしていた位の仲でしたが、まさか破局するとは思ってなかったんです。それでも、あの時別れたからこそ、僕が監督の道を歩めたのかなと。それでも、あの時の経験は、あまりにも痛すぎて、随分の間、心で引き摺っていたんだと思います。でももう、あらから20年、30年近く経った今、僕自身があの時通り過ぎた多くの経験を心の中で精算できるように、一本の映画に纏めあげようと心に決めたんです。そして実は、主人公のシンジという男と彼女の百合子は、その時の付き合っていた僕らの実名なんです。」と話した。映画『ラ・ラ・ランド』でも同じような物語が、展開される。男女には、ここぞの瞬間に別れる決意を表明しないといけない時もある。いまおかしんじ監督は、まさに「あの当時」だろう。あの時の経験がなければ、もしかしたら、今の「いまおかしんじ監督」は産まれなかったのかもしれない。映画『ラ・ラ・ランド』のラストは非常に賛否が別れた結果となったが、私自身は素晴らしい失恋の仕方だ。あのままズルズル、カップルが付き合っていても、互いの夢も叶えられず、足の引っ張り合いもしていた可能性もある。映画『海辺の恋人』は、若い30代の男女の恋愛を描きつつ、夢を持つことへの尊さを教えてくれているのかもしれない。

最後に、いまおかしんじ監督は10月公開(関西では11月公開)の最新作『道で拾った女』の話に言及された。「映画『道で拾った女』には、石井隆監督作品にも出演経験がある佐々心音さんが出演しています。佐々木さんは、並じゃないと思っています。本作では、彼女の魅力が爆発していると思います。物語は、トラック運転手に関係したロードムービーです。」と、監督は次回作について話された。いまおか監督の快進撃は、まだまだ終わらない。昨年に続き、今年もまた、複数本の作品が同時期に公開されるのは非常に稀な事でもある。

映画『カタオモイ』『海辺の恋人』は現在、関西では9月23日(土)より大阪府にあるシアターセブン、兵庫県の元町映画館にて上映中。