ドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』「生きる」とは、何か?

ドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』「生きる」とは、何か?

2023年3月1日

ドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』

©2022 PAO NETWORK INC.

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平成23年3月11日14時46分18秒。この日付は、あの日あの時、体験した全日本人なら覚えているはず。

この日は、後世にも語り継がれていくであろう、「東日本大震災」が起きた日だ。

過去にも幾度となく、日本は自然災害に見舞われてきた経験があるものの、ここまで甚大な被害をもたらした、巨大地震は後にも先にも、現時点では、この震災だけだ。

想像を絶する震度、想定外の津波の来襲、東北地方における過去に起きた震災をも凌駕する爆発的な威力を持った「東日本大震災」は、私達の記憶の中に鮮烈な映像としてくっきりと、爪痕を残したに違いない。

日本における自然災害は、地震だけでなく、あらゆる天災が切っても切れない存在だ。

国内においての(※1)震災は、大昔から確認されており、古くは紀元前まで遡ることができ、地震の観測そのものは行われていなくても、地質学の観点から、当時その場所でどんな地震が起きたのか、堆積した土や(※2)断層の歪み具合で、地質学者たちは常に過去の震災を研究している。

日本における(※3)最初の地震観測の研究は、1872年と言われており、本格的に(※4)地震観測がされ始めたのは1926年以降だ。

もう少しで、観測開始から100年が経とうとしているが、その間に日本では、幾度となく大震災に見舞われて来た。

私達が最も知る「阪神淡路大震災」以前にも、(※5)昭和時代(明治時代以降)の大地震として浜田地震、明治三陸地震、関東大震災、昭和三陸地震、福井地震など、日本全域で地震が発生していることが、よく分かる。

先に挙げた1995年に起きた阪神淡路大震災以降、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震と、今でも日本は地震の脅威に晒されている。

日本と地震は深い関係性があり、私達はそれに対して、どう向き合っていくのかが、大きな課題でもあるのだ。

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本作『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』というドキュメンタリーは、2011年に起きた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で津波の犠牲となった大川小学校の子どもたちの遺族たちの数年間の裁判記録だ。

蓋を開ければ、震災における「責任の所在」、教育委員会による職務怠慢、弁護士らの関係者各位への厳しい追求、そして親御さん達の数年間にも渡る焦燥感を捉えている。

保護者たちが業を煮やし、怒りを表したのは、教育委員会側の職務怠慢と震災当日の現場教師の判断ミスだ。

特に教育委員会という管理職の立場にいる関係者らの振る舞いに関しては、しっかり糾弾されるべきである。

人の上に立ち、トップの立場にいる人間は、必ず公明正大であるべきだ。

自身の保身に走り、隠蔽工作をし、対象者から逃げ回り、しっかり対峙する姿勢を示さないのは、管理者としての自覚が足りない。

その過程で、どんな事が起きようとも、最後の最後は、びしっと事実と向き合って欲しい。

平成初期の1997年に、バブル崩壊と共に倒産した大手証券会社の山一證券の(※6)当時の社長の野澤正平氏による記者会見の様子は、人の上に立つトップとしての本音が垣間見える。

自身の保身に走らず、部下を守り、関係者各位に堂々と、泣きながら頭を下げれる人間性は、管理職の鑑だ。

倒産後も、社員のために、再就職の斡旋の手伝いをしたのも、この方の素晴らしい人間性と人徳だろう。

日本社会に一人でも、このような管理職の人間が生まれて欲しい。

近年も、(※7)文春の関係者が取材を依頼したが、その結果にも野澤氏のお人柄を知ることができる。

それに比べ、日本の教育現場における教育委員会の待遇は、いかに腐っているかが、明白(あからさま)に顕著である。

(※8)大阪府泉南市で起きた中1いじめ自殺事件は、いじめが最もの原因ではあるものの、最終的な要因は、泉南市の教育委員会の対応が余りにも杜撰すぎる。

この少年の心の慟哭は、MBSの毎日放送が取材したドキュメンタリー番組の映像’23の中の(※9)「13歳の声」でも紹介されている。

また、18年前に神戸市で起きた(※10)いじめ事件は、まだ解決の目処が立っていない。

被害者は、今も元気に過ごしているが、いじめが元の教育委員会の杜撰な対応が原因で、ずっと苦しみ続け、人生を蹂躙され続けている。

被害者の父親は、「市教委の対応のせいで長期化しており、税金の無駄遣いだ」と、強く批判している。

この事件の背景のあらましは、(※11)ローカル番組の取材でもしっかり非難している。

数ある教育委員会の中には良心的な市教委も存在するであろうが、世間で注目されるのは悪目立ちをする組織ばかりだ。

この大人たちの振る舞いが、一人の子どもの命を奪い、人生を狂わせてしまうことを、関係者は皆、肝に銘じて欲しい。

本作は、津波被害で亡くなった子どもたちの親が起こした裁判の記録ではあるが、併せて震災後に懸命に生きようとした(※12)二人の少年の姿も共に見て欲しい。

少し脱線をしてしまったが、本作の寺田和弘監督は、あるインタビューにおいて、震災後、親御さん達が過ごした時間について、こう話している。

(※13)「子どもたちを主人公にという想いは確かにそうですが、やはり僕は今回は親たちの闘いを知ってもらいたい。なぜかというと、親たちが闘ったのは、自分の子どものために闘ったわけですよね。言い換えてみれば、それは子どもたちが闘ったことでもあるんじゃないかと」と。

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最後に、本作は、津波被害で亡くなった子どもらの親御さんが、教育現場を相手に闘った数年間の記録だ。

ただ、作品を通して、私達は第三者の、客観的な視点や判断と言ったジャッジ眼が必要だ。

部外者の私達が、保護者らと一緒になって、激しく批判するのも、また被害者の立場になって、涙を流すのも少し違う。

観客側は、どこまでも公平な見方で作品を観る必要がある。

確かに、内情は実に複雑化している。

何が正解かなんて、誰にも答えを出すことはできない。

ただ、本作を通して、見苦しく感じたのは、冒頭の説明会での当時の学年主任だった男性教諭への遺族たちの罵詈雑言だ。

観ていて、感じがいいものではなかった。

できることなら、現場レベルでは、同じ被災者として手を組んで、これらの問題に立ち向かって頂きたかったと。

あの震災時に現場にいた教師たちも、ただならぬ事態の中で奔走し、必死だったに違いない。

ほんの少しの判断ミスが、大きな結果を招いた点は、非難されても仕方ないにしても、晒し者にされてまで、ボロボロになった体と心で遺族に立ち向かう姿は、勇敢でもあった。

この点は、もう少し冷静に対処する必要があったのかもしれない。

それにしても、本作の公式ホームページの有識者たちの教育現場への熾烈な批判は、今も昔も変わっていない。

批判するだけが、すべてではない。

この点もまた、冷静さを取り戻して欲しい。

また、この作品のすべてを否定する言い方になるかもしれないが、市教委側の対応に対し、やむを得ず行った裁判は、本当に正しかったのか?

これしか道がなかったとしたら、教育委員会の責任は裁判が結審した今でも、重いものだと認識せざるを得ない。

勝訴、敗訴のその先には、誰もが望んだ結果を得られたのだろうか?

寺田監督は、親たちが闘った時間は、子どもたちの時間だと話しているが、一理そういう側面もあるかもしれないが、私はそうは思えない部分もある。

理想論ではあるが、これからは親サイドと教育現場サイドが、手を取り合って、教育機関における防災への取り組みを進めて欲しい。

できるのであれば、大人同士が争うのではなく、共に震災、防災に対して、話し合って欲しい。

それが、亡くなった子どもたちが、一番喜ぶことではないだろうか?

また、今を生きる日本人全員が、防災に対して考え取り組むことで、次の犠牲者を、悲しみの連鎖を産まない、出さない近道だ。

10年先、20年先、この震災の教訓を通して、語り継ぎ、一つでも命を守り抜くことが、亡くなった子どもたちへの供養になるのではないだろうか?

震災への恐怖は、国内だけに留まらず、2008年に起きた(※14)四川大地震、先日発生した(※15)トルコ・シリア大地震でも、人々の悲しみは癒えない。

最後に、全人類に問いたい。

本作の表題となっている「生きる」とは、何か?

本作を観たら、自ずと、答えが見つかるかもしれない。

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ドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』は現在、関西の劇場では、2月25日(土)より大阪府の第七藝術劇場にて、上映中。3月10日(金)より京都シネマ、3月11日(土)より元町映画館にて、公開予定。また、全国の劇場にて、順次公開予定。

(※1)地震と住宅の歩みhttps://www.homelabo.co.jp/select/history01.html(2023年2月28日)

(※2)断層と褶曲https://www.gsj.jp/geology/fault-fold/fault-fold/index.html(2023年3月1日)

(※3)最初の地震観測https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/ayumi/2610/(2023年3月1日)

(※4)明治・大正時代の震度観測について-震度データベースの遡及-https://drive.google.com/file/d/10q6bn3vqG3PJ_0g3VkPBKc1Hc3jS9h4E/view?usp=drivesdk(2023年3月1日)

(※5)過去の地震津波災害https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/higai/higai-1995.html(2023年3月1日)

(※6)山一證券最後の会見https://youtu.be/gDBtZ9j28Gc(2023年3月1日)

(※7)「社員は悪くありませんから!」山一証券・野沢社長の予期せぬ号泣を引き出してカレンダーが11月に変わるたびに気になっていたhttps://bunshun.jp/articles/-/11593?page=1(2023年3月1日)

(※8)〈大阪府泉南市・中1いじめ自殺〉被害を訴えてもムダ…母親は「学校への不信感が要因ではないか」半年以上が経ち、ようやく学校側は松波翔さんの「自殺」を保護者らに公表https://bunshun.jp/articles/-/58305?page=1(2023年3月1日)

(※9)映像’23「13歳の声」https://www.mbs.jp/eizou/backno/22103000.shtml(2023年3月1日)

(※10)神戸市立小いじめ調査、3600万円超 委員委嘱、異例の3年目https://mainichi.jp/articles/20230202/k00/00m/040/139000c(2023年3月1日)

(※11)【スクープ】独自入手! 存在しないとされた『17年前のいじめ調査文書』 成人した被害者本人も認める詳細記録…「ない」と一貫主張の神戸市教委は?https://youtu.be/xQI2UpM8AyM(2023年3月1日)

(※12)わ・す・れ・な・い明日に向かって~運命の少年~https://fod.fujitv.co.jp/title/3254/3254110010/(2023年3月1日)

(※13)もし自分が親の立場だったら……『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』寺田和弘監督インタビュー【東日本大震災から12年】https://lee.hpplus.jp/column/2564075/(2023年3月1日)

(※14)中国の一人っ子政策が生んだものhttps://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/110400309/?ST=m_news(2023年3月1日)

(※15)トルコ・シリア大地震 死者5万人超える 建物撤去進まず 憤りもhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20230225/k10013990511000.html(2023年3月1日)