映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』親子とは、兄弟とは、そして家族とは何か

映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』親子とは、兄弟とは、そして家族とは何か

2023年9月18日

それでも、幸せな結末はある映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター

©2022 Why Not Productions – Arte France Cinema

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Arte France Cinema

姉弟の絆は、他者には計り知れない深い関係がある。それは、兄弟、兄妹、姉妹、どの組み合わせでも同じだ。兄弟という世界で唯一無二の関係性は、その当事者間でしか分かり合えないものがあるのが事実だ。他人には分からない家庭内の秘密、家族間の秘密があるように、親にも分からない兄弟間の心の絆は、その兄弟だけのモノでもある。それでも、姉弟の関係(※1)には、どの兄弟にも越えられない不思議な関係があるのかもしれない。それは、姉弟となった関係の中で産まれる繋がりであるからこそ、他の組み合わせの兄弟には彼らの気持ちは分からないだろう。表面上は分かっていても、深層面の彼ら彼女の深い深い結び付きにコミットする事はできない。どの兄弟(姉弟、兄妹、姉妹)にも言えることは、兄弟同士でしか分かり得ない精神的な深い意思疎通があるところ。それは、他者にも当事者本人にも気付かない、何か心理的コネクションに対して、より分かり合える事が兄弟の絆なのだろう。他の兄弟には見られない、姉弟の関係(※2)によりピックアップした映画が、フランスから日本に届いた。この関係性は世界的に見ても万国共通の事案なのだろう。姉から見た弟、弟から見た姉の存在を、よりディープに描いたのが映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』だ。

©2022 Why Not Productions –
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では、本作『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』は、家族の不慮の事故が原因で、別々に暮らしていた姉弟が数年ぶりに、実家に帰って来る物語だ。久々に顔を合わせて、介した2人は、家族や姉弟という互いの存在を忘れて、どこかギクシャクしている。ハラハラしたコミュニケーションや交流が、長い間疎遠になっていた彼らの冷え切った関係を表している。それは、親親戚でさえ、踏み入れない兄弟・姉弟(兄妹、姉妹)間の深い心の溝なのかも知れない。そんな物語に登場する彼ら姉弟の姿を見ると、やはり自身の兄弟間にも似通っており、共感性は高まる。幼少期の頃は、同じ家の一つ屋根の下で10数年間共に過ごしても、自身が大人となり、成長して行くと、子供の頃のように同じ時間を共に過ごすことはないだろう。一時の時間を過ごすからこそ、兄弟と言えるだけで、今よりも更に長い時間を過ごすのは苦痛にしかならない。それでも、もし本作のように親が何かしらの事故や病気に遭った時、私達兄弟は顔を合わせて、ちゃんと親や家族、自身の未来を話し合える事ができるのか、ただただ懐疑的だ。兄弟の存在は唯一無二にも関わらず、なぜ分かり合えない存在なのだろうか?それは、近い関係にいるからなのか?価値観が余りにも違いがあるからだろうか?先にも書いたように、兄弟であっても、他者から見えない所では、憎しみ合っている人がいるのも事実だ。近頃、横浜で若きラーメン店の店主が刺殺された事件が発生した。事件発生後すぐに犯人は取り押さえられたが、容疑者はラーメン店主の元従業員で親族であった事に、悲しみを禁じ得ない。兄弟間、親族間でも、こうして憎しみ合う事が世の中にある事は、事実である事を受け止めたい。本作を制作したアルノー・デプレジャン監督は、姉弟について、こう話す。

Arnaud Desplechin:“Non, parce que j’aime bien penser qu’il y a cette haine très vive qu’Alice éprouve pour son frère, et dans laquelle elle est perdue. Et lui aussi. Et pourtant, cette haine n’a qu’une valeur, parce qu’il y a un côté presque incestueux dans l’amour qu’ils se portent l’un à l’autre. C’est le visage malheureux de l’amour. C’est juste ça. Pensant à ça, j’aime bien penser à Love Streams de John Cassavetes en me disant : voilà, il y a un frère et une sœur. Elle est exaspérante, il est exaspérant. Et ils s’aiment. Pour eux (Marion Cotillard et Melvil Poupaud), c’est un petit peu plus compliqué…”

デプレシャン:「アリスは弟に対して非常に強い憎悪を感じており、その憎しみの中で彼女は失われていると私は考えたいんです。それは、彼も。それでも、彼らがお互いに抱く愛には、ほとんど近親相姦的な側面があるためです。この憎しみの価値は一つだけ。それは、愛の不幸な顔です。そのことを考えると、私はジョン・カサヴェテスの『愛の流れ』を思い出しました。と、自分に言い聞かせるのが好きです。ほら、兄弟と姉妹がいるのです。彼女も腹立たしいし、彼も腹立たしい。そして彼らはお互いを愛しています。彼ら(マリオン・コティヤールとメルヴィル・プポー)にとって、それはもう少し複雑です…」と話す。前回の作品『ジェーンとシャルロット』のレビューの中で、親子間の愛憎について書いてみたが、これは兄弟間でも言えることだ。この映画に登場する姉弟アリスとルイは、互いを気遣い愛を持ちながらも、その心の根底にあるのは深い深い憎しみなのだ。それは、時に牙を剥き、毒を吐く反面、強く固い愛で結ばれた姉弟である事を、私達は覚えておきたい。

©2022 Why Not Productions –
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最後に、家族という存在や形は複雑怪奇な関係だ。夫婦、親兄弟、父と子、母と子、父子、母娘、父娘、母子、そして兄弟(姉弟、姉妹、兄妹)たち。同じ一つ屋根の下に暮らしているにも関わらず、家族以前に他人だ。他人にも関わらず、私達は深く濃いDNA、もしくは絆で死ぬまで結ばれている。同じ墓に入る風習もあるから、死んでも離れられない存在なのかもしれない。そんな家族という世界のどこを探しても、同じ物を見つけられないかけがえのないプライスレスな存在でもある。それでも近頃、女子中学生が実母を刺殺する悲しい事件(※5)が起きたばかりだが、本作や本事件を通して、再度親子とは、兄弟とは、そして家族とは何かをもう一度考え直したい。本作には、必ずその答えが見つかるのかも知れない。

©2022 Why Not Productions – Arte France Cinema

映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』は現在、関西では9月15日(金)より大阪府のシネ・リーブル梅田、京都府の京都シネマにて、絶賛公開中。兵庫県のシネ・リーブル神戸では、9月22日(金)より上映予定。また、全国の劇場にて、順次、公開予定。そして、9月18日(月・祝)には、シネ・リーブル梅田にてアルノー・デプレジャン監督が舞台挨拶のため登壇予定。他に、9月9月18日(月・祝)には大阪府のシネ・ヌーヴォで『いつわり』の上映後、9月19日(火)には京都府の出町座で『魂を救え!』の上映後にデプレシャン監督のトークイベントを開催。9月20日(水)には京都府の京都シネマで19:00からの回上映後にデプレシャン監督の舞台挨拶が開催。

(※1)姉目線の姉弟あるある47個 「姉のイエスマンになる弟」「姉の無茶振りのおかげで気が利く男に成長する弟」などhttps://youpouch.com/2017/03/06/418838/(2023年9月18日)

(※2)兄弟&姉妹の構成で変わる性格・特徴・恋愛傾向|あるあるを解説!
https://smartlog.jp/148085#:~:text=5.%20%E3%80%90%E5%A7%89%E3%81%A8%E5%BC%9F%E3%81%AE,%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82(2023年9月18日)

(※3)横浜 ラーメン店長殺害事件 35歳の親族を殺人容疑で逮捕https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230917/k10014198791000.html(2023年9月18日)

(※4)Cannes 2022: «Frère et sœur», Arnaud Desplechin montre la haine, «le visage malheureux de l’amour»https://www.rfi.fr/fr/culture/20220521-cannes-2022-fr%C3%A8re-et-s%C5%93ur-arnaud-desplechin-montre-la-haine-le-visage-malheureux-de-l-amour(2023年9月18日)

(※5)「お母さんを刺したということか」逮捕の女子中学生、警察の問いかけに無言でうなずく 現場からは文化包丁https://www.nagoyatv.com/news/?id=020610(2023年9月18日)