ドキュメンタリー映画『プーチンより愛を込めて』全世界に再度ユートピアが

ドキュメンタリー映画『プーチンより愛を込めて』全世界に再度ユートピアが

2023年6月16日

素顔のプーチンを目撃するドキュメンタリー映画『プーチンより愛を込めて』

©Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018

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「ユートピアは終わった。」本作の冒頭、監督の奥さんが、苛立ち紛れに放った言葉。

ソ連崩壊後、ロシアの初代大統領ボリス・エリツィンが、およそ10年間、この国の政権を握った。

この時代を指して、彼女は当時の露を幸福な国の象徴として「ユートピア」と呼んだ。

序盤のカメラは、監督自身の家族に焦点を当て、プーチンが新大統領として就任するまでの期間の監督家族の日常を日記のように収めていく。

この時には既に、彼らの会話を通して、自国の未来が明るいものではないと認識している。

プーチンの独裁的思想が、この時から一つの家庭の中でも認知されている事に、恐怖を感じてしまう。

それほどまでに、プーチンが大統領として就任した当初から独裁者として見られていたことに、今更ながら驚きを禁じ得ない。

本作『プーチンより愛を込めて』は、今書いた内容となる就任後1年のプーチンの素顔を克明に追ったドキュメンタリー。

「プーチンより愛を込めて」なんて言われたら、正直が反吐が出る。

こんな血も涙もない非人道的な大統領が、人の愛を知るはずがない。もし私から彼に何かを贈るとすらなら、「私達日本人よりプーチンに毒を込めたい」ほど今は彼が憎らしい。

ロシアウクライナ戦争が勃発し、世界で最も傷ついているのはウクライナ国民だ。

でも、その苦しみを持っているのは彼らだけでなく、戦争が始まって多大な影響を受けている諸外国だ。

もちろん、ここ日本でも同等だ。

ただでさえ、不景気なのに、プーチンが始めたしょうもない紛争のせいで、国内が物価が大打撃を受けているのは事実だ。

世界やプーチンは、ロシアだけを独裁的統率している勘違いしているようだが、彼の立ち振る舞いは全関係国に多大なる迷惑を掛けていることを、できるなら猛省して欲しい。

こんなバカバカしい戦争は、早く終わらして欲しい限りだ。

冒頭でエリツィン政権が幸福な時代たったと明記したが、プーチン政権とエリツィン政権の違い(※1)はなんだろうか?

この点を深く掘り下げる事で、ロシアにおける現プーチン政権の立ち位置、立ち居振る舞い、そしてロシアの未来の行く末を知れる事ができるのではと思う。

ロシア語ではあるが、この記事でロシア政治における90年代後半前後の発展について書かれている。

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“В конце девяностых, перед самим приходом Путина к власти, не только российская экономика перешла на траекторию роста, который, с некоторыми колебаниями, продолжается вплоть до сегодняшнего дня. Также, политическая система РФ в этот момент находилась на пути к консолидации и показывала, как с исторической, так и со сравнительной точек зрения, значимые результаты. Как хаотичные 90-ые, в конечном счете, заложили основу для впечатляющего экономического скачка, так и зачастую анархические политические процессы ельцинского периода привели, в конце концов, к возникновению ряда институтов, организаций и процедур, которые, по крайней мере, с точки зрения демократической теории, были достойны сохранения и дальнейшего развития. К этим результатам, достигнутым к концу девяностых прежде всего относятся:”

1. относительно плюралистический спектр более или менее независимых от правительства (т.е. Кремля) электронных и печатных СМИ,
2. ряд протопартий с бόльшим или меньшим укоренением хотя бы в некоторых регионах,
3. все еще хрупкое и часто неэффективное гражданское общество, самосознание которого, однако, росло с каждым годом,
4. растущий профессионализм в формировании и работе обеих палат российского парламента, а также
5. еще слаборазвитый и зачастую противоречивый, но уже существующий в своих основных чертах федерализм.

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「1990年代後半、プーチン大統領が権力を握る直前に、ロシア経済だけが成長軌道に入ったわけではなく、多少の変動はあるものの今日まで成長軌道が続いている。また、当時のロシア連邦の政治制度は統合の途上にあり、歴史的および比較的観点の両方から重要な成果を示した。混沌とした 1990 年代が最終的に目覚ましい経済躍進の基礎を築いたのと同じように、エリツィン時代のしばしば無秩序な政治プロセスは、最終的に一連の制度、組織、手続きの出現につながりました。少なくとも民主主義の観点からは、理論的には、保存とさらなる発展に値するものでした。90 年代末までに達成された成果には主に次のようなものがあります。」

1. 政府(クレムリンなど)から多かれ少なかれ独立した電子メディアおよび印刷メディアの比較的多元的なスペクトル、
2. 少なくとも一部の地域に多かれ少なかれルーツを持つ多数の原政党、
3. 依然として脆弱で非効率な市民社会だが、その自覚は年々高まっており、
4. ロシア議会の両院の形成と活動におけるプロフェッショナリズムの高まり。
5. まだ発展途上で、しばしば矛盾しているが、その主な特徴である連邦主義はすでに存在している。

とあるように、90年代のロシア政府は民主的に経済発展された時代だ。

それが、社会主義国家へと徐々に変貌を遂げたのは、90年代後半の政権交代と共に、エリツィン前大統領から現プーチン大統領へと切り替わった瞬間から、この国の現在における末路が決まっていたようだ。

それを最も敏感に感じ取ったのは、エリツィンであり、ロシア国民達だ。

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本作『プーチンより愛を込めて』は、この現プーチン大統領の素顔(※2)に迫った作品。

就任後、すぐの頃から不穏な空気が漂うロシア政権だが、20年が経った今、その当時の国民たちが危惧した危険性は現実のものとなってしまった。

ロシアの未来(※3)、これからどこに向かって舵を漕いでいるのか、船長でもあるプーチンでさえも、検討も付いてないだろう。

今現実に起こっているロシアウクライナ戦争の歴史は、ここ数年の話ではなく、戦後すぐから続く長きに渡る歴史の積み重ねが、今に至っている。

人々が思っている以上に、簡単な話ではなく、より複雑な史実を辿っている。

本作の監督ビタリー・マンスキー氏は、現在からロシアから亡命中の身。

祖国のロシアに一歩でも入ろうものなら、彼はその場で身柄を拘束されるか、抹殺されてしまう。

彼は、ロシアにとっての敵だ。

そんな監督が、本作の制作経緯について話したロシアのインタビュー記事を見つけた。

Vitaliy Manskiy“Главной задачей было рассказать российскому зрителю, он же избиратель, о появлении новой политической фигуры.”(※5)

マンスキー監督:「主な任務は、有権者でもあるロシアの聴衆に、新しい政治家の出現について伝えることであった。」と、監督は語る。この考えが有効的なのは、プーチンが大統領に就任した2000年代初期頃。

今ではもう、監督が目的とした「新しい政治家の出現について伝える」は、もう通用しない。

プーチンは今、世界的脅威を持つ世界で最も危険な人物の一人だろう。

映画は、その危険人物の素顔や普段見られない姿を捉えている。

あなたは、この作品を観て、プーチンの目撃者となる。

本作が、少しでもロシア勢力の敗退を助長する役目となる事を祈るばかりだ。

最後に、本作『プーチンより愛を込めて』は時の大統領の就任当時の真の姿を捉えた作品であり、本作を目にした方の感想の中には、素顔の“独裁者”を目撃して話しやすい人物だと評する声もあるが、自身はどんな状況になろうと、こんな人物とは対話したくない。

この本性の裏側では、何万というウクライナ市民が犠牲となり、各国の人々が多大な迷惑を被っている。

こんな政治家は、早く政治の世界から引き摺り下ろし、A級戦犯の最重要人物として厳しい裁きが下され、全世界に再度ユートピアが訪れる事を強く願うばかりだ。

©Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte,RTS/SRG, Czech Television2018

ドキュメンタリー映画『プーチンより愛を込めて』は現在、関西では6月9日(金)より大阪府のシネ・リーブル梅田、京都府のアップリンク京都にて公開中。兵庫県の元町映画館は、6月17日(金)より上映予定。また、全国の劇場にて順次公開。6月18日(日)の元町映画館での上映では、岡部芳彦先生のトークショーが予定されている。

(※1)Критика сравнения ельцинского и путинского периодов из исторической перспективыhttps://inosmi.ru/20081130/245728.html(2023年6月15日)

(※2)妻に「バンパイア」と呼ばれたプーチンの素顔どのようにロシアのトップに上りつめたのか?https://toyokeizai.net/articles/-/667242?page=4(2023年6月15日)

(※3)第69回外交円卓懇談会「プーチン政権下のロシアはどこへ行くのか」(メモ)http://www.gfj.jp/j/diplomatic_roundtable/69_110621.htm(2023年6月15日)

(※4)ロシアとウクライナが「こじれた」複雑すぎる経緯歴史で紐解く「ウクライナは民族国家なのか」https://toyokeizai.net/articles/-/514936?page=2
(2023年6月15日)

(※5)Виталий Манский: «В том, что происходит в России, виноваты мы сами»https://www.golosameriki.com/a/mansky-film-about-putin-in-toronto-festival/4571639.html(2023年6月15日)