映画『彼女はひとり』「マイナスな感情を解放できる瞬間」 中川奈月監督と主演福永朱梨さんにダブル・インタビュー

映画『彼女はひとり』「マイナスな感情を解放できる瞬間」 中川奈月監督と主演福永朱梨さんにダブル・インタビュー

2021年11月21日

映画『彼女はひとり』中川奈月監督と主演の福永朱梨さんにインタビュー


 ©2018「彼女はひとり」

インタビュー・文・構成 スズキ トモヤ

©2018「彼女はひとり」

—–本作の着想は、どこから生まれましたでしょうか?

中川監督:私自身、すごく映画が好きで、追い詰められた人だけが見る得体の知れないモノの存在や過去にまつわる幽霊などを題材にした作品が、すごく好きなんです。

そういうものを自分も撮りたいと思っていました。主人公を女の子にして、何かに追い詰められて、感情的な状態になる人物を撮りたいという気持ちがありました。

その構想をストーリーに反映させました。

—–ホラーやスリラーの作品が、お好きなんでしょうか?

中川監督:自分でもそういう作品を作ってみたいと、ずっと思っていました。

©2018「彼女はひとり」

—–福永さんは、脚本を頂い時に、作品に対してどのような印象を持ちましたか?

福永さん:オーディションを受ける前に、脚本を読んだ上で、応募するという流れでした。

脚本に対してはすごく面白く、澄子に対してはそんなに切り離した存在とは思えませんでした。

人それぞれ自分の中に暗いものや閉塞感を抱えているモノがありますよね。

彼女を特別な存在とは思わなかった分、割とスっと役に入り込めたような感じでした。

—–澄子に対して、親近感が沸くような感じでしょうか?

福永さん:あんまり嫌いとかそういう感情には、ならなかったですね。

—–彼女に理解できる一面もあると言うことですか?

福永さん:ただ単に、人を傷つけているだけではないと思いました。

彼女の中で葛藤だったり、正義があっての行動だと思います。

初めからこの子嫌いだなとは、ならなかったです。

©2018「彼女はひとり」

—–本作は、女子高生の自殺、復讐というホラーやサスペンス、スリラーテイストの作品だと思いますが、監督はシナリオをどのように構築されましたでしょうか?

中川監督:脚本ができるまでとても時間がかかって、何度も書き直しをしました。

最初は物語の始まりをまず書くとこから初めていたのですが、全く面白くなく。

もう全てが起こっていることにして、幽霊もすでに出現していて、同級生の秀明をいじめているところから始めてみました。

常に、起きている出来事に対してどうしてそれが始まったのかを後々明かして行くほうが、私の中でサスペンスと言うか、ミステリーになるんじゃないかとも思ったからです。

手探りで始めて行ったので、ここまで至るまでに時間もかかりました。

色んな展開を用意して、何が後々効いてくるのかとか、物語的にもここに何が起きて、その結果こうなるみたいな、たくさんの引き出しを考えてきた結果、今の物語に収まりました。

構成自体は最初からはできておらず、だんだん物語の形になりました。

最後のシーンは、本当に勢いで書いてしまったので、もともとこうしようとは思っていませんでした。

最後まで物語として完結した、ひとつの映画としてできあがって嬉しいです。

©2018「彼女はひとり」

—–福永さんから見て、主人公澄子という人物は、どのように映りましたか?

福永さん:自分が澄子の役を演じる上で、映画を観た時に、この子苦手だなとか、嫌いだなと思う人は、いると思います。

澄子を演じる私自身が、この子のことを嫌いになったりとか、ちょっとバカにしたりしたら、役が魅力的に映らないなと感じました。

私が澄子の味方でいようと常に思いながら、演じておりました。

©2018「彼女はひとり」

—–冒頭の橋の場面やインサートの建物が印象に残りましたが、ロケハンを重要視されていたり、探すのは大変だったでしょうか?

中川監督:実は、建物関連は私の家の近所だったんです。

知り合いの方のお家を借りたりとか、自分の家を使って撮影しました。

あのマンションは、私が小さい頃からずっと、遊ばせてもらった場所でした。

あの形状と階段とトンネルみたいな作りは、子供ながらにすごいところだなと思いながら遊んでいました。

それが初めての作品で活かされたのは、奇跡的というのか、とても良かったなと思います。

その外観もカメラマンの芦澤さん達にも気に入ってもらい、「これは外観をちゃんと撮影しましょう」と言って頂きました。

あのマンションの前は、貯水池があり、金網が設置されているのでなかなかキレイに撮れなかったのですが、撮れる場所を探して、脚立を立ててなんとか撮影したというエピソードがあります。

—–一瞬のシーンですが、あのマンションを選んで、撮りに行くという姿勢が、とても素晴らしく、いい映像でした。

中川監督:それはもう、カメラマンの芦澤さんの「これはやりましょう」という一声があったからこその映像です。

皆さんに気に入って頂けるのは、本当に嬉しく思います。

©2018「彼女はひとり」

—–ラストの場面がとても印象的でしたが、澄子を演じる上で役作りは、どのようにされましたか?

福永さん:意識的ではなかったんですが、場面の中に楽しい思い出があまりなかったので、相手役の金井さんと待ち時間の間、和気あいあいと話していました。

そこで本来あるはずだった思い出作りをしているような感覚がありました。

階段の最後のシーンの直前も、二人で大笑いしながら話して、スタッフさんに急に呼ばれて明るく返事して、現場に入ったら、あの場面ができあがりました。

でも、気持ちを作って演じてたら、逆にあんなに爆発しなかったのかなと、今振り返るとそう感じます。

©2018「彼女はひとり」

—–最後に、本作『彼女はひとり』の魅力をお聞かせ願いますでしょうか?

中川監督:自分の中で追い詰めていたり、抱え込んでいた気持ちを、澄子が言ってくれる場面もありますので、その辺で溜め込んでいたモノをスっと出して、観に来て良かったなと感じてもらえたら嬉しいです。

マイナスな感情を解放するという気持ちで映画を観に来てくれたらいいなと思います。

福永さん:五年前の作品で、当時21歳の時の作品ですが、こんなにたくさんの方々に観てもらえる機会になると思っていませんでした。

本当に今、嬉しく感じているところですが、更にたくさんの方々に観て頂きたいなという気持ちがあります。

たくさんの方々に観て欲しいと思います。

©2018「彼女はひとり」

映画『彼女はひとり』 は、11月19日(金)より京都府の出町座、11月20日(土)より大阪府のシネ・ヌーヴォにて絶賛公開中。また、劇場が未定だった元町映画館でも上映が決定しました(公開日は未定)。また、全国の劇場にて順次公開予定。