映画『マリッジカウンセラー』「ご縁は、行動した一歩目の瞬間に生まれる」前田直樹監督インタビュー

映画『マリッジカウンセラー』「ご縁は、行動した一歩目の瞬間に生まれる」前田直樹監督インタビュー

2023年2月3日

繋がりが奇跡を結ぶ“ご縁”の映画『マリッジカウンセラー』前田直樹監督インタビュー

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

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—–本作『マリッジカウンセラー』の製作経緯を教えて頂けますか?

前田監督: この作品自体は、山崎プロデューサーが立ち上げた企画です。

僕がこのプロジェクトに監督として参加したのは2018年ですが、まず純粋に仲人さんの事を知りたいと思い、結婚相談所の連盟に相談して複数の仲人さんをご紹介して頂いて、脚本の松井さんと共に座談会方式での取材を始めました。

その座談会から仲人さんの存在意義やお仕事の一端を知ることができましたが、もっと深く、仲人さんの事を知りたくなりました。

そこで座談会後に個別でも仲人さんを紹介してもらい、さらには仲人さんだけでなく、結婚相談所で成婚された元会員さんをご紹介してもらって取材を進めました。

映画でも描かれているプロフィール交換会や婚活イベントにも参加し、2018年は数え切れないほどの取材を重ねましたね。

2019年初頭頃から脚本執筆をお願いし、都度話し合いを重ね、脚本を練り上げて行きました。

この年だけで第8稿まで書き直しをしたと思います。

脚本が完成した辺りでコロナ禍に突入してしまい、製作延期にも追い込まれましたが、この度、なんとか公開まで漕ぎ着けました。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–ありがとうございます。仲人という言葉は正直古く感じてしまい、昭和的なニュアンスで、親戚のおじさん、おばさんといったイメージが強くあります。現在は、マリッジカウンセラーや結婚相談所の方々が、仲人という立場でおられますか?

前田監督:そうですね。今も仲人さんは、仲人さんとして存在しています。

結婚したい男女の間を取り持つので、仲人という仕事自体は今も昔も変わらないのかもしれません。

ただ、仰る通り「仲人」と聞くと古く感じられてしまうことも多いと思うので、彼ら自身が今までのイメージを払拭したいという部分もあるのではないでしょうか。

取材させていただいた仲人さんからも、「最近はマリッジカウンセラーと名乗っている仲人も徐々に増えてきた」とお聞きしました。

ただ、実は英語で「マリッジカウンセラー」と言うと、いわゆる日本の「仲人」と違って、結婚後に不仲になってしまったご夫婦の関係改善や関係修復を目指すカウンセラーのことを指すことが多いんです。

僕らが映画で描いた「日本の仲人」にピッタリ当てはまるような英語はないんじゃないでしょうか。

—–そもそも、仲人という意味合いの言葉が、海外にはないんですね。

前田監督:仲人に当たる英語と言えば、英題にもしている「Matchmakers」が最も妥当かと思っています。

それでも日本の仲人さんほど会員さんのプライベートに介入することはないと思いますし、日本人的な「人情」や「ご縁結び」の要素を多く含んだ単語ではない気がします。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–この作品は、男女のナイーブな「結婚」や「異性間の事情」といった面をコメディタッチに描いておられますが、この「コメディ」の要素の比率によって、作品のイメージがガラッと変わると感じます。監督は、このコメディ要素に対しての演出面で気を付けていたことはありますか?

前田監督:僕個人としては、基本的に好きな映画は多分、コメディではないんです。

社会派的な作品が昔から好きでした。

今もそれは変わりませんが、コメディは社会派にはなりえないか?と問われれば、それは違うのかもしれません。

一緒に活動している山崎プロデューサーが、「社会派と言えば、悲しいとか、つらいとか、そういう重くて暗いものばかりになってしまうのは、どうしてでしょうか?」と話していたんです。

その言葉を聞いて軽い衝撃を受けました。

確かに、コメディの中で社会問題を描いた方が、社会派一辺倒より多くの方に伝わりやすいと思いますし、喜劇という広い間口から入っていった方が、色々な方が気付き、観てくれるようになるかもしれません。

本作はハートフル・コメディと謳っていますが、描いているのは実は男性と女性の間にある繊細な部分、晩婚化や高齢出産の問題だったりするんです。

作品的にどうしても触れたかったテーマですが、その要素を敢えて深刻に描きすぎないようには気を付けていました。

描きたいテーマは必ず作品から滲み出てしまうものだと思うので、コメディとして気軽に観てもらえるように、また結婚相談所がリアルに見えるように気を付けていました。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–脚本は女性の方がお書きになっておりますが、監督自身、脚本に目を通して、何か感じたことはありますか?物語の内容は比較的女性視点かと感じますが、男性視点のハラスメント的な要素もありますね。現在の女性軽視を変えようとしている世の中において、男性監督の立場から見て、この脚本をどのように受け取っていたのか聞かせてください。

前田監督:まず、僕は多分、主人公が女性の物語を撮る方が得意なんです。

この考えが大前提にあり、女性目線の物語に興味があったんです。

脚本の松井香奈さんの作品は、自分が描きたいトーンと合致すると以前から感じていたので、僕自身が松井さんにプロジェクトへの参加を呼びかけ、取材にも同行してもらいました。

取材の帰りには面白かった話や興味深かった話を共有しつつ、どういう設定や物語にしたいかということを話し合いました。

こういった意思疎通を通して、僕の想いを汲み取った脚本を松井さんは書いてくれています。

ですので、上がってきた脚本を読んだ時に、女性が書いた脚本だから男性の僕が理解しにくいといったことはほぼありませんでした。

昭和世代男性の象徴的なキャラクターである赤羽と、現代女性の等身大なキャラクターである結衣が、グラデーションのようにお互いを尊重し、認め合いながら近づき、一緒に奇跡を起こしていくストーリーラインは素敵だなと思いました。

—–脚本の中のエピソードは、取材していく中でお聞きしたお話でしょうか?

前田監督:本当に、仲人さん達への取材から得たエピソードばかりです。

そのお話をアレンジし、脚色したものを作中に盛り込んでいます。仲人の世界を知らない方達には「こんな人本当にいる?」と懐疑的に映るかもしれませんが、取材をしていく中で見聞きした事案なので、自信を持って作っています。

取材させて頂いた方ではない仲人さん達が実際に映画を観て、良くあるエピソードすぎて面白かった反面、映画に出てくる主人公達のような仲人としての振る舞いはできなかったかもしれないと、振り返っているのは印象的でした。

—–本作は、「マリッジカウンセラー」という職業を題材にしていますが、「結婚相談所」との違いはありますか?

前田監督:強いて言うなら、「結婚相談所」は場所であって、「マリッジカウンセラー」は人を指します。

ただ、先ほどもお話しした通り、結婚相談所の仲人さんたちのこと指して「マリッジカウンセラー」というタイトルにしたので、同義と捉えてもらっていいと思います。

最近はご自身たちのことを「仲人」ではなく「マリッジカウンセラー」と名乗る方が徐々に増えてきているように感じるというのも、先ほどお話しした通りです。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–本作のストーリーは、男女の心の機微を非常に丁寧に描いていますが、人と人との関係性の中で、男性と女性が円満に、円滑に心を通わせる術を、どのように描こうとされましたか?

前田監督:今回映画の中で描いた会員さんたちは、基本的には良い方達ばかりなんですが、なかなか結婚できないという点においては、ある意味どこか欠けている部分があると思っています。

自分本位で、上手くコミュニケーションが取れていない。

それは相手を理解しようとしていない場合もあれば、相手を分かったような気になってしまっている場合もあると思います。

他人同士なので完全に理解しあえないのは当たり前だと思いますが、ただ、それでも人はどこかのタイミングで相手をリスペクトできるようになると、相手を理解しようという努力ができるようになるんだと思います。

そこの部分が重要なんだろうと思うんです。

それぞれが、相手をリスペクトした形でのコミュニケーションを重ねていくことが大切だと考えています。

例えば、赤羽というキャラクターのセクハラ、パワハラは、どう考えても好きになってもらえる要素ではないと思います。

観客の方もですが、結衣も最初は嫌がっています。

それでも、結衣はある時ハッとして、彼を理解しようと努めるんです。

鬱陶しい存在ですが、自身にはない魅力や知識、行動力を、赤羽は持っていると。

そこに気付けた彼女は、彼を理解しようと努力し始めるんですね。

それは赤羽も同様です。

お互い足りない物があるからこそ、お互いを助け合う努力や姿勢が生まれていると思うんです。

そこの機微は脚本の中にもしっかりとあって、役者さんたちにどう演じてもらえば観客の方にきちんと伝わるのか、丁寧にバランスを取りながらお芝居を構築しています。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–公式ホームページでは、「人生100年時代」というキーワードを掛け合わせて、どんな人にも、「結婚」他においてのチャンスがあって然るべきとありますが、監督が思う「人生100年時代」とは、何ですか?

前田監督:「人生100年時代」ですか?そうですね…。

悪いこと以外なら何をやってもいいのかなと思います。

この映画は、ご縁の物語だと考えていて、一歩踏み出した人、動き出した人に、素敵なご縁が生まれていくのではないかと思いながら撮っていました。

もちろん、時には、休んでいてもいいんですが、その時その時の行動が大切な時間を生み出すと思っています。

100年もあるんだから、成功も失敗も含めて、様々な経験をして行けるのが「人生100年時代」だと考えることもできますね。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

—–「マリッジカウンセラー」とは、人と人との「ご縁」そのものが作品のテーマかと思いますが、前田監督が考える「ご縁」とは、なんでしょうか?

前田監督:「ご縁」とは、動いた人にだけ与えられるギフトだと思っています。

今回のこの記事も、私たちからご連絡を差し上げたからこそ、生まれたご縁だと思っています。

山崎プロデューサーが、「僕がこの映画『マリッジカウンセラー』の企画をプレゼンしなかったら、今のこのご縁はなかったですね。」と、冗談交じりに笑いながら話すんですが、ご縁ってきっとそういうモノなんだなと。

新しいご縁が生まれるのは、行動した一歩目の瞬間かと思います。

—–最後に、本作『マリッジカウンセラー』の魅力を教えて頂きますか?

前田監督:コロナ禍になって、良くも悪くも人との付き合い方や生き方を変えざるを得なかったこの数年間でした。

それでもこの数年が経って、少しずつ直接会ってコミュニケーションを取れるようになってきた事で、もう一度人生を見直すきっかけができた人が多くいるのではないかと思います。

そんな時代の中でこの映画『マリッジカウンセラー』を観て頂くことで、人と人との関係性における温もりや有り難さ、ご縁を感じ、再認識していただけると思っています。

この映画は、観て頂いたらそれだけで思わず誰かと話したくなるような、温もりのある映画になっています。

作品を観るだけで完結しないのが、本作の魅力です。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

映画『マリッジカウンセラー』は、関西では2月3日(金)より大阪府のMOVIX堺。京都府の京都みなみ会館。兵庫県のkino cinéma神戸国際にて上映中。大阪府の第七藝術劇場では、2月4日(土)より公開中。また、全国の劇場にて、順次公開予定。