映画『バイオレント・ナイト』信じる力とは何か

映画『バイオレント・ナイト』信じる力とは何か

聖なる夜をブッ壊すクリスマス・アクション映画『バイオレント・ナイト』

© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

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果たして、妖精は存在するのか?日本の鬼は、存在するのか?

想像上の幻の動物、一角獣は存在するのか?麒麟や獅子は、存在するのか?

アメリカの未確認動物「モスマン」は?日本の未確認動物「ツチノコ」は?

ニューヨークの若者たちの間で過去に囁かれた都市伝説「地下鉄の迷路」は?日本の都市伝説マニアの間で囁かれた噂話「東京地下秘密路線説」は?

アメリカの都市伝説とされる「ブラッディメアリー」は?日本の口裂け女は?

果たして、サンタクロースは実在するのか?

と、いるのか、いないのか分からない魑魅魍魎に対して、疑問を投げかけても、何も解決しない。

ただ、「信じる」という事が、どういうものか、一度考えてみたい。

それは、架空の、空想上の生き物の存在を信じるだけではなく、現実の社会に生きる私たちが、「他人を信じる」という事にも通ずる、問題提起ではないかと思っている。

あやかしの存在も、他人の心の内も、同工異曲ではないだろうか?

信じるか、信じないのかのその先にあるのが、一体何であるのか?

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恐らく、それは本作『バイオレント・ナイト』に登場する二人のキャラクターの姿が、すべてを物語っている。

本作の主要人物には、謎のサンタクロースの存在と、彼の存在を信じる健気な少女の掛け合いが、作中における最大の魅力だ。

ただ、この物語に登場する大人達は皆、何かを信じる事に対して、臆病になってしまった可哀想な大きな子ども達。

サンタクロースでさえも、自身を見失い、自信を失くした人物として描かれる。

日本国内において、本作『バイオレント・ナイト』が背負った大きな欠点は、間違いなく公開時期だ。

「クリスマス」を題材にしているにも関わらず、2ヶ月遅れの2月という時季は、季節外れもいい所だ。

とはいえ、公開日の2月3日は、日本にとっては、最も重要な行事のひとつ、「節分」の日だ。

「鬼は外、福は内」と、掛け声を発しながら、その年の無病息災を願い、悪となる鬼に豆を投げて退治する姿と、本作に登場する悪の化身である強盗を撃退する姿は、非常に似てはないだろうか?

両者が表現しているのは、誰もが願う勧善懲悪の世界。

「正義が必ず勝つ」という筋書きこそが、人々に希望や夢を与える最も分かりやすい近道だ。

日本における重要な伝統的な文化の習慣である「節分」の記述は、今回控えめにはするが、(※1)節分と節供の民俗の論文には、非常に興味深い記述が多く書かれているので、ここで一緒に紹介しておきたい。

「節分」の歴史から成り立ち、習慣への変化など、他のサイトが紹介する記事より濃厚な内容には、このレビューよりも読む価値は十二分にある。

「天網恢恢にして漏らさず」という言葉があるように、最後には悪事が必ず罰せられる世の中という事を肝に銘じておきたい。

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ところで、本作には多くの見所が存在する。

例えば、メインキャラクターであるサンタクロースと少女の関係性。

多くの洋楽をスコアとして選曲している点(今作では、ブライアン・アダムスの「Christmas Time」やウィザードの「I Wish It Could Be Christmas Everyday」。この2曲は、洋楽だけを対象にしたクリスマスソングをリストアップしたサイト(※2)【全曲動画付】ベスト・クリスマス・ソング50曲:この季節に欠かせない洋楽の名曲たちの中でも紹介されている。ちなみに、ブライアン・アダムスの「Christmas Time」は、40位。ウィザード「I Wish It Could Be Christmas Everyday」は、12位にランクインしている)、クリスマス映画には欠かせない人気作へのオマージュも作中での見逃せない場面だろう。

また、強盗役を好演しているジョン・レクイザモの悪役っぷりは、彼のハマり役だ。

他にも、脚本家チームには、映画『ソニック・ザ・ムービー(2020年)』続編『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ(2022)』でも脚本を担当しているパット・ケイシー、ジョシュ・ミラーにも本作を観る上での注目する点だろう。

ただ、最もこの作品が押している見所は、紛れもなくアクションシーンだ。

映画『Mr.ノーバディ(2021)』映画『ブレット・トレイン(2022)』で頭角を表しつつある映画製作会社87ノース・プロダクションズによる作品への貢献は、顕著でもある。

本作がひとつのアクション映画として成り立っている背景には、この制作会社の存在は計り知れない。

この会社を立ち上げたのは、デヴィッド・リーチとケリー・マコーミックだが、この会社の前身となる(※3)87ELEVEN ACTION DESIGNは、デヴィッド・リーチが率いるアクション集団を指すのだが、彼らは映画『アトミック・ブロンド』や映画『デッドプール2』など、近年の多くのアクション映画でアクション監督の地位を確立している。

この集団には、裏方のアクション・コーディネーターやスタントマンとして、アーロン・トニー、ダニエル・ヘルナンデス、ドン・タイ・テラタダ、ハイジ・マネーメーカー、ジャクソン・スピデルら、総勢14名のスタッフが、デヴィッド・リーチの元でアクション映画を盛り上げている。

アクション制作会社である(※4)87ノース・プロダクションズが、関わった作品がリストアップされているので、一緒に紹介しておく。

このリストの中には、本作の続編を示唆する項目もあるので、本作のこれからの動向も気になる所だ。

また、本作『バイオレント・ナイト』で製作を務めているデビッド・リーチは、前作『ブレット・トレイン』のインタビューにて(なぜか、本作ではインタビューを受けていない)、彼が唱える「Box(箱)」について、言及している。

(※5)David:The challenge was to make that interesting for the audience for two hours, and we really strived to get outside of the box—pun intended—for the movie itself, but also the environments. We spend a longer time in the flashbacks introducing the characters; we create those immersive worlds so you can go somewhere else for a second and then come back to the train and feel the stakes of the chase. That’s why it’s sort of a wish-fulfillment bullet train. The bar car and the Quiet Car have certain looks, and the Momomon car [themed around a Pokemon-style mascot] was completely inspired by the need to have fun environments. Shooting in a box for this entire movie actually challenged us to make something fun and think outside the box. There’s a lot of boxes in that answer.

「課題は、2 時間の上映の中、観客にとって興味深いものにすることです。私たちは、映画自体だけでなく、環境についても、洒落を意図した枠から抜け出そうと努力しています。キャラクターを紹介するフラッシュバックに長い時間を費やす時もあります。同時に、没入型の世界を生成します。この映画全体(今回は、映画『ブレット・トレイン』を指している)を箱の中で撮影することは、何か楽しいものを作り、箱の外で考えることを実際に私たちに挑戦させています。その答えには、多くの「Box(箱)」があります。」と、2時間という上映時間の「枠」で作品の何を表現するのか、またその「枠」を超えて、何が表現できるのか、日々模索し、挑戦していると話す。

この考えには、非常に共感でき、「映画」という枠組みを超えて、物事を推察する必要があるのではないかと、常日頃から感じているところだ。

アクションシーンにおける、スタントのメイキングはなかなか観れないので、一緒にビハインド・シーンの動画も紹介する。

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最後に、本作『バイオレント・ナイト』は、サンタクロースが存在するのか、しないのかに言及している訳ではない。

この作品は、人を信じる力や自身を信じる力についての話だ。

リア・ブレイディが演じる健気な少女トゥルーディは、周囲の大人達がサンタクロースの存在を否定する中、たった一人で彼の存在を最後まで信じ続けている。

また、デビッド・ハーバー演じるサンクロースは、自分自身を信じる事を放棄し、自暴自棄に陥った子どもには見せられないダメかなサンタクロースだ。

この2人がラスト、交わる時、不思議な化学反応が起きる。

それは、観た人にしか分からないほんの小さな奇跡。

昨今、この「信頼問題」が、揺るがされている。

テレビで報道されている(※6)「飲食店テロ」にしても、企業と消費者の間で交わされる「信頼」を元に、提供する側とそれを受け取る側の関係性が成り立っているのだが、その関係性や信頼を崩壊させるような目を疑う言動が、日常茶飯事というレベルで繰り返されている。

もし、日本社会に勧善懲悪の概念があるとするなら、いつか必ず悪事は罰せられ、正義が陽の目を見る事を願いたい。

運営会社の対応、消費者の反応、イタズラする者の心理、人と人との信頼とは何か、この一連の事件から何かを読み取れるのではないかと思う。

そういう意味での、本作『バイオレント・ナイト』は、他人や自身を信用する力とは何なのかを、少しばかり教えてくれているのでは?と…。

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映画『バイオレント・ナイト』は現在、関西では2月3日(金)より大阪府では、TOHOシネマズ梅田TOHOシネマズなんばTOHOシネマズ鳳TOHOシネマズ泉北TOHOシネマズくずはモール109シネマズ箕面MOVIX八尾イオンシネマ四條畷TOHOシネマズ セブンパーク天美にて上映中。京都府では、MOVIX京都TOHOシネマズ二条イオンシネマ京都桂川にて上映中。兵庫県では、109シネマズHAT神戸kino cinema 神戸国際アースシネマズ姫路TOHOシネマズ西宮OSにて上映中。奈良県では、TOHOシネマズ橿原にて上映中。全国の劇場にて、絶賛公開中。

(※1)節分と節供の民俗https://drive.google.com/file/d/1qkmvstFYRHe-51qwGIa7jMdTyDJp-Wce/view?usp=drivesdk(2022年2月4日)

(※2)【全曲動画付】ベスト・クリスマス・ソング50曲:この季節に欠かせない洋楽の名曲たちhttps://www.udiscovermusic.jp/playlists/best-christmas-songs-2?amp=1(2022年2月4日)

(※3)87ELEVEN ACTION DESIGNhttps://www.87eleven.net/(2022年2月4日)

(※4)The Movie Database https://www.themoviedb.org/company/121470-87north-productions/movie?language=ja-JP(2022年2月4日)

(※5)David Leitch Went from Being Brad Pitt’s Stuntman to His Directorhttps://www.gq.com/story/david-leitch-bullet-train-interview(2022年2月4日)

(※6)寿司テロで浮き彫りになった迷惑客の「世代交代」https://toyokeizai.net/articles/-/650255?page=3(2022年2月4日)