映画『FEAST 狂宴』いつか、同じ食卓を囲む日が

映画『FEAST 狂宴』いつか、同じ食卓を囲む日が

2024年3月21日

エンドロールを迎えた時、あなたの心が炙り出される映画『FEAST 狂宴』

©CORYRIGHT 2022. ALL RIGHTS RESERVED.

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交通事故は、常に私達の日常のすぐ隣に潜む。衝突事故、轢き逃げ、飲酒運転による事故、ながら運転による事故、脇見運転による事故、とくに近年問題視されているのは悪質な煽り運転だ。その上で、今でも自動車事故による悲しい事件は絶えない。なぜ、車のハンドルを持つと、人格が変わる人がいるのだろうか?なぜ、事故を起こした後に平気で逃げれる人がいるのだろうか?良心の呵責はあるのか?罪への反省はあるのか?交通事故が起これば、誰もが不幸に陥れられる。被害者側家族や遺族はもちろのこと、加害者側の家族でさえも、親族が犯した罪に対するどうしようもなく、やり場のない哀しみを一生涯、背負うことになる。誰も幸せになれない交通事故が、なぜ起きるのか?それは、ドライバーの罪への意識の薄さや車を運転するという責任能力への軽さが原因なのか、それは一つずつ突き詰めないといけない事ではあるが、事故に対してあまりにも軽率に捉えられるている社会を垣間見る。車社会が悪いのではなく、ハンドルを握るドライバーの意識やモラルの低下が、事故を引き起こさせる。車を運転する者として、最低限のマナーやルールを守る、これが事故を起こさない最も大切な約束事ではないだろうか?このルールを守れない人間が、ある時、死亡事故にも繋がるような大事故を起こす。いつ、どこで、誰が事故に遭遇するか分からない。それは、明日かもしれない。もしくは、数時間後かもしれない。私達は、常日頃から事故と隣り合わせで暮らしている。事故を起こせば、最も悪いのは車体の大きい自動車が高い確率で悪くなるが、車だけでなく、バイクに乗る者、自転車に跨る者、そして歩行者。皆一様に、道を歩く(走る)以上、猛省し、配慮する必要がある。年間の交通事故は、内閣府が発表した令和3年の交通事故発生件数は30万5,196件。これによる死者数は2,636人。負傷者数は、36万2,131人(死傷者数は36万4,767人)、負傷者数のうち、重傷者数は2万7,204人(7.5%)、軽傷者数は33万4,927人(92.5%)という数値(※1)が出されている。年間30万件は、あまりに多い。1日平均で考えたら約1635件(※2)となり、1分間の割合で事故が多発している計算となる。本作『FEAST 狂宴』は、ある一つの交通事故と轢き逃げ事件、そして加害者家族と被害者家族がそれぞれ交差した時に起きる人間の本質を描いたヒューマン・サスペンスだ。交通事故という日本社会も抱える問題に対して、鋭いメスを入れた本作は私達に何を問いかけているのだろうか?

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本作『FEAST 狂宴』は、フィリピンを舞台にしたドラマ作品だが、現代フィリピンが置かれている現状のフィリピンの車社会が、どうなっているのか映画の中だけの世界観では何も検討もつかないだろう。実際に、フィリピンという国が、どんな国なのか考えながら、作品を観ると、また一つ違った見方、違った見え方、違った世界を知る事が出来るのかも知れない。現在フィリピンは、高度経済成長期の真っ只中(※3)にある東南アジアに位置する発展途上国だった(過去形にする)国だ。また、日本が高度経済成長期だった1970年代、自動車の販売台数が急激(※4)に増え、一家に一台、低所得者世帯にまで車を保有する価値観が広まり、誰もが簡単に車を手に入れ、運転する時代が日本にはあった。車の販売台数、保有台数が増えた同時に、比例して増加したのが交通事故だ。結果として、日本の高度経済成長期真っ只中の昭和35年(1960年)の12月20日、道路交通法(※5)が初めて制定された。モータリゼーションの発展と共に車の保有台数は、比例するように増えて行き、昭和40年(1965年)には630万台を所有する家庭が現れ、その2年後の昭和42年(1967年)には1,000万台を突破した。車の保有台数が増加すると同時に増えるのが、社会的モラルの低いドライバー達の出現だった。これが、結果的に道路交通法という新しい法律が生まれる背景となってしまった。この日本で起きた高度経済成長期の趨勢が今、現代におけるフィリピン国内でも同様に起きていると判断できる。元々、フィリピンの交通手段と言えば、トゥクトゥク(※6)という乗り物が今でも主流的だが、近年のフィリピン高度経済成長下では、日本の昭和30年代と同じようにフィリピン国民における車の保有率が年々増えている背景にあるのだろう。それに伴い、本作の物語同様に、車とトゥクトゥクの衝突事故が問題視されている背景もまた窺い知れる。近年におけるフィリピンの交通事故死ランキングは、世界ランクでは110位前後。やはり移動手段がまだ、自動車が主体ではなく、トゥクトゥクやバイクと言った危険性の低い乗り物を乗る習慣が、この国に残っている事が分かる一方で、今後フィリピンにおける高度経済成長がますます発展するのであれば、自家用車の保有台数が増えると同時に、車を運転するドライバーも必然と増えるであろう。交通手段が自動車になる事によって、生活における利便性は確保されるが、事故は必ず増加する。交通事故を防ぐために、フィリピン人達が今しなければならない事は、社会的モラルの取得や車社会における正しいルールを身に付ける事だろう。これらを正しく行えば、事故は最小限に抑えられるだろうが、間違った認識がフィリピン社会で蔓延した時、本作に登場する人物達のように大切なひとを亡くす哀しみの一途を辿るだろう。

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交通事故の問題は、ここ日本でも非常に問題視されており、大小関係なく、日々どこかで必ず起きている。それは、世界共通の問題であり、フィリピンでも同様だ。映像も共に紹介するが、昨年末、首都マニラではなく、フィリピン中部のパナイ島で起きたバス転落事故(※8)は、悲惨であった。海外の発展途上国ではこのようなバス事故が頻繁に起きているイメージもある。

フィリピンで旅客バスが谷に転落 17人死亡、11人負傷 | TBS NEWS DIG

その一方で、日本では2016年に起きた軽井沢スキーバス転落事故(※9)や2012年に起きた関越自動車道高速バス居眠り運転事故(※10)が、近年の日本社会に衝撃を与えた重大事件だろう。これらの事件の背景には、人名無視の利益最優先のブラック企業の温床が垣間見え、バスを利用する消費者だけでなく、その企業に勤め、当日バスを運営していたドライバーもまたブラック企業の被害者という向きもできるが、ハンドルを握る者としての責務を果たせていたのかと一生、彼らに問い続けたい。日本国内における交通事故の歴史を辿ると、改めて見えて来るのは戦後日本が体験した高度経済成長期から頻繁に起きている。最も古く人々の記憶に残り、近年オカルト系のサイトや動画で頻繁に紹介されている1978年に起きた「田畑作之助ちゃんひき逃げ連れ去り事件」は、非常に悪質だ。前方不注意で3歳の男の子を轢いただけでなく、救護義務を逆手に、救急車を呼ばずに自身の車に乗せて、そのまま負傷した幼い子どもと一緒に姿を消した史上最悪な轢き逃げ事件だ。他にも、2006年に発生した福岡海の中道大橋飲酒運転事故(※11)は、今まで黙認されて来た飲酒運転への是非を問う契機となった重大事故だ。この事件での悪質性は、救護義務があるにも関わらず、加害者Aは「飲酒運転で事故を起こしたことが発覚すれば失職する」と自身の保身を考え、事故現場から逃げて、友人に身代わりも頼むも断られ、飲酒運転をしていた事実を証拠隠滅しようと大量の水を持ってくるよう頼み、飲酒の事実を打ち消そうとした悪質な交通事故だ。また、京都亀岡で2012年に起きた亀岡暴走事故(※12)もまた、世間に衝撃を与えた。20代の若いドライバーは、夜通し友達と車を走らせ、著しく睡眠が足りない中、深夜のドライブの翌朝、地元で有名な道路を走りに向かったが、運転操作を誤り、朝の集団登校をしていた小学生の列に突っ込み、大勢を死傷させた。その中には妊娠中の女性も付き添いで歩いており、世間の被害者感情、加害批判に熱が帯びた。事故原因は、運転手の遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転であった。事故原因は、飲酒運転や居眠り運転だけでなく、同じ2012年に起きた京都祇園軽ワゴン車暴走事故(※13)や前年の2011年に起きた鹿沼市クレーン車暴走事故(※14)では、運転手の持病であるてんかん発作が原因で大事故に繋がったケースもある。この時、世間で注目を浴びたのはてんかんを患ったままの自動車運転で、てんかん患者への厳しい批判が集まった。ただ、てんかん発作が悪い訳ではなく、その症状を隠して車に乗っていたドライバーの持病への軽い認識があった事実に対して悪質性を感じる。近年では、2019年に発生した大津園児死傷事故(※15)では、散歩中の幼い園児の列に車が突っ込むという大変痛ましい事故が発生したが、この事故を起こしたとされる加害女性は、事故後、全く反省の態度を示さず、世間の強い顰蹙を買った。どういう経緯で事故が起こったにせよ、起きてしまった事故に対して、どのドライバーも真摯な姿勢で猛省して欲しい限りだ。他にも、大なり小なり事故(※16)は、常に日本全国で多発しており、今はドライバー達への適性や真価が問われている。そして今、世間で注目を浴びているのが、2022年に発生した別府ひき逃げ死亡事件(※17)だ。事件を起こした八田容疑者は現在も逃亡中だ。自身が犯した罪を直視し、必ず罪を償い猛省すべきだ。逃げも隠れもしないで、正々堂々と世間に顔を出し、被害者遺族には頭を下げて、一生涯罪を償い続ける必要がある。私は、本件の重要性を世の中に知って欲しくて、本作のレビュー記事を作成する事を決意した。事故は、誰にでも起きるものだが、その場から逃げてはダメだ。逃げてしまえば、一生逃げた人は犯した罪に対して目を逸らし続ける事になる。この事件の悪質性を社会に対して訴える為に、私は筆を走らせている。もう一つ、忘れてはいけないのが、2017年に起きた東名高速夫婦死亡事故(※18)は、悪質な煽り運転が問題視され、危険運転致死傷罪が適用されるのかが争点となった裁判が起き、煽り運転への厳罰の契機となった重大事件だ。他にも伝えたい自動車事故が山ほどあるが、もう書き切れないので、一旦ここで筆を下ろすが、いつか別の記事にて事件の是非を問いたいと強く願う。いつか、悪質で悲惨な事故が1件でも減少することを心から祈る。ただ事故に対して、車のドライバーに対してだけ批判するのではなく、自転車に乗る側の人間もまた、注意しなければならない。近年は、自転車に対する法律(※18)も日増しに厳しくなる昨今。近頃、自転車に対する青切符が切られる法案(※19)が、閣議決定された。この法律の施行導入は、改正法の公布から2年以内に施行され、2026年までに実施される見込みだ。このレビューが、映画という枠を超えて、交通事故への抑止力に繋がる事を切に願う。本作『FEAST 狂宴』を制作したブリランテ・メンドーサ監督は、映画『FEAST 狂宴』において、従来の監督作品における要素でもあるセックス、暴力、政治を描く事をせず、今までの監督作品とは一線を画していると、監督自身は語る。

最後に、本作『狂宴』には、ダイニングテーブルで絢爛豪華な食卓を囲む家族たちの姿を描いている。それでも、悪質な運転をするドライバーとしての意識の低い人間が数多くいる。よりパーソナルでローカルな話だが、私自身も毎日、自転車に乗って夜勤業務のため出社するが、帰宅時の朝方から日中にかけてのドライバー達の悪質な運転が目に余る。大きな幹線道路にて、信号付き横断歩道で、歩行者や渡る人が優先にも関わらず、信号で止まらず、何台もの右折車両が我が物顔で歩行妨害を行う。また、左折巻き込み確認は初歩中の初歩にも関わらず、左折確認せず道路侵入を行うドライバーなど、ルールを無視した運転手が目立つ。早く免許剥奪されるべき人種だ。それでも、いつか加害者家族も被害者家族も笑って、同じ食卓を囲む日が訪れて欲しいと、作品は願っているのだ。それが、私達人類における平和ではないだろうか?

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映画『FEAST 狂宴』は現在、全国の劇場にて、順次上映中。

(※1)第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第1章 道路交通事故の動向 第2節 令和3年中の道路交通事故の状況https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r04kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s1_2.html#:~:text=%E4%BB%A4%E5%92%8C3%E5%B9%B4%E4%B8%AD%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BA%8B%E6%95%85%E7%99%BA%E7%94%9F%E4%BB%B6%E6%95%B0,%E7%AC%AC1%2D1%E5%9B%B3%EF%BC%89%E3%80%82(2024年3月20日)

(※2)日本では1分間に1件以上交通事故が発生!?交通事故について調べてみたhttps://smartdrive.co.jp/fleet/useful-info/traffic-accident_statistics/#:~:text=1%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%A753%E4%B8%87,%E3%81%A8%E3%80%81%E3%81%99%E3%81%94%E3%81%84%E6%95%B0%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%AD%E3%80%82(2024年3月20日)

(※3)ASEAN最注目国、急激な経済成長が始まったフィリピンについてhttps://liginc.co.jp/354454(2024年3月20日)

(※4)第2節 モータリゼーションと貿易・資本の自由化 第1項 高度成長とモータリゼーションhttps://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/entering_the_automotive_business/chapter1/section2/item1.html(2024年3月20日)

(※5)道路交通法(道交法)とは?違反の例と罰金・反則金など罰則まとめhttps://agoora.co.jp/jiko/knowledge/road-traffic-act.html(2024年3月20日)

(※6)マニラのトゥクトゥクhttps://www.howtravel.com/asia/philippines/manila/man-access/manila-tuktuk/(2024年3月20日)

(※7)フィリピンの交通事故による死亡率(推移と比較グラフ)https://graphtochart.com/health/philippines-mortality-caused-by-road-traffic-injury-per-100-000-people.php(2024年3月20日)

(※8)路線バスが谷底に転落 17人死亡 フィリピン パナイ島https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231206/k10014279871000.html(2024年3月20日)

(※9)息子が遺した1冊 ~軽井沢スキーバス事故裁判へ 父親の思い~【改訂版】https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/shougen/shougen2/(2024年3月20日)

(※10)「乗客は運転手の体調管理を知るわけがない」バス事故で17歳の娘を失った父親 “利益より命”の社会訴えるhttps://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/38832(2024年3月20日)

(※11)福岡市 海の中道大橋飲酒運転事故から17年 幼い3人犠牲https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20230825/5010021665.html(2024年3月20日)

(※12)京都 亀岡 暴走事故から11年 現場で遺族が参列し法要https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230423/k10014046541000.html(2024年3月20日)

(※13)祇園暴走10年 てんかん患者「事故起こせば厳しい非難が」、偏見への恐怖https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/771379#google_vignette(2024年3月20日)

(※14)小学生6人死亡で懲役7年 病気隠し運転、法律の想定外https://www.sankei.com/article/20230128-L5LQGOWIDFLBZKGJ3G4QTRE62Q/ (2024年3月20日)

(※15)大津市の園児ら16人死傷事故4年 警察が安全運転呼びかけhttps://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20230508/2060013214.html#:~:text=%EF%BC%94%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%AE%EF%BC%95,%E4%BA%BA%E3%81%8C%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82(2024年3月20日)

(※16)運転中の“うっかり”が招いた「悲惨な事故」4事例https://life.oricon.co.jp/rank_insurance/special/accident-response/carelessly/(2024年3月20日)

(※17)【別府ひき逃げ】事件時は執行猶予中・・意図的に追突か 異例の重要指名手配 容疑者の男とは【大分】https://tosonline.jp/news/20230915/00000002.html(2024年3月20日)

(※18)東名あおり運転事故 死亡夫婦の娘が涙「死刑よりつらいことになって」 石橋被告は法廷で何を語るかhttps://www.fnn.jp/articles/-/314491(2024年3月20日)

(※19)【道路交通法改正のポイント 2023年4月施行編】自転車ヘルメット着用や自動運転レベル4解禁についてhttps://alc.aiotcloud.co.jp/column/20230127_1(2024年3月20日)

(※20)自転車 “青切符” 悪質違反に反則金 道交法改正案を閣議決定https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240305/k10014379321000.html#:~:text=%E5%8F%8D%E5%89%87%E9%87%91%E3%81%AF5000%E5%86%86%E3%81%8B%E3%82%891%E4%B8%872000%E5%86%86%E7%A8%8B%E5%BA%A6%E3%81%AB,-%E5%8F%96%E7%B7%A0%E3%82%8A%E3%81%AF%E3%80%81%E9%80%9A%E5%8B%A4&text=%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E5%AE%98%E3%81%AE%E8%AD%A6%E5%91%8A%E3%81%AB,%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%BF%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2024年3月20日)