映画『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』突然、私達に牙を剥く

映画『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』突然、私達に牙を剥く

2024年3月24日

タイムリミットは8時間。生死を賭けたラストゲームが始まる。映画『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』

©2022 Poker Face Film Holdings Pty Ltd

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人の笑顔の裏には、何が隠さるているのか?人の裏の顔には、常に何を思っているのか?それを読み取る力があれば、どれだけ気持ちが楽になるんだろうか。人の顔の表情だけで、心の奥にある感情を読み取るのは非常に難しく、生きているだけで精一杯なのに、他者の心情を慮る行為に愚問を感じてしまう。人は、自ら自身の心の中にある気持ちを表に出そうとはせず、常に含みのある笑いをしている。それが、ポーカー・フェイスというものだ。ギャンブルや賭け事では、手の内を見せない顔、心の動揺を悟 られない表情をする顔の事をポーカー・フェイスと一言で表現するようだが、その表情を瞬時にして読み解くには、相手の懐の深層心理に迫った部分にまで自身の感情を落とし込まないと、仏頂面した相手のポーカー・フェイスの真の意味や目的を判読するのは至難の業だ。皆さんは、幼少期に花札や麻雀、ブラックジャック、大富豪、こいこい(花札の一つ)、宝引きといった子ども向けの賭け事(※1)をお正月に特別に遊んだ経験があるだろう?それが、大人になれば、パチンコ、スロット、競馬、競輪、競艇、宝くじやスポーツくじ、カジノ、オートレース、野球賭博、相撲賭博、賭け事とは少し違うが、金銭的リスクがあるものと言えば、株・FXや仮想通貨だ。特に、仮想通貨は今、絶大な人気を誇る。ギャンブルには、大きく分けてオンラインカジノ、公営ギャンブル、パチンコ・パチスロの3つがある(※2)。オンラインカジノには、バカラ、ブラックジャック、ポーカー、ルーレット、スロット、クラップス、ファンタン、大小(シックボー・タイサイ)、キノがある。また、公営ギャンブルには、競馬、競輪、オートレース、競艇、宝くじ・スポーツくじだ。ギャンブルは、一歩間違えば、転落人生に巻き込まれる一方で、一攫千金を狙って、人々がこぞって博打に金を賭ける。上手に資金を運営しながら、パチスロやスロットを楽しみ、尚且つ、数万円の掛け金で数十万円大当たりすれば、生活費やその他の諸経費を賄う事ができる。でも、それができる人は、全体の数%から数十%の一部の人間だ。残りの大多数のパチスロを好むギャンブラーは、パチンカス(※3)への成り下がる。パチンカスとは、パチンコに対して過度な依存を持ち日常生活において社会的な問題を引き起こす状態を指す言葉だが、パチンカスの末路は借金地獄、DV、人間関係の崩壊、犯罪者予備軍とマイナスなイメージが付きまとう。こんな人生を送らない為に、真っ当な人生を歩むのが一番、理にかなっている。少しでも人生から転落してしまうと、社会の信頼を一気になし崩しに損なうだろう。

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一度、賭博にハマると楽しいだけではなく、次は世紀の大当たりが来ると勘違いして(本人は、至って真剣)、ギャンブル沼にズルズルと入り込んでしまう人が大勢いる。そうなってしまうと、次に何が起こるかと言えば、生活基盤の困窮だ。仕事で得た給料は、根こそぎ博打に注ぎ込む。給料が底をつけば、次は家族、親族、親友に金を借り続ける。そういう中で、運良く大当たりすれば、ある程度は問題ないがだろうが、世の中そんなに甘くない。いつも負け続け、その都度、誰かから金を借りる。返済に首が回らなくなると、次にサラ金業者に手を出してしまう。そこで借りた金を返せれば良いが、パチンカスはそんな事気にせず、またギャンブルに明け暮れる日々を送る。もうここまで来ると、ギャンブル依存症だ。大当たりが来るまで、ずっと負け続ける。来る日も来る日も負け続け、ある時少しだけ勝ったら、次も行けるのではないかと、また賭け続ける。そして、それでも借りた金を返せず、取り立てられたら、その次に行く場所は闇金業者だ。裏社会から巨額の金を借りれば、もうそこは地獄の8丁目だ。あとは、転落人生真っ逆さま。勝っては負けて、負けては勝ってを繰り返して、少しずつ自転車操業のように返済して行くが、現状はもう追いつけなくなる。首が回らない状態が、何ヶ月も続き、最終的には自殺をするか、自己破産の手続きをして、社会的信用を失うのかの2択だ。どっちにしても、どの選択をしたとしても、ギャンブル依存に陥った本人は人として死んでるも同然だ。これが、ギャンブル依存症に陥ったパチンカスの末路だ。ギャンブルは、自身の身や人生を急速の速さで滅ぼす殺戮マシーンのようでもある。と、危険性を感じているのは私だけであろうか?ギャンブルの魅力は、世代間によって様々なようだが、それぞれの理由は以下の通りだ。「配当金(当選金)や景品が魅力」で43.5%、次は「気分転換」で36.5%、三番目は「当たった(勝った)ときのそう快感が魅力」で30.4%だった(図4)。年齢別では、20歳代で「気分転換」の理由が第一となっている。30歳代以上では、「配当金(当選金)や景品」が第一の理由となっている(60歳以上では「気分転換」と同率)。40歳代・50歳代では「当たった(勝った)ときのそう快感」(※4)と言うように、若い世代の間ではギャンブルは、余暇の遊びであったり、ちょっとした息抜きの遊びとして親しまれている。上記の私の考えは、少し偏見に近い考えだったかもしれないが、ほんの一部の人間がギャンブル沼にどハマりしていくのだろう。その大半は、ちょっとした大人の遊びとして捉えているようにも見受けられる。

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それでも、世間のほとんどの日本人が、ギャンブルや賭博を良いとは思っていない。日本では、過去にカジノ誘致が盛んに行われた時期があった。ドキュメンタリー映画『ハマのドン』ではこのカジノ誘致に巡って、政界で大きく揺れる事件が起こった一部始終を描いている。現在は、日本におけるカジノ誘致への賛成派、反対派(※5)が、二分化される事態に陥っている。ここへ来て、大阪が今、大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」にカジノの施設や国際会議場などを作り、大阪府下の経済効果を図ろうと動き出している。来る2029年、大阪カジノ(※6)が完成する予定であるが、先にその隣では今話題の大阪万博のパビリオンが建設中であるが、人類にとって根本的な課題である 「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマ(※7)に掲げているにも関わらず、不健康なイメージが付き纏うカジノを誘致する動きに、些か疑問符が右往左往する。一体、大阪はどこに向かって、舵を取っているのか、それは誰にも分からない。ギャンブルが、人の健康を良くするものとする保証や証拠を見せて欲しいものだ。信憑性が決して高くないが、ギャンブルが健康に良い(※8)という言説が確かにあるのも事実だが、信頼に欠ける内容だ。また、その逆にギャンブルが不健康(※9)であると言う言説があるのも事実だ。ギャンブルは、人の健康面だけでなく人の人生をも破壊する厄介な大人の為の娯楽だ。金銭感覚を狂わせ、他者に暴力を振るわせ、人格そのものをダメにさせる。そんな中毒性のある危険な遊戯が今、自治体を上げて肯定され、受け入れられている時代が訪れている事に戦々恐々の極みだ。近年、日本野球界を代表する現在アメリカの野球チームであるロサンゼルス・ドジャースにてメジャーリーガーとして活躍する大谷翔平選手が、窮地に陥っているのは周知の事実だろう(※)。彼の通訳者が、違法賭博で金を刷ってしまい、その上、大谷選手の口座から賭け金を借りたという話だ。それが、借りたのか、盗んだのか、真相はまだ分からない。もしかしたら、通訳者を庇って、大谷選手が嘘をついたのか、実際に口座から盗まれたのか。どちらにせよ、まずスポーツ界で違法賭博に関与していた事実だけでも、罪は重い。今後の大谷選手の選手生命にまで影響を及ぼす可能性もあると言われるほど、賭博自体が害悪な存在として周知されている。彼が選手として、いやその以前の高校時代の高校野球の選手の時、またリトルリーグの頃から培って来た30年近くに渡る実績が、たった一つの出来事ですべてが水の泡になる可能性が出てきた。その上、本人でもない人物のせいで、大きな人生のチャンスが音を立てて、目の前で崩れ去る危機もあると考えると、賭博は非常に恐ろしい。息抜きのために娯楽としてパチスロをするというアンケート回答もあるが、私から言わせれば、息抜きのために賭博をするのであれば、他にも息抜きのための娯楽はたくさんあるはずだ。自ら好き好んで危険な遊戯に手を染めようとする行動が、不思議で仕方ない。ただ、今回は野球界追放(まだ処分は決定していないが)だけで免れるのであれば、処分としてまだ優しい方かもしれない。なぜなら、皆さんは2004年に起きた元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件(※)を覚えているだろうか?事件の種類や様態は少し異なるが、選手時代の金銭感覚を持ったまま、選手引退後、豪遊費等に多額を注ぎ込み、闇金業者にまで手を染め、借金返済で首が回らなくなり、選手の控え室に忍び込み窃盗を繰り返し、挙句の果てに、借金を申し込んだが断られてしまったので、自身の家政婦を殺して約175万円を盗んだ強盗殺人の罪に問われ、現在無期懲役で服役中だ。人生は、何が起きるか分からない。転落人生は、いつも近くにある。今後の大谷選手の処分がどうなるか分からないが、それ相当の処分は下されるはずだ。そこに重いも軽いも関係ないが、それでも、罪を犯すという事は、どんな事なのか、この事件を通して、再度思い知られされるだろう。少し狭い話になるが、私の身近の方には大阪のIR誘致を賛成する人物がいる。その声を聞いて、私は我が耳を疑った。今改めて、大谷選手や彼の通訳者の身の上に起きている出来事について、私達は考える必要がある。本作『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』を制作した監督のラッセル・クロウは、あるインタビューにて、本作のセリフについて言及している。

Crowe:”I’m not necessarily sure that I’m the right person to ask for wisdom, but I do know my job. I understand it. So the very last line of the movie is actually something that my dad said to my niece when she was going through a particularly hard period of her life.I probably – like most children – too readily dismissed a lot of my father’s homespun wisdoms. It was in the post-production of the movie, that I reheard that line because my niece actually said it at a memorial for my dad. I just… found it to be profound.”(※12)

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クロウ:「私が知恵を求めるのにふさわしい人間であるか分かりませんが、私は自分の仕事を知っています。つまり、映画の最後のセリフは、実際に私の父が姪に言った事です。彼女は、人生において困難な時間を過ごしていた時期もありました。恐らく、ほとんどの子供たちと同じように、私も父の素朴な知恵や助言の多くを簡単に否定して来た過去があります。映画のポストプロダクション中、そのセリフを思い出したのは、私の姪が父の追悼式で実際にその言葉を言ったからです。奥が深いと実感しました。」そのセリフとは、「グラスが、満杯か半分かで判断する人たちを気にする必要は無い。グラスはいつでも、補充できる事を知るだけでいい。」だ。人生は、0か100かで判断するものでは無く、人生は常に数字は上下するもので、水はいつでも補充もできれば、減らす事もできる。柔軟性を持って、物事を捉える必要がある。そこにあるかないか、有罪か無罪かで判断するのではなく、より広い視野を持って、コップの底から上から側面から、あらゆる角度で注視する事ができると、諭されているようでもある。

最後に、映画『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』は、オンラインポーカーゲームの開発で成功をおさめた大富豪の男が、そのオンラインゲームを通して、自身の人生が思わぬ展開へと転がって行く姿を描いたサスペンス映画だ。ある意味、自業自得という言葉が似合いそうでもあるが、人生の転落はいつどのタイミングで起きるか分からない。賭博は、ポーカー・フェイスで何食わぬ顔をして私達に近付いてくる。賭博の裏の顔は、私達には分からない。その先で一体何が起きるのか予想もできないが、今世間を揺るがす大谷翔平選手の件を踏まえても、賭博は人間関係、交友関係、実績、信頼、そして人生そのものをも破滅させる。最初は、手の内を見せず、心の動揺を悟 られない表情をしているが、ある時を境に、ポーカー・フェイスという皮を被った賭博は突然、私達に牙を剥く。

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映画『ポーカー・フェイス 裏切りのカード』は現在、全国の劇場にて上映中。

(※1)ギャンブル大国 日本!?大人はもちろん子供まで、江戸時代は空前絶後の賭け事ブームだった?https://mag.japaaan.com/archives/187082(2024年3月21日)

(※2)人気のギャンブル15種類!還元率の比較やおすすめも紹介https://gekiatsu-casino.com/column/gamble-list/(2024年3月21日)

(※3)パチンカスの末路が悲惨ってホント?人生を壊す悲惨な末路の実態を解説!https://gaten.info/career/pachinkasu-matsuro/(2024年3月21日)

(※4)「ギャンブルに関する世論調査」結果の概要https://www.crs.or.jp/backno/old/No587/5872.htm(2024年3月23日)

(※5)日本にカジノを作るのに賛成?反対?200人にアンケートhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000069274.html(2024年3月23日)

(※6)大阪カジノ認定 万博の理念にもそぐわないhttps://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230425-OYT1T50180/(2024年3月23日)

(※7)「10歳若返り」未来の健康を提案 大阪ヘルスケアパビリオンhttps://www.sankei.com/article/20230202-VPXFZHIUCFJXDG5AQKFG3IZMDI/(2024年3月24日)

(※8)ギャンブルは健康に良いのですhttps://www.onlinecasinofan.com/gambleforgoodhealth-10sep09/(2024年3月24日)

(※9)ギャンブル等依存症でお困りの皆様へhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/(2024年3月24日)

(※10)「生涯追放された」大谷翔平、水原通訳の賭博関与で選手生命が絶たれる!? 米メディア「彼を見ればわかるが…」【海外の反応】https://www.baseballchannel.jp/mlb/175014/(2024年3月24日)

(※11)小川博受刑者 プロ野球選手から強盗殺人犯に 獄中から知人へ手紙「なぜあんなことをしてしまったのか」https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/02/22/kiji/20220222s00041000474000c.html(2024年3月24日)

(※12)Russell Crowe reveals the poignant nod to his late father John Alexander in his new Stan Original Film Poker Facehttps://nine.com.au/entertainment/latest/russell-crowe-stan-poker-face-late-dad-father-interview/7af4f4bd-3a5a-4a04-8421-c772d8c4ac55(2024年3月24日)