イタリア映画祭 2023 イタリア映画には、数々の名作がある

イタリア映画祭 2023 イタリア映画には、数々の名作がある

2023年7月22日

イタリア映画祭 2023 オンライン上映 第1部

2001年に始まり、今年で23回目を迎える「イタリア映画祭 2023」。毎年、新進気鋭な作品と監督が集まり、格式高い映画祭となっている。今年もまた、目玉となるマルコ・ベロッキオ監督の超長編を筆頭に、開催された。残念ながら、東京会場(5.2[火]~7[日])と大阪会場(6.10[土]・11[日])の2都市による劇場上映、また第1部のオンライン上映(6.15[木]~7.17[月・祝])は、幕を下ろしてしまったが、第2部のオンライン上映が、本日2023年7月20日(木)から8月20日(日)まで開催中。

映画『ノスタルジア(Nostalgia)』マリオ・マルトーネ監督。2022年。

一言レビュー:40年振りに故郷に帰って来た男が体験する人生譚は、まるで日本で言う浦島太郎的な物語だ。昔故郷て経験した出来事、過去に会って来た懐かしい人々も、それはすべて過ぎ去りし遠い記憶。遠い青春時代で起きた日々の事象はすべて、幻に過ぎない。今目の前に横たわっている出来事は、ただの現実。それから逃れることも、隠れることもできない。そんな中、主人公の男は子供の頃に包まれた故郷への哀愁や郷愁、懐古的想念が彼を襲う。何十年と時を隔てたホームタウンの様相は、時代や時間と共に大きく変貌を遂げている。過去に秘密を抱えた、それも重い十字架を背負った男は、自身の辛い過去と対峙しながら、過ぎ去りし日々を懺悔する。私もまた、自身の過去と決別をしたく、若い時分の頃、故郷と家族と、他者との関係性を捨てて、地元を後にした経験がある。今までの人生をリセットして、まったく新しい生き方ができるのであればと、田舎を立ち去ったが、ある意味、その新しい人生を謳歌しつつ、それほど変わってなかったと振り返って、今は思う。嫌な思い出と立ち向かわなければならないと憂鬱になる反面、何も変わり栄えしない故郷の様子はある意味、帰参者を安心させてくれる存在だ。それが、故郷というものだ。ここに興味深い資料がある(※1)。昨年2022年に発表された若者の田園地帯(田舎)への帰郷に対するネガティブな要因についての文献だ。ここから見えてくるのは、都会に暮らす事、田舎で人生を過ごす事。これら二項対立する理由の中で、若者たちが今の社会をどう見つめているのかを、学術的に記した読み物だ。そして、本作を監督したマリオ・マルトーネは、イタリア映画祭の常連だ。過去に、映画『レオパルディ』が、「イタリア映画祭2015」に。映画『カプリ島のレボリューション』が、「イタリア映画祭2019」で。映画『笑いの王』が、「イタリア映画祭2022」にて、上映されている。これらの作品が日本で紹介されている一方、第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門にて、出品作品された映画『The Mayor of Rione Sanita(2019年)』や第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門にて、出品作品された映画『Qui rido io(2021年)』など、まだまだ紹介されていない作品は、存在する。マリオ・マルトーネ氏が1985年に監督としてデビューして以来、同監督が制作した作品はいくつもある。2015年頃に発表した映画『レオパルディ』を境として、この作品以前からコンスタントに制作している。85年から監督として活動しているにも関わらず、この監督本人や作品の紹介が、映画祭止まりなのは非常に勿体ない。ザッと数えただけでも、10作以上の作品を制作しているからこそ、いつか同監督の特集上映が組まれたら、それはそれで面白いかもしれない。それでも、様々な障壁があるのは事実。いつか、イタリアだけでなく、日本には紹介されていない各国の多くの監督や作品に陽の目が当たる事を願わざるを得ない。以下、2010年以前の作品リスト。

『Perfidi incanti(1985)』『Nella città barocca(1985)』『Morte di un matematico napoletano(1992年)』『Rasoi(1993年)』『愛に戸惑って/L’amore molesto(1995年)』『戦争のリハーサル/Teatro di guerra(1998年)』『Lulu(2001年)』『L’odore del sangue(2004年)』『われわれは信じていた Noi credevamo(2010年)

映画『奇妙なこと(La stranezza)』ロベルト・アンドー監督。2022年。

一言レビュー:物語は、芸術性と娯楽性を兼ね備えるロベルト・アンドー監督の新作。 1934年のノーベル文学賞受賞者であり、戯曲『作者を探す六人の登場人物』で知られる作家・劇作家のルイージ・ピランデッロを主人公にしたお話。劇作家のルイージ・ピランデッロは、イタリアを代表する文筆家。彼は、シチリア島アグリジェント郊外の小村カオスで生まれた。もちろん、映画の舞台もまた、シチリア島だ。様々な紆余曲折した人生を送りながら、ピランデルロは20代前半頃には、筆一本で生計を立てようと決意。ドイツに留学していた彼は、文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの『ローマ悲歌』の翻訳を携わて、故郷に戻ったピランデルロは、文学で生活していこうと考え始めたと言われている。1860年から1880年頃と言えば、イタリアはイタリア王国(※1)が建設された頃、母国の未来に皆、胸を弾ませ、大きな期待、大きな希望を抱いていた時代だったろう。この時代には有名なスローガンが、制定されている。

(一部引用)「1861年に成立したイタリア王国は、当時の領土で2200万の人口を擁した。トリノを州都とし、憲法はサルデーニャ王国憲法(通称アルベルト憲章)がそのまま用いられた。最初の議会は1849年に開かれた第一議会からの通算で第八議会と数えられ、国王は新国家となったにもかかわらず「一世」の称号を頑なに拒否し、ヴィットリオ=エマヌエレ2世と名のり続けた。これらはみな、イタリアの統一がサルデーニャ王国の拡張の結果であることを示していた。 「イタリアは作られたが、イタリア人を作るのはこれからだ」。いつしかイタリアでは、このスローガンが語られるようになった。」となっている。

ただ、映画の設定は、ピランデルロの若かりし頃の話ではなく、恐らく、晩年の彼の人生のほんの一部を物語として映像化している。ピランデルロが晩年、どんな生活を送っていたのか、日本人は皆、誰一人として知らないだろう。ピランデルロは、1909年に『I Vecchi e I Giovani』の最初の部分が、エピソード形式で出版された。この小説には、1893年から1894年にかけ、ファッシ・シチリアーニの失敗と弾圧の歴史を辿っている。1913年に、この小説が出版された時、彼は結婚50周年記念に小説の写しを両親に贈り、次のような献辞を添えていた。「彼らの名前、ステファノとカテリーナは英雄的に生きています。」だが、彼の私生活は妻のアントニエッタの猜疑心と執拗な嫉妬によって毒され始めていた。アントニエッタは、夫に対して身体的に暴力的になり始めたと言われている。その後、第一次世界大戦が勃発すると、彼の息子ステファノは志願兵役に。彼らピランデッロ家族にも戦争の陰は、忍び寄っていた。本作『奇妙なこと』は、今記した時代の少し前の彼の陽気で、明るい人生を描写したのだろう。イタリア王国建設後、第一次世界大戦が始まる直前の、ファシストが台頭する前の、最もイタリアらしい明るかった時代のちょっとした風景を描いている。この時代のイタリアを、ピランデッロの最晩年を通して描かれるのは、人生賛歌。人としての人生の美しさを、コメディを交えてコミカルに描く。この作品を監督したのは、ロベルト・アンドーというイタリア人監督だが、彼の作品は比較的、国内にも紹介されており、イタリアでも日本でも近年、著名な監督の一人だ。代表作に映画『そして、デブノーの森へ(2007)』『ローマに消えた男(2015)』『修道士は沈黙する(2018)』『盗まれたカラヴァッジョ(2020)』など、非常に堅実な人間ドラマを得意とするイタリア人監督だ。他に、日本に紹介されていない作品も数作ある。こちらが、未配給作品達だ。『Diario sin fecha(1995)』『The Prince’s Manuscript/Il manoscritto del principe(2000)』『Strange Crime/Sotto false nome/Le prix du désir(2004)』『Secret Journey/Viaggio segreto(2006)』『The Hidden Boy/Il bambino nascosto(2021)』。また、ロベルト・アンドー監督が正式にデビューしたのは、イタリア人の巨匠ジュゼッペ・トルナトーレをプロデューサーにした2000年の映画『The Prince’s Manuscript/Il manoscritto del principe(2000)』からだ。1995年以前には、1985年に舞台監督としてイタロ・カルヴィーノの原作とレナート・グットゥーゾが描いた人形を基にした人形劇作品『La foresta-radice- labirinto』という作品でデビューしている。もう少しで、彼の活動が40年経とうとしている。この監督作品が、もっと日本で紹介されればと願う

映画『デルタ(Delta)』ミケーレ・ヴァンヌッチ監督。2022年。

一言レビュー:物語の舞台は、厚く濃い霧に包まれたポー川のデルタ地帯。外国から移ってきた移民一家フロリアン家は、密漁で生計を立てていた。一方で、地元住民は自身の川を保護するため密漁を取り締まろうと奮闘する。移民一家は、そんな市民たちの監視をものともしない。住民と一家の間で対立は次第に高まる中、ついには危機的な事態に陥る。悲劇は、必ず繰り返される。この移民問題は、イタリアだけの問題ではないが、この作品を通して思い知らさられるのは、どこの国にもある共通の問題であると言うこと。近頃フランスでは、この移民問題が引き金となり、大きなデモ、そして暴動問題へと発展した。事の発端は、車の停止の指示に従わなかった北アフリカ系の少年(17)を、警官が射殺したことがきっかけ。職務質問や車の停止を聞くと、ほんの些細な事で、警察の指示にさえ従っておけば…と考える人がいるかもしれないが、移民の若者の中には、その場を逃げないといけなかったり、警察の指示に従えない者がいるのも事実だ。在留許可が大幅に過ぎて、不法滞在している可能性が最も大きい。日本では、そんな彼らを一言「自業自得」と吐き捨てる風潮があるが、果たして自業自得なのだろうか?彼ら移民が、移民先で暮らして行きたいと強く願う気持ちは、平和しか知らない今の日本人には到底、理解できない所だ。もっと、彼らに歩み寄るという行為が、必要なのかもしれない。そんなここ日本でも、近い将来、移民政策が本格化(※4)される。ただ、もう少し遡れば、2019年に施行された「改正入管法」(※5)からスタートしたと入れている。今、移民問題は、日本やイタリア、フランスのみならず、どこの国でも起こっている事は「分断」の構図だ。この分かり合えなさという市民同士、国民同士、そして人間同士の「分裂」を解消するために、私達が出来ることは相手に歩み寄ること、そして理解し合うこと。さもなくば、悲劇は必ず繰り返される運命にある。

映画『あなたのもとに走る(Corro da te)』リッカルド・ミラーニ監督。2022年。

一言レビュー:50歳のジャンニは、ハンサムな独身のスポーツマンで、有名な靴ブランドを経営している。彼のブームは、女性を虜にすることに情熱を注ぐこと。そんなプレイボーイの彼の最新のターゲットは、車椅子に乗るキアラ。彼女を誘惑するために、自身も車椅子を使用していると必死に偽装するゲスい男。でも、彼女と時間を共有すればするほど、彼の考え方に少しずつ変化が生まれ始める。このジャンニという男は、正直、いけ好かない男だ。自身に自信があるのか知らないし勝手ではあるが、一人の女性を虜をするための手段の選ばない性格が下衆過ぎる。これは、お国柄の男性自身の特性が国毎によって違うのか分からないが、私個人としては、彼の行動に目を疑ってしまう。もし、車椅子ユーザーではなく、健常者であると、相手の女性がその事実を知った時、どんな事が起きるのか、エセ車椅子ユーザーになる前に、想像できないのかと失笑してしまう。ただ、その彼女と時間を共にする事で、価値観や考え方が変わる過程を丁寧に描いている点は好感が持てるが、それでもその感情を車椅子に乗る前から養えられてなかったのかと、問うてしまいそうだ。これに似た構図の映画があると考えていたら、フランス映画『奇人たちの晩餐会』を思い出す。この映画は、週に一回、自身が前の週から今週までの7日間に出会った奇人変人をパーティーに招待して、影で仲間内と彼らをバカにするというトンデモナイ下品な物語。両者は、他人のマイナス面(マイナスばかりではないが…)を上手に利用して、相手の心に付けこもうとしたり、相手を下に見て、自身の存在を高めようとする小賢しい男ばかりが描写されている。日本では、どちらも有り得ない話ではあるが、日本から遠く離れたヨーロッパの価値観では、もしかしたら、当たり前の事かもしれない。そんな彼らの姿を反面教師にして、相手の心を傷付けない人間であり続けることが、生きて行く上で大切な事だ。それでも、本作『あなたのもとに走る』は、爽快なロマンスコメディに仕上がっているのは、監督自身の演出力のおかげだろう。作品を通して、人を強く想うという事を再度、考えてしまうコメディ映画だ。

映画『乾いたローマ(Siccita)』パオロ・ビルツィ監督。2022年。

一言レビュー:非常に斬新な物語で進行していく映画『乾いたローマ』は、ここ日本でも有りうる作風なだけに、近未来のイタリア・ローマという視点を忘れてしまいそうだ。題名を『乾いた東京』として改題して(少し安直か…)、何か物語を生み出せそうでもある。さて、本作のあらすじは、3年経っても雨が降らないローマ。その地に住む市民はどうなるか?という壮大な仮定のテーマで挑むのは、映画『人間の値打ち』という今のイタリア社会に生きる人々への痛烈な皮肉を描いた群像劇のパオロ・ヴィルズィ監督。本作は、大都市の危急の問題に大胆な設定と大予算で挑んだ意欲作だ。脱獄した囚人、タクシー運転手、病院の医師、インフルエンサーの美女、SNSに熱中する中年男性、移民の青年ら。水不足で生活様式が変わり、社会的格差が拡大する首都。老いも若きも富者も貧者も関係なく、果たして誰もが救済されるその時が訪れるだろうか?もし、日本がこの映画と同じ状況に陥れられたら、どうなるだろうか?この問題(※6)は、日本も例外ではないほど、今あらゆる方面から問題視されている。現代社会が、大人から子どもまで、全世代に価値観として覚えようとさせている「SDGs問題」(※7)にまで、話題は発展して行くだろう。水不足が原因の近未来は、日本でも必ず訪れる。確かに、今現在でも、水不足の問題は尽きないが、これ迄以上の緊急事態が襲ってくる事も想定しておく必要がある事を肝に銘じたい。地球の環境問題、自然破壊問題は、全人類の課題だ。「水の惑星」(※8)と呼ばれた地球が今後、この映画のタイトルのように「乾いた惑星」「水のない惑星」なんて呼ばれる時が、必ず来る。近年、世界ではエコテロリストが暗躍しており、日本国内でも批判が相次いでいるが、この批判に対して辛辣な声を上げる記事(※9)もある。非難する輩は、環境のこと、地球のこと、そして現状と未来について何も分かってない「バカな人間」と憤っている記事だ。もう、地球の終焉も秒読み段階かもしれない…。

映画『スイングライド(Calcinculo)』キアラ・ベッロージ監督。2022年。

一言レビュー:本作『スイングライド』は、ある思春期の少女の人生観に焦点を当てた物語。両親と二人の妹と郊外に住む15歳のベネデッタ。彼女は日中、ほぼ家と学校を往復するだけの生活。夜中には、冷蔵庫を漁る習慣があり、母親とは正反対に肥満体型だった。ある時、彼女の街に移動式遊園地がやって来る。その遊園地の一員で、トランスジェンダーのアマンダとの出会いが、ベネデッタの日常に刺激を与えていく。社会や家族から疎外された二人のはみ出し者の少女が出会い、小さな旅を繰り広げならがら、心と体の成長を丹念に描く。ガール・ミーツ・ガール映画。本作を観て思い出したのが、映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』こちらは、スクールカースト最下位の冴えないガリ勉女子が、高校の卒業前夜に最後の学生生活を盛り上げようと、羽目を外す物語だが、今まで遊んだことが無い少女が一夜で「遊び」を習得出来るはずもなく、グダグダと夜の世界に引きずり込まれそうになる姿を描いた青春映画。この作品に登場する彼女たちのように、社会から世間から、家族からはみ出してしまった少年少女は沢山いる。本作『スイングライド』に登場する二人もまた、そんな姿を纏った少女だ。社会は、彼女たちを救おうとはしてくれず、時間だけが無情にも過ぎ去る。彼女たちは、社会に取り残されないように、必死にその片隅にしがみつく。まるで、そこが自身の居場所であるかのように。本作を監督したのは、長編2作目となるキアラ・ベッロージという若手女性監督だ。女性ならではの視点から描かれた社会の底辺にいる少女を丁寧に表現した。肥満体型で、貧困の世界で喘ぐ少女と言えば、映画『パティ・ケイク$』。この作品に登場する少女パトリシアは、ラップの世界の頂上を目指したアツい女の子だ。映画『スイングライド』に登場するベネデッタも、何かに打ち込める、夢中になれる事を願わざるを得ない。

短編映画『タイガー・ボーイ(Tiger Boy)』ガブリエーレ・マイネッティ監督。2012年

9歳の少年マッテオ。彼は、ローマ郊外のレスラーであるザ・タイガーと同じヒーローマスクを作り、日夜被り続けている。少年は、一度マスクをすると外しません。時に、単なる彼のワガママのように写る事もありますが、実際には誰にも聞こえていない心の助けを求め、叫んでいる。プロレスに熱狂する余り、男の子の日常がまるでプロレスの世界であるかのよう生き生き活写する。20分という短編でありながら、男の子は自身の素顔を誰にも見せない。心も体も、タイガー・マスクのようなヒーローになれるよう、日々マスクを被る。でも、誰もその子の心の叫びは聞こえない。少年自身も、誰にも聞かさないようにマスクを被っているようだ。そのマスクが、少年自身の、少年の心を覆い隠す。あのタイガー・マスクが、少年の頭からスッポリ抜き取られた瞬間、男の子は大人の階段を登り、心の成長を見せる事だろう。いつ、そのマスクを外すのか?マスクを取ったその先に、待ち受けるものとは?監督は、映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(215)』や映画『フリークスアウト(2021)』を制作したイタリアの若手監督ガブリエーレ・マイネッティだ。もう既に、長短編合わせて9作品を制作しているイタリアで注目株のフィルム・メーカー。これからの活躍に、益々期待が掛かるイタリア人監督の一人だ。以下、作品リスト

長編作品:『Lo chiamavano Jeeg Robot(2015)』『Freaks Out(2021)』

短編作品:『Itinerario tra suono e immagine(2003)』『Il produttore(2004)』『Ultima spiaggia(2005)』『Basette(2008)』『Love in Central Park(2010)』『Tiger Boy(2012)』『Ningyo(2016)』

短編映画『差し出がましいのですが(Se posso permettermi)』マルコ・ベロッキオ監督。2021年。

イタリアを代表する巨匠監督マルコ・ベロッキオの短編作品。日本語タイトルのように「差し出がましい」一人の男が、道行く女性たちに少し一言、声を掛ける。カフェで、通りすがりの道で、レストランで、従業員に、待合室で、「差し出がましいのですが…」と、お節介にも程があるほど、少し踏み込んだ会話を初対面の女性に話し掛ける男。第三者の視点から見れば、単なる「お節介」の域では許されない。これを日本でしてしまうと、変態の域で気持ち悪がられる。謎の男の行動が、まったく読めない。でも、このいらぬお世話が、彼自身の良い所かも知れない。ある種、女性の至る所を観察して、声を掛けるのは彼にとっては優しさであり、親切心から来る余計なお世話だ。男が求めるのは、単なるお喋り。でも、社会が彼を許そうとしない。それでも、お節介な男が、今日も行く。道行く女性に「僭越ながら…」と、道を行く…。ベロッキオ監督は、本作を通して、男の孤独、ないしは人々の孤独を描いたのだろう。皆、誰かと他愛ない会話がしたい反面、世間はそれを許容しない。親しい会話は、知り合い同士ですればいいものだが、赤の他人と交流を持ちたい理由はなんであろうか?自身は、誰とも関係性を持ちたくない性分でもあるから、この男の行動も、監督の意図も分からない。この「差し出がましさ」の奥にあるのは、人のそこはかとない奥床しさだろうか?ちょっと今日は、余計なお節介でもしてみようか…

映画が面白いのは、ハリウッド作品やアメコミ映画だけではない。各国の精鋭な映画人が、凌ぎを削って、傑作から良作まで、幅広いジャンルを取り扱いながら、作品を世界に発信している。今回、イタリア映画祭なので、イタリア映画が主たるテーマであるが、ここで紹介されたイタリア映画は全体の数パーセントだ。日本に届いていない作品が山ほど、ゴロゴロ眠っている事を覚えておきたい。監督のみならず、それぞれの作品に出演している役者たちの演技も非常に輝いており、どの作品も印象的だ。過去には多くの傑作と呼ばれるイタリア映画が存在していたが、近年では一般の劇場では、なかなか流されない現代イタリア映画を、自身の肌で感じて頂きたい。これを機に、戦後イタリアで起きたネオリアリスモの作品や『ベリッシマ』『ブーベの恋人』『鉄道員』『悲しみは星影と共に』『熊座の淡き星影』『禁じられた遊び』など、数々の名作にも触れて欲しいと願う

イタリア映画祭 2023 オンライン上映 第2部』は、2023年7月20日(木)から8月20日(日)まで開催中。

(※1)ネガティブな要因をきっかけとする若者の帰郷・定住プロセスと心理変化https://www.jstage.jst.go.jp/article/arfe/58/2/58_59/_html/-char/ja(2023年7月19日

(※2)イタリア王国https://www.y-history.net/appendix/wh1202-096.html(2023年7月20日

(※3)フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招くhttps://toyokeizai.net/articles/-/685729?page=5(2023年7月20日

(※4)2030年のビジョン ― 点的政策から面的政策へhttps://www.keidanren.or.jp/policy/2022/016_honbun.html(2023年7月20日

(※5)移民問題とは? 難民との違いや日本と諸外国の移民政策を知ろうhttps://www.worldvision.jp/children/crisis_07.html#d0e9d87eb78fa54e47cd213ca7606442(2023年7月20日)

(※6)【日本も例外じゃない】21世紀の地球規模の課題「水問題」のいまhttps://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0050/(2023年7月20日

(※7)持続可能な開発目標・SDGsとは?17の国際目標やターゲットなどを簡単に解説https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/(2023年7月20日

(※8)地球が水の惑星(わくせい)といわれるのはなぜ?https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/citizenship/pks/library/009earth/earth004.html(2023年7月20日)

(※9)世界はもうすぐ終わるのに、バカなみんなはわかっていない…環境保護団体がテロ活動に走る根本原因https://president.jp/articles/-/67764(2023年7月20日)