映画『HOW TO BLOW UP』今日から出来る事を模索しなければならない

映画『HOW TO BLOW UP』今日から出来る事を模索しなければならない

2024年7月3日

正義か、テロリストか。映画『HOW TO BLOW UP』

©Wild West LLC 2022

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環境破壊は、今も秒単位で世界中で起きている問題だ。これを書く筆者もまた、自身が気付かぬうち、もしくは認知している範囲でも、生活するために進んで環境破壊を平気に行っている事だろう。それは、私自身に限らず、隣人も、そのまた隣人も、隣町、隣の県、隣国、世界中の人々が日夜、生活する為には欠かせない行動が、すべて環境破壊へと繋がる些細な出来事ではあるが、これが数百、数千、数万と数が大きくなればなるほど、その破壊力は数十万倍へと膨れ上がり、誰も止められない状況が今だ。地球上の至る所で、自然が破壊され、環境が脅かされ、絶滅危惧種の種類(※1)が年々、増えている。人によれば、仕方がないと腹を括る方もいれば、これは何とかしなければと奔走する方もいるだろうし、遠い国が抱えている絶滅危惧種の問題に対して、日本にいる私達ができる事は何も無く、どちからと言えば、どうでもいいと思っている若年層もいるであろう。ただ、今目の前で起きている事は、紛れもない事実だ。刻一刻と、多くの種が途絶えている。動物たちを保護しようと、懸命に活動する団体もいるが、到底、追いつける取り組みではない。それに比べて、環境破壊、地球温暖化、絶滅危惧種の消滅は今も進んでいる。たとえば、有名な絶滅危惧種の動物でいえば、エジプトリクガメ、オランウータン、シロサイ、スマトラサイ、ソデグロヅル、ヨーロッパウナギ、アジアゾウ、ガラパゴスペンギン、チンパンジー、トラ、マレーバク、レッサーパンダ、ワオキツネザル、ジャイアントパンダ、ツキノワグマ、ホッキョクグマクロマグロと、人気の動物から聞き覚えのある動物まで、目を疑うように動物たちの種の繁栄の危機が、すぐ目の前まで迫っている。また、国内の絶滅危惧種で有名な動物も一緒に紹介しておく。日本では、イリオモテヤマネコ、コウノトリ、ジュゴン、トキ、ヤンバルクイナ、ラッコ、ハヤブサ、エゾナキウサギ、トド、アワビなど、動物園や水族館で子ども達から絶大の人気を得ている陸と海の動物達が今、国内の絶滅危惧種として不安視されている現実がある。これらに関して数多くの原因がある中、一つ原因を挙げるとするなら、人間たちの手による自然破壊、環境破壊が大きな要因となっているだろう。大まかに分けると7つの原因が、挙げられている。海洋環境保全、化学物質・有害廃棄物の越境移動、オゾン層の保護、生物多様性、野生動植物、森林、砂漠化、酸性雨(※2)が代表的ではあるが、より身近な事柄をチョイスするなら、工場排ガス・自動車排気による大気汚染、二酸化炭素の過排出による地球温暖化、海洋ゴミなどによる海洋汚染、土壌汚染、水質汚染が問題視されているが、これらを私達一人一人の気付きや配慮で軽減させられる事はできる。一人の行動は微々たるものではあるが、この一人が二人とな、10人となり、100人となり、1000人となった膨大な数になった時、環境への変化は大きく変動するであろう。まずは、一人の気付きや計らいが、世界的規模の環境破壊を減少させる大きな一歩となる。映画『HOW TO BLOW UP』は、環境破壊に人生を狂わされた若き環境活動家たちが、テキサス州の石油精製工場を爆弾で破壊する作戦を企てる。彼らの過激な決意は、友人や恋人たちを巻き込みながら予期せぬ混乱を招いていく若者達の刹那的な生き様をスリリングにアクション映画だ。先程、絶滅危惧種の種類を挙げたが、その中にあったアワビを一例にあげると、2022年クロアワビという種類(※4)の一つが、絶滅危惧種としてリストに登録されたばかり。そこで、ある企業が今、絶滅を阻止すべく養殖事業を始めている。次の世代に、種を残すのは非常に困難を極めるが、一つ一つの積み重ねが絶滅危惧種に対する保護を可能にさせている。人類の便利に暮らせる世界が構築される毎に、必ず種として絶滅していく動物や生物がいる事も事実であり、この現状に対して、私達一人一人が何に気を付け、何に取り組むかによって、未来の自然環境はガラッと大きく変わる。今という未来に今を継承するには、私達が今、何をすべきか何度も議論を重ねる必要があるのかもしれない。

©Wild West LLC 2022

世界の環境問題に対して、いち早く警鐘を鳴らした人物は、1907年に生を受け、1964年に逝去された世界で初めての環境活動家として活動した海洋生物学者兼作家で有名となった女性レイチェル・カーソン(※5)が、まず最初に挙げられる。彼女は生前、名著「沈黙の春」や「センス・オブ・ワンダー」と言った環境や自然に関する書籍を出版し、世界的に注目を浴びた人物だ。彼女が世界中に確実に影響を与え、アメリカでは、カーソンが出版した「沈黙の春」の影響で、70年に環境保護庁が作られ、環境保護運動が始まった。また、日本でも翌年、環境庁(今の環境省)が作られ、環境保護への関心が高まった時代だ。1970年代は、同時多発的に世界中で環境保護運動が沸き起こった最初期の時代として認知されており、70年に始まったアースデー(地球環境)を守る為に行動する日)(もしくは、地球の日と呼ばれる)や、環境問題に関する初の政府間会合として72年にスウェーデンで国連人間環境会議が開かれた。レイチェル・カーソンの突然の登場は、世界中に「環境破壊」や「環境保護」と言った概念を植え付けさせた大きな契機となっており、彼女が著書「センス・オブ・ワンダー」の中で残した言葉「私は、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭を悩ませている親にとっても、〈知る〉ことは〈感じる〉ことの半分も重要ではないと固く信じています」は、今でも深いメッセージとして環境保護教育において一つの教材として子ども達に教え伝えられている。一方で、日本にも同じように環境保護に対する活動家の始祖はいる。たとえば、前川辰男氏、宮脇昭氏、黒澤酉蔵氏と、それぞれが素晴らしい経歴を持ち、社会に目まぐるしい変化を与え、自然保護活動に邁進した。近年、自然環境保全への取り組みに力を入れるようになって来たと言われるようになっており、世界遺産地域の保全、自然公園の特別保護地区の保全、森林生態系保護地域の保全、自然公園の指定、海中公園地区の指定、公園区域及び公園計画の見直し、乗入れ規制地域の指定、生物多様性の保全、野生生物の保護・管理、鳥獣保護及狩猟二関スル法律(鳥獣保護法)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)、ナショナル・トラスト活動(※6)と幅広く自然保護活動を行い、緑豊かな日本の自然を保護しようと活発に動いている。近頃、貧困をなくそう、飢餓をゼロに、すべての人に健康と福祉を、質の高い教育をみんなに、ジェンダー平等を実現しよう、安全な水とトイレを世界中に、エネルギーをみんなに。そしてクリーンに、働きがいも経済成長も、産業と技術革新の基盤を作ろう、人や国の不平等をなくそう、住み続けられるまちづくりを、つくる責任、つかう責任、気候変動に具体的な対策を、海の豊かさを守ろう、陸の豊かさも守ろう、平和と公正をすべての人に、パートナーシップで目標を達成しようと17個の目標を掲げたSDGs(※7)という言葉が社会に広まりつつある中、自然環境保護だけでなく、人間が平等に等しく暮らせる世界を構築しようとする考え方が、社会的なトレンド入りしている。

©Wild West LLC 2022

これら自然保護団体の活動と同時並行として世界的に出現したのが、過激派による自然保護を訴えるテロ行為を主な活動とする集団だ。そんな集団をエコテロリスト(もしくは、エコテロリズム)と呼び、国際的に著名な団体には1972年に設立した動物解放戦線が最も古く、次に1992年に設立した地球解放戦線、そしてハンティンドンの動物虐待阻止、シーシェパードと続き、多くの過激派の団体が世界中で誕生した。彼らの目的は、環境破壊の阻止にも関わらず、エコテロリストとして犯罪に手を染めている。発言力や発信内容に関しては、首を縦に振れるほど、頷けるのに、彼らの行動そのものは世間から非難の的である。善行を行おうとしているのに、一つ犯罪を重ねるだけで、悪行へと転落してしまうのだ。たとえば、最初期に設立された動物解放戦線の主な事件は、ベイルスキー場放火事件やグラハム・ホール誘拐事件、ワシントン大学放火事件、サンガブリエルバレーSUV放火事件、キロン社爆破事件、シャクリー社爆破事件、ロスコマレロード住宅放火未遂事件、ウッディンビル住宅放火事件と1998年から2008年の10年間に行われた悪行の数々だ。これら動物解放戦線は、指導者なき抵抗組織の典型であり、40カ国以上で支部や協力組織の存在が確認されているにもかかわらず、アナーキズム的な個人行動を基本としている為に実態の把握が困難となっている。また、1992年に設立された地球解放戦線もまた、動物解放戦線と同様の事件、またはそれに準ずる事件を起こしている。ここ日本では、先月の6月頃、このエコテロリスト達の標的にされたばかりだ。東京の明治神宮外苑の再開発事業への抗議(※8)としてターゲットにされた事件が、国内で大きく報道されたばかりだ。近年、このエコテロリスト達の活動が活発になりつつある中、私達の記憶に新しいのは、高価な美術品に市販のトマトスープの素(※8)を投げ付ける過激派の若者達の姿だろう。日本では、彼らエコテロリスト達の行動に対して、非難轟々だった。でも、私達日本人は、彼らの真意を何一つ理解していないと言われており、その無理解(※10)が非常に危険視されている。私自身は、それ程激しく非難はしないが(彼らの言いたい事も理解できるから)、ただ高価な美術品をターゲットにしなくても…と、思わざるを得ない。映画『HOW TO BLOW UP』を制作したダニエル・ゴールドハーバー監督は、あるインタビューにてなぜ本作を制作しなければならなかったかについて、こう話している。

Goldhaber:“The style was a product of the production but, also, we knew that that was going to be the case. There were a lot of reasons that we needed to make this movie as quickly as we did, not least of which is that this is a political conversation that needs to happen immediately. We are on a timeline, in terms of serious action on climate change, that can be measured in months — not years, definitely not decades. For us, this film is something that we feel like we can do to change the cultural conversation, to shift the way we talk and think about climate and the tactics that the climate movement is using — but we have to do it now. There were also industry timing [considerations.] I had a sense the movie would do very well at TIFF and, if we were going to get the movie done by TIFF 2022, we needed to start production in November. But even while we were doing it, moving as quickly as we were, most people on the movie, myself included, were like, “This is crazy. Should we be doing this?” We kept returning to the idea that this is an impulsive, youthful movie about an impulsive, youthful, necessary act, and that we should have that same energy ourselves. I’m perpetually a believer in the idea that every movie is a documentary of its own making, to some extent. The process of making the film becomes inseparable from the film itself by the end of it. Knowing there was a fusion between the idea of what the movie would be and the way that we were making it, there was a sense of faith, even in the darkest moments, that it was all going to work out. You don’t only see that in the style of the film but also and especially in the performance. It’s relevant to say that it was an energy everybody had to take up. We were like, “We’re going out there. We’re doing this for real. It’s going to be intense. We’re going to get dirty. But it’s going to be worth it in the end.” Every single person who worked on this movie had to believe in that idea and had belief in the idea that this was an important conversation to start. That’s something you can’t totally fake. It was a leap of faith on everybody’s part, but one I do think worked out.”(※11)

©Wild West LLC 2022

ゴールドハーバー監督:「スタイルは制作の産物でしたが、そうなるだろうということはわかっていました。この映画をこれほど急いで作らなければならなかった理由はたくさんありましたが、これはすぐに起こらなければならない政治的な対話であるということも理由の1つです。気候変動に対する真剣な行動という点では、私たちは数年どころか数十年どころか、数か月で測れるタイムラインにいます。私たちにとって、この映画は文化的な対話を変え、気候や気候変動運動が用いている戦術について話す方法や考える方法を変えるためにできることだと感じています。しかし、今それを実行する必要があります。業界のタイミングも考慮しました。この映画はTIFF(恐らく、トロント国際映画祭)で大成功を収めるだろうという予感がしていましたし、2022年のTIFFまでに映画を完成させるには、11月に制作を開始する必要がありました。しかし、制作中も、私たちが急いで作業を進めていたにもかかわらず、私を含め、映画に携わったほとんどの人が、「これはおかしい。これをやるべきなのか?」と思っていました。私たちは、これは衝動的で若々しい、衝動的な行動についての衝動的で若々しい映画であり、私たち自身も同じエネルギーを持つべきだという考えに立ち戻り続けました。私は、すべての映画はある程度、それ自体がドキュメンタリーであるという考えを常に信じています。映画を作るプロセスは、最後には映画自体と切り離せないものになります。映画がどうなるかというアイデアと私たちの作り方が融合していることを知っていたので、最も暗い瞬間でさえ、すべてうまくいくという信念がありました。それは映画のスタイルだけでなく、特に演技にも表れています。全員がそのエネルギーを吸収しなければならなかった、と言うのは適切でしょう。私たちは「私たちは外に出る。本気でやる。緊張するだろう。汚れるだろう。でも最後には価値がある」という感じでした。この映画に関わったすべての人がその考えを信じ、これが重要な対話の始まりだと信じなければなりませんでした。それは完全に偽ることはできないものです。それは全員にとっての大胆な信念でしたが、私はうまくいったと思います。」と、監督は話す。本作が急ピッチで作られた訳、本作が今の時代に登場した訳、なぜ本作が今に必要不可欠だったのか、再度、皆さんで考えて欲しい。今、世界で日本で何が起きているのか。遠い存在のようにも感じるが、それは皆さんの近くで必ず起きている出来事。自然破壊も自然災害も、切っても切れない関係性があり、私達人類が今後、ますます自然を破壊し続ければ、猛威を持って、自然は必ず私達に牙を剥く。この事態を止めるには、私達は一体何をすれば良いのか、一人一人考えなければならないだろう。

最後に、映画『HOW TO BLOW UP』は、自然破壊に対して抗議の声を過激に上げる若者達の刹那的な行動をスリリングと、アクションフルで描いたエコテロ映画だが、一方では、テロを助長すると政府から弾圧され、一時上映中止にまで追い込まれた問題作だ。ただ、この作品が伝えたい事をじっくり考えたいと思う。今、世界で日本で何が起きているのか?あなたは、今何が起きているか想像できますか?理解できますか?台風、竜巻、地震、大雨、洪水と、自然災害が私達の生活を根こそぎ奪って行く現状をいつも目の当たりにしていますよね?たとえば、まさに本日7月3日(水)、「16都県に熱中症警戒アラート 西・東日本で猛暑日続出」(※12)と発令されたが、この猛暑日の連続は異常気象の現れだろう。また、先日の大雨では、滋賀県の米原地区で大規模な土砂崩れが発生し、奈良県の十津川村の国道でも土砂崩れが発生(※13)し、それぞれの地域に甚大な被害を及ぼしている。これもまた、今全世界で起きている自然災害の一つに過ぎないが、たった一つの災害が起きる事によって、多くの住民への被害や負担は大きく被さる。この自然災害を引き起こしているのは、紛れもない私達人間だ。この問題に対して、一部の若者達が過激にも手段を選ばず、環境破壊や自然災害の是非を全世界に発信している。その手段に対しては、如何なものかと声も上がるが、この作品が少しでも人々の関心が環境破壊や自然保護に目を向けるきっかけになれればと、願うばかりだ。それは、私自身も同じであり、今日から出来る事を模索しなければならないだろう。

©Wild West LLC 2022

映画『HOW TO BLOW UP』は現在、全国の劇場にて公開中。

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