映画『星より静かに』「社会の一助になってくれたら」君塚匠監督インタビュー

映画『星より静かに』「社会の一助になってくれたら」君塚匠監督インタビュー

生きやすい社会になってほしい映画『星より静かに』君塚匠監督インタビュー

©ステューディオスリー

©ステューディオスリー

©ステューディオスリー

—–最初に映画『星より静かに』の制作経緯を教えていただけますか?

君塚監督:自分自身がADHDと診断されたのは5年前ですが、その時以降、治療をしていても色々な生きづらさを感じていて、3年ほど前から何か作品を作らないかなと思って、ドキュメンタリーも考えましたが、映画で何かを作ってみたいと思うようになって、クラウドファンディングでお金を集めて、制作が始まったのが最初のきっかけです。

—–でも、ADHDの認知を世間に広めるために作品を作られたと思うんですが、この作品を改めて作ろうと思った最初のきっかけは、何かございますか?

君塚監督:たとえば、自分が生きづらさを感じていて、差別をする人も時折いたんですが、差別を受ける人に対しての生きづらさがなくなるよう世界になり、一つになればいいなと思った次第です。

©ステューディオスリー

—-今以上に排除や差別がない社会が、確立されればいいと願っています。タイトル「星より静かに」には、どんな思いを込めましたか?

君塚監督:要するに、星より静かであっても、確実に、その人には届く声があるんです。そんな意味を付けたタイトルです。

—–どんな方に届いてほしいなど、何か願いはございますか?

君塚監督:入り口はADHDで生きづらさを感じる人達のために作ったんです。大河の一滴のように小さな雫から始まりますが、世の中にはもっと多くの悩める人がいます。その人達を救えるような映画にしたいと思って作りました。

©ステューディオスリー

—–ドラマパートとドキュメンタリーパートの制作に関して、それぞれ違うジャンルだと思いますが、見せ方の問題と言えばいいのでしょうか。より興味を持ってもらうため、より面白く、関心を持ってもらうための見せ方も必要だと思いますが、その点、どんな風に工夫されたなど、何かございますか?

君塚監督:ドキュメンタリードラマではなく、ドキュメンタリーの中にドラマを混在させた作品です。今までには多分、このようなアプローチをしている作品はなかったと、自分では自負しています。敢えて、素人の役者さん、プロの役者をミックスさせて、どこまでが現実、どこまでが脚本かという境界線を分からなくさせる事によって、筋書きがジャムセッションみたいになると思うんです。何らかの化学反応が起こさせればいいと思って、工夫して作った映画です。

©ステューディオスリー

—–発達障害は、周囲の理解、特に一番近くに居る家族や親兄弟からの理解が、必要だと私は思います。その点で言えば、君塚監督は、奥さんを周囲の方々からのサポートや理解がたくさんあったと思います。映画を通して非常に感じますが、その点に関して、何か周囲の方々への何か思いはございますか?

君塚監督:まず、僕にとって依存先ができた点が、一番嬉しく思います。10年ほど独身だった時期があったんですが、その間は常に孤独だったんです。それは発達障害に限らず、メンタルの病気は依存先がない事が、大きなハンデになると思うんです。その点で言えば、映画の中でも出て来た方々によって、自分の中で様々な依存先ができて、社会と調和できるようになって来たと思っています孤独だった時に比べて、依存先ができた事によって、僕の中で自信もできました。その上、心豊かなったと思っています。

©ステューディオスリー

—–今現在、監督のように大人の発達障害を持って悩んでおられる大人の方、または、発達障害の症状がある子どもを持つ親に対して、今の思いを届けられるとしたら、何かお考えはお持ちでしょうか?

君塚監督:映画祭で上映された時、シンポジウムの後に若いお母さんが話してくれた話の中で、自分の子どもが重い発達障害で、将来を憂いていたと言っていました。まともな仕事にも就けないんじゃないかと思っていたそうですが、僕の映画や活動を通して、僕自身はもう60歳ですが 、試行錯誤しつつ、発達障害をテーマにした作品を制作された事に対して、すごく勇気をもらいましたと言ってくれました。この映画が、少しでも社会の一助になってくれていると思ったら、すごく嬉しかったです。

—–最後に、映画『星より静かに』が今後、どう広がって欲しいなど、何かございますか?

君塚監督:新聞には、エンタメ欄や文化欄があります。その枠組みにこの作品が掲載される事は嬉しい事ですが、何度か社会欄の枠として掲載されましたが、社会欄として紹介された事は別の意味で、非常に意義のある事でした。映画が娯楽という枠を越えて、社会的な影響力を与えられるような一面として受け取られたと思う事ができました。だから、この作品が、映画という枠組みから外れて、もう少し社会に影響を与えるようなものになって欲しいと思っています。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

©ステューディオスリー

映画『星より静かに』は現在、関西では6月28日(土)より大阪府の第七藝術劇場、7月5日(土)より兵庫県の洲本オリオンにて公開中。また、7月11日(金)より京都府の出町座。8月9日(土)より兵庫県の元町映画館にて公開予定。