【34th東学祭 | 東京学生映画祭 Tokyo Student Film Festival】高橋拓未さん、藤崎諄さん、火宮遼哉さん「学生映画の面白さを広めたい」インタビュー

【34th東学祭 | 東京学生映画祭 Tokyo Student Film Festival】高橋拓未さん、藤崎諄さん、火宮遼哉さん「学生映画の面白さを広めたい」インタビュー

2023年8月17日

日本映画界の第一線で活躍する多くの才能を輩出してきた【34th東学祭 | 東京学生映画祭 Tokyo Student Film Festival】高橋拓未さん、藤崎諄さん、火宮遼哉さんインタビュー

—–今年2023年で、第34回を迎える東京学生映画祭ですが、この映画祭が持つ趣旨や魅力を教えて頂けますか?また、高橋さんがこの映画祭に興味を持った理由や参加するに至った流れを教えて頂けますか?

高橋さん:僕がこの東京学生映画祭に所属している理由が、イベントを催すというのにすごい興味があったからてす。それと同時に、映画にもすごい興味があったんです。東京学生映画祭は、学生だけで企画・運営している点が特徴です。僕も、東京学生映画祭に所属したら主体的に活動できるのかなと思い、今に至ります。運営の趣旨は、学生と映画界の架け橋になる、という趣旨・目的を持って活動しています。僕達は、学生ならではの自由な発想や感覚を頼りに活動しています。商業映画に行く前に、学生にしかできない、学生監督や関係者が撮った映画を観れるのが魅力です。

—–藤崎さんは、この映画祭で進行部長を務めていらっしゃるそうですが、この進行部長とは、どんな立場でしょうか?また、この映画祭に興味を持った理由は何ですか?

藤崎さん:この映画祭は、映画祭全体を統括する代表・副代表の下で進行部と広報部に別れ、それぞれの部のトップが進行部長、広報部長がいます。業務を基本的に2つに分けて、進行を統括する仕事です。基本的に進行部は、映画祭の進行を全体として進めています。一年を通して言えば、審査員にどんな人を呼ぶのか、また企画、上映をするなら、どんな作品を上映するのかを決めます。応募してくる学生の方たちの作品を審査したり、学生全体をどうやって動かして行くのかを考える仕事です。現在、僕は大学二年ですが、去年の入学と同じ頃に初めて参加しました。この映画祭に興味を持ったきっかけは、映画祭のライブ感が凄く好きだったからです。東京学生映画祭は、ちょうど今年で34回目を迎えます。僕が高校の頃、多くの映画館に足を運ぶ中、ある映画館で学生だけで運営している事を知り、その時これはすごいと感じました。入学した際、映画関係の事をやりたいと思っていましたので、東京学生映画祭の存在を思い出し、僕から応募しました。

—–藤崎さんと同じように、火宮さんは映画祭が始まるまで、どのようなご活動を、運営側でされておられますか?また、映画祭に興味を持たれた理由は何でしょうか?

火宮さん:僕は進行部という肩書きですが、ほとんどなんでも屋です。個人としては、何でもしています。また、全体の動きとして、作品のディレクションをしています。この映画祭の最初の動きです。まずは、作品を募集して、PRを決めて、学生関係者が応募して来ます。今年は、216作品が集まりました。最終選考に残ったのは、22作品です。一次審査から、二次審査、三次審査まであります。一次は膨大な量があり、全作品を手分けして、観て行きます。一人、だいたい70作品、全部見切れない人も、もちろんいます。二次、三次を行い、全員でディレクションして行きます。この映画祭に興味を持ったきっかけは、この二人と全然違いました。僕は今、大学三年生で、藤崎と同じ時期に参加しました。一年生の頃、本当に、やることがなくて、ただ映画が好きだったんです。大学でも映画系のサークルにも入っていましたが、意外に映画を話せる人がいませんでした。それで、映画を話せる人いるかな?と思って、入ったのがきっかけでした。

—–高橋さんはどんな役職を、運営側でされておられますか?また、この映画祭に携わっている学生は、大学生だけですか?それとも、中高生の方も参加していますか?進行部のほかに、部署はございますか?

高橋さん:進行部のほかに、広報部があります。僕が、その広報部で活動していますが、正直僕は入ったばっかりです。僕ができる広報部の仕事は、関係者にメールを送る事です。例えば、今回ティロワ・デュ・キネマさんにメールをお送りしたのも、その一環です。また、映画祭と業務提携している会社様に協力を求めたり、応援をお願いしています。

—–運営側として参加できるのは大学生だけなんですか?それとも、中高生の参加は、許可されていますか?

高橋さん:多分今まで、中高生が参加したことは、ありません。実際に来て頂いて、全然ダメではありません。ただ、歴代の映画祭の運営では、活躍していたのは大学生だけ、だったと思います。

—–大学生だけの世界にしないというのが、学生映画祭の本来の趣旨ではないでしょうか?大学生と並行して中学生から映画ファンや映画人を育てて行く必要が、あるのでは?人材育成は、学生同士でもする必要があると思います。映画文化は今、ますます廃れて行く一方です。ミニシアター文化はもう、終わりを告げています。自分たちが今、何をできるかのかを考えて行きましょう。私たちの好きな映画が将来、無くなるかも知れません。自分たちの「好き」が、無くなってしまうんです。十年先、二十年先を考えて、今、私たちに何ができるのか?だからこそ、大学生だけの世界にしないで、中学生、高校生の参加も方法論としてあっても良いと感じております。

—–藤崎さんが、映画祭に携わってみて、良かったこと、また、学びになったこと、今後、活かしていきたいと思ったこと、何かございますか?

藤崎さん:僕が運営に携わってみて感じたのは、今まで多くの商業作品を観て来て、現代の学生の撮った学生映画は、今まで観る機会が無かったんです。僕がちょうど入った四月にセレクションが行われ、応募して来る学生の作品を観て行きます。今の学生映画を観てみると、こんな作品、あんな作品を撮っているんだと、最初に実感しました。この経験を通して、僕は観客としての意識がはっきり変わったと言えます。

—–火宮さんが、映画祭に携わってみて、良かったこと、また、学びになったこと、今後、活かしていきたいと思ったこと、何かございますか?

火宮さん:セレクションを行う時が、一番楽しい時です。セレクションの中で、映画の感想を全員で話す時間が楽しいんです。ポイント形式ではなく、皆で議論をする形式をセレクションで選択しています。自分の中にある作品に対する感想やもやもやする感情を動かして、伝えること。他人の意見を聞いて、考えること。この映画祭に関わって、一番良かった事であり、身になっている事だと思っています。

—–今年の上映プログラムで気になったのは、全プログラムの作品が大学生であること。エントリーの内容では、中学生から院生、専門学生までと幅広く、公募されているにも関わらず、蓋を開けてみれば、大学生の作品ばかり。映画祭側の事情や内情も必ずあると思いますが、偏りすぎではないかと。ここでも大学生だけの世界になっていませんか?今後、この映画祭の課題が、見えて来ませんか?この点、高橋さんは、どうお考えでしょうか?

高橋さん:大学生しか入選されないのは、一番の原因かなと思います。僕達、東京学生映画祭がもっと認知を広めるために、活動していかなきゃいけないのかなと感じます。でも、携わってみて、僕達がちゃんと議論をした上で、上映作品が決まっているので、そこに関しては、しょうがない一面もあります。

—–今後、どうして行くかが大切では?たとえば、U18部門を創設するとか、ユース部門を設けるとか。方法論は、たくさんあると思います。高橋さん一人では決めれないと思いますので、皆さんで話し合って行く必要があるのでは?藤崎さんはどうお考えですか?

藤崎さん:今回216作品の応募が来て、中高生の作品は2本だけでした。改めて、振り返ってみると、大学生に向けたものになってしまっている点はあります。この映画祭の成り立ちは早稲田大学の大学生が、都内の様々な大学が持ち込みでやって行こうと言う企画から始まりました。だから、最初は本当に、ただの都内のいくつかの大学の上映会に監督を呼ぶ形式で始まったんです。でも途中から、学生同士の発表会という場にもなりつつあり、今でも大学生の映画がメインになっている現状です。あとは、中高生がどれぐらいの作品を撮っているのか、知らない事実もあります。それをどうやって、伝えていけばいいのか、分からない現状もあります。

—–東学祭の今年の目玉の一つは、俳優のオダギリジョーさんの特別講義のお話。それが、どのような催しなのか、教えて頂けますか?また、オダギリさんの講義に、私たち聴衆が耳を傾けることによって、何を得れると思いますか?

藤崎さん:オダギリさんのキャリアは、高校生の時、一人で英語を学びにアメリカに留学し、帰国後、メジャーもやりながら、活動してきた俳優さんです。ご自身で監督もされて、びっくりしました。僕が今まで、持っていたオダギリジョーさんの印象とは違って感じたんです。彼が監督した映画『ある船頭の話』に触れて、巨匠みたいな映画を撮るんだと実感しました。すごく撮影も美しく、オダギリさんへのイメージが覆された瞬間でした。一般的な俳優さんが撮る映画の印象とは、違う何かを感じました。そんなキャリアの持ち主であるオダギリさんが、今の学生に対して何を思うのか、僕たちもすごく気になるところでした。映画界の中で、ある意味、本当に一人で参入して、色んな若手監督と交流しながら、一人でここまで生きてきた人が、今の学生をどう見てるのかという視点が気になります。また、僕たちに何を期待しているのか、と知りたいと思っています。

—–もう一点、東京学生映画祭の目玉は、2020年にご逝去された日本の巨匠監督、大林宣彦氏の8ミリ、16ミリの映画特集です。この特集を開催できるのは、恵まれていると個人的に感じます。また、非常に羨ましい限り。それでも、今はデジタルの時代と呼ばれており、4K、IMAX、ATOS、ODESSA、4DXが人々を楽しませ、サブスクリプションまでもが登場しています。画期的な技術がある昨今、学生映画祭でフィルム上映をする意義とは、なんでしょうか?

火宮さん:フィルム文化が、大事と良く聞かれますが、なぜ大事なのかは、僕的にも正直曖昧なところがあるんです。フィルム上映を観に行き、作品に触れても、デジタルとの違いが分かりにくい部分もあると感じています。ただ、僕がフィルム上映をしたいと思った第一の理由は、なぜ大事なのかも含め、自身で実験的に挑戦してみようと思った所もあります。その上、今の学生はデジタル上映に触れる多い昨今ですが、フィルムを学生向けの映画祭で上映して、作品に触れてもらって一緒に考えて欲しいと思って、フィルム上映というスタイルを選びました。昔の映画(映画以外も)は、フィルムで作られていますが、今のデジタルに比べたら、非常に難しい事だったと思うんです。資金面もかかります。編集もフィルムを鋏で切って、手間をかけて一本の作品を作っています。当時の映画人の映画愛は確かにあり、僕たち大学生たちが運営している映画祭でフィルム上映する事が意味があると感じています。

—–学生の方々が、学生のための映画祭を運営する意義や価値を、それぞれ教えて頂きますか?

高橋さん:学生だけで運営する意義は、学生の目線で映画を評価して、作品を上映する事が大事です。僕たちだからこそ、共感できる事もあると思います。映画祭で上映して、学生映画の良さを知って頂けたらと思っています。それが、学生達だけで映画祭を運営する意義だと思うんです。

藤崎さん:今、インディーズ映画に携わる事が多くなりましたが、本当にプロでも何でも僕達には多種多様な学生がいます。映画を勉強している人がいれば、ライトに作品を楽しむ方もいます。プロではない僕達だからこそ、僕達の視点で見れる部分は必ずあると信じています。たとえば、技術的ではなく、もっと監督の想いを汲み取れるのは、同世代の学生の僕達がやれる事だと思っています。だから、僕達はプロのように大きな事はできませんが、学生監督から見ても、同世代の僕達が映画を観てくれることが、すごく意味のある事ではないかなと思うんです。去年の映画祭で、学生監督の方々とお話して、思う所はたくさんありました。各々の監督から映画祭の温かさが良かったと、僕らに言ってくれたんです。だからこそ、僕は翌年も続けようと思いました。

火宮さん:先の二人がほとんど言ってくれましたが、応募されて来る作品は映画制作を専門にしている大学が多い傾向があります。そんな大学は、プロの講師の方が助言して作られている上、非常にクオリティが高い作品が数多くあります。そんな作品だけでなく、一般の大学で映画を勉強しておらず、サークルにも所属していない方々の作品も応募して来ます。映画から離れて、作品を作った方々の映画を入選まで持って行く事が出来るのは、学生が運営していて、尚且つ、僕達も一般の大学に籍を置いているからこそ、映画を専門にしていない監督たちの境遇を通して、共感性が湧いてきます。そんな彼らの作品を上映する事に対して、意義を感じています。

—–これからの学生に向けて、まだ見ぬ学生に向けて、参加に興味を持たれている学生に向けて、実行委員から何かお言葉は、ございますか?

高橋さん:僕自身は、映画に詳しい訳ではありませんが、この映画祭に所属して、学生映画は面白いと気付けたのは、僕にとっては良い事でした。学生映画を広めるための活動もまた、非常に楽しいです。大学生だけでなく、中学生、高校生に向けて、学生映画の面白さ、それは観るだけでなく、作る事両方含めて、広めて行きたいと思っています。

藤崎さん:僕は中学生の頃から、同世代で映画について話せる人がいなかったんです。ここに入って、好きな映画監督に連絡を取ったり、審査員として呼ぶこともして来ました。でも、一番楽しかったのは、この映画祭に携わって、同世代の学生たちと映画の話をする楽しみが増えました。ぜひ、興味があれば、躊躇わずに、参加表明して下さい。お待ちしています。

火宮さん:映画好きが多い訳でもありませんが、映画に興味ない人も参加してくれているんです。学生映画祭は、映画関係者と関われる上、非常に近い距離に行ける場所だと思いますので、参加してみて、変わるものはあると信じています。

—–将来、東京学生映画祭が、どのような道を辿って欲しいとか、映画祭に対する展望はございますか?

高橋さん:学生映画はまだまだニッチがありますが、この東京学生映画祭がどんどん大きくなって、映画に興味がある方だけでなく、もっと一般の人にも学生映画の魅力を知ってもらうのが、僕の願いです。そして、東京学生映画祭に足を運んで頂けたらと、今は思っています。

藤崎さん:毎年、変化があるのは映画祭としては、特殊な形態だと思うんです。ある意味、一貫性も無いと言えば無いんですが、それでも今まで34年間続けて来たのは、凄い事だと思っているんです。だからこそ、次の世代の学生の方にも、ずっと続けて欲しいと願っています。皆が自由にして、学生監督が自分の映画の上映を楽しんでもらえる環境を作れる事が、今の一番の望みです。

火宮さん:本当に、大学生が運営している映画祭なので、毎年違った形になるのが良い側面でもあります。その関わっている次の学生達が、自由にやりたい事をして欲しいと願います。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

34th東学祭 | 東京学生映画祭 Tokyo Student Film Festival】は、8月18日(金)より8月20日(日)の3日間、東京の渋谷ユーロライブにて開催される。