映画『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』
本作『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ハリウッド女優のミラ・ジョヴォヴィッチが、シリーズを通して主演し、世界的にヒットした『バイオハザード』シリーズのリブート版というのは、万人が知る事実だ。
今回は、テレビ・ゲームの1作目と2作目のストーリーを繋ぎ合した物語とだけあり、作品を踏襲した設定に親近感や懐かしさが湧くだろう。
これはリブート版ではなく、今までのシリーズを一蹴する、正真正銘の最新作だ。
新章『バイオハザード』の幕開けを予感させる作品の作りに、次回作も期待したくなるものだ。
ただ、この作品が世界的にどこまで人気が出、興行収入を回収できるかによって、状況も変わってくることだろう。
過去シリーズのキャストもスタッフもすべて一掃し、まったく新しい『バイオハザード』の世界観が、再構築されている。
本作の主演を演じた女優は、カヤ・スコデラリオというイギリス出身の役者だ。
彼女は、SF映画『メイズ・ランナー』シリーズの主要キャストとして一躍スターダムにのし上がった注目の若手女優の一人だ。 他の出演作には、『月に囚われた男(2009)』『17歳のエンディングノート(2012)』『タイガー・ハウス(2014)』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊(2017)』『テッド・バンディ(2019)』『クロール -凶暴領域-(2019)』などがある。
また、今年2022年にはアドベンチャー・ファンタジー映画『The King’s Daughter』という作品が、全米公開されたばかりだ(この作品は製作上、様々な問題が浮上し、公開までにおよそ5年という時間が費やされた)。
カヤ・スコデラリオは本作でも、主演女優として出演している。
これからの活躍に最も期待がかかる、女優ということは間違いないだろう。
彼女はインタビューで自身のアクションについて暑く語っている。
(1)「私は本当に興奮していました。撮影するのがどれほど楽しみかどうか、わかっていました。私はアクション映画やスタントをするのが大好きで、またアクションの場面を演じるのが楽しみです。『メイズランナー』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』で既に経験し、その時のアクションを見て、興奮している人々が同じようなキャラクターを再度、見たいと思っていること、それらのキャラクターが私の一部であったことは本当に幸運な事でした。役を演じることは大きな責任が伴いますが、とても多くの人々を勇気づけることができるのも本当に素晴らしいことです。」
また、本作を製作したのは、こちらもまた英国出身の監督ヨハネス・ロバーツという人物だ。
代表作にはパニック映画『海底47m(2017)』とその続編『海底47m 古代マヤの死の迷宮(2019)』がある。
他にも、サスペンス映画『F エフ(2010)』ホラー映画『アザー・サイド 死者の扉(2016)』『ストレージ24(2012)』やスリラー映画『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者(2018)』などを製作している。
スリラーやサスペンス、ホラー映画に定評のある映画監督だ。
過去シリーズの監督ポール・W・S・アンダーソンのように、今後、新シリーズの「顔」として活躍してくれることに期待がかかるディレクターだろう。
今作では、既に商業的に成功を収めているビッグ・タイトルを、新装し直したリブート版に監督として抜擢され任されることに大きなプレッシャーもあったに違いない。
監督はインタビューで本作を製作する時の気持ちを語っている。一部抜粋した。
(2)「私は、ゲームデザイナーが愛していたのと同じもの、同じ映画の参照、同じ映画監督、同じスタイルのホラーが大好きです。 カプコンと一緒に仕事をしているので、おしゃべりするのはとても楽しいですし、彼らは私と同じようにオタクです。これが最初に出て、プレイステーションが物になり始めたときの学生としての気持ちを取り戻したかったのです。 そしてそれは本当に恐怖を再び怖がらせました。 当時、ホラー映画は素晴らしかった。 「ああ、これが新しい世界、この新しい未来だ。こうして怖がる」みたいな感じでした。 本当に過去に戻って、その時の感情を混ぜ合わせることです。バイオハザード2のリブートであの時の思い出を開発することに、私たちは夢中になりました。」
監督は、学生の頃に『バイオハザード』のゲームや映画から抱いた「楽しかった」という「感情」を想起させながら、作品の製作に当たったという。
観る側にも幼少期、学生時代に抱いた「感情」を思い起こさせる作品となっていることだろう。
本シリーズは、2002年に公開された1作目から数えて、今年でちょうど20年目を迎える息の長い人気タイトルだ。
新シリーズが、再度製作されることを期待するばかりだ。
最後に、本作は単なる映画に過ぎないが、物語の中で起こっていることは、ゲームや映画の世界だけの話ではないだろう。
工業汚染、公害、人体実験というテーマに隠された事実は、現実の世界にも起こりうる、もしくは過去に起きた事象と重ね合わせることができるだろう。
工業排水や公害での汚染は、日本でも過去に水俣病やイタイタイ病、四日市喘息など、幾度となく起きている社会的問題だ。
また、人体実験もヒトラー率いるナチスが行った非道な行為が挙げられるだろう。
戦時中の日本でもまた、731部隊が有名だろう。本作が、テーマや要素とする事象は、現実の世界でも必ず存在し、架空の話ではない。
その上、大企業が原因で街全体が廃墟と化す現象は、まるでソ連時代に起きたチェルノブイリ原発事故にも似ている。
劇中でも、「チェルノブイリ」については言及している場面があり、作品もこの歴史的事件を想定して作られているのだろう。
日本で言えば、福島原発事故を想起してしまうだろう。
本作『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ゲームや映画の世界の物語かも知れないが、現実でも必ず起こりうる事案ということを忘れないようにしたい。
次に破壊される都市は、もしかしたらあなたの住む街かも知れない。
映画『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は現在、全国の劇場にて上映中。
(1)Robbie Amell & Kaya Scodelario Talk New ‘Resident Evil’https://www.supanova.com.au/interview-robbie-amell-kaya-scodelario-talk-new-resident-evil/INTERVIEW(2022年2月3日)
(2)Johannes Roberts Interview: Resident Evil Raccoon Cityhttps://screenrant.com/resident-evil-movie-2021-johannes-roberts-interview/(2022年2月3日)