映画『赦し』「抱きしめてあげて」アンシュル・チョウハン監督、松浦りょうさんインタビュー

映画『赦し』「抱きしめてあげて」アンシュル・チョウハン監督、松浦りょうさんインタビュー

2023年3月27日

映画『赦し』アンシュル・チョウハン監督、松浦りょうさんインタビュー

©Tiroir du Kinéma

©2022 December Production Committee. All rights reserved

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—–本作『赦し』の製作経緯を教えて頂きますか?

チョウハン監督:元々、この作品の脚本は、ランド・コルターさんが書いて下さりました。

シナリオを頂いたのが、2018年です。脚本に目を通した際に、難しいテーマである上、予算もかかりそうだと感じて、その時は諦めざるを得なかったんです。

その後、前作『コントラ』という映画を上映させて頂きましたが、色々な方にその作品を幅広く観て頂き、私自身も知って頂ける良い機会となりました。

その結果、プロデューサーの方々にはバックアップして頂けて、タイミング的な事もあり、本作のプロダクションが立ち上がりました。

その後、ランドさんが書いて下さった原作は、日本の法案に沿ったものではなかったので、そこから取材を行い、日本の法律を勉強しました。

また、法廷にも足を運び、実際に目で裁判を確認した上、この脚本を日本の裁判や法律に沿った物語に直して行きました。

撮影に関してですが、プリプロダクションは2021年の9月から12月頃まで行い、2022年1月から撮影に入る予定でした。

ただ、当時はコロナ禍で、私たちのクルーやキャストのメンバーの何人かが、撮影直前にコロナに罹患してしまった経緯もあり、撮影を延期せざるを得なかった状況もありました。

ただ、撮影が始まると、非常にスムーズに事が運び、当初の予定であった28日間で撮影終了させる事ができたんです。

クランクアップ後は、私が編集を担当しましたが、秋口に開催される映画祭を目指すつもりで編集を早く進めました。

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—–最初に夏奈という人間の役柄を演じると聞いた時、松浦さん自身、物語や人物に対して、何か感じることはございましたか?また、彼女に対して、共感できる一面はございましたか?

松浦さん:やはり、彼女の生きてきた環境や置かれている状況は、私とあまりにも大きく違いすぎたので、物語の内容に触れて最初は、非常に戸惑いました。

監督からは、とにかく役作りをしっかりしろと指導を頂きました。

もちろん、私は殺人を犯した事も、刑務所に入ったこともありませんので、それを役作りとして捉えることがなかなか出来ず、殺人をしてしまった方のインタビューを読んだり、動画を観て研究しました。

多くの資料を通して、どういう感情になれば、殺人に至ってしまうのかを、役に置き換えて考えたりしました。

また、刑務所生活についても調べて、できるだけ近い環境に身を置く事を実践し、当事者たちの孤独を知って、夏奈の気持ちを理解しようと努めました。

すると、少しずつ、彼女の気持ちが理解できるようになり、徐々に徐々に彼女が持つ感情に近づける事ができました。

その結果、撮影中は、夏奈自身になった気持ちで役を演じれるようになっていました。

また、彼女が経験して来た過去に対して、どうして罪を犯してしまったのか、それに対して彼女に寄り添って、考えました。

それで感じる部分はたくさんありました。

私もまた、彼女と同じような負の感情を持っていたことがあったので、僅かではありますが、共感できる一面はありました。

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—–作品の物語は、事件の始まりではなく、事件から7年後の物語の設定にしたのは、なぜでしょうか?事件の始まりではなく、途中経過をクローズアップした意図は、何でしょうか?

チョウハン監督:この設定にしたのは、自分に対しての挑戦だったかなと思います。

もしこれが、殺人からのスタートであるなら、他にある法廷劇と何ら変わりありません。

どのような展開になるのか、だいたいの方が予想できると思っています。

今回は、一度終わった裁判から、殺人を犯してしまった夏奈に対して、7年後の彼女にフォーカスを当てる事が、私自身も監督として、そこからどのように面白みを持たせるのかと、挑戦的な作品でした。

この作品が、非常にスリリングな物語なのは、映画の中の当時を生きている人物たちは、会話がすべて過去に関してなので、観客としては、観ている時間軸から、また過去というもう一つの時間軸が、同時進行して存在している状態です。

観ていて深みが出てくる映画になっているのではないかと、思っています。

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—–近年、学生同士で起きる事件が、タイムリーにニュースで報道されていますが、松浦さんは夏奈を演じながら、罪を犯す若者に対して、何か想う事はございますか?

松浦さん:普段、加害者に対して、感情移入する事は今まで無かった事です。

そんな事してはいけないと、勝手に思っていました。

ただ、夏奈を演じてみて、もしかしたら、様々な背景があるんじゃないかなと、思わされました。

もちろん、殺人はしてはいけない犯罪ですが、一概に、加害者の方が悪い訳では無いと思わされました。

殺人だけではなく、様々な犯罪がありますが、夏奈という役柄を通して、非常に考えさせられるきっかけにもなりました。

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—–夏奈の過去に関してですが、作中では彼女のつらい経験に焦点を当てていますが、この演出をする事によって、作品に対して、どのような効果が期待できると、考えられますか?

チョウハン監督:フラッシュバックの場面は、作品において非常に必要なシーンです。

そこは必要なものとして撮影しています。フラッシュバックのシーンは、夏奈がどれ程までに辛い過去を過ごして来たのかを、断片的に分かるように表現していると思います。

彼女または人が、何かを思い出す時は、時間軸が、例えば、1時間から1時間半、綺麗に思い出される事はなく、断片的に思い出すものだと思っています。

それを映画の中で、同じように表現する事によって、彼女が過去にどのようなトラウマを持っているのか、観ている方にはキチンと分かるように、また伝わるようになっていると思います。

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—–もし目の前に、夏奈のような子が現れたら、松浦さんは、どのように接しますか?

松浦さん:関係性にもよりますが、実際に夏奈が私の目の前に現れたとしたら、彼女のために何かできることは、多分、なかなか無いと思います。

ですが、いっぱい抱きしめてあげて、一人じゃないよ、大丈夫だよ、と優しく声を掛けてあげたいと、思います。

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—–インドでもカースト制度によるレイプ事件だけでなく、(※1)様々な悲しい事件が起きていますが、日本でも同じような事件が起きています。両国にある事件の原因は、インドも、日本も、全く同じと言えますか?違いはあると、言えますか?

チョウハン監督:世界的に国によって、違いはないと思います。

日本でも、ニュースには取り上げられないようなおかしな事件や犯罪は、起きていると思います。

そういう中には、面白い犯罪もあったりすると思います。

そんな側面を見ると、おかしな国だと、思ったりしてしまうんですが、それは日本だけでなく、インドでも同じ事が起こったりすると思うんです。

先程、仰っていたレイプ事件は、カースト制度が原因なのは、インドの田舎の地域の問題です。

都市に行けば行くほど、そんな昔の風習は忘れられています。

その点を考えると、国を跨いでまで、違いがあるのかと言えば、そんな事はないと思うんです。

ただ、日本は英語があまり普及していない国ですよね。

その逆に、インドは人口が多く、国民の大多数が英語を話せていますので、世界的なニュースとして、取り上げられやすい傾向にあると思います。

ただ、日本でも事件はたくさん起きていますが、国が違うから、そこに差異が生まれるものではないと考えています。

日本のニュースを見ていると、少しおかしなと言いますか、精神的に大丈夫なのかと思うような事件も起きていますよね。

インドであれば、殺したいから殺すという直球な思考ですが、日本であれば、下着泥棒だとか、(※2)ゴキブリを食べたり、(※3)男性の大事な部分を切ってしまうとか、そういう感じのクリエイティブな考え方の事件が多いと思います。

—–お二人、それぞれに同じ質問をさせて頂きます。本作『赦し』の魅力を教えて頂きますか?

チョウハン監督:小さなチームでの製作でしたが、こんなにも深みのある物語を作った事は、この映画の中で一番、自信を持てるところであり、魅力的な部分です。

松浦さん:この作品は、置かれた環境や境遇によって、人それぞれ、捉え方が全く異なる映画だと思うんです。

観れば観るほど、登場人物に寄り添える映画になっていると思いますので、ぜひ何度も観て頂けたら、と思っています。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

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映画『赦し』は現在、関西では3月24日より大阪府のシネ・リーブル梅田シネマート心斎橋。京都府のアップリンク京都。兵庫県のシネ・リーブル神戸にて、上映中。また、全国の劇場にて、順次公開予定。

(※1)【海外発!Breaking News】インドの祭りで日本人女性が男数人からセクハラ、地元では「恥ずべき行為」の声<動画あり>https://japan.techinsight.jp/2023/03/masumi03131448.html(2023年3月15日)

(※2)昆虫食の是非で思い出される「ゴキブリを食べて死亡」昆虫料理研究家に聞いた都市伝説の真偽https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_JPrime_27122/(2023年3月15日)

(※3)猟奇的殺人「阿部定事件」女はなぜ愛人の男根を切り取って持ち歩いたのかhttps://intojapanwaraku.com/culture/129063/(2023年3月15日)