映画『愛のぬくもり』「自身の境遇を受け入れる」出演小出恵介さんインタビュー

映画『愛のぬくもり』「自身の境遇を受け入れる」出演小出恵介さんインタビュー

2024年7月27日

さよなら、俺。さよなら私。映画『愛のぬくもり』出演小出恵介さんインタビュー

©2024「愛のぬくもり」製作委員会

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—–前回の映画『銀平町シネマブルース』以来のインタビューです。この作品からおよそ一年半経っていますが、まずは本作に出演した経緯をお話頂けますか?

小出さん:昨年の秋頃に企画の話をいただきまして、そこから話が進み去年の12月に撮影が行われました。

—–出演が決まった時の感想や印象はいかがでしたか?

小出さん:いまおか監督の作品は昔からミニシアターで上映されることが多く、非常に有名でした。今回はそのいまおか監督の演出に触れられるということで、個人的にも非常に興味がありました。

—–前作『銀平町シネマブルース』ではいまおかさんは脚本のみでの参加でしたが、今作はいまおかさんが監督と脚本の両方を担当されています。その作品に主演として出演される事に対して、どのようなところに興味を持たれましたか?

小出さん:作品自体が絡みのシーンを主軸に置いているところですかね。それ自体は初挑戦ではないのですが、作品の中心という形でそういった場面へ挑戦するという部分に興味を持ちました。またそのシーンだけでなく、作品の中でいまおか監督の世界観をちゃんと演技で体現できたらいいなとも思っていました。ただまず何よりも、男女入れ替わりものという点において、演じる上で難しさを感じる部分が多いのではと思いました。

©2024「愛のぬくもり」製作委員会

—–お話しが出ましたが、今回は男女の視点が入れ替わるファンタジー要素も含む作品だと思います。これは、令和版『転校生』もしくは、大人版『転校生』としても捉える事ができると思いますが、たかし役を演じるにあたり、小出さんは何を参考にされましたか?

小出さん:まず、映画『転校生』を参考として拝見しました。作品に触れて僕が感じたのは、男女入れ替わりの部分は「約束」として進めてもいいんだということです。リアリティを考え過ぎると、いろいろ小さく収まってしまうのでは?という懸念もあったのですが、あの作品はそんな理屈を超えて描かれていたように感じていたので、映画『転校生』を観て勇気も湧き、思い切って演じればいいんだと感じました。

—–映画『転校生』の他に何か参考にされた作品はございますか?

小出さん:最近の連続TVドラマ『天国と地獄』は男女入れ替わりのサスペンス作品で、本作の制作前から観ていたので、男女入れ替わりもののイメージはできていましたが、今作は作品的にコメディ的な要素もあったので、観やすく面白い方向に持って行けたらと思っていました。

—–たとえば、どのシーンでそのライトさを表現できていると思いますか?

小出さん:男女が入れ替わってそれを受け入れて行く途中、すぐには受け入れられず、自分が働いていた美容室に行って店長を説得するエピソードなどは、見え方としてコメディ感も意識していました。

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—–たとえば、この作品はいまおか監督作品ですが、小出さん自体、いまおか作品のご出演を通してご自身の中で役者として何か新しい発見はございましたか?

小出さん:今までなかなかなかったストーリーや世界観の中で主演を経験したという点で、非常に僕としても経験の幅が広がったと感じています。

—–その経験の幅が広がった事によって、次の活動に活かせる事は何かございますか?

小出さん:大いにあると思います。自分が今まで経験した事がなかったジャンルに挑戦し、経験値もプラスになりました。たとえば、もしまた絡みの多い作品への出演オファーをいただけたとしたら、今回の経験は確実にこれからの糧になると信じています。また、今回のいまおか監督の脚本では、何も起きないような空間でずっと主役として演じて、何も起きない日常の中でも堂々としていていいんだということに気づかされました。要は、「待つ」という事を作品の中で感じさせて頂きました。

—–いまおか監督がお書きになった脚本にも触れられましたが、今回監督が手掛けているシナリオを最初に手に取った時の小出さんのシナリオに対する印象や手触り、感触について何か感じるものはございましたか?

小出さん:最初は非常に早い段階の脚本を頂きました。まだ荒削りな部分もあったと思うんですが、いまおか監督の脚本は、最初の段階から監督の脳の中にあるイマジネーションの世界を感じ取ることができるので想像が膨らみましたただ、同時にこの世界を自分が体現できるのかという不安もありました。

©2024「愛のぬくもり」製作委員会

—–本作の根底にあるものは、どんな人間であろうと等しく、「自分らしく堂々と生きる」というテーマだと私自身は受け取りましたが、小出さんは今作を通して、このテーマからどんな印象を受けましたか?

小出さん:今、世の中全体が自分らしく生きていこうという価値観に向かっていると思うので、その点において現代の時代性にも非常に合っている作品だと思いました。役者という職業を通して現実では体験できないことを経験させていただいている自分としても、「自分の境遇を受け入れる」という形で自分らしく生きる役を演じさせていただくのは貴重な経験でした。

—–最後に、本作『愛のぬくもり』が今後上映を通してどう広がって欲しい、また何か心に残って欲しいなど、何かございますか?

小出さん:ちょうど先日、映画とは別の業界の方から映画『愛のぬくもり』を観に行ってくださったというお話を伺いました。その方は、作品がすごく良かったと熱弁されていました。観てから一週間ぐらい経っているのにも関わらず、脚本の筋書きや展開もしっかり覚えていて、作品側の仕掛けやキャッチして欲しい事柄も受け取られている様子でした。その方に作品が非常に刺さっている感じがしたのが、とても嬉しくなりました。様々な解釈や受け取り方ができる作品だと思いますので、たくさんの方に色々な印象を残すのではないかと思います。その方が言うには、この作品の良さが体の中に残ってなかなか抜けなかったそうです。最近は、ドラマや映画もたくさん制作され、観やすい作品もたくさんありますが、映画『愛のぬくもり』はなかなかガッチリと体の中に留まっているとおっしゃっていて、すごく嬉しいなと思いましたね。色んな意味で体や頭の中に印象として残る作品なんだなと、改めて実感させられました。ぜひ一度ご覧頂き、それぞれの印象を受け取っていただけたら大変嬉しいです。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

©2024「愛のぬくもり」製作委員会

映画『愛のぬくもり』は現在、関西では7月26日(金)よりアップリンク京都、7月27日(土)よりシアターセブンにて上映中。また、7月28日(日)にシアターセブンにていまおかしんじ監督舞台挨拶を予定。