映画『[窓]MADO』心の中の空気の入れ替え

映画『[窓]MADO』心の中の空気の入れ替え

2023年12月2日

真実は、視えますか?映画『[窓]MADO』

あなたは、煙草を吸いますか?あなたは、煙草が好きですか?あなたは、煙草の煙、好きですか?近年、「分煙、分煙」と叫ばれる時代。喫煙者は、年を経るごとに、肩身の狭い日々を送っている。昭和時代は、電車内で煙草をスパスパ、劇場で煙草をスパスパ、トイレで煙草をスパスパ、どこでも至る所で、誰の目にも気にせず、煙草を吸えた時代があった。それが今では、禁煙車両が作られ、禁煙店舗が増え、分煙ルームが至る所に設置され、本当に喫煙者には居心地の悪い社会だ。そんな私は、非喫煙者だ。一度、10代前半の頃に、味を覚えて、おっさんが好む甘くて上品な名柄(パーラメント)の煙草を好んで吸っていた記憶もあるが、それは遠い記憶。今はまったく吸わない非喫煙者の一人だ。それでも、タバコを吸う者の肩身の狭さは、手に取るように分かる。ただ、彼らを擁護するつもりはなく、できるのであれば、この世から煙草を吸う習慣が無くなれば良いと願うばかり。と、歯も着せぬ発言によって、喫煙者と非喫煙者間での論争が起きてしまえば、本末転倒だ。煙草を吸う者は、煙草を吸わない者に、煙草を吸わない者は、タバコを吸う者にそれぞれが理解を示し、歩み寄る必要があるだろう。さもないと、本作『[窓]MADO』が取り上げた「横浜・副流煙裁判」という世紀の民事裁判のような近隣トラブルに発展しかねるだろう。

根本的な話をすると、この「横浜・副流煙裁判」とは、どんな事件だったのか?簡単に言ってしまえば、煙草の煙による近隣トラブルが民事事件から民事裁判へと発展したという数年前の事件だ。近隣トラブルから事件が起きる事は多々あり、ここ数年の間にも頻繁に報道で取り上げられている。また、およほ50年ほど前にも高度経済成長期における団地住まいの中で起きた「ピアノ騒音殺人事件」(※1)が起きている。これが、日本の近隣トラブルにおける歴史では、日本初の近隣トラブルによる殺人事件だ。さて、話を戻して、この作品がピックアップした「横浜・副流煙裁判」をより深く知れば知るほど、これが単なる煙草の煙による近隣トラブルが民事裁判へと発展したと、外向きには、第三者にはそう映るかも知れない。でも、実際は中身を知って行けば、民間における事件裁判の係争ではない。民事事件にも関わらず、民事不介入の警察が最初から関わっている点(警察署管内の組織腐敗)、原告側における副流煙による健康被害に対して、担当した医師が虚偽の診断書を発行している点(虚偽診断書等作成罪の刑事罰)。すべてが、被告側への不利な形成として事件が動いているのは、何らかの計り知れない背景があり、何重にも重なる不審な点があると言われている。この記述に際して、より詳しく解説している「【横浜副流煙裁判】 ついに書類送検!! 分煙は大いに結構!! だけどやりすぎ 「嫌煙運動」 は逆効果!!」が、非常に分かりやすく、事件の顛末を説明している。

【横浜副流煙裁判】ついに書類送検!!分煙は大いに結構!!だけどやりすぎ「嫌煙運動」は逆効果!!

また、本件をルポタージュとして取り扱った黒薮哲哉氏が書き記した著書「禁煙ファシズム: 横浜副流煙事件の記録」では、事件の流れや裁判の顛末を事細かに上梓されている。また、黒薮氏が本著を執筆にする当たり、警視庁の警視総監に取材を申し込んだ所、取材NGで門前払いをされたという事実もある。日本のトップである警視庁警視総監が、取材拒否までして、執拗に隠そうとしている事件の真実は何なのか?これは、単なる近隣トラブルではなく、組織ぐるみの陰謀や腐敗を、得体の知れない何かが有耶無耶に覆い隠そうとしている様にも思えてならない。本当に、恐ろしい事件だ。

また、煙草の煙の問題は、本件事件だけでは無いことを戒めておきたい。タバコが原因の近隣トラブルが起き始めたのは、いつの時代からなのかはっきりしない。昭和の時代か、平成の時代か、はたまた喫煙に関する取り締まりが強化され始めた近年なのか、それはもうはっきりしない。それでも、近頃、タバコの副流煙問題でトラブルが発生し、裁判へと発展する事案が、増えたきたのではないだろうかと思う。原因の一つに、コロナ禍もまた、誘発している可能性がある。3密を避けるために、人々は外出を控えた代わりに、自宅に滞在する時間が互いに増えた。その結果、何が起きたかと言えば、本作が取り上げたような被告側の近隣トラブルが起きているのではないだろうか?この件を踏まえて、近年はタバコによる副流煙問題が、コロナ禍と共に急速に浮上している背景(※2)がある。本件「横浜・副流煙問題」のように、関西では大阪でも訴訟にまで発展した煙草トラブル(※3)の事案がある。また、昨年都内(※4)でも全く同じようなトラブルが、起きている。数年前に、大阪に住む女子大生が、精神を病んだ階下の住民に殺される衝撃的な事件(※5)も記憶に新しい。この事件では、隣合ったマンションの居住部分における「音」が、一つの原因でもあった。「音」や「煙草」、「煙」と言った本来普通に暮らしていれば、縁遠いであろうこれらの存在が、時に人々を牙を剥く。

ただ、副流煙問題は、本作が取り上げている「横浜・副流煙裁判」だけではなく、日本中の至る所で同様のケースが発生している事を忘れてはならない。これは、映画に登場する彼ら人物だけの話でははい。この物語は、私達の身近な日常に潜んでいる事だろう。近隣トラブルは、今すぐ解決しなければならない日本国内における社会問題だ。それに対して、私達はどう向かい合い、どう立ち会い、そして、どう対処すれば良いのか、共に考えて行く必要がある。本作を制作した麻王監督は、あるインタビュー記事にて、私達が見る認識の違いについて、こう話している。

麻王:「「リンゴは赤い」というけれど、本当に同じ赤を見てるかどうかはわからない。だから認識自体にそもそも断絶がある。そこが人間生活の面白いところだし大事なところ。思いの違う二つの家があって、その家の中でもそれぞれ立場が違っている。この映画では、そこに渦巻く認識の差にフォーカスしたかった。日記を読んだときにそういったものが全部つながった気がしたんです。」(※6)

と、私達人間が持つ認識の違いについて、話す。今、私達の目の前にある事実が、本当に正しい事なのか?あなたが見ている事実が、本当に事実なのか?それは、人によって、見え方、捉え方、感じ方が違って来ると、近いニュアンスで監督は話す。この違いを一緒にする事はできないが、その代わりに、認め合い、譲り合い、共に作り上げる事はできるのではないだろうか?

最後に、本作のタイトル『[窓]MADO』にこそ、この作品が持つ肝心要な主軸がある事に気づかなければならない。本来、「窓」とは、どんな存在だろうか?

窓とは、「窓は採光と通気を主な目的として設けられた壁面に施された開口部である。しかし通路のような人が通れる形状ではなく、開口部は腰より高い位置に設けられることが多い。通路としての開口部には、扉という構造が設けられるが、通路ではない壁の穴は、建具の有無にかかわらず窓と呼ばれうる。しかし近代化され高度化した多くの建築では、窓にこれを開閉しうる建具を設置する様式が主流である。照明の乏しかった時代には自然光を取り入れるために非常に重要な装置であった。また外気を取り入れ内部の空気を排出するための通気口としても重要である。用途にもよって様々な窓が存在し、特定の目的に特化した窓や装飾された窓、所定の機能を追加された窓など様々な様式が存在する。」

と様々な用途で使われる窓の存在は、必要不可欠なものである。窓は、多機能に使われる反面、私達の内面を示している。心の窓、社会の窓(普段間違った言葉で使われているが、本来は「普段見られない(社会の)部分が見える」というコンセプトの元、昭和23年から放送されたNHKのラジオ番組「インフォメーションアワー・社会の窓」が、正式な呼び名)としても認識する事ができるが、今のご時世、人間関係のイザコザ、家庭内や職場内の空気の悪さ、人々は全く反省せず、今を生きている。この重く冷たい空気の流れを、窓を開けて煙草の煙と共に空気の入れ替えしませんか?今、私達がしなければいけないのは、この「空気の入れ替え」だ。スクリーンと呼ばれる「窓」から原告家族被告家族の姿を目撃した時、私達は本当に心の中の重く冷たい空気の入れ替えが必要であると、必ず気づくはずだ。

映画『[窓]MADO』は現在、12月2日(土)より大阪府の第七芸術劇場にて、上映開始。また、第七芸術劇場にて12月2日(土)17:35の回の上映後、映画『[窓]MADO』のご出演の西村まさ彦さん、大島葉子さん、そして麻王監督による舞台挨拶が行われる予定。

(※1)日本初の騒音が事件に繋がった。”ピアノ騒音殺人https://v-smith.co.jp/custom-post-blog/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%88%9D%E3%81%AE%E9%A8%92%E9%9F%B3%E3%81%8C%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%AB%E7%B9%8B%E3%81%8C%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E9%A8%92%E9%9F%B3%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B/(2023年12月1日)

(※2)コロナ禍で「隣人トラブル」は増えている…できるだけ“穏便に解決”する方法を弁護士に聞いたhttps://www.fnn.jp/articles/-/189769(2023年12月2日)

(※3)「迷惑行為をやめろ」…ベランダ喫煙で訴訟に発展 煙たがられる「ホタル族」のリスクhttps://www.sankei.com/article/20230423-AGJQOZ7CTZPJVKGTPKD7AKSVAE/(2023年12月2日)

(※4)喫煙可マンションで起こったご近所トラブル 愛煙家が悲嘆、お願いという名の“強制”https://encount.press/archives/319994/(2023年12月2日)

(※5)女子大生殺害、隣人は恐怖感じ直前に引っ越し…事件の鍵握る「音」https://www.yomiuri.co.jp/national/20210510-OYT1T50041/(2023年12月2日)

(※6)『[窓] MADO』麻王監督 デッサンすることが自分の認識も作っていく【Director’s Interview Vol.272】https://cinemore.jp/jp/news-feature/2772/article_p2.html#ap2_1(2023年12月2日)