テアトル梅田 営業・宣伝担当瀧川佳典さん「一本でも多く映画を観て下さい」インタビュー【連載】

テアトル梅田 営業・宣伝担当瀧川佳典さん「一本でも多く映画を観て下さい」インタビュー【連載】

2022年9月29日

およそ30年、関西の映画シーン、ミニシアター文化を支えてきたテアトル梅田 営業・宣伝担当瀧川佳典さんにインタビュー

©Tiroir du Kinéma

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—–およそ30年、瀧川さんはテアトル梅田に従事しておられますが、テアトル梅田に働くようになった経緯を教えて頂きますか?

瀧川さん: 95年の阪神淡路大震災で、当時働890qいていた六甲アイランドの職場が被災し、テアトル梅田へ異動となりました。

その後、1年ほど東京に異動している時期もありましたが、以来ずっと、このテアトル梅田で働いています。

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—–長い間、ここテアトル梅田で働いておられますが、数多く作品も上映されてきた中、瀧川さんにとって、個人的に最も思い出深い作品は、何かございますか?

瀧川さん:大ヒットした作品もあれば、個人的に好きな映画や色んなエピソードがある作品も沢山あって選ぶのは難しいですが…。

先日行なった「テアトル梅田さよならトークイベント」の会場で流すための動画の撮影に当館5代目の支配人に東京まで会いに行きました。

その時に、心斎橋シネマ・ドゥで上映された映画『がんばっていきまっしょい』という作品の話が出ました。

当時、支配人に勧められて観たのですが本当に素晴らしくて「うちでも上映しませんか?」とすぐに支配人に提案。

「それはいいですね」と賛同してもらいました。

公開日を検討していた最中、その作品が朝日ベストテン映画祭で、邦画第一位に選出。

その追い風もあり、上映開始後、多くのお客様にお越しいただけたことがとても嬉しく、強く思い出として残っています。

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—–作品選定には、様々な事情もおありだったと思いますが、今回のさよなら興行『テアトル梅田を彩った映画たち』の20数作品のラインナップに決まった経緯など、話せる範囲で構いませんので、教えて頂けますか?

瀧川さん:関西の番組編成担当者と現在の支配人と私の三人で、それぞれ上映したい作品リストを持ち寄り検討しました。

私のリストの選考基準は、これから日本の映画界を引っ張っていく監督や俳優さんの作品。

大阪に縁のある監督や俳優さんの作品。

また、テアトル梅田を代表するヒット作や間違いなく楽しんで頂ける作品を選考しました。

あと、アニメ作品は必須項目でしたね。

ただ、デジタル素材がない、上映権利が切れているなど、様々な理由で上映出来る作品はどうしても少なかったです。

そのような事情を考慮し、自社配給作品が少し多めになってしまいました。

ただ、質の高い作品が揃った自信は、大いにあります。

実際、今回の「テアトル梅田を彩った映画たち」のラインナップを発表した後、否定や疑問の声はほとんど聞こえず、圧倒的にお褒めの言葉が多かったのは、大変嬉しい出来事でした。

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—–残念ながら、抗えない事実としてテアトル梅田は閉館してしまいます。ただ、「始まりの終わり、終わりの始まり」という言葉があるように、閉館とは終わりでしょうか?それとも、何かの始まりでしょうか?

瀧川さん:色々カッコよく言うことは出来るのかもしれませんが、残念ながら、あくまでも閉館は閉館です。

閉館に対して暗く落ち込んでいても、その日は必ず訪れます。

だったら、明るく前向きに閉館を迎えたい。

そのような思いからTwitterで「#閉館を楽しもう」というメッセージを発信しました。

例えば「映画Tシャツを着て映画館へ出かけよう」と呼び掛けたり、写真でテアトル梅田を綺麗に撮ってあげてくださいとお願いしてみたり。

さよなら興行含め、現在上映中の『WKW 4K ウォン・カーウァイ4K』にも若い方がたくさん足を運んで下さっています。

そういう意味で、今、新しい種を蒔けているという実感はあります。

閉館後、その種にどうやって水をあげて手入れして、芽を出させて大きな花を咲かせるかが、今後の課題だと思います。

終わりで終わらせるのか、始まりを始められるのか、はこれからの取り組み次第だと思います。

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—–映画文化を100年先、200年先、残して行くにためには、私たちは今、何をすべきでしょうか?

瀧川さん:映画好きを増やす必要があると思います。

今でも映画好きな方は、たくさんおられると思いますが、それでも全然足りていないのが、現実です。

とにかく、映画を一本でも多く観て頂きたいです。

スマホでも配信でも、入口は何でも構いません。

たくさんの映画に触れてほしいですし、常に面白い映画はないかと自ら情報を探せる人になってほしいです。

やがて配信やレンタルを待っていられない状態になり、映画館に足を運んでもらえるようになるのが、理想です。

そして映画を観終わったら、一人で完結するのではなく、多くの人と共有するために感想を拡散して欲しいです。

今はSNSがあるので「観て良かった」と一言、二言発信していただけるだけで充分です。

常に会話の中に映画の感想がある、そんな環境になれればいいな、と思っています。

とにかく「一本でも多く映画を観て下さい」というのが、今の私の考えであり、強い想いです。

皆さん、多くの作品に、ぜひ触れて下さい。

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—–32年間、本当にお疲れ様でした。最後に、この映画館や関西の映画ファン(もしくは全国の映画ファン)に向けて、一言お願いします。

瀧川さん:32年間本当にありがとうございました。

33年目の秋にテアトル梅田は閉館致しますが、関西には他の映画館はまだまだございます。

映画も、どんどん作られています。

ですので、先程もお話させて頂きましたが、とにかく一本でも多く、映画を観て頂きたいと強く思っています。

—–本日はご多忙な中、貴重なお話をありがとうございました。そして32年間、本当に、本当に、お疲れ様でした。

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まだまだ、これから関西の映画文化は永永無窮、創造されて行く。