第20回大阪アジアン映画祭 映画『朝の海、カモメは』

第20回大阪アジアン映画祭 映画『朝の海、カモメは』

今年もまた例年通り、大阪アジアン映画祭の季節が訪れた。今年は第20回を迎え、大阪府で開催中。テーマは「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」。第20回の上映作品本数は、新たに67作品が上映される。上映作品の製作国 ・地域は19の国と地域が集結したアジア映画に特化した映画の祭典。世界初上映19作、海外初上映6作、アジア初上映4作、日本初上映31作。3月14日(金)から3月23日(日)までの10日間、開催されている。本映画祭に出品された作品レビューと当日レポートを交えて、少しづつ紹介したい。

映画『朝の海、カモメは』

一言レビュー:寂れた漁村で暮らすヨングク爺さんは、かつてベトナム戦争で海兵隊員だった頑固者。ある日、船員のヨンスがベトナム人の妻を残し行方不明になる。時代に取り残された人々の焦燥と閉塞に抗うヨングク爺さんの不器用な愛情が胸を打つ。一人の失踪事件から端を発する閑散とした漁村に住む村民の粗暴で醜態、不器用にも程があり、溢思いやりを表現するのが苦手な人間達の姿は、まるで私達自身を見ているようでもある。地方は、人間関係が濃すぎるあまり他者との距離感が近く、プライベートという言葉はなく、他人のプライベートゾーンにズカズカと上がり込む。その反面、地域のネットワークは非常に頑丈で、長年共に暮らして来た地域住民は互いに対して助け合う精神を持っている。地域の村人が漁船から落ちて失踪し、多少の揺らぎが起きようとも、その結束は変わらない。船の事故と言えば、日本で2022年4月23日に起きた知床遊覧船沈没事故(※2)では、無線の故障や海への無知識、無理解が重大事故を引き起こしたと言われている。それは、本作『朝の海、カモメは』でも漁船の無線故障が事件を肥大化させた要因は否めない。人命を守るのは機械や乗り物ではなく、人の安全意識やリスクヘッジそのものが人命を優先させる意識の始まりだ。

(※1)「地元には絶対に帰りたくない」という地方出身者の気持ちが、ほんの少しだけわかった。https://blog.tinect.jp/?p=69923(2025年3月23日)

(※2)知床観光船「カズワン」事故、桂田精一社長を逮捕…安全確保怠り26人死亡させた疑いhttps://www.yomiuri.co.jp/national/20240918-OYT1T50076/#google_vignette(2025年3月23日)