24時間のサバイバルに耐えられるか?映画『アビゲイル』
吸血鬼伝説は、いつ頃から囁かれているのだろうか?別名ヴァンパイアと人々は呼称し、随分古くから恐れられている存在だ。彼ら吸血鬼は、数百年以上、長い期間生き続け、人が寝静まった夜間に生き、真っ赤な人の血を吸い、世間の片隅、暗黒の闇の中、息を潜めてひっそりと生きて来た。ヴァンパイア?ドラキュラ?吸血鬼?一体、どれが正しい呼び名か分からないが、古くから知られるドラキュラ伝説こそが、今の世に脈々と受け継がれる恐怖の言い伝えだ。ドラキュラ伝説の起源(※1)は、15世紀のルーマニアに実在しワラキア公のヴラド・ツェペシュ(ヴラド3世)が、発端だ。父親のヴラド2世は、ローマ皇帝から「ドラクル」という名を与えられ、息子のヴラド3世が「ドラゴンの息子」もしくは「悪魔の子」を意味するドラキュラあるいはドラキュリアというあだ名を襲名した。正式な意味合いで言えば、アイルランドの作家ブラム・ストーカーは、1897年に小説「吸血鬼ドラキュラ」を発表し、世界中でドラキュラというキャラクターが定着した。何千年前も生きているという設定のドラキュラ伯爵でさえ、実は100年ちょっとの浅い歴史の中の伝承だったようだ。映画『アビゲイル』は、吸血鬼の少女を誘拐してしまった犯罪グループが過ごす戦慄の一夜を描いたアクションスリラーだ。現代に蘇った凶暴なヴァンパイア少女を食い止める事ができるのか?今夜、誰もが試される恐怖の一夜を。
吸血鬼の歴史は、15世紀または1897年に遡る事ができる昔からあるヴァンパイア伝説だ。数百年に渡って恐怖の存在として君臨して来た吸血鬼だが、近年はパタッと名前を聞かない。彼らは一体、どこで何をしているのか?21世紀の2020年代の今の時代、吸血鬼の恐怖はもう、過去の産物かもしれない。でも、世界中のどこかで彼らは今も、誰かを怖がらせようと、誰かの血を吸おうと燻っているのだろう。今夜、貴方はヴァンパイア達の禁断の扉を開ける。怖がる準備は、できているか?いつでも恐れるように、恐ろしやのグッズは手元にあるか?さぁ、現代社会に生きるヴァンパイアの世界に、一歩足を踏み入れよう。1897年に刊行されたアイルランド人作家ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』の序文が刊行時、ある一文がカットされたと言われている。その一文が、「私は純粋なフィクションを書いたのではない。ここに描かれた出来事が、一見どれほど信じがたく、不可解に思えようとも、実際に起きたのだということは疑いの余地もない。私は強くそう信じている」(※2)とあるように、ヴァンパイア伝説は実際に起こった出来事と東欧やアイルランドでは信じられて来た。ドラキュラ伝説は、今でいうゾンビだ。亡者から蘇った死者が、吸血鬼となって、何百年、生きた人間の血を吸い続ける。ゾンビのように死から生き返った彼らは、常にこの世とあの世をフラフラしながら行き来している。近頃、ピタと噂を聞かなくなったヴァンパイア達の消息は、映画やテレビ、マンガ、小説といった物語の中で今も生き続け、たとえば、本作『アビゲイル』では子どもの吸血鬼が、悪党に襲い掛かるアクション映画として昇華されている。今年に入ってから報道で、実しやかに囁かれて来た吸血鬼が人間の血を吸って、生き長らえる。また、若返りをするといった都市伝説レベルの噂が今、医学界で実際に研究され、一つの成果を上げている(※3)。医学が、若者の血の中には老化を遅らせるパワーがある事を突き止めた。これがもし、現実社会で認可が降りれば、一つの時代の価値観が180度、逆転する脅威の発見となり得る。恐怖に慄くのではなく、未来への希望に向けて、魂が震える新事実ではないだろうか?
本作の物語をざっくり説明すると、悪党どもが少女を誘拐して、身代金の要求をと企んでいたら、何と相手は最強パワーを持つ少女ヴァンパイアだったというホラーとスリラーを融合させたアクション映画だ。近年、悲しい事に、子どもの失踪や行方不明はよく耳にするし、報道される事もしばしばあったが、昭和の時代のように子どもの誘拐事件は頻繁には聞かない。むしろ、ほとんど起こっていない。でももし、子どもを誘拐する事件が起きてしまったら、実際問題、どうなってしまうのか?最悪の事態も想像しながら、書き進めたい。今回、この作品は誘拐された可愛いお嬢ちゃんが、なんとまさかの凶暴な吸血鬼だったというトラップが用意されていた訳だが、もしこれが、誘拐した子どもがヴァンパイアではなく、何らかの心疾患、その他の疾病、喘息などを患っていて、手元に薬がない、もしくは病院に搬送される事なく命息絶える可能性も十分、考えられる。ヴァンパイアという存在は非現実的な空想のキャラクターではあるが、もし上記で話したような事が起こったとしたら、笑い事では済まされない。少し視点を変えてみて、誘拐ではなく、見知らぬよそ様の他人の子を預かるとなった時、あなたは大人として何に気をつけたら良いか、熟知しているだろうか?また、子どもを預けるにあたっての責任の所在は、どこにあると言えるだろうか?双方の合意のもと子どもを預かった場合、一方的に子どもを預けた場合、子どもが保護者の同意なく勝手に自宅に来てしまった場合など、様々なシチュエーションが考えられる中、誰がどう責任を取るのか、子どもの安全性についてどう話し合うべきか。一つの空間に大人と子どもが存在するという事について本作を通して考えたい。大事なことは、大人に責任があるという事。その責任を全うした上で、子どもをどう扱うかもう一度、共に向き合う必要がある。さもなくば、何かトラブルに巻き込まれたり、大人か子どもかのどちらが怪我を負う事になるかもしれない。映画『アビゲイル』を制作した共同監督の一人タイラー・ジレット監督はダブルインタビューにて、本作に出演しているアリーシャ・ウィアーついてこう話す。
タイラー・ジレット監督:「それは単なる懸念ではなく、アリーシャをキャスティングする前に夜も眠れないほど悩んだことでした。脚本を読んで、ああ、この映画でアビゲイルの出番を減らしたくない、彼女はいろいろな意味で中心にいなければならないから、と思いました。でも、このキャラクター、そして彼女を演じる人にとって、やるべきことは本当にたくさんあります。そして、脚本に書かれていたことは、実際にはアリーシャが最終的にそのキャラクターにもたらしたもののほんの一部に過ぎないことに気付きました。アクション シーケンスはすべてダンスに特化したもので、私たちは彼女の生まれながらの才能と能力だとわかったものを中心に映画をデザインしました。ですから、映画を見ると、信じられないほど感情的な演技が見られます。でも、大きなスタントの場面では、それはすべてアリシアの演技で、最初にオーディションを受けたときと同じ成熟度とニュアンス、そして楽しい感性でその部分に取り組んでいます。私たちは彼女と一緒に素晴らしい時間を過ごしました。彼女がいかに素晴らしいパフォーマーであるかは、言葉では言い表せません。」と話し、この映画は子どもや子役が非常にネックな作品だ。乱暴なヴァンパイアの少女が活躍する物語だからこそ、他の大人のキャラクターが浮き立つ。また、そのヴァンパイアの子どもを最後まで演じ切れる子役、本作ではアリーシャ・ウィアーの存在がなければ、成立しなかった企画だったのかもしれない。このような点と上記の大人としての子どもに対する責任、責務という観点を踏まえて、子どもの才能を開花させるのも、またその逆にダメにさせるのも、すべては一つの空間にいる大人たちの責任であると言えよう。
最後に、映画『アビゲイル』は、吸血鬼の少女を誘拐してしまった犯罪グループが過ごす戦慄の一夜を描いたアクションスリラーだが、この物語には無責任な大人しか登場しない。その無責任さが招いた悲劇の結果が、ヴァンパイアへの覚醒に繋がってしまうのだろう。それが、何か病気を患っている子どもだったら?もし子どもを子守りしていて、相手の子が事故にあってしまったら?それは、すべて周囲にいる大人の責任であり、大人達は自身の責務を最後まで完うする必要がある。初志貫徹という四文字熟語があるが、最初から最後まで、せめて子どもの前では自身が大人である事を忘れないで欲しい。そうでなければ、ある日突然、爪を立てて、牙を向いて、子どもヴァンパイアが血を吸いに襲い掛かって来るだろう。
映画『アビゲイル』は現在、全国で大ヒット公開中。
(※1)吸血鬼や狼男はなぜ生まれた? 伝説誕生の経緯を検証https://www.nikkei.com/article/DGXMZO15399840X10C17A4000000/#:~:text=%E5%90%B8%E8%A1%80%E9%AC%BC%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%81%AF%E5%8F%A4%E4%BB%A3,%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%9E%E6%BA%90%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82(2024年10月25日)
(※2)吸血鬼はノンフィクション? 伸びる爪、腐らぬ体の謎https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54893680X20C20A1000000/(2024年10月25日)
(※3)現代版ドラキュラ伝説?若い血液で高齢者が若返る最新医学https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/30f260b6a9a04a5bb2ded25d9fdf85ec3677fe5d(2024年10月25日)
(※4)子どもを預かる場合の責任の所在は?知っておきたい6つのことhttps://best-legal.jp/keep-in-custody-children-11084/(2024年10月25日)
(※5)Exclusive Interview: Directors Matt Bettinelli-Olpin and Tyler Gillett on the care and feeding of “ABIGAIL”https://rue-morgue.com/exclusive-interview-directors-matt-bettinelli-olpin-and-tyler-gillett-on-the-care-and-feeding-of-abigail/(2024年10月25日)