映画『とおいらいめい』地球が生きている鼓動

映画『とおいらいめい』地球が生きている鼓動

2022年10月31日

彗星が衝突する泡沫の瞬間を描いた映画『とおいらいめい』

©ルネシネマ

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まだ、地球は生きている。

何があろうとも、こうして地球は鼓動を繰り返している。

終末論は、昔からまことしやかに囁かれてきた議論だが、未だにその謎は解明されていない。

それでも、これから先、近い未来、実際に起こりうる事象なのだろうか?

過去を紐解けば、今から24年前の(※1)ノストラダムスの大予言やちょうど10年前の(※2)マヤ暦などが、大衆向けに大々的に取り上げられて来た。

ただ、これらの終末論説は、非常に新しい。

宗教的見解で言えば、キリスト教、仏教、ヒンドゥー教、百王説、元・会・運・世の説と、多くの宗教が随分と昔から終末論に関する記述を残している。

キリスト教では、「新約聖書にある終末信仰」や「ナザレのイエスが語った終末観」が、終末論に当たる。

「ナザレのイエスが語った終末観」では、マルコ福音書13:32にある「かの日ないし〔かの〕時刻については、誰も知らない。天にいるみ使いたちも、子も知らない。父のみが知っている」この記述が、終末思想だと言われている。

また、仏教では平安時代後期、百王説では南北朝時代から真実かのように、終末論が囁かれてきた。

他にも、一神教であるユダヤ教、イスラム教、ゾロアスター教でも、同じような動きが、古往今来起きている事を、ここに記載しておく。

©ルネシネマ

先の記述は、予言や宗教的観点の話だが、終末論は小惑星の衝突から起こりうる事がある事も、忘れてはならない。

ここに興味深い記述を見つけたので、一緒に紹介したい。

(※3)「これまでの地球史の中で、人類を終末に導く可能性のあった巨大小惑星の衝突は確率論的 (1億年に1回の確率)に起こっている。 その顕著な例が、 6500万年前に起こった直径10キロメートルの彗星小惑星衝突であろう。 メキシコのユカタン半島にその跡と考えられる巨大陥没構造がある。この衝突によって恐竜が絶滅したといわれている。」と、彗星の衝突からなる地球滅亡論を全面的に肯定している記述だ。

また、現代的キリスト教の終末論においては、(※4)「終末論は、未来に投影された反歴史的解決であると述べている。そして、その終末論という思弁の根底には、「祖型の反復」の平面に閉じ籠もることにより、一回起的なるもの新奇なるものの連続により構成される歴史というものを拒否せんとするアルカイックな伝統的観念が存在することを指摘する。」と論じられている。

話は変わるが、今年とても興味深いニュースが、年明けに飛び交った。

あの(※5)ノストラダムスの大予言(2022年版)は、まだ終わっていなかったのだ。

2020年には、マヤ暦が終末論の予言を出していたとも、言われている。

終末論が誠か、虚像か。

それは、人それぞれの信じる力に委ねられている。

ただ、いつか、「今」に終わりがあるのなら、明日何ができるだろうか?と映画『とおいらいめい』は、観る者に問いかける。

本作には、『アルマゲドン』や『デイ・アフター・トゥモロー』『ディープ・インパクト』と言ったハリウッド大作にありがちな偉そうな政治家も、群衆の大群も、屈強な男も、スーパー・ヒーローも登場しない。

そこに存在するのは、か弱い女性たちだ。

それでも、何故だろうか?彼女たちからは、生きることへの力強い営みを感じて止まない。

刹那的に滅び往く「今」を、一生懸命生きようとする女性たちの物語なのだ。

この精悍なタッチで物語を紡ぎ出したのは、自主映画制作ユニット「ルネシネマ」で活動する大橋隆行監督だ。

監督は、彗星が衝突するという本作の設定についてインタビューで、

(※6)「彗星が落ちてきて世界が終わるという設定は、原作にもあるんです。もともと僕も『ディープ・インパクト』とか『アルマゲドン』とか1990年代後半から2000年代初頭に流行したディザスター映画は大好きで、いっぱい観ていました。ただ、自主制作で同じものを作れるとは到底思えなかったんです。自分で作る話としてはずっと避けてきたジャンルでした。それが今回、原作の世界観ならば、小さな家族の話を紡げると思えたんです。このアプローチであれば、「彗星が落ちてくる」という状況の話も我々の規模で、ちゃんと作れると感じ、挑戦してみる事にしました。」と、作品の設定について、話す。

本作は、彗星が残り数ヶ月で地球に衝突する終末論を描いた日本のネオSF映画だ。

ハリウッド映画のようなアクション満載の物語が、展開される事はないが、今そこで生きる市井の人々が見る各々の「終末」が静かなタッチで表現されている。

ただ、終末論は、終末論にしか過ぎない。

ノストラダムスも、マヤ暦も、大きく騒がれた割には、何も起こらなかった(自分は何かが起きるのを強く願っていた)。

それでも、自分たちはこうして、「今」を生きている。

地球も、自転を繰り返しながら、力強く生きようとしている。

本作の物語のラストにおける三姉妹の絢音・花音・音が、見つめていたのは地球の終幕でもなく、彗星の衝突でもない。

彼女らは、地球の終点(淵)で、それが生きようとする心音を聞いている。

「とおいらいめい」とは、地球が生きている鼓動そのものなのだ。

©ルネシネマ

映画『とおいらいめい』は現在、大阪府のシネ・ヌーヴォにて、絶賛公開中。

(※1)「人類の滅亡」ノストラダムスの大予言で世間が震えてた過去https://www.excite.co.jp/news/article/E1449574281388/(2022年10月31日)

(※2)信じる?信じない?ちょっと話題の2012年地球滅亡説・・・https://www.oricon.co.jp/news/69522/full/(2022年10月31日)

(※3)危険な小惑星を見張るhttps://drive.google.com/file/d/1wWvfAvVpw_HHBz2GB0hwRtvAyCroijKy/view?usp=drivesdk(2022年10月31日)

(※4)現在的終末論の本質一原始キリスト教のそれを手がかりとして一 https://drive.google.com/file/d/1x8TrLv-PL_DYUGCC-CJNzVJZ6MmePCVg/view?usp=drivesdk(2022年10月31日)

(※5)ノストラダムスが予言してた「2022年に人類滅亡危機」その中身https://friday.kodansha.co.jp/article/229611?page=1(2022年10月31日)

(※6)『とおいらいめい』大橋隆行監督インタビューhttp://www.fjmovie.com/main/interview/2022/08_tooiraimei.html(2022年10月31日)