9月30日(金)、大阪府にあるテアトル梅田にて、映画『この世界の片隅に』の“最後”の舞台挨拶が、行われた。
この日は、監督の片渕須直さんが、ご登壇された。
映画『この世界の片隅に』のあらすじ
昭和19年。
故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁してきた女性すず。
戦争による物資不足が氾濫する中、各々の家庭は、日々の食卓を作るため、尽力していた。
だが戦争が激化するにつれて、日本軍の本拠地の呉は、空爆のターゲットとされる。
主人公すずの周囲の家も人も思い出も、立て続けに消失していく。
それでも、前向きに毎日の営みを続けるすず達だが……。
この日、ご登壇された片渕須直監督は、本作とテアトル梅田の多くの思い出を語られた。
片渕監督「本作『この世界の片隅に』は、2016年11月に公開され、全国の劇場で上映し、舞台挨拶もさせて頂きました。多くの映画館で上映して参りましたが、テアトル梅田は初めて、一般向けの試写を行った場所なんです。マスコミ向けの試写は行っていましたが、この作品では一般向け試写会をほとんど開催いませんでした。全国公開の11月より前に、私はここに来ているんです。公開初日から数えて連続287日間、この劇場で上映して頂きました。劇場関係者の計らいだけでなく、何よりもお客様が劇場の座席を埋めて下さった事が、とても嬉しいことでした。」
本作が、公開された当初の思い出を振り返った。また片渕監督は、
片渕監督「テアトル梅田のお客様が、この先どのような人生を送られるとか、この劇場で観た作品がどう影響していくのか、と考えたら、今日で終わりではないと思いました。映画館としては終わりを迎えますが、ご覧になった映画はずっと、心の中に残ります。心に残ったその先に、まだまだ続きがあるんです。今日でここは閉館を迎え、誰も映画を観れなくなってしまいます。でも、映画は、32年間ここで過ごして来た方々の心の中に残り続けます。それが、テアトル梅田が成し遂げた成果だと思います。」
と、テアトル梅田の過去から未来について、話された。そして、最後に恒例として、初めて劇場で本作をご覧になった方がおられるか、お聞きすると、数人の方が手を挙げた。片渕監督は、
片渕監督「劇場が存在する意味は、今ここで証明されたんです。劇場がある限り、新しい出会いがあって、それがその先に引き継がれていくんです。最後の最後まで、新しいお客様を迎える事ができたのは、とても嬉しいことです。」
と、少し涙ぐみながら、お話された。
こうして、32年に及ぶ劇場「テアトル梅田」の歴史に、幕が降ろされた。それでも、映画文化は明日も、明後日も続いていく。100年先に文化を残すためには、今を生きる私達が、創造し、継承し、語り継ぎ、そして行動する他ない事を忘れてはいけない。