仁義なき左遷の先には… 映画『極道系VTuber達磨』松本大樹監督独占インタビュー
—–本作『極道系VTuber達磨』が持つテーマを教えて頂きますか?
松本監督:特に、何かテーマに沿って製作しようとは考えていませんでしたが、ただ出来上がった物語としては、復讐の連鎖を断ち切ること。
また、「達磨」には七転び八起きという言葉がありますが、一度転んでしまっても、罪を犯した人間でも立ち直ろうとする人の姿を描いた結果が、本作製作の終着点になっているのかなと、思っています。
テーマを意識して作った訳ではありません。
—–ありがとうございます。「極道」「VTuber」「達磨」という組み合わせが斬新かなと思いますが、このセットにした経緯を教えて頂きますか?
松本監督:まず、製作の経緯として、主演の海道力也さんからお誘い頂いたところがあります。
海道さんが毎年、「海道力也映画祭」というご自身がプロデュースされ、作品を集めて上映するイベントがあるんです。
そのイベントに出品するために、作って欲しいという話がありました。
海道さんと言えば、やはりヤクザかなというイメージが強くありました。
ただ、僕は今まで、B級コメディやホラー等のジャンル系作品を作っていましたが、そういう要素も合わせつつ、任侠コメディっぽい作品を撮りたいと思っておりました。
Vシネマの作品で小沢仁志主演の任侠映画『FM89.3MHz』あるんですが、その作品はヤクザがラジオのDJになる物語なんです。
その発想がすごく面白くて、似たようなテーマで、今の時代にマッチした「VTuber」を要素として、ヤクザがVTuberになるストーリーラインに仕立てました。
「達磨」は、海道さん演じるムショ帰りのヤクザの髪型が、坊主でいいんじゃないかと海道さんから仰って頂きました。
それで、髪を短くした頃の写真を送ってもらったんですが、それが「達磨」にとても似ていたので、このままタイトルを達磨にしようと話がまとまりました。
—–七転び八起きという意味合いがまったくないところから、作品のタイトルが決まったんですね。
松本監督:最初は、海道さんから頂いた写真から連想して、「達磨」で行こうと決めました。
ただ、この物語はよくよく詰めて行けば、七転び八起きの話になりましたので、尚更「達磨」がいいとなりまして、最終的に採用しました。
—–制作前、制作後、監督として何か気を付けていた事は、ございますか?
松本監督:いつもではございますが、製作時のギャランティ面や時間の問題など、そういう面はしっかりと取り組みました。
キャストさんも、スタッフさんも、僕の作品に初めて参加される方が多くおられました。
今回は、海道さんのお知り合いの方に出演して頂きました。
元々の目的は、「海道力也映画祭」に作品を出品する目的がありましたので、海道さんと一緒にお仕事されておられる方もたくさん出演して頂いております。
その方々は、僕の作品には初めて出演、参加して頂きましたので、初参加の方にも嫌な思いをされたり、「インディーズ作品に出たくない」とは思って欲しくない気持ちもあります。
今までも、今回も、ギャランティ面や時間面はなお一層、気をつけました。
また撮影期間関中は、コロナの時期でしたので、感染対策もしっかり行いました。
—–正直なところ、作品が炎上してしまった時の当時のご心境を詳しく、教えて頂きますか?
松本監督:その時はTwitterで炎上してしまい、気にしなくてもいいですけど、どうしてもTwitterを起動して、見てしまうんです。
相当な数の罵詈雑言や誹謗中傷が飛び交い、見えない所で言えば、DMから直接、殺害予告的なメッセージもありました。
脅し、脅迫含めてですね。
本当に、こういう事が起きてしまうんだ、と。
実際、初めて自分の身に振りかかって、当時はすごく落ち込みました。
気分が沈んだと同時に、申し訳ないという気持ちが心の中でウェイトを占めていました。
出演して下さったキャストの方や、スタッフの皆さんもまた、皆で作り上げた作品が、炎上してしまうという結果になってしまい、本当に申し訳なく感じていました。
ただ、ありがたい事に、仲間の皆が本当に優しかったんです。
何があっても、いつでも監督の味方ですよ。
と、関係者の皆さんから、本当に支えられました。
近い仲間たちからも、大きな支えを頂きながら、立ち直ることができました。
あの時の「支え」があったからこそ、本当に仲間が大切という気付きを得れたんです。
また、自分が窮地に陥った時、傍に居てくれる人の存在がとても大事だと実感しました。
傍に居てくれる人達をこれから大事にしていかなければいけないと、今回の騒動を通して、学んだんです。
—–その周囲の方々の支えや励ましを通して、監督自身、今のお話以外でも、何かしら気付きなど、ございますか?作品に対する気持ちの変化は、ございましたか?
松本監督:元々は、劇場での上映も視野に入れていました。
いくつかの劇場さんにも、上映して頂けるようにブッキングしていましたが、炎上後は劇場上映が頓挫してしまい、なかなか一歩を踏み出せない状況になっておりました。
ただ、諦めないという気持ちはずっと持っておりました。
世の中に出せなくても、作るのに本当に苦労した作品でした。
今までの作品とは、規模の違う現場でした。
様々な困難がある中、死に物狂いで作り上げた作品です。
今は、状況が状況で、なかなか世に出せない状態ですが、絶対に復活するぞ、という気持ちは持ち続けました。
こんな状況でも、海道さんが昔から参加されていた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」には、必ず作品を応募して欲しい、と仰って頂きました。
僕自身、ダメ元でしたが、もしかしたら上映して頂ける可能性があるかと、僅かな希望を頼りに応募しました。
映画祭運営側からも、作品を選出して頂けたことを心より感謝したいです。
先程、お話させて頂いた「仲間の大切さ」とプラスして、諦めちゃダメだという事も身に染みました。
映画祭運営側の方々も、炎上した映画として前例のない作品だったかもしれません。
世間で一度、マイナスイメージがついた作品が上映されるチャンスは低いと思います。
でも、挑戦してみないと分からない事もあると思います。
少しでも可能性があるのなら、挑戦する事も大切だと思います。
より本作を大事にしたいという気持ちも今まで以上に、生まれました。
—–「達磨」をモチーフにしているからこそ、作品と監督自身にも説得力があると思いますが、もし「達磨」を主題にしていなければ、一体何を題材にしておりましたか?
松本監督:「達磨」じゃなければですよね。全然、考えられないです!
それは、まったく想像していなかったです。
—–今の作品や監督自身のまま、モチーフが「達磨」じゃなかったら。でも、「達磨」だからこそ、この作品は活かされている、と思います。もしかしたら、「達磨」じゃなければ、ゆうばり入選も有り得なかったかもしれないです。
松本監督:そうかもしれないですが、作品のテーマと作品外で起きたことが、リンクしているんですね。
—–リンクしていますね。
松本監督:そう考えると、本当にリンクしていますね。
僕自身、映画を三本作って来ましたが、映画とは必ずリンクするものだと思っております。
だからこそ、面白いですし、辞められないんです。
お金とか考えずに、それ以上に惹き付けられるモノがあります。
映画を作ることも、宣伝することも、広めていくことが自分の人生とリンクしており、自分自身と一心同体なんです。
特に、インディペンデントの世界で活動しておりますが、自分の映画と人生が繋がっている。
?
まるで、人生そのものが、映画なんです。
正直、他に置き換えられるものが、見当たりません!
撮り続ける限りは、自分の人生と近い物語にしないと、自分の作品とは声高に言えないです。
—–過去に失敗していることもあるんですね。
松本監督:それは、たくさんあります。諸事情で現在、一人暮らしで、家族はいませんが、映像製作を通して、家族を作ることができました。
—–それが、松本監督のチームですね。
松本監督:そうですね。本当に、そうなんです。あと、映画『みぽりん』の頃から応援して下さっているファンの方々にも支えられており、そういった皆さんも家族のような存在です。
多くの関係者やファンの方から、たくさんの力を頂きました。
家族や仲間、応援してくださる方に対して、ありがたい気持ちでいっぱいです。
—–今回製作した作品を通して、監督自身、多くの学びを得たのではないでしょうか?具体的にお話して頂ければ、幸いです。
松本監督:たくさん、ありました。自分自身が、愚かな人間であること。
炎上を招いてしまったのは、自分が招いたことです。
そういう人間の未熟さや愚かさをしっかりと、認識しました。それが、まず一点です。
だからこそ、自分一人では何もできないんだなと、改めて感じました。
本当に自分は、弱い人間なんです。仲間がいることの大切さ。そこは、本当に感じるところでした。
炎上騒動が起きておらず、タイムスリップして騒動が起きていない別の道があるとしたら、すごく傲慢な人間だったと思います。今以上に。
—–気付きもないままでしたよね。
松本監督:そうですね。作りたい映画だけ作って、宣伝し、公開していても、本当の意味でキャストさんやスタッフさんに対し、感謝の気持ちも持てなかったと思います。
でも、今は心の底から本当にありがたいと感じております。
こんな事件を起こしても、まだ応援してくれる方々がいることに、本当に感謝でしかありません。
そういう気持ちを忘れてはいけない。
今のこの状況で応援してくれている、支えてくれている仲間の存在を忘れてはいけないと思います。
—-少し映画の話から反れますが、今年の1月頃に立ち上げた「オトシネマ」とは、どのようなコンテンツ、媒体でしょうか?また話せる範囲で構いませんので、運営内容など、お聞かせ頂けますか?
松本監督:今までずっと映像製作の仕事を、15年近くしております。
そういう環境の中、数年前から毎年一本、長編映画も撮り初めておりますが、映画は一本作るのに、すごく大変なんです。
インディーズ映画を製作しようとすると、まずお金を集めるところから始まり、宣伝から公開、最初から最後まで、すごく大変だと感じております。
ただ、もっともっとモノづくりをしたいという思いもすごく強くて、色んな役者さんの繋がりもどんどん増えていき、この人とモノづくりしたいと、日に日に多くなってくるんです。
そう考えた時に、映画を作ることは難しいし、製作面でもコストが高くなってしまう一面もあります。
コロナ禍で唯一、僕自身を癒しくれたと言いますか、支えてくれたのがラジオだったり、ポッドキャストだったんです。
いつも聴いているDJさんの声や、ポッドキャストを運営している方の声を聴くと、気持ちが安らいでいました。今まで映像はしておりましたが、音声のコンテンツは大きく変動しており、ここから音声分野で挑戦したいと思って、「オトシネマ」という会社を立ち上げました。
今はラジオドラマを流したり、夏場は怪談等も配信しております。
そのようなコンテンツを作り、ポッドキャストにアップするという事を、ここ半年しております。
この期間で、ポッドキャストのドラマ小説部門で、どちらも一位になりまして、全体のランキングに入るほど、現在聴かれ始めております。
—–波に乗りつつあるんですね。
松本監督:お陰様で、地道にリスナーさんが増えつつあります。
大きく広がることは、ポッドキャストを聴いている方が、全体的に少ないという事もあります。
まだまだ、これからだと思っています。また、音声媒体は、文字や映像とは違う、情報の広がり方があるんじゃないかと思います。
じんわり染み込んで行くような人の考えや想いを深く乗ってられやすいと、ラジオドラマにもチャンスがあるのではないかなと、感じています。
—–ラジオは、お好きなんですか?
松本監督:はい。好きで、今も一日中ラジオや、ポッドキャストをずっと聴いている時もあります。
日本では現在、ラジオやオーディオブック、ポッドキャストが、伸びている傾向ですが、アメリカや中国に比べると、伸びがまだまだ緩やかな状態です。
アメリカだと、途轍もない勢いで、オーディオ関連が、伸びつつあります。
ユーチューバーとポッドキャスターの年収が変わらなくなってきているほど、音声媒体の立ち位置に変動が起きています。
その波が、日本にも訪れることを信じて、先行投資をしています。
目的としては、モノづくりや情報を発信したいと思っています。
関西で活動されている方々を応援しようと思っており、「オトシネマ」に出演して下さっている方は、関西で声優として活動されている方が多いんです。
関西には、アニメや吹き替え等、声の仕事をする機会が、とても少ないんです。
技術や才能があるにも関わらず。その点がとても勿体なく感じて、声優としてのテクニックを持っていても使えてないのが現状ですので、そういう方々も知って頂きたいと思っています。
知名度がなくても、技術といい声があれば、この世界で勝負できるのではないかと、今は自信を持っております。
これからも、どんどんと作り続けたいと思っています。
—–ありがとうございます。今までのお話を要約すると、「達磨」は自分の力で起き上がれますが、人はやはり「達磨」じゃないんですね。誰かの支えがないと、人は失敗した時に起き上がれないと思います。最後に、本作『極道系VTuber達磨』の魅力を教えて頂けますか?
松本監督:やはり、キャストさんです。それに尽きます。
もちろん、海道力也さんにも注目したいんですが、主演だけでなく準主演の方々の全キャストの皆様、一人一人が際立っていて、それぞれが輝いています。
僕は全員にそれぞれ見せ場を作りたいという気持ちで、今回製作しました。
主演は海道さんですが、この作品に出演されている方々皆さんが、主演みたいなものなんです。
本作に出演している皆様に、活躍の場を作りたいと思って、本作を制作しました。
とにかく、キャストの皆さんが魅力的な作品だと思います。
本作に出演している方々を一人一人、観て欲しいというのが、私の願いです。
—–貴重なお話を、ありがとうございました。
映画『極道系VTuber達磨』は、7月28日(木)から8月1日(月)まで開催される映画祭「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2022」にて、上映される。また、動画配信サービスのhuluにて、オンラインで視聴可能です。