映画『痴人の愛』「好きな人に対して好きと思える感情を大切に」奈月セナさんインタビュー

映画『痴人の愛』「好きな人に対して好きと思える感情を大切に」奈月セナさんインタビュー

©️2024『痴人の愛』製作委員会

©️2024『痴人の愛』製作委員会

©️2024『痴人の愛』製作委員会

—–まず、映画『痴人の愛』への出演経緯を教えていただけますか?

奈月さん:出演させて頂くきっかけになったのは、レジェンド・ピクチャーズさん方から直接オファーを頂きまして、出演が実現しました。

—–ご出演が決定した時の気持ちは、何かございますか?

奈月さん:実は私、谷崎潤一郎が書いた小説「痴人の愛」をちゃんとしっかり読んだ事がなかったので、お話を頂いてから、原作と脚本とを照らし合わせて拝読しました。谷崎潤一郎の独特の世界観がある中、その世界観を守りながら、どう演じて行くのかは、非常にプレッシャーを感じました。

—–奈月さんが持つナオミに対する印象について、お話し頂けますか?

奈月さん:最初、原作を読んだ時、悪女のように異性を振り回す女の子のイメージがあったんですが、実際、役作りをしていく中、ナオミの性格を分析すると、素直で自由な子だけど、彼女自身には悪意はなく、真っ直ぐな子という印象を受けました。

—–奈月さんのお話を聞きして、私自身は寂しさをどこかに持っていると感じました。

奈月さん:私も凄く同じ事を感じていました。それは、家庭環境から影響されるものが大きいと思うんですが、本作でも家庭環境の要素もラストに登場させていますが、男性の父性を求めている点は、ずっと感じていました。

©️2024『痴人の愛』製作委員会

—–小説「痴人の愛」は、過去に49年、60年、67年、スピンオフの80年、3、4回映像化されておりますが、奈月さんは過去複数回の映像化されたナオミに対して、今回の新しいナオミと何か違う線引きや違う人物像の付け方など、何か作り込まれましたか?

奈月さん:まず、過去に何度か映画化されている事は、お話を伺ってました。また、自分が考えているナオミ像が、世の中のナオミ像と合っているのかについては不安はありましたが、その点は監督と人物のすり合わせをしながら、最終的に監督は役者に役作りを任せて下さったので、安心して現場に挑めました。その上で今回は、今までの映画『痴人の愛』と決定的に違うのは、令和版にアレンジさせていますので、その点に関して原作ファンの方が、どう受け止め、どう感じて頂けるのかは、ある意味、挑戦をした作品ではあります。

—–正直、私はその小説には、まだ触れていませんが、小説と令和版の映画の違いとは、どういう点で違っているかなど、何かございますか?

奈月さん:小説「痴人の愛」は、100年前の作品なので、100年前の男女の在り方に対して、女性が一歩引いて、男性を立てて、支えるようなイメージがあると思いますが、現代の社会は多様性も受け入れつつある中、男女の在り方も様々な形があると思いますので、現代の譲治とナオミの関係性の感じ方は、昔と今では全然違うと思います。ある意味、新鮮な気持ちで楽しんで頂けると思っています。

©️2024『痴人の愛』製作委員会

—–ただ、100年経っても、男は男、女は女と変わらない側面もあると、映画を観て思うところもありました。大正時代に書かれた小説、昭和の頃に制作された数本の映画たち。そして今回、令和の時代を背景にして作られた本作には、それぞれの時代の中の空気感があると思いますが、それぞれの空気感の違いは何でしょうか?

奈月さん:先程もお話させて頂いた通り、男女の在り方も含め、社会に出て自立した女性が増えていると思います。ただ、令和版に関しては、このナオミという人物もまた、どこかに居そうだなという気持ちも感じられると思います。昭和もまた、女性が少しずつ自立して行き、ちゃんと意識を持って行動し始めていると思いますので、時代の価値観や空気感は違って来ると思います。ただ私は、昭和生まれではありませんので、その時代の男女の在り方について、詳細は分かりません。

—–私自身も改めて、奈月さんのお答えを聞いて、一連の流れを踏んでいると感じました。大正の頃には一歩引いていた女性が、昭和の頃には半歩前に出て来て、今になって男性と公平の立場になって来ていると思うんです。その女性の在り方が、時代と共に変わって来たと、「痴人の愛」という小説から始まる映像化を通して、今に至る令和を含めて、時代の流れを映画を通して、感じる事ができるのかなと、私は思わされました。

奈月さん:私が言いたかった事を凄く端的に伝えて頂き、ありがとうございます。

—–何度も制作されて来た小説「痴人の愛」ですが、最も人々を魅了させるナオミという存在の魅力とは、何でしょうか?

奈月さん:ナオミという存在の魅力ですか?掴み所がない点です。他にもたくさんありますが、その中の一つとして、掴み所のない性格をしている点は、自分のモノにならないハラハラ感や少し目を離したら、すぐどこかに行ってしまうような儚さもあると思うんです。男性は、そんな女性の存在に対して、本能的に追い求めたくなるものかなと思っていましたね。

—–一点気になったのが、小説のナオミの設定の年齢は15歳。15歳の少女から見た男の世界と令和版は10代ではなく、もう成人した女性から見た世界観。年齢設定を変える事によって、ストーリーの見え方に対する違いはあると思いますか?

奈月さん:10代と20代の恋愛はさすがに、今の時代、色々な問題があるので描けないので、20代と40代の話になっていましたが、20代と40代の恋愛はよく聞く話だと思うんです。だから、アブノーマルには思えない関係性だと思います。

—–恋愛は、世代を超えても、年齢を超えても、誰でもできると思うんです。本来はそういうはずだと思うんですが、何かのバイアスがかかってしまったり、誰かのフィルターがかかってしまったりと、年齢の違う恋愛は、今の時代は難しいのかもしれませんが。

奈月さん:それこそ文化も違います。

—–もしかしたら、今の時代、改めて、年齢の超えた恋愛が良しとされる時代になってもいいのかなと私は思います。さすがに、10代を対象にするのは、ご法度ですが…。好きな人を好きって言えるのが、一番いいと思うんですよね。

奈月さん:年齢も含めて、最近はLGBTQの問題もあると思いますので、性別も含めて、恋愛には関係ないと思いたいですね。皆さん、好きな人に対して好きと思える感情を大切にしたいですね。

—–最後に、映画『痴人の愛』が今後、どう広がって欲しいなど、何かございますか?

奈月さん:今まで何度か映画化されていますので、今回はちゃんと令和版という現代版『痴人の愛』として、この作品を通して、次世代に繋げて行く事ができたら嬉しいと、思っています。

—–貴重なお話、ありがとうございました。

©️2024『痴人の愛』製作委員会

映画『痴人の愛』は現在、関西では12月21日(土)よりシアターセブンにて公開中。