シアターセブンにて特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』初日舞台挨拶が行われた。関西の「学生映画の祭典」と呼ぶに相応しいプログラム

シアターセブンにて特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』初日舞台挨拶が行われた。関西の「学生映画の祭典」と呼ぶに相応しいプログラム

2021年12月20日
(c)Tiroir du Kinéma2021.12.20

取材・文・撮影 スズキ トモヤ

12月18日(土)、大阪府のシアターセブンにて、学生映画の祭典『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』の初日舞台挨拶が行われた。

この日は、5人の監督。筒井滉汰(『欲亡』監督)、寺岡育実 (『ユミは性格がわるい』監督)、 三河内夏希 (『妻のワクチン』監督)、 上尾聡一郎 (『水の中のエトセトラ』監督)、 三善万椰 (『 死体と生きる 』監督)全員が、ご登壇された。

特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』は、大阪にあるバンタンデザイン研究所という専門学校の学生の、学生による、学生のための映画の祭典だ。

この特集上映の目的は、単館系の劇場シアターセブンでの上映を通して製作された映像作品が、たくさんの方々に見ていただく経験をして欲しいと、講師の方の発案から始まった今年で2回目の試みだ。

教育の一環として1週間の上映を通して、作品を作るだけではなく、ちゃんと興行として結果を残していくという意図を持った次世代の若手監督を育成するプロジェクトだ。

今回は、コロナの感染を予防するため、前半と後半に分かれて舞台挨拶が、行われた。

前半の舞台挨拶では、『ユミは性格がわるい』を製作した寺岡育実監督、『死体と生きる 』を製作した三善万椰監督、 『欲亡』 を製作した筒井滉汰監督の3人が、登壇された。

(c)Tiroir du Kinéma2021.12.20

学内だけの上映しか経験がなかった監督たちに、上映後の感想をそれぞれ一人ずつ聞いた。

筒井監督は「ちょうど1年前に僕も客席側から見ておりました。

今日、舞台の上に立てているのが、とても違和感ありますが、実際自分がここで立てることはすごくありがたいです。

また撮り終えて、上映できたことへのすごく達成感もあります。」

三善監督は「今回の初めての作品が、多くの方に観て頂けて、とてもいい経験になったと思います。」

寺岡監督は「学校内だけでしか上映していなかった自分の作品が、お金を出してたくさんの方々に観て頂けることが初めての経験で不思議な気持ちです。」

また、それぞれの作品について話が及んだ。

『ユミは性格がわるい』について寺岡監督は「初めて脚本を書いて、売り物の映像を作りましたが、製作段階から初めての経験が多くて、ずっと頭を悩ましておりました。

出演してくれた学校の友人や助けてくださった先生の方のおかげで、自分の頭の中にあるものが目に見える映像という形になったこと。

(c)Tiroir du Kinéma2021.12.20

そして、観て来て下さっている人たちがいることなどの様々な要素が交わって、すごく嬉しい気持ちになりました。」

この作品は少し変わった経緯があるようで、本来はこの特集上映のために製作された作品ではなかったという。

授業の一環として製作したはずが、講師方や誰の目から見てもクオリティのある作品だったため、この度の本上映作品に選出されたという異例を持つ作品だそうだ。

また、作品のメッセージ性を聞かれると監督は「ダイレクトになりますが、性格が悪い人が得をするというメッセージを映像の中に込めました。」と話された。

続く2人目の『死体と生きる 』について三善監督は「初めて作った作品でしたので、現場でのトラブルや分からないことがたくさんあって、多くの改善するところへの振り返りができました。

それでも、スタッフの皆さんや学校の先生方からの助けを頂きまして、面白い作品となりました。」

また、自分で観て、面白い場面を聞かれると「やっぱりラストの場面が、お気に入りです。」と答え、作品の着想を聞かれると「ニュースでよく聞く「親の死体と一年間暮らしている人」の話を聞いた時に、この事件の当事者となった方は、どんな心情で暮していたのか気になったところから企画が、膨らみました。

訴えたい部分は、「生と死」についての対象を表現しておりますが、それだけじゃなくて、恋愛においての徐々に冷めていく恋や新しく始まる恋を対象的にも描いており、ラブストーリーとしての一面もあります。」とコメント。

続く3人目の 『欲亡』を作ったきっかけについて筒井監督は「まず、二つございまして、一つ目は僕が好きな映画の永井聡監督の『世界から猫が消えたなら』から着想を得ました。

また、「欲深さ」について書かれた歌詞を影像として表現したMVから考案しました。」

振り返りを兼ねて、面白かった点や作品のポイントなど聞かれると「全体を通して、見どころを作る上で、一番大変だったのがラブホテルのシーンでした。

撮影していて光の反射で映像が濁ったことが、とても大変でした。」

後半の舞台挨拶では、『妻のワクチン』を製作した三河内夏希監督と『水の中のエトセトラ』を製作した上尾聡一郎監督の2人が、登壇された。

(c)Tiroir du Kinéma2021.12.20

前半同様、作品の制作経緯を聞かれて上尾監督は「僕自身、今年は就職活動がありました。

次のステップ、次の世界へと行くという僕自身の「今」の境遇を今のうちに映像として残し、作品に落とし込めないかと、この映画を製作しましたした。

主人公に僕の心情や心境を託すように製作しました。」

また、主演の殿とのさんへのお芝居の演出について聞かれ「殿さん自身、落ち着いた感じの方だったので、その部分を活かしながら、演技などを深く考えてもらわずに自然体のままで演じてもらおうと考えておりました。」

作品の着想について三河内監督は「最初に2年生に進級して、シアターセブンにて上映して頂ける映画を作ろうという企画が立ち上がった時に、真面目な人がすごく幸せな結果になって、不真面目な人がとことん不幸になるような作品を作りたかったんです。

ですが、脚本について先生と話しているうちに、真面目な人は落ちていく物語が、面白しろいという結論に至りました。

でも、現実にある辛さを皆さんにも味わって欲しいなという想いも込めて製作しました。」

脚本での苦労について聞かれると「観て頂いたら分かると思いますが、主人公のマコトとユカが、結婚しています。

彼らの夫婦生活は、冷めきった関係になっていると思います。

色々な経緯を得て、あのような夫婦仲になっているのです。

その冷淡な関係でも、結婚生活は送っている状態を、微妙なラインを描写するのが、とても難しかったです。

ユカのケンジへの心の動きを描くのと同じぐらい、難しい表現でした。

この男女のセンシティブな関係性を映像に落とし込むは、苦労したことでもあります。」

また、ほかの作品と比較して、年上の出演者さんを起用する点について聞かれると「監督を初めてしてみて、演技を指導する立場になったのが初めての経験でした。

それでも、皆さん俳優としても、役者としても経験がある方ばかりでした。

(c)Tiroir du Kinéma2021.12.20

監督として未熟な私が、キャラクターを作っていく工程を一緒に楽しんでくださってくれました。

それが、すごく楽しかったことでした。」

また、世代が違う役者を使うことへの感想を聞かれて「人生の経験値や体験してきたことへの量が、違っていたため、役者さん方の演技を見ていると、若い方とはまた違った「深み」を感じることができました。

そういった意味で、大人の経験のある役者さんを使わせて頂きました。」

大人の複雑な関係を描く難しさについての質問では「とても難しかったです。

私自身、不倫はしたことありませんし、今後も絶対しないと思います。

でも、不倫をしてしまうということは、夫婦の間にもきかっけや原因があったと思います。

経験したことがない中、私なりに解釈し、考えて、脚本の中にきっかけを作る構成が、すごく難しいところでもありました。」と話された。

また、この5人の監督方にも取材を行いました。

そちらの記事も掲載しておきます。

『特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』「エネルギッシュな若さが光る、究極の学生映画の祭典」学生監督らにインタビュー』

©VANTAN DESIGN

特集上映『ヌーディストーション~ゆるふわの乱~』 は現在、十三のシアター・セブンにて、1週間限定公開中。連日、舞台挨拶も開催中。