台湾で鑑賞中に嘔吐した人が続出した映画『ガラ』


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映画タイトルの原題「嘎啦」には、中国語は擬声語として用いており、日本語に訳すと何か物が落ちたり動いたりする時の擬音語「ガラッ」や「ゴロッ」という音の表現として一番しっくり来る。あなたの隣で突然、音を立ててガラガラと何かが落ちた時。あなたの後ろで突然、ゴロッと生暖かい鈍い音が耳元に襲って来た時、それは突如として牙を剥く。得体の知れない恐怖に襲われながら、何か得も言えぬ魑魅魍魎と対峙しなければならない時、あなたは最初にこの「嘎啦」という音を頭の中で連想するだろう。ガラス戸を開ける音、何かが引き摺られる音、生首がボトリと地面に落ちる音、日常の些細な音が恐怖に変わる。日常に潜むその恐怖が、連鎖反応を起こして、ジワジワと襲いかかって来る。人里離れた集落、怪しげな祈祷師、不可思議なお祓いの数々、配信者のライブカメラが恐怖のすべてを捉える。血濡れた歴史に隠された村落の言い伝えは、歪んだ形で今の世に伝えられている。それは、都市伝説か真か。私達は、常日頃から真実の物語を試されている。何が虚像で、何が真実か、判断できなくなった今の世界において、世の中の善と悪、嘘か真、私達が持つ真贋力の真価が問われている。映画『ガラ』は、森の中の不気味なヴィラに足を踏み入れた人々が味わう恐怖をグロテスクな描写満載で描いたオカルトホラーだ。

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台湾に古くから伝承として伝わる「マライ村事件」と2023年頃に台湾のインターネット上でネット民から話題となった「ノンライリゾート事件」の2つ事件を混ぜ合わせた要素を持たせた映画『ガラ』だが、この事件は私達日本人のほとんどは、その概要を知らない。「マライ村事件」とは?「ノンライリゾート事件」とは?まずは、ここから少し掘り下げながら、日本にも実在する事件と噂となった都市伝説を比較したいと思う。「マライ村事件」とは、「1942年に日本軍が占領したマレー半島で、主に華僑を対象とした大規模な虐殺事件を指します。この事件は、日本軍による組織的・計画的な虐殺であり、マレー半島における華僑の大量殺戮を意味します。」(※1)とあるように、非常に反日的な内容だ。戦争を知らない世代にとって、このような事実があった事は誰も知らないだろう。同じ日本人として、とても居た堪れない感情が、何処と無く沸々と沸き起こり、戦争への厭戦感、無慈悲感、無力感が心に襲って来る。「マラッカ虐殺」と呼ばれる日本軍支配下のマレー半島華僑虐殺は近年、ここ日本にもその事実が伝えられるようになり、戦後80年が経とうとしている今現在、終戦直後に無慈悲にも虐殺された事件に注目が浴びつつある。今でも尚、台湾の地を踏む事ができなかった華僑の人々が魂となって、その霊魂がマライ村に取り残されているのだろう。また「ノンライリゾート事件」とは、「廃墟のリゾートヴィラで起こったとされる出来事」とあるが、台湾側の記事でも詳細は見つからなかった為、2023年頃、台湾のネット界隈で大賑わいした出来事だと判断は着くが、実際に台湾でも廃墟問題は如実に社会的に表出しており、現在、台湾No.1お化け屋敷「三芝UFO屋」(※2)が海外でも注目を浴びている。この廃墟群の詳細や概要の説明は控えるが、長年に渡る施設管理の放棄により、心霊スポット化され、幽霊が出るだの出ないだの、台湾でも1、2を争う心霊スポットとして有名だ。このように幾重にも折り重なった廃墟問題が、ネット民の格好の餌食となり、結果として、奇っ怪な都市伝説が爆誕する。そんな背景が伺い知れる。

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日本で実際に起きた怪事件として有名な伝説的な事件と言えば、小説家の横溝正史の作品のモデルにもなり、『八つ墓村』として映画化もされた昭和初期の大事件「津山三十人殺し」(※3)と比較しても遜色ないだろう。マラッカ虐殺事件のような虐殺行為ではないが、自身に対して不信感を抱いた村人30人を一夜にして、全滅させるという前代未聞の大量殺人事件だ。犯人の都井睦雄は、最後に自決をし、自ら自身の命や人生に終止符を打った身勝手な男だ。100年近くたった今でも、その土地では浮かばれない村人達の霊魂が恨みを晴らそうと、この世に残っているのであれば、恐怖に慄いてしまいそうだ。それか、どこか裏悲しくもなりそうだ。100年近い間、ずっと宛名知らずの恨みを抱え、この世に未練を残し続ける。それが、ある時を境に、心霊スポット化したり、噂に尾ひれが付いて、恐怖伝承として人々に語り継がれて行くのだろう。また、2023年の台湾で一気に人気に火が付いた都市伝説「ノンライリゾート事件」のような日本の都市伝説で有名な怪談と言えば、その名の通り「2chの怖い話「リゾートバイト」」が有名だ。2chなので、深く信じる必要はないが、書き手によるストーリーテリングが秀逸であり、長文であるにも関わらず、最後まで一気読みさせられる筆力があった。私自身も怖いもの見たさで、過去にこの恐怖物語に目を通した記憶があるが、深夜の2時、3時、震え上がる思いを味わった記憶が脳内に残っている。今では、学生達の長期休暇の夏冬用の長期バイトとして人気のあるリゾバイことリゾートバイト。バイト次いでに、旅行も楽しめる仕事とあって、毎年人気の仕事だが、その土地にはその土地の言い伝えや歴史、曰くがあり、それに触れた者は生きて帰れなくなるかもしれない。少し長いが、動画編がupされていたので、興味のある方はぜひ。

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最後に、映画『ガラ』は、森の中の不気味なヴィラに足を踏み入れた人々が味わう恐怖をグロテスクな描写満載で描いたオカルトホラーだが、この作品は単なるホラーで終始している訳では無い。私達は昨今、ネットやインターネット、SNSなど、デジタルが台頭して来た社会になっており、欲しいものは何でも手に入り、得たい情報がすぐ簡単に検索できる便利なデジタル社会となっている。その情報の中には、正しいもの、間違ったもの、真贋付かない情報が数多く入り混ざり、正しさが判断できない世の中に突入している。映画『ガラ』は、ライブ配信や都市伝説と言った近頃、エンタメとして非常に身近なトピックを題材にしているが、その背景には表層の情報だけでは踊らされない真贋情報の見極めが大切と警鐘を鳴らしているようでもある。ガラッと音を立てて世界が崩れるその瞬間、あなたが信じていた世界も同時に藻屑となって、消え去ってしまうだろう。

映画『ガラ』は現在、絶賛公開中。
(※1)戦後74年経っても「日本のアジア蔑視は続いている」、日本軍の華人虐殺を調べる高嶋伸欣名誉教授https://www.ganas.or.jp/20190817asia/(2025年5月15日)
(※2)從未真正完工,卻因詛咒而變成廢墟?台灣第一鬼屋「三芝飛碟屋」引起國外媒體注意!https://www.gq.com.tw/article/%E4%B8%89%E8%8A%9D%E9%A3%9B%E7%A2%9F%E5%B1%8B(2025年5月15日)
(※3)「首がちぎれる直前、枕を覆う布に必死で嚙み付いていた…」1時間で30人惨殺した《津山事件》の犯人が“最初に祖母を殺した”理由https://bunshun.jp/articles/-/75147?page=1(2025年5月15日)