映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』日本人に課せられた課題

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』日本人に課せられた課題

2024年12月3日

現代を映し出す衝撃作。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

©2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

©2023 Miller Avenue Rights LLC;
IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

本作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で描かれているような出来事は、もう目前まで迫っている。それが、第三次世界大戦となるのか、日本から遠く離れたどこかの国同士となるのか、または日本を含めたアジア諸国で勃発するのかは誰も予測できないが、確かに今、次なる戦争の火種がヨーロッパ地域、アジア、米国で燻っている。一体、どこでどうのように開戦するのか未知数の中、私達は目の前で起きている戦争とどう向き合えば良いのだろうか?本作の中で描かれるアメリカ国内における紛争の世界線は、単なる絵空事ではなく、今私達が生きる日常の中で常に起きている。私達がイメージする戦争とは、第一次世界大戦や第二次世界大戦のようなデフォルトとして語られているが、それはもう過去の出来事だ。今の世に起きている問題とは、人種差別、貧困、環境問題、教育問題、不平等だが、これらの問題が引き金となって、世界的な大きな戦争が起きている。日本国内でも同様に、貧困問題、少子高齢化と人口減少、環境問題、災害の激甚化、情報リテラシーの格差などが、私達国民の人間関係における不協和音を起こさせる。それが結果として、暴力事件や殺人事件へと発展させる。大元の問題を解決しない限り、今世界で起きている戦争は、無くならない。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、内戦の勃発により戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちの日常を圧倒的没入感で描いた作品だ。日本にも目前まで迫る国際的政治的摩擦に対し、どう向き合って行くべきか、本作から学ぶ事ができるのかもしれない。

©2023 Miller Avenue Rights LLC;
IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

本作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で描かれているのは近未来のアメリカ国内で起きる内紛であるが、これがもし、第三次世界大戦だったとしたら、世界は日本はどうなっているだろうか?過去には、何度か第三次世界大戦の勃発の兆しがあったのは言うまでもない。ここでは主要な出来事だけ挙げておくが、たとえば、朝鮮戦争、第二次中東戦争、ベトナム戦争、キューバ危機、第四次中東戦争、ソボ紛争、シリア内戦が世界大戦の危機的状況だったと言える。また近年では、ロシア・ウクライナ危機、パレスチナ・イスラエル戦争、レバノン侵攻など、私達の生活に直結する紛争が今、ヨーロッパ諸国で起きている。2024年現在、既に第三次世界大戦は勃発していると判断されている。過去に起きた第二次世界大戦は、イタリア、ドイツ、日本の枢軸国の連携によって始まったが、発端は1931年に日本が起こした満州占領がその火種だったと見る動きがある。一方で、今回のロシア・ウクライナ危機が起こった背景には、2014年のクリミア占領(※1)があると、今後論じられるようになるだろう。ただ第三次が起きると言われる事への対象的に、起きない、回避されると言われている背景もある。その要因には、「もしウクライナ軍にNATO軍が加わり、ロシア対NATOという構図になれば、第三次世界大戦になり得ます。なぜならNATO軍には、欧州合同軍、大西洋連合軍、海峡連合軍、カナダ・アメリカ計画グループなど各国の軍隊で構成されている。しかしだから核兵器を仄めかし脅しているロシアは、対NATO戦は避けたい意向。NATO側も、対ロシア戦争にならない程度にブレーキを踏んでいる。」(※2)今は両者のバランスが均衡に保たれており、直ぐに第三次世界大戦に発展する可能性は低いが、いつ何時、私達の生活に牙を向けるか分からない状態が続いている。

©2023 Miller Avenue Rights LLC;
IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

では、2020年から2025年の現在の20年代において、実際にアメリカが内戦状態に陥った場合、この国または日本が果たして、どう変化するのだろうか?一旦、その前に世界では今も戦争や内紛は続いており、先述したパレスチナ問題やウクライナ侵攻を筆頭に、アフガニスタン紛争、シリア内戦、リビア内戦、イエメン内戦(※3)と多くの国と地域で内戦が続いている。2024年の今の時代に内紛が起こり得るとは考えにくい中、本作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で描かれているような戦争が、アメリカ以外の地域で現実に勃発している事実に真正面から見つめなければならない。アメリカを代表する政治学者バーバラ・F・ウォルター氏が書き記した書籍『アメリカは内戦に向かうのか』では、「悪しき政府にとって最も危険な時期とは、一般に自ら改革を始めるそのときである」(※4)と警告を鳴らしている。アメリカは、南北戦争期を経験、ニクソン大統領の辞任、冷戦や湾岸戦争、2001年の世界同時多発テロからのアフガニスタン戦争、続く2016年大統領選挙を機に、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件を境に、国民不安は一気に低下した。そして、今年2024年のアメリカ大統領選挙(※4)では、多くのアメリカ国民が選挙を通して分裂した。ウォルター氏が言う「改革を始めるそのとき」こそが、今ではないだろうか?国の中の価値観が変わるその瞬間、人同士の衝突が起きてしまう。もし内紛が起きれば、映画の中で行われているような銃撃、虐殺、差別、暴力の連鎖のアメリカ国内だけの問題に留まらず、海外の諸外国にて経済的貿易契約をしている以上、国家同士の摩擦、衝突は避けられない。そうなった場合、日本も他国と同様に被害を被る事になるだろう。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を制作しますアレックス・ガーランド監督は、あるインタビューにて本作の本作で描かれるジャーナリズムについて、こう話している。

©2023 Miller Avenue Rights LLC;
IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

ガーランド監督:「2020年を振り返ってみると、議論は今日とほとんど同じでした。奇妙なことに、ほとんど何も変わっていません。変化がある場合、その変化の一部は悪い方向へのものです。全体的に、この映画は抑制と均衡についての映画だと思います。分極化、分裂、ポピュリスト政治が過激主義につながる方法、過激主義自体が行き着く先、そしてその中で報道機関がどうなっているか。4年前に私が本当に夢中になったことの1つは、本当に優秀なジャーナリストが良い仕事をしていることは明らかだったということです。しかし、私が興味を持ったのは、そしてこれはしばらく前から起こっていることですが、彼らの支持がいかに少ないかということです。抑制と均衡についての映画であれば、政府に対する最大の抑制と均衡の1つは報道機関です。しかし、それが機能するためには、報道機関が信頼される必要があります。報道機関は、外部の勢力と内部の勢力によって部分的に弱体化され、悪者扱いされてきました。ジャーナリストが嫌いだと言うのは、医者が嫌いだと言うのと同じです。医者は必要です。ジャーナリストもまた、必要です。」(※6)と話す。日本では、マスゴミなんて言われて、揶揄される事が頻繁にある昨今。加熱するマスコミ報道、メディアスクラム、捏造、様々な行動が民間に負のイメージを植え付けさせ、マスコミや報道、ジャーナリストの存在意義を根底から否定されている。でも、ガーランド監督はジャーナリストもまた、この世界に必要な存在と力説する。世間から「マスゴミ」と呼ばれない行動する事も必要だが、世間もまた、再度、マスコミという存在が世界にどう必要とされ、どう作用しているのか、考え直す契機に来ているのかもしれない。本作が、その一助となる分岐点になる事を祈るばかりだ。

©2023 Miller Avenue Rights LLC;
IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

最後に、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、内戦の勃発により戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちの日常を圧倒的没入感で描いた作品だが、本作で描かれている事はアメリカだけに留まらず、ヨーロッパや世界各地で現在でも繰り広げられている。たとえば、アジアでは香港民主化運動(※7)や台湾問題(※8)、北朝鮮問題(※9)など、今、東アジアは揺れに揺れている。専門家は、「安全保障を専門とするジャーナリストとして20年以上活動してきた中で、 今ほど戦争の危機を感じる時はありません。」と話す。また、ロシア北朝鮮間では、ロ朝軍事協力の強化は「国際秩序を根底から揺さぶり、東アジア情勢の不安定化にもつながる脅威」と言われるほど、東アジア間における国際情勢は今、危うい状況だ。これは、日本でも他人事ではなく、いつ何時、この危うい情勢に巻き込まれるか予測できない。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で描かれている世界線は、東アジア海域でも起きる可能性のある出来事であり、日本もそれに巻き込まれる可能性がある中、私達はその現実にどう直面し、どう対処するのか、今からでもシミュレーションする必要がある。私はまず、自身が住む地域の子ども達の未来、高齢者や市民の生活の営みを守りたいと強く想うばかりだ。私達が日本人である以上、この日本を守る事が、日本人に課せられた課題ではないだろうか?

©2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は現在、大ヒット上映中。

(※1)「第三次世界大戦は既に始まっている」世界で度々浮上する指摘、備えておくべきことhttps://wedge.ismedia.jp/articles/-/35600?layout=b(2024年11月30日)

(※2)池上彰「第三次世界大戦は起きない」と考える理由人類が「2度の世界大戦」から学んだこととはhttps://toyokeizai.net/articles/-/760884?page=2(2024年11月30日)

(※3)2024年現在も紛争が未解決の国や地域は?原因を知り支援方法を考えようhttps://gooddo.jp/magazine/peace-justice/dispute/(2024年12月1日)

(※4)アメリカの衰退に忍び寄る「内戦」と「革命」リスクトクヴィルも警告した「最も危険な時期」の到来https://toyokeizai.net/articles/-/671686?page=4(2024年12月3日)

(※5)【マーケットの死角】米大統領選後のマーケット展望 トランプ再選がもたらす「残酷な結末」https://www.smd-am.co.jp/market/shiraki/2024/devil241107gl/(2024年12月3日)

(※6)Alex Garland Answers the Question: Why Make a Film About Civil War Today?https://www.nytimes.com/2024/04/11/movies/alex-garland-civil-war.html(2024年12月3日)

(※7)香港の民主化運動リーダーらに量刑言い渡し 禁錮4~10年https://www.bbc.com/japanese/articles/cdxvdwz8zvgo(2024年12月3日)

(※8)多くの日本人が知らない!「台湾有事」が度々ウワサされる「驚きの理由」https://gendai.media/articles/-/139769?page=1&imp=0(2024年12月3日)

(※9)<社説>北朝鮮の派兵 東アジアにも迫る脅威https://www.tokyo-np.co.jp/article/368688(2024年12月3日)