第19回大阪アジアン映画祭 映画『カオルの葬式』 映画『盗月者』 レビュー

第19回大阪アジアン映画祭 映画『カオルの葬式』 映画『盗月者』 レビュー

2024年3月6日

今年もまた、第19回大阪アジアン映画祭が、大阪府で開催中。テーマは「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」。上映作品本数は63作品、上映作品の製作国 ・地域は24の国と地域が集結したアジア映画に特化した映画の祭典。3月1日(金)から3月10日(日)までの10日間、開催されている。本映画祭に出品された作品レビューと当日レポートを交えて、少しづつ紹介したい。

映画『カオルの葬式』年齢に関係なく

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一言レビュー:事の発端は、ある一人の女性のお葬式から始まる。一人の女性の死が波紋を呼び、周囲の親族や遺族のドロドロとした人間が持つ醜い感情を露骨にも、露わにして行く。本作の監督は、この作品を“ブラック・ジョーク”として観て欲しいと話す。笑える場面では、我慢せずに笑って下さいと。私は、この作品の冒頭や構成が、イラン映画を代表する巨匠アスガー・ファルハーディ監督の演出やアプローチに非常に似ていると感じ取れた。彼の代表作『彼女が消えた浜辺』のように、突然姿を消した“彼女”を通して、イラン家族が宗教、民族、言語、男女の価値観などで、言い合う姿と本作の登場人物の姿がニアリーイコールであった。また、一つの出来事、たとえば浜辺で消えた女性と一人の女性のお葬式が発端となり、人間同士の波紋が広がる模様がアスガー・ファルハーディ風であると捉える事も出来る。人間が持つ途轍もない欲望の塊を剥き出しにして、いがみ合い、罵り合い、それでも人を愛する事を諦めないその姿には、ラストに言い知れぬ感動が心の底から沸き起こるだろう。なぜ、人は罵り合いながらも、互いを愛する存在として認め合っているのか。その愛とは、一体何であろうか?お葬式での喧嘩は、良くある事だ。その喧嘩の一番の原因(※1)は、やはり、遺産相続だろう。その次は、葬儀費用を誰が負担するのか。誰が、遺産をどのくらい貰えるのか、誰が費用を負担するのかで、親族同士による骨肉の仁義なき戦いが繰り広げられる。葬儀の当日、家族同士が喧嘩しないように、故人は生前、必ず遺言を残すように気を付けた方が良い。遺言(※2)は、有効期限がなく、本人が亡くなってから有効となる。「無効」と判断されない遺言書の書き方とは、法律の定めた厳格な要式で書くことを勧めたい。他にも、細かいルールは存在するが、一番する事は毎年、新しい遺言を書き換える事。故人が亡くなった時、最も近い日付が有効となると言われている。だから毎年、一年に一回、遺言を書く日を設けた方がいいと言われている。あなたも今日から、遺言を書くように心掛けよう。人は、いつ死ぬか分からない。遺言なんて、年寄りや年配層が認(したた)めるものだと思っている方、それは間違いです。死は、平等に人々に訪れる。それが、早いか遅いかだけだ。だから、今のうちに、年齢に関係なく、遺言を残そう。

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映画『盗月者』私達の日常に潜む

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一言レビュー:2010年の香港の窃盗団による東京の時計店襲撃事件(※2)を題材に、史実を織り交ぜたストーリーが展開するスタイリッシュな犯罪ドラマ。東京と香港でロケを敢行し、スリリングな裏切り合戦を繰り広げながら大胆な盗みを働く窃盗団の姿が描かれる。香港の人気グループMIRRORのメンバーが出演、2024年2月春節に香港公開の最新作。2010年の香港の窃盗団による東京の時計店襲撃事件に関するニュース記事が残っているのか定かではなかったが、調べてみたら、一件だけ日経新聞さんがネット記事を10年以上残している記事に行き着いた(検索エンジンで一番頭に出て来た)。こんな古い事件の報道記事がまだ残っていたのも驚きだが、強盗事件はいつの時代でも起こりうる犯罪の一つだ。近年でも、日本で起きた窃盗強盗殺人事件と言えば、昨年年明けに首都圏周辺で立て続けに起きた連続窃盗強盗事件(広域強盗事件)(※3)を思い出す人も多いだろう。強盗の認知件数(※4)は、平成15年に昭和26年以降で最多の7,664件を記録した後、平成16年から減少傾向にあり、令和3年は1,138件(前年比259件(18.5%)減)と戦後最少を更新した。 検挙率は、平成17年から上昇傾向にあり、令和3年は99.3%(同2.1pt上昇)であった。窃盗強盗(殺人)事件は、私達の日常に潜んでいる事を忘れてはならない。

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第19回大阪アジアン映画祭は現在、3月1日(金)から3月10日(日)までの10日間、シネ・リーブル梅田T・ジョイ梅田ABCホール大阪中之島美術館の4か所にて開催中。

(※1)葬儀費用で喧嘩をしない方法とは?喧嘩の防止対策の方法まで解説!
https://sogi-c.jp/columns/p-14532/(2024年3月6日)

(※2)銀座の時計窃盗、3人に実刑判決 香港の裁判所https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0603C_W0A001C1CC1000/(2024年3月6日)

(※3)「ルフィ」広域強盗に社会が震撼、侵入犯罪がこれから増えるワケhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00207/041900001/(2024年3月6日)

(※4)令和4年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/69/nfm/n69_2_1_1_2_3.html#:~:text=%E5%BC%B7%E7%9B%97%E3%81%AE%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E4%BB%B6%E6%95%B0%E3%81%AF,pt%E4%B8%8A%E6%98%87%EF%BC%89%E3%81%A7%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82(2024年3月6日)