40年の因縁が、ここに決着する映画『ハロウィン THE END』
1978年に公開された映画『ハロウィン』は、リメイク作品含め、本作で通算13本目となる長寿シリーズだ。
世界中にファンを持つ本作は、映画のみならず、小説、コミック、ビデオゲーム、その他の商品でビジネス展開されている超人気作。
この度、世界が待ち望んだ最終章となる映画『ハロウィン THE END』が、国内で上映が始まる。
1作目では、何の前触れもなく、子供であったマイケル・マイヤーズが、自身の肉親である親兄弟を躊躇いもなく惨殺してしまう。
その時に、生き残った赤ん坊こそ、今日まで命を狙われる事となる主人公のローリーだ。
作品としては、このマイケルとローリーの死闘を描いてはいるが、シリーズとしての物語がほぼ破綻しており、ただただマイケルの狂気をホラーとして描写している。
この兄弟の骨肉の争いは、前シリーズの初期2作と、リブート版である本シリーズで壮絶に展開される壮大な兄弟喧嘩だ。
特に、哀れなのは、年上の兄でもあるマイケルだ。
年の離れた妹のローリーを付け狙う姿は、非常に情けない。
「兄妹喧嘩」という言葉であっさり表現してしまうと、少し拍子抜けしてしまうかもしれないが、殺人をも厭わないその迷いなきマイケルの姿は、モンスターそのものだ。
ホラーという残酷な恐怖描写の裏に隠されたのは、想像を絶する家族喧嘩の様相だ。
こんな長きに亘り家族同士が、争うことがあると思えるだろうか?
でも実際は、日本でも近年、(※1)富岡八幡宮殺人事件という衝撃的な事件が起きている。
30年という積年の恨みから、世間を震撼させた重大事件の一つだ。
これは、ただの氷山の一角に過ぎず、家族間、兄弟間、親族間で、人間同士の摩擦は起きている。
(※2)姑嫁問題においても、昔から殺人、殺人未遂事件に発展する深刻な事案として根が深い。
また、ここに来て、マイケル・マイヤーズの場合は、ただの兄妹間の争いだけではない。
少なからず、彼を(※3)反社会性パーソナリティ障害として扱っている節もある。
日本では2007年に起きた(※4)渋谷区短大生切断遺体事件で、犯人を診察した医者は彼を「被告は生来のアスペルガー症候群、人格内部に隠れていた自分でも認識していない部分が爆発して犯行に及んだ」と診断に結論を出している。
それでも、発達障害の一つであるアスペルガー症候群が悪ではない。
また、反社会性パーソナリティ障害に近い症状を持っていた可能性も否定できない。
ただ、これらの症状に対して、敵対視するのではなく、彼らをどのようにして正しい道に誘導するのかが、今の社会に求められていることだ。
本シリーズ『ハロウィン』が描く物語は、少なからず現実世界でも起こっている事実として受け止めたい。
また今回のシリーズでは、ホラー要素だけではなく、アクション要素も作品に取り入れ、ジェイミー・リー・カーティスをただの「スクリーミングの女王」に仕立てているだけでなく、「戦う強い女性」として描いている点が、シリーズを通しての魅力だ。
これは、ただ逃げ惑うか弱き者の物語ではなく、強き力には屈しない姿を描いている点は、世の女性たちを鼓舞する、ある種のシスターフッド映画なのかもしれない。
少し前までブームでもあったアクションホラーの要素が、垣間見える。
本作を監督したデビッド・ゴードン・グリーン監督は、あるインタビューにて、本作がグランドフィナーレである事、またいくつかの大胆な物語展開の決定に驚きがある事について、最後の対決を書く旅について質問を受けている。
グリーン監督:「本作『ハロウィン ジ・エンド』では、ラブストーリーを作りたかったんです。ある雰囲気に寄りかかって、回りくどい方法でマイケルについて話しますが、実際には彼のバックストーリーを指していません。私たちは悪の本質について話しています。私が感じたことを実現しようとすることは、私たちのリブート版『ハロウィン』に満足のいく結論をもたらすでしょう。この素晴らしいキャストとクルー、そして、生み出されたストーリーと一緒に仕事をしてきた5年間は、私たちの人生そのものでした。子供の頃、私はホラー映画が大好きで育ちました。私のキャリアの中で、ホラー映画に進出するのは本当に楽しい経験でした。映画『ハロウィン』は、私がホラーで仕事をする初めての機会でした。私はファンのコミュニティが大好きです。「彼は何をすべきだったのか」、「彼がうまくやったのか」などの会話や議論が大好きです。」と、監督は話す。
本作をラブストーリーに仕立てあげようとした方向性は、もしかしたら、バリバリに喧嘩の最中であった仲違いしているマイケルとローリーを仲直りさせようと企てたのかもしれない。
また、物語の展開や落とし所について、ファンと議論を交わしたいと話す監督の願い通り、多くの考察や感想が産まれることだろう。
最後に、本作『ハロウィン THE END』を持ってして、長きに渡る本シリーズが終焉を迎えるかもしれないし、迎えないかもしれない。
もしかしたら、マイケル・マイヤーズがもう一度、復活するかもしれないし、しないかもしれない。
それは、誰にも分からない。ローリーとマイケルの物語は、ここで幕を下ろすのだろうか?
あなたの目で、そのラストを確かめて欲しい。
それでも、マイケル・マイヤーズの惨劇は、必ず終わりを告げることはないと断言できる。
次に、ローリーのように長きに渡り襲われるのは、あなた自身だ。
あなたの隣の、あなたの目の前にいる家族がいずれは、マイケルのような存在になりうるかもしれない。
家族には、気を付けて!
あなたの命を狙っているかもしれない。
ブギーマンのように…。
映画『ハロウィン THE END』は、4月14日(金)より全国の劇場で上映開始。
(※1)富岡八幡宮司刺殺 「たたり続ける」元宮司が「自害」前に書いたドロドロ過ぎる手紙https://www.sankei.com/article/20171228-V22AD6IEW5NZ3EHE536IEQIDEM/(2023年4月14日)
(※2)カレー鍋姑殺人未遂事件 姑の隣人トラブルと嫁いびりの実態https://www.news-postseven.com/archives/20141031_284366.html?DETAIL(2023年4月14日)
(※4)「部屋からにおいがしても開けないで」妹を殺害、遺体をバラバラに…..両親はなぜ“加害者である兄”をかばったのかhttps://bunshun.jp/articles/-/56670(2023年4月14日)
(※5)David Gordon Green Interview: Halloween Endshttps://screenrant.com/halloween-ends-david-gordon-green-interview/(2023年4月14日)