バイク1台で世界一周を目指したドキュメンタリー映画『タンデム・ロード』


時に、当たり障りない人生から逃げ出したくなる時もある。時に、夢や希望もない人生から逃げ出したくなる時もある。家庭での出来事、学校での出来事、仕事での出来事、将来の不安、過去の嫌な出来事、人間関係、親子関係、家族間の問題、日常を過ごしていたら必ずと言っていいほど、私達は逃げ出したくなるような嫌な事に日々、直面している。その壁を乗り越えようと、誰もが毎日もがきながら、生きている。それでも時に、乗り越えられないような厚く高い壁に直面した時、私達はどうすれば良いのか?右往左往し、周章狼狽し、千辛万苦しながら、人生の困難に立ち向かわなければならない。そうだとしても、本当に困難に立ち向かえない時にすべき行動は、逃げる事だ。どうしても直視できない現実が目の前に現れたら、まず最初にする事はその出来事から一旦、距離を置いて、一呼吸し、自身のメンタルを整える事だ。たとえ、それが他人から「逃げ」だと罵られても、自身の信念を曲げず、逃げ通して欲しい。その逃亡した先にこそ、あなたが求める新しい世界が待っている。たとえ逃げた先が苦しくても、どこかで耐える必要がある。逃げてもいいが、嫌な事からは逃げられない。どれだけ遠くの世界に行けたとしても、そこで待ち受ける多事多難を避ける事はできない。いつか、私達はその困難な壁を乗り越えて、次の世界に足を踏み入れる時、きっと今のあなた自身が役に立つ。乗り越えた分だけの力があなたにはあるから、何も恐れることはない。ドキュメンタリー映画『タンデム・ロード』は、アドベンチャーバイク1台で世界一周を目指した日本人男女の427日間・走行距離約6万キロにおよぶ壮大な冒険を記録したドキュメンタリー映画。

世界中には、歴史上の人物から現在に至るまで、世界一周の旅をする強者・曲者が数多く存在する。たとえば、世界で初めて世界一周を達成したのは、フェルディナンド・マゼランという人物。彼は航海の途中で亡くなったが、1519年にスペインを出発後、残された乗組員が1522年に帰還する迄の3年間で地球一周を成し遂げた。マゼランは西回りで東、ジアの航路開拓を目指して出発した。残念ながら、彼はフィリピンのセブ島で亡くなったが、艦隊は航海を続け、1522年、3年近い航海の末、史上初の地球一周を達成した。マゼランの偉業は、大航海時代の幕開けを告げる重要な出来事として今も尚、歴史に刻まれている。また、日本で初めて世界一周を達成したのは、仙台藩の廻船「若宮丸」の漂流民、津太夫、左平、儀兵衛、太十郎の4人。彼らは1793年に石巻から出航後、嵐に遭い漂流、アリューシャン列島に漂着。その後、ロシアに渡り、ニコライ・レザノフとクルゼンシュテルン率いるロシアの初の世界一周航海に同行し、漂流してから11年後の1804年、日本人として初めて世界一周を成し遂げた(※1)。データ上、現代における世界一周の旅をしている人の組数の具体的な統計はない。世界一周は、個人の旅行スタイルや目的によって大きく異なり、正確な数を把握する事は困難と言われる。その一方で、世界一周旅行に出かける人は、個人、カップル、友人同士など、様々な組み合わせで存在し、今も世界のどこかで旅をし続けている。また、年間で世界一周旅行をする人の数は、数千人から数万人規模と推定されている(※2)。国内外問わず、多くのバックパッカーや旅行者が世界の至る所を旅している。

旅をする上での移動手段の利用は、様々あるだろう。徒歩で行く者、航路で行く者、空路で行く者。旅を行く手段は、人によって様々ある。他には、クルーズ船、ヨットや自転車など。人によって、移動手段の選択肢には多種多様な乗り物が使われている。なぜ、人は時にバイクを選んで旅をするのか?バイクで世界一周をする理由は人それぞれあるが、主な理由きには、自由な旅ができる事。また、移動の喜びを味わえ、そバイクならではの景色や体験ができる。そして、バイクには自動車に比べて費用を抑えられ、長旅に適していると言われる(※3)。たとえば、バイクでの自由な旅とは、自動車や公共交通機関では行けない場所にもアクセスし、自分のペースで旅程を組むことができる。行きたい場所へ行けるのが、バイク旅の魅力だ。次に移動の喜びとは、バイクに乗れば風を切って走る爽快感。また、景色を楽しみながら移動する喜びを味わえる。日本では味わえない雄大な自然をバックに走れる。バイクならではの体験では、路面からの振動や風の音、匂いなど、五感をフルに活用した旅が堪能できる。現地のライダーと交流し、本作の二人が体験したバイクイベントに参加し、様々な体験も楽しめる。費用面では、自動車に比べ、購入費用や維持費を抑えられる。長距離を移動する場合、ガソリン代や宿泊費なども、バイクの方が安く済むパターンもある。バイクは長期の旅に適しており、小回りが利き、狭い道や悪路も走行できる。長旅では、様々な環境に対応しやすいメリットがある。それが、バイク旅の最大の魅力だろう。確認できるぐらいだが、今も日本人で数人、バイクで世界一周をしている強者達(※)を確認できる。皆、それぞれの想いを抱え、自身の生き方、人生、この先の漠然とした未来の不安、安定した生活と人生が逆に不安を駆り立てる。バイクだけじゃない、自転車で日本一周や世界一周をする者(※5)もいる。自転車冒険家の小口良平氏は言う。「人との距離を縮めてくれる世界一フレンドリーなモビリティが自転車だと思っています。ヨーロッパでは「生まれてはじめて乗るのが自転車で、人生で最後に乗るモビリティも自転車」いうほど。自転車を「幸せモビリティ」として定着させたい。」現在、「自転車×地域創生」をテーマに長野県の辰野町を中心に、諏訪地方、上伊那地方で幅広い活動をしている(※6)。バイクや自転車、乗り物は単なる移動手段に過ぎないかもしれないが、これらの乗り物は人と人とを繋ぎ、結び合わせるツールになり得る存在だ。自転車やバイクで旅をする者の中にあるのは、ただ旅をしたい、現実から逃れたいといった逃避やロマンだけでなく突き動かされているのではなく、幼少期から連なる原体験がバイクや自転車の旅を掻き立てる。旅とは、旅人にとっての人生そのものかもしれない。

最後に、ドキュメンタリー映画『タンデム・ロード』は、アドベンチャーバイク1台で世界一周を目指した日本人男女の427日間・走行距離約6万キロにおよぶ壮大な冒険を記録したドキュメンタリー映画だが、ロードムービーを象ったドキュメンタリー作品ではない。冒頭、バイク旅に出る理由の一つに、被写体となっている女性の人生が語られる。引っ込み思案で、無口な少女。唯一、憧れたのは映像というファンタジーな世界。地元を離れ、東京の映像制作会社に就職するも、思っていた華やかな世界のギャップと慣れない仕事の連続で心が壊れてしまう。現実の嫌な事から逃げ出すかのように、バイクに跨り颯爽とまだ見ぬ世界の扉を開けに旅に出た。ただ、この作品の被写体となるこの女性のように、職場だけでなく、家庭環境や学校、友達関係や親子関係、様々な場面で苦しい思いしている人々はたくさんいる。たとえば、教育現場における不登校の問題もその一つだ。現在、における不登校児童生徒数は、過去最多の34万6,482人に達しっている(※7)。今も日本のどこかに現実のつらい事に立ち向かえない子ども達が、いる。この映画の女性もつらい出来事から背を背けて、広い世界の荒野に飛び出した。現実問題、誰もが簡単に世界一周の旅ができる訳ではないが、それでも、この映画に登場する彼ら男女の姿を通して、何か誰にも打ち明けられない悩みを抱える子ども達が、一歩前に歩を進める勇気をもらえる作品になっているだろう。

ドキュメンタリー映画『タンデム・ロード』は現在、公開中。
(※1)初めて世界一周した日本人 –若宮丸漂流民https://www.spf.org/opri/newsletter/209_3.html#:~:text=%E7%AD%94%E3%81%88%E3%81%AF%E3%80%81%E6%B4%A5%E5%A4%AA%E5%A4%AB%E3%80%81%E4%BD%90%E5%B9%B3,%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%97%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82(2025年7月22日)
(※2)世界一周とは?よくある8つの質問に答えます【世界一周2回経験】https://ruimaeda.com/travel-around-the-world/#:~:text=1%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E5%91%A8,%E3%83%B6%E5%9B%BD%E3%81%90%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%8C%E5%B9%B3%E5%9D%87%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2025年7月22日)
(※3)世界100ヶ国以上をバイクで踏破!旅の達人おすすめのhttps://www.mapple.co.jp/blog/1327/(2025年7月22日)
(※4)仕事を辞めてバイクで世界へ出かけようhttps://motorcycle-aroundtheworld.com/(2025年7月22日)
(※5)「サイクル野郎」に憧れる自転車少年「バイクと旅した40年物語」~01~https://www.bbb-bike.com/magazine/motorcycledays/vol89.html(2025年7月22日)
(※6)自転車冒険家・小口良平さんが地域にもたらすウェルビーイングな好循環[前編][後編]https://sotokoto-online.jp/well_being/19048#:~:text=2009%E5%B9%B4%E3%81%8B%E3%82%892016%E5%B9%B4,%E4%BA%BA%E7%89%A9%E5%83%8F%E3%81%AB%E8%BF%AB%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82https://sotokoto-online.jp/well_being/19049(2025年7月22日)
(※7)不登校生は増加の一途https://new-schoooool.jp/column/truancy/901/(2025年7月22日)